子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

FIFA 女子W杯 決勝戦 日本代表 VS アメリカ代表【2:2】PK3:1

2011年07月18日 08時25分49秒 | サッカーあれこれ
生きている間に果たしてW杯の決勝に日本が出る,更には優勝するという可能性は,どのくらいあるのだろうか?という議論をしたことがあるが,まさかこんなに早く,しかも女子の手によって,否,足によって成し遂げられるとは思わなかった。
正に日本のサッカー史に刻まれるべき試合は,しかし既に2度カップを手にしているアメリカの王者としての威厳と気迫に圧倒される展開となった。

スリッピーな芝を問題にしない,速くて正確なパスがワンバックとチェイニーに収まり,そこからどんどんスペースを使われる。かと思えば,長いクロスでサイドを変えられ,そこから数的優位を作られる。更に日本ボールになった瞬間にかけてくるプレスの速さと強さは,ドイツともスウェーデンとも次元の異なるものだった。
特に前半,左サイドをトップスピードで破り,そのまま左足から放たれたワンバックのシュートは凄まじかった。さぞかしクロスバーは痛い思いをしたことだろう。

唯一,相手のフィニッシュの精度の低さに助けられた日本だが,生命線である中盤でのパス廻しを封じられながらも,前半の30分を過ぎた辺りから大野と安藤のコンビが機能し出す。その勢いを保ったまま後半に入ると,徐々に仕掛けられるようになり,ポゼッションも上がってくる。

しかしここまで打つ手が全て当たってきた佐々木監督は,試合の流れに対して違う判断をしていたようで,21分に大野と安藤を一気に交代するという手で勝負に出る。だが,結果的にこの策は裏目に出た。
直後の24分,日本は右サイドから攻めて中央の永里が一旦はボールを収めるが,そこで3人に囲まれて奪われると,これもまた交替で入っていたモーガンにロング・フィードが通って,矢のようなシュートを決められてしまう。

ゲームの雰囲気から行くと,ここから追い付くのは至難の業かと思われたが,正確なキックで日本の窮地を救ってきた「お笑い芸人顔」の宮間が,12分後に流れの中から最前線に顔を出して,こぼれ球を左足アウトで決めて追い付く。
漫画家の倉田真由美が今回のなでしこの活躍に対して「男とは覚悟が違う」と発言していたが,ボールを抱えて味方ベンチに駆け寄る宮間の堂々とした姿は,正に「その通り!」という感じだった。

ビッグゲームの決勝戦としては珍しく,点の取り合いという空気が出た始めたところで試合は延長に入るが,アメリカの運動量は予想に反してほとんど落ちない。
延長前半右サイドを崩され,警戒していたワンバックに決められた場面は,近賀が完全に相手2列目の攻め上がりに振り切られた結果の失点だった。

ここで日本も遂に力尽きたかと思われたが,最後の最後に見せたのは沢の技だった。宮間のCKに対してするするとマークを抜け出し,右足アウトで合わせたシュートがネットを揺らした瞬間,日本の歓喜は頂点に達した。
PK戦における海堀の読み,熊谷の落ち着きも見事だったが,試合としてはこの沢のゴールがハイライトだったと言って良いだろう。

一方で勝負には敗れたが,サッカーの内容ではまだ一日の長があることを証明して見せたアメリカを,日本が真に打ち負かすために必要なのは,やはり底辺の拡大だろう。サッカー協会は,話題を呼んだ「はやぶさ」同様に,トロフィーを使った全国行脚を行ったり,今回ヒロインとなった選手達をフルに活用して,彼女たちに憧れる新世代の「なでしこ候補生」達を,ともかくピッチに引き込む努力をすべきだ。
「旅人」になんぞならなくとも,自分を知り尽くしているように見える沢を筆頭とする今回のなでしこ21人こそ,日本復興の鍵となる財産であることは疑う余地がない。
表彰台の上で見せた宮間の変な踊りに祝福あれ!


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