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安藤裕子「JAPANESE POP」:タイトルに偽りなし

2010年09月18日 23時01分59秒 | 音楽(新作レヴュー)
日本的な叙情を湛えながらもウェットに陥らず,浮遊するようなメロディを舌足らずの甘い歌声で巧みに操り,独自のポップ空間を作り上げてきた安藤裕子が,2年4ヶ月振りに新作を出した。
その名も「JAPANESE POP」。私がジャンル,と宣言するかのような勢いだが,デビューから7年を経て,その音楽からは最も縁遠い言葉と思える「貫禄」をさえ感じさせる出来上がりだ。

今回はプロデューサーに,これまでずっとパートナーを務めてきた山本隆二に加えて,過去にも組んだことのある宮川弾,そしてジョバンカのプロデュース(今年出たセカンド・アルバムは見事な出来だった)で有名なオランダのアーティスト/プロデューサーのベニー・シングスを迎えたことが話題になっている。確かに各プロデューサーは,自らの領土に強引に安藤を引っ張り込むという手法を取ることなく,あくまで彼女の世界に寄り添いつつ自らの持ち味を控えめに加えることで,色彩感はよりヴァラエティに富んだものになったと言える。特にベニー・シングスの軽快なリズムに乗っかる鉄琴と弦と管の響きは,実に開放的で楽しい。

それでも,このアルバムで最も光っているのは,これまで同様に安藤のソング・ライティング能力だろう。音色が多彩になっても,自分の声の特徴を活かした独特の節回しは変わっていない。今まで聴いたことのないような鮮烈なメロディがある訳ではないが,彼女が作り出してきた様々なフックを少しずつ変形させながら丁寧に紡いだ曲が放つ輝きは格別だ。

プロモと合わせてラストの「歩く」が話題になっているようだが,私は弦の響きに乗せて裏声で歌いきる「アネモネ」に参った。既に大貫妙子の全盛期を凌いでいるかもしれない,と思わせる素晴らしさだ。
★★★★☆
(★★★★★が最高)


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1 コメント

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新作教えてくれてサンキュー (タッチャン)
2010-09-19 12:40:42
タッチャンです。
ここでのコメントは初めてですが、いつもありがとう!
さて、安藤裕子。
正直、ライジングサンで生で観るまで、まったく知りませんでした(苦笑)。
しかし、カミサンとちょっと立ち止まって聴いていて、なんとポップでいいメロディーなんだろうと思った次第。
昨日も実は職場に休日出勤の帰り、バスの中で、ずっと安藤裕子のベストを聴いていたところです。
あと前向きに力強いのもいい。日本もまだまだ安心だ。はっはっはっ。
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