映画とライフデザイン

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映画「女妖」山本富士子&船越英二&三隅研次

2021-03-07 08:31:34 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「女妖」を名画座で観てきました。


「女妖」は昭和35年(1960年)の大映映画だ。名画座の三隅研次特集で初めて出会う映画である。売れっ子作家をめぐる3つの独立したストーリーが描かれるオムニバス形式である。京マチ子、山本富士子、若尾文子という当時の大映看板女優で制作した女経はブログにもアップしているが、なかなか面白い。似たような題名の「女妖」にも惹かれて映画館に向かう。3人の美人女優ということでは同じだが、男性側は売れっ子作家の船越英二1人である。

浅草六区で雑誌社のカメラマンに写真を撮られた山本富士子が写る記事を売れっ子作家の船越英二が見つける。雑誌社に自ら名乗り出たら3万円あげるという。その彼女を雷門の側で見つけた後に地下鉄の駅で見かける。その後、船越が馴染みの寿司屋にいたら、なんと富士子が入ってきて思わず声をかける。

雑誌で写っていた方ですねというと、自ら名乗り出るつもりはないという。そんな富士子と昼から飲んで意気投合し、深夜まで2人ではしご酒、そのままホテル直行する。しかし、そんな富士子の姿を街のチンピラがずっと追いかけている。やがて、夜半に外で音がすると、ヤクザの組長の高松英郎が撃たれホテルに飛び込んでくるのであるが。。。

箱根のロープウェイで売れっ子作家の船越英二は、鮮やかな黄色のワンピースに身を包んだ野添ひとみに声をかけられる。船越が作家だという身分を知った上で、ちょっかい出してくる。美人なのでついつい気が緩み、熱海に連れて行こうとするが連絡先だけ教えてその場を立ち去る。

その後、ひとみから手紙をもらい高井戸のアパートに行くが、ボロアパートであった。色目を使う野添に船越は抱きつこうとすると、自分は結核だと言って咳き込む。船越はこれで病院に行きなさいと小遣い銭を渡すが、もう先がないと薬を飲んで自殺未遂をする。慌てて救急車を呼ぶのであるが。。。


売れっ子作家の船越英二は、グランドキャバレーに行き、ホステス叶順子を探しに行く。その後、本人が船越の自宅にひょっこり現れる。お父さんでしょと順子が言う。戦前、上海にいたときに船越が付き合った女性がいた。戦中ということもあり別れたが、どうやら彼女との間にできた娘のようだ。母親はすでに亡くなっている。順子が母親の写真を見せると、本人に間違いない。船越は喜び、ご馳走したり一緒に日光に行ったりするのであるが。。。


⒈三隅研次監督
座頭市や眠狂四郎シリーズ、大菩薩峠などの大映時代劇でメガホンをとっている。大映の時代劇は、独特のムーディーな感じの照明効果を持つ夜の描写が自分のお気に入りだ。その中でも三隅は、市川雷蔵の妖気じみた雰囲気を出すのが天下一品である。そんな三隅研次には珍しい現代劇というなら気になって仕方ない。

誰もが、三隅研次の職人的腕前を知っているので、大映倒産後も映画版「子連れ狼」でメガホンをとっていたが、早く亡くなっているのは残念

⒉3人の美人女優
女経でも山本富士子船越英二とコンビを組んでいる。今のご時世、女は魔物なんていうものなら、女性蔑視でとんでもないパッシングを受ける。でも、1960年代に入るくらいは、生きていくのに精一杯の女たちが、男をたぶらかしながら生きていくという構図があるのであろう。

売れっ子作家がたまたま意気投合した美女山本富士子がヤクザの2代目だったという話、いつもながら着物のセンスが抜群に良く美しい。野添ひとみは昭和40年代も美人女優で活躍していたのでなじみがある。川口浩とのおしどり夫婦というのがむしろ売りだったかもしれない。小悪魔的ムードもあり、女詐欺師を演じるのは適役であろう。叶順子は昭和30年代には引退してしまったので、自分には縁が薄いが、いかにも人気女優らしく自由奔放なあっけらかんとした雰囲気がいい。父親が風呂に入っているのに、裸になって洗い場に入ってきて船越英二の父親が戸惑う。

⒊昭和35年の日本
昭和35年の浅草六区エリアが映る。映画館の周りに人が多い。自分が子供の頃昭和40年から50年代にかけてには浅草六区が落ちぶれていた時期がある。寂れた感じがしたものだが、ここでは往年の浅草が残る。東武浅草駅と松屋を映すが、その前の花川戸周辺の道路をトロリーバスが走る。自分が小さいときは地元五反田の近くも走っていた。逆の方向に向かうショットでは神谷バーも出てくる。

スシの折り詰めが400円、金魚すくい1回10円、連れ込みホテル泊まりで800円だ。これってイメージ10倍かな?3万円の賞金というのは今で言えば30万円ということなのか?

野添ひとみが出るシーンでは、箱根と小田原が映る。古い小田原駅が情緒ある。野添の住所が高井戸になっていて、駅が若干周囲の家より高い位置にあることから、おそらくは駅は高井戸駅で走る電車は旧型の井の頭線ではないだろうか?

叶順子と船越英二が親子だとわかって、一緒に日光に向かうシーンがある。華厳の滝と中禅寺湖畔、東照宮を映す。日光の華厳の滝自体は変わりようがない。でも、映画の大画面であの豪快な滝をアップで映すシーンって意外にないんじゃないだろうか?マリリンモンローの「ナイアガラ」もそうだが、大画面で見ると迫力があるもんだ。


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