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映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「糸」菅田将暉&小松菜奈

2020-08-22 20:08:01 | 映画(日本 2019年以降主演男性)
映画「糸」を映画館で観てきました。


久々に日本映画を映画館で観た。菅田将暉小松菜奈のコンビはディストラクション・ベイビーズ溺れるナイフでみている。いずれも2人の演技が冴え、好きな作品だ。気になっていた作品で、公開早々にむかう。この映画では平成という時代を意識したストーリー展開だ。ともに平成元年に生まれた2人の男女の人生をたどる。長期にわたってのそれぞれの人生をたどるので、取りあげる出来事が多い。多すぎるせいか、それぞれが中途半端になってしまう感もある。それでも、オーソドックスな長期にわたるラブストーリーで最後まで退屈せずにみた。


平成13年、ともに平成元年に生まれた北海道美瑛で暮らす13歳の高橋漣と園田葵は、地元の花火大会で知り合う。サッカー部に所属する漣の試合を葵が見に行ったりして、急速に接近する。ところが、いつも2人で待ち合わせる場所で漣が待っていても葵はこなかった。心配になり、漣は葵の自宅に行ったが誰もいなかった。

その後、葵の友人弓に連絡先を確認して、札幌に向かう。そこで会った葵はだれかに殴られた跡を隠すかのように眼帯をしていた。それが継父の虐待によるせいだとわかった漣はその場から葵を連れだし、列車に乗って以前いったことがあるロッジに向かう。しかし、一晩泊まって警察の捜索の手が伸び保護されることになってしまう。

それから8年、漣(菅田将暉)は地元のチーズ工房に勤務していた。中学の同級で親友だった竹原直樹(成田凌)と葵の友人だった弓の結婚式に出席するために上京して式場で葵(小松菜奈)と再会する。北海道を離れた葵は大学の経営学部で学んでいた。久々に会って会話を交わすが、そこには投資会社社長の水島(斎藤工)が迎えに来ていた。もう別の世界になっていることで落胆した漣だったが、職場の先輩桐野香(榮倉奈々)と付き合うようになる。


やがて結婚の決意を固め、役場で結婚届の準備をしようとしていたところで、偶然葵と会う。葵は地元美瑛に戻った母親の行方を探しに来ていたところだったが、もうすでに函館の兄のところでなくなっていた。漣は函館までついて行ったが、もはやそれぞれの恋人がいるのでその場で別れるのであったが。。。

1.平成元年生まれにとっての重要出来事
会社に平成生まれの新卒が入社してきた時、いよいよそういう時代になったのかと思ったものだ。平成元年は日経平均株価が39000円近くまでつけて、経済のピークであったのはまちがいない。いろんな経済指標が平成2年から3年にピークをつける。そして、平成ヒトケタは下降をたどるのみである。

そんな時小学生だった平成生まれには景気は無縁の存在だったろう。米国ニューヨークで平成13年(2001年)テロ事件が起きたがあまり日本には影響がない。リーマンショックが平成20年(2008年)、東日本大震災が平成23年(2011年)このあたりが彼らにとっては重要な出来事かもしれない。

ここでは継父(もしかしたら入籍していないかもしれない)から家庭内暴力をふるわれる。母親は転んだことにしておいてと。最近ブログアップした「幼い依頼人」でも継母の家庭内暴力があった。昭和の末期にかけては校内暴力がひどかったが、平成は校内暴力をするような奴が家庭内暴力にまわったのかしら?平成を生きた若者には主要出来事よりそちらの方が近い存在では?

この世代にはむしろ西暦の2000年というのを起点とした方がなじみがあるのではないか。自分は最近平成20年代の後半の年号を言われるといつのことだかわけがわからなくなる。西暦が普通になってきた。

この映画観て、平成生まれの人どんな風に思うんだろう。見終わったとき、そんなことを考えていた。


2.キャバクラと投資家との出会い
葵(小松菜奈)と漣(菅田将暉)が共通の友人の結婚式で再会する。そのとき、葵が大学の経営学部に通っているというセリフを話したときに一瞬不自然だなと思った。漣はすでに地元で就職していた。葵はもうあと少し我慢して中学を卒業したら就職するんだと言っていた。継父の虐待を見て見ぬふりをした母親の存在もあり、よく大学に進学できたのかと思ったら途中で謎が解けた。


当然のことながら、片親のような存在では10代半ばからキャバクラでバイトして生活するしかない。そこで投資会社社長の水島(斎藤工)と知り合う。水島は恵まれない育ちの子だと見抜く、なんとか助けてあげようとお金をだしてもらって大学にも行けたのだ。そうだよね。

最近はあまり行くことはなくなったが、キャバクラに行くと片親の女の子に随分と出くわしたものだ。わりと学力のある子で、片親だから大学の学費を自分で稼ごうとキャバクラ勤めの子もいたがレアケースで、高校中退のような子がほとんどだった。このあたりは実際にありえそうな話には思えてくる。キャバクラというのは昭和の最後には少しだけあっただけだから、ある意味平成を象徴する形態かもしれない、


3.双曲線を描く恋
古くは成瀬巳喜男監督高峰秀子主演の「浮雲」が強烈な双曲線を描く恋だ。このブログでも、長期にわたってくっつき離れてという恋はずいぶんと取りあげてきた。この類いではいちばんの傑作は香港映画ラブソングかと思っているが、比較的近年ではあと1センチの恋がよかった。

この映画を含めた共通点は、それぞれがいったんは別の人と一緒になってしまうということである。ここでも2人は完全に別の道を歩むことになる。でも、ちょっと題材が多すぎか?漣(菅田将暉)のお相手はがんになってしまうし、葵(小松菜奈)は相手の投資会社社長がバブル崩壊した上に、シンガポールで事業をやって頂点のところで仲間の裏切りに引っかかったりする。幅広くしすぎたのではないかな?そこがこの映画の欠点だと思う。

4.名優再登場
主演級であった3人が年をとったので驚く。倍賞美津子は久々にみた。一連の今村昌平作品だけでなく、エロ女の匂いをプンプンさせていたが、ずいぶんとBBAになったモノだと思う。その昔、Hニューオータニの「トレーダーヴィックス」で彼女が40代の頃みたことがあったが、かっこよかった。最終に向けては重要な存在となるけど、美津子というより姉の倍賞千恵子が演じるような役柄に思える。


漣(菅田将暉)が最初に結婚した相手の父母役が永島敏行と田中美佐子である。永島敏行の主演作「遠雷」は長年にわたって自分のブログでは閲覧数が多い作品だ。不器用なイメージが牧場主の役柄には合う。自分と同世代の田中美佐子は30代半ばに人気急上昇してTVで売れっ子になった。日本ではあの世代でピークを迎えるのはめずらしいのでは?さすがに色あせたのは仕方ない。今後はこういう母役が増えるかも。
コメント
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