映画「私は死にたくない」は1958年のアメリカ映画
「ウエストサイドストーリー」「サウンドオブミュージック」という不朽のミュージカル映画のメガホンをとったのはロバートワイズ監督である。彼がこれらの名作を撮る前1958年に公開したのが「私は死にたくない」だ。主演のスーザン・ヘイワードはアカデミー賞主演女優賞を受賞している。スーザンヘイワードのアバズレ女ぶりが見ものだ。
子供のころから家庭に恵まれず、犯罪を繰り返し起こしていた主人公が、悪さする仲間だった札つきの2人の男とともに殺人の嫌疑をかけられる。一種の冤罪モノの映画で、無実を前提に話が組み立てられるが、結局は有罪となり処刑されるまでを描く。
映画が半分くらい進んだところで死刑判決が確定される。よくある冤罪モノのようにさまざまな反証の映像が次から次へと出るわけではない。それでも、弁護人が何度も復活折衝に入ろうとするがうまくいかない。死刑囚が処刑を受ける場面を、死刑執行人が下準備に入るところから丹念に映し出している。近年では「デッドマンウォーキング」などで、死刑執行のシーンをじっくり映す映画もあるが、割とここまで詳細に処刑場面を映すのは珍しい。
バーバラ・グレアム(スーザン・ヘイワード)は売春で引っ張られ収監されたり、悪さをした男たちに頼まれてでたらめなアリバイを言って偽証の罪で1年の懲役で刑務所暮らしをするような女だ。出所後夜の街で売春のカモを漁ろうとしていたところを、カモを警察と見破ったバーテンダーに助けられる。そして、そのバーテンダーと結婚をして子供を産むのだ。
でも、旦那は競馬にくるって、バーバラに金の無心をする。いよいよ愛想を尽くしたバーバラは手切れ金のつもりで小切手を渡し、夫は飛び出していく。そのあと、いかさま博打の仲間だった前科者・エメットとジャックのところへ居候させてもらう。
そのエメットとジャックとともに一緒にいたバーバラも共犯の疑いで逮捕される。逮捕の現場には大勢の新聞記者たちが来ていた。1952年3月9日、カリフォルニア州バーバンクで、老寡婦が惨殺された殺人の容疑だ。
新聞記者たちは最初からバーバラを主犯のようにでっち上げて扱っていた。むしろ、女性を極悪に仕立てる方が新聞が売れる。一方でバーバラは弁護士に調査費を払おうにも金がない。しかも、夫は出ていって行方不明だし、1歳の息子は証人になりえないし八方塞がりだ。
そんなとき、囚人仲間のリタという殺人犯の女がバーバラに当日別の場所にいたというアリバイをつくることをすすめてきた。ベンという男が面会に来て事件の夜、あるモーテルに2人が泊っていたことにするといった。ベンはしつこく本当はどこにいたんだときき、誘導尋問されるがままに彼女は2人と一緒にいたと言った。
まずは、犯人の仲間キングが証言にたち、バーバラが殺しを主導していると証言した。キングは検事と司法取引をしていた。公判で味方だと思っていたベンが証拠人として立つと、実は警官だったのだ。接見での会話は隠しマイクで録音されていて検事側の有力な証拠となった。その上、ようやく見つかり出廷した夫は何もしなかった。
第1審の判決は3人に死刑を宣告した。新しい弁護士マシューズは心理学者パールバーグを連れてきた。バーバラと相性が合い、パールバーグを信頼し、ウソ発見器にも進んでかかった。心理テストでは嘘は言うが、暴力嫌悪で殺人を犯すはずはないと示していた。この事件を担当してきた新聞記者のモンゴメリーがそのことを記事にするが、彼女の無罪を確信し始めた。モンゴメリーらの努力にもかかわらず、再審を望む訴えは却下されるのであるが。。。
⒈ジャズ色の強いバックミュージック
いきなりジャズクラブで4人のホーンセクションがノリのいいモダンジャズを演奏しているシーンが映し出される。ジェリーマリガンが奏でるバリトンサックスのソロがダイナミックだ。4つのホーンの組合せが粋なセッションを生み出す。
1957年にマイルスデイヴィスがパリに向かい、映画「死刑台のメロディ」のバックミュージックを即興で演奏している。今に残る不朽の名作だ。ジャズを映画に組み込んだその影響が少しはあるだろう。後にミュージカル映画の傑作を生み出すロバートワイズは、映画のムードにあったジェリーマリガンのモダンジャズを巧みに使っている。特にミュートのトランペットが効果的に雰囲気をつくる。
⒉嘘つき女
育ちが悪く、父親の顔は知らないという。小さいころから犯罪を重ねて、売春や偽証と前科の数は指折り数えて片手ではきかない。感化院にも2度入っている。家庭にはまったく恵まれていない。昨年の中東映画「存在のない子供たち」で極貧生活を送っている主人公が絶えず周囲にウソをついている場面に出くわした。この女も同じようなものだ。2人に共通するのは「いちばんの重罪は自分を産んだこと」というセリフである。責めるのは産んだ親だ。
3回目離婚した後に、警察にパクられるのを救ったバーテンと結婚し子宝に恵まれた。でも、旦那はバクチに手を出してすっからかんだ。しかも、旦那がバクチの支払いに使った小切手は不当たりで明日までキャッシュをよこせと言われている。どうにも困って、知り合いの札付きに子連れで身を寄せようとする。そして逮捕される。
まあ、このバーバラという女、道徳規準のない嘘つきで、偽証や売春をしても人を傷つけたり殺人はしないよなんて鑑定まで出ている。でも、冤罪とかばうほどではない。育ちの悪い連中に共通するこの嘘のつきっぷりは犯罪を犯してもおかしくないように思われる。
⒊マスコミに取り囲まれる
逮捕されるときに記者たちが押し寄せているのは不思議ではないが、逮捕された後も何かとマスコミにインタビューされる場面が出てくる。そのたびごとにアバズレのバーバラらしいコメントを述べるわけだ。しかも、バーバラの息子である赤ちゃんの面談までマスコミが押し寄せているシーンにはあっけにとられた。
日本では絶対ありえないシーンだ。
「ウエストサイドストーリー」「サウンドオブミュージック」という不朽のミュージカル映画のメガホンをとったのはロバートワイズ監督である。彼がこれらの名作を撮る前1958年に公開したのが「私は死にたくない」だ。主演のスーザン・ヘイワードはアカデミー賞主演女優賞を受賞している。スーザンヘイワードのアバズレ女ぶりが見ものだ。
子供のころから家庭に恵まれず、犯罪を繰り返し起こしていた主人公が、悪さする仲間だった札つきの2人の男とともに殺人の嫌疑をかけられる。一種の冤罪モノの映画で、無実を前提に話が組み立てられるが、結局は有罪となり処刑されるまでを描く。
映画が半分くらい進んだところで死刑判決が確定される。よくある冤罪モノのようにさまざまな反証の映像が次から次へと出るわけではない。それでも、弁護人が何度も復活折衝に入ろうとするがうまくいかない。死刑囚が処刑を受ける場面を、死刑執行人が下準備に入るところから丹念に映し出している。近年では「デッドマンウォーキング」などで、死刑執行のシーンをじっくり映す映画もあるが、割とここまで詳細に処刑場面を映すのは珍しい。
バーバラ・グレアム(スーザン・ヘイワード)は売春で引っ張られ収監されたり、悪さをした男たちに頼まれてでたらめなアリバイを言って偽証の罪で1年の懲役で刑務所暮らしをするような女だ。出所後夜の街で売春のカモを漁ろうとしていたところを、カモを警察と見破ったバーテンダーに助けられる。そして、そのバーテンダーと結婚をして子供を産むのだ。
でも、旦那は競馬にくるって、バーバラに金の無心をする。いよいよ愛想を尽くしたバーバラは手切れ金のつもりで小切手を渡し、夫は飛び出していく。そのあと、いかさま博打の仲間だった前科者・エメットとジャックのところへ居候させてもらう。
そのエメットとジャックとともに一緒にいたバーバラも共犯の疑いで逮捕される。逮捕の現場には大勢の新聞記者たちが来ていた。1952年3月9日、カリフォルニア州バーバンクで、老寡婦が惨殺された殺人の容疑だ。
新聞記者たちは最初からバーバラを主犯のようにでっち上げて扱っていた。むしろ、女性を極悪に仕立てる方が新聞が売れる。一方でバーバラは弁護士に調査費を払おうにも金がない。しかも、夫は出ていって行方不明だし、1歳の息子は証人になりえないし八方塞がりだ。
そんなとき、囚人仲間のリタという殺人犯の女がバーバラに当日別の場所にいたというアリバイをつくることをすすめてきた。ベンという男が面会に来て事件の夜、あるモーテルに2人が泊っていたことにするといった。ベンはしつこく本当はどこにいたんだときき、誘導尋問されるがままに彼女は2人と一緒にいたと言った。
まずは、犯人の仲間キングが証言にたち、バーバラが殺しを主導していると証言した。キングは検事と司法取引をしていた。公判で味方だと思っていたベンが証拠人として立つと、実は警官だったのだ。接見での会話は隠しマイクで録音されていて検事側の有力な証拠となった。その上、ようやく見つかり出廷した夫は何もしなかった。
第1審の判決は3人に死刑を宣告した。新しい弁護士マシューズは心理学者パールバーグを連れてきた。バーバラと相性が合い、パールバーグを信頼し、ウソ発見器にも進んでかかった。心理テストでは嘘は言うが、暴力嫌悪で殺人を犯すはずはないと示していた。この事件を担当してきた新聞記者のモンゴメリーがそのことを記事にするが、彼女の無罪を確信し始めた。モンゴメリーらの努力にもかかわらず、再審を望む訴えは却下されるのであるが。。。
⒈ジャズ色の強いバックミュージック
いきなりジャズクラブで4人のホーンセクションがノリのいいモダンジャズを演奏しているシーンが映し出される。ジェリーマリガンが奏でるバリトンサックスのソロがダイナミックだ。4つのホーンの組合せが粋なセッションを生み出す。
1957年にマイルスデイヴィスがパリに向かい、映画「死刑台のメロディ」のバックミュージックを即興で演奏している。今に残る不朽の名作だ。ジャズを映画に組み込んだその影響が少しはあるだろう。後にミュージカル映画の傑作を生み出すロバートワイズは、映画のムードにあったジェリーマリガンのモダンジャズを巧みに使っている。特にミュートのトランペットが効果的に雰囲気をつくる。
⒉嘘つき女
育ちが悪く、父親の顔は知らないという。小さいころから犯罪を重ねて、売春や偽証と前科の数は指折り数えて片手ではきかない。感化院にも2度入っている。家庭にはまったく恵まれていない。昨年の中東映画「存在のない子供たち」で極貧生活を送っている主人公が絶えず周囲にウソをついている場面に出くわした。この女も同じようなものだ。2人に共通するのは「いちばんの重罪は自分を産んだこと」というセリフである。責めるのは産んだ親だ。
3回目離婚した後に、警察にパクられるのを救ったバーテンと結婚し子宝に恵まれた。でも、旦那はバクチに手を出してすっからかんだ。しかも、旦那がバクチの支払いに使った小切手は不当たりで明日までキャッシュをよこせと言われている。どうにも困って、知り合いの札付きに子連れで身を寄せようとする。そして逮捕される。
まあ、このバーバラという女、道徳規準のない嘘つきで、偽証や売春をしても人を傷つけたり殺人はしないよなんて鑑定まで出ている。でも、冤罪とかばうほどではない。育ちの悪い連中に共通するこの嘘のつきっぷりは犯罪を犯してもおかしくないように思われる。
⒊マスコミに取り囲まれる
逮捕されるときに記者たちが押し寄せているのは不思議ではないが、逮捕された後も何かとマスコミにインタビューされる場面が出てくる。そのたびごとにアバズレのバーバラらしいコメントを述べるわけだ。しかも、バーバラの息子である赤ちゃんの面談までマスコミが押し寄せているシーンにはあっけにとられた。
日本では絶対ありえないシーンだ。