映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

シルビアのいる街で 

2012-06-21 05:32:04 | 映画(フランス映画 )
映画「シルビアのいる街」は2007年のスペインのホセ・ルイス・ゲイン監督の作品だ。

フランスのある街を舞台にした。スケッチのような映画だ。
最初から動きは少なく、セリフも少ない。
主人公の一人の青年と彼に追いかけられる女性をカメラが静かに追いかけていく。
雰囲気のある映画だが、起承転結はほとんどない。

主人公の青年(グザヴィエ・ラフィット)がホテルの一室で目を覚ますシーンからスタートする。
地図を片手に街を歩き出した。
2日目、演劇学校の前にあるカフェで、青年はそこにいる女性たちをひとりひとり観察し、ノートにデッサンを描く。やがてガラス越しにひとりの女性(ピラール・ロペス・デ・アジャラ)の姿を見つけた青年は、カフェを出て行く彼女の後を追う。後ろから女性に「シルビア」と声をかける青年だが、返事はない。それでも主人公は女性を追う。路面電車に乗り込む姿を見つけ、後を追うが。。。。

舞台はフランスのドイツ国境に近い都市ストラスブールである。
世界史で重要な位置を占めるアルザス地方だ。領土の占有は常にあっちこっちに移って行ったところだ。
古い建物のたたずまいがきれいだ。
比較的新しい車体の路面電車が斜めの線路を走りゆく。何度も何度も出てくる。
その中に端正な顔立ちをした男女がカフェでたたずむ。女性は誰もが美しい。
それを主人公がスケッチしていく。太い鉛筆でスケッチブックに描いていく。
カフェのウェイトレスが給仕している間にテーブルの飲み物をこぼしたりする。
あくまでこの映画の一人称は主人公の青年だ。彼の視線が中心だ。

その後、主人公はある女性に気づく。追いかける主人公と追いかけられる女をひたすら長く追いかける。美しい建物にはさまれた同じ路地裏での2人を撮り続ける。そののち2人は市電に乗る。その中が不思議な空間だ。2人をカメラがとらえる。2人の後ろの車窓のガラスが大きい。徐々に会話を始める。6年前に会ったシルビアさんではありませんかと。。。。

ヒッチコックの名作「めまい」では、依頼主の友人に自分の妻の尾行を頼まれ、主人公がサンフランシスコの街中を追いかけていくシーンがある。追いかけるジェームス・スチュワートと追いかけられる美女キム・ノヴァクの姿が優雅だ。「めまい」では突如としてキムが海に飛び込むシーンで急展開する。
この映画は若干違う。2人は出会うが大きくは映画は動かない。あくまで静かだ。

ここのところ、映画でフランスの街を旅する気分を味わっている。
ル・アーブル、マルセイユ、ストラスブールいずれも生きている間行くことはないかもしれない。
でもそれぞれの映画ではその街の中にいるような錯覚を与えてくれる。
特にこの映画の描写はお見事だ。

コメント
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