映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

ハラがコレなんで 仲里依紗

2012-06-07 22:29:40 | 映画(日本 2011年以降主演男性)
「ハラがコレなんで」は「川の底からこんにちは」で才能を発揮した新鋭石井裕也監督の作品だ。

下町に唯一残る長屋に繰り広げられる人情コメディだ。ここのところ女優としての才能を発揮している仲里依紗が主演だ。ニの線ばかりでなく、三の線がうまい。「モテキ」での存在感もあったが、ここでは彼女のワンマンショーという感じだ。

主人公光子(仲里依紗)はアメリカ人と結婚するつもりで妊娠、本来はめでたしなのに別れて一人住まいだった。預金も底がついてきてあてもなく、小さいころ暮らした東京のはずれの下町の長屋に向かう。そこには昔お世話になった大家のおばさんが暮らしているはずだった。着くと彼女は寝たきり状態だった。

そこで場面は彼女の小さいころにフラッシュバックする。
主人公の父母は事業がうまくいかず、夜逃げ同然でこの長屋へやってきた。長屋に来ると、歓迎され驚く。
そこでは住人たちがワイガヤまるで住居の垣根がないが如くに暮らしていた。

大家のおばさんは揉め事も含め、すべてを取り仕切っていた。気風のよさがあり、うまくいっていないうちの家賃をまけてあげたりした。そこの住人に食堂を経営している父(石橋凌)子がいた。実際には実子ではなかった。その息子と主人公は仲良くなったが、景気がもどり主人公親子は引っ越すことになった。

戻った時長屋からは住人はほとんどいなくなっていた。食堂のおじさんと息子はまだ住んでいた。食堂にいくと、客は少なく閑古鳥だった。
厨房でボーとしている姿を見て、主人公はいても他ってもいられない気分になった。私が面倒を見るというばかりに食堂に客を引っ張るようになった。店には以前にまして客足が戻ってきたのであるが。。。。

先だって見たあしたのジョー実写版で出てきた長屋と同じような、一昔前の長屋が舞台だ。
そこの仲間内での人情ものと思しき映画だが、実際には近代化の中に取り残されている長屋からは人はいなくなり、下町的人情はなくなっている。そこに戻ってきた主人公が奮闘する。しかも、彼女は妊娠9ヶ月だ。

映画が始まっての場面で、主人公が引越しをしてきた隣人の女性に対して、うっとうしく世話をやく場面が出てくる。タクアンどうですか?と隣の家を訪ねて、勝手に上がりこみ話し込もうとする。隣人からはいい迷惑だ。
でもこういうのが、小さいころの生活から学んだものだということが映画を見てわかっていく。
主人公が育った長屋では、隣と自分の家の境目もない状態、お互いに食べ物をあげたりして、世話をやきやっている。逆に喧嘩も絶えない。
主人公はこの下町長屋で気風のよさということを学んだ。
こういうのが粋なんだよと、自分の行動を粋かどうかで判断する。
OK! これは粋だ という主人公のセリフが脳裏に焼きつく。


主人公が食堂に連れてくるのは、リストラにあって会社から干されている男たちが多い。
金もなさそうな連中に粋とばかりに、全部自分のおごりだとまで言ってしまう。
店に客が増えたのであるが、売上がちっとも変わらない。
サクセスストーリーではないのだ。そこが肝だ。

品川の実家も近くに商店街があり、割と近い生活を見てきた。だから親近感はある。
うちの母も町内会の役員をずっとやってきて、お互いに助け合いなんてこともよく言った。
朝から晩まで町会事務所に入りびたりだった。地元の小学校にもボランティアで行っていた。
後でお返しが来るからとずいぶんと母も気前がよかったが、大して良いこともなかったのかもしれない。
でも父や母が死んだときには、大行列ができるくらいに葬式に人が来た。
区から偉い人まで来た。母との最後の会話は赤十字社からの感謝状が来ているかどうかだったなあ。
うちの母はこの主人公と同じように粋を貫いてよかったと思ったのかもしれない。
母を思い出してしまう映画であった。
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恋の罪  神楽坂恵

2012-06-07 05:50:33 | 映画(日本 2011年以降主演男性)
映画「恋の罪」は問題作品を次から次へと発表する園子温監督の作品だ。

前作「冷たい熱帯魚」では脇役でんでんを暴走させ狂気的な凄い作品を発表した。今回はでんでんのような男性の狂人がいない代わりに、神楽坂恵と冨樫真の女性2人を暴走させる。神楽坂恵の圧倒的なバディに翻弄されながらストーリーを追った。水野美紀が格でクレジットトップだけど、どう見てもこの映画の主役は神楽坂恵でしょう。

渋谷の円山町のホテル街で、古い建物から女性の死体が発見された。主婦でありながら刑事の仕事を務める女(水野美紀)は外出先で知らせを受けて、現場に駆け付ける。首が切られたむごい死体だ。
作家の主婦である主人公(神楽坂恵)は一戸建ての家で何不自由のない生活をしていた。朝7時に家を出て夜9時過ぎまで帰らない夫は別の仕事場で著述の仕事をしていた。主人公は暇なのでスーパーで試食販売のバイトをしていた。そんな主人公を店頭で見てモデルクラブの女性スカウトがモデルをやらないかと誘う。スカウトから連絡があって、撮影場所へ行くと水着にさせられた。写真を次から次へと撮られた後、気がつくとヌードにさせられていた。男優が迫ってくる。真相はAV撮影だった。

このあと、毎日ルーティーンな生活をしていた主人公は一気に気持ちがふっきれた。胸元を派手に開いた大胆な洋装で渋谷へ遊びに出るようになった。そして町でナンパされた男とちょっと変わったプレイをするようになった。その男の知り合いにホテトル嬢(冨樫真)がいた。彼女の後を追いかけているうちに、実は本職が他にあることがわかる。どうやら大学で教師をやっているようだ。主人公はホテトル嬢に近づこうとするのであるが。。。


「ルアーブルの靴磨き」を見に行った時に円山町のホテル街を歩いた。見たばかりの光景だけにきわどいネオンの映像もなじみやすかった。

もうずいぶんと時間がたつが、東電OL殺人事件にはあっと驚いた。
彼女は自分より年上だが、同じ大学でだぶっている時代もあるせいか、かなり興味を持った。この題材はいろいろな小説や2時間ドラマの題材になっている。ある意味村上春樹の「1Q84」にもその影響が感じられる。女主人公青豆の友人で警察官の女性は、夜乱れる設定だ。女性の性欲というテーマがあの小説では取り上げられていた。この映画における水野美紀の役に近い気もした。
東電の彼女は冨樫真が演じる役柄のようなことをやっていたらしい。そういえば、以前彼女がストリートで客をとっていた時代の写真を見たことがある。冨樫真が派手に化粧をした顔によく似ていた気がする。そういった意味でリアリティを感じた。


爆走する神楽坂恵のテンションが高い。「冷たい熱帯魚」の時よりもかなりメインに出ている。爆乳を見せる場面も多い。どちらかというと、「にっかつポルノ」の現代バージョンという色彩が強い気がする。前作ではでんでんがかなり出演の女たちをいじくっていたが、今回男性側はホテトルの店長がメインでハチャメチャのことをやる。演じる奴がいかにもらしい感じだ。でも前作ほどのアクは強くない。園子温監督も今回はむしろ男性よりも女性の異常性にスポットライトをあてたようだ。
マーラーの交響曲第5番をその異常性が頂点に達しようとする時何度も奏でる。ヴィスコンティの究極の男色映画「ベニスで死す」でも使われたこの曲のムードが暴走する2人の異常性を強調する。

水野美紀はついに全部を脱ぎさらしてクレジットトップであるが、存在感はあまりない。彼女にハチャメチャさせたらもっと面白くなるんだろうけど、中途半端だった気がする。
冷たい熱帯魚ほどの衝撃度は正直なかった。
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