映画「そこのみにて光り輝く」を映画館で見た。
これは胸にしみるすばらしい映画だった。
おそらく本年屈指の名作と評価されるはずである。
何よりすごいのが菅田将暉である。悪いけど綾野剛よりも断然いい。
池脇千鶴は社会の底辺を生きていく女になりきる。大胆な演技で八方塞がりのつらい状況を表現する。
姉弟の活躍で影が薄いが、世を捨てた流れ者を演じた綾野も悪くはない。
佐藤泰志の原作では以前「海炭市叙景」が映画化された。そんなにいい映画には思えなかった。
それもあり、期待半分で映画館に入ったが、予想以上の映画のできばえに驚く。
何より俳優の力を存分に引き出している。菅田と池脇の2人が前作から比較して格段によくなっている。これは呉美保監督の手腕だろう。
西川美和、タナダユキと日本の女流監督が実にいい仕事をしている。
今までの日本の映画史ではなかったことだ。今後に期待したい。
真夏の函館が舞台だ。
仕事を辞めて何もせずに生活していた達夫(綾野剛)は、パチンコ屋で拓児(菅田将暉)と知り合った。遊びに来いよと誘われ、拓児の家に向かう。海辺に立つ家はバラックのようで、寝たきりの父親、父親の世話をする母親、そして姉の千夏(池脇千鶴)がいた。達夫が行くと歓迎されたが、貧しさがにじみ出る家庭状況は複雑に見えた。
夜飲み歩いていた達夫が場末のスナックに酔ってたどり着いた。店のママから1人空いたからどう?と女をあてがわれる。なんと、会ったばかりの千夏であった。彼女の顔を見て思わず笑う達夫に怒り、ピンタをくらってその場は帰った。外には男が待っていた。彼女は自分の身体を売るばかりでなく、植木屋の経営者(高橋和也)の情婦になっていた。
刑務所帰りの拓児は仮釈放を受け保護観察の状態であった。植木屋に面倒見てもらった。
植木屋と姉の関係は知っていて、むしろよくしてあげてよという感じだった。
一方、達夫は以前砕石場で働いていた。現場で発破の処理に失敗し、部下をなくして仕事をやめていた。
今達夫のところには、以前お世話になった土木会社の上役(火野正平)がもう一度一緒にやろうといい訪ねてきていたが、その気にはなれなかった。千夏を怒らせたことに反省した達夫はあやまりに行く。最初は相手にされなかったが、元々達夫に好意を持っていた千夏は機嫌を直し急接近する。
千夏は腐れ縁を断ち切ろうと植木屋と別れようと試みるが、植木屋はしつこく追いかけてくる。
そこから植木屋、千夏、達夫、拓児の関係が複雑になっていく。。。
1.菅田将暉
酔って人を刺してしまい刑務所行きを経験、今は保護観察処分となり、植木屋を手伝っている。
茶髪のあんちゃんだ。社会の底辺で育っているが、屈託なく人と接する。実にテンションが高い。
テレビ「傷だらけの天使」で水谷豊が演じたアキラのイメージが近い。こういう短慮な男は東映ヤクザ映画路線にはいくらでもいる。でも高倉健演じた「人生劇場 飛車角」の弟分ほど強くない。本当の下っ端だ。
そういう役がうまい。前作「共喰い」よりも明らかにパワーアップしている。
2.池脇千鶴
あの可愛かったリハウスガールがずいぶん大人になったなあという印象だ。
肌を見せると、身体にうっすら脂がのっている。
綾野と濡れ場があるが、むしろブラジャー姿でいる方がエロスを感じさせる。
もちろんきっちりバストトップを見せてくれたことには感動
「凶悪」の記者の妻役も難しい役だったが、今回は社会の底辺を彷徨う役だ。
難しい役をうまくこなしている。
3.函館
セリフには函館という地名は出てこない。
市電やネオンきらめく繁華街、海に向ってなだらかな坂になっている地形など
映像を見ればここは函館と物語っている。
北海道経済の停滞もあり、高層ビルが立ち並ぶところではない。
そのため、この映画の時代設定はいか様にもとれる。現代、昭和どちらとしても不自然さはない。
祭りの場面では花火がきれいに打ちあがる。以前映画「八日目の蝉」では、小豆島の祭りの場面を
映し出していたが、異様に長かった。それなので時間オーバーの感を持ったが、ここでは簡潔だ。
池脇千鶴演じる女の子が売春するちょんの間がある。
飲み屋の奥で客と売春行為にいたるパターンは昔の青線と同じ。警察の取締りでかなり減っているのではないか?
地方都市には今でも残っているのであろうか?
4.呉美保監督の演出
彼女の作品をはじめて見た。
呉美保監督は間の取り方がうまい。カットの連続で映画を成立させるのではなく、ゆっくりとあせらず芝居をさせる。先ほど日本に優秀な女流監督が増えたという話をした。いずれも共通する。
綾野、池脇2人の濡れ場もにっかつポルノを思わせる間合いで演じている。
この映画では「長まわし」になるケースが多い。長まわしが多い映画では、放映時間が2時間半程度に延びすぎることがある。でも2時間以内にまとめる。それは映画の構図がしっかりできているのと編集の巧さによるのであろう。映像作りの巧みさで今後が楽しみだ。
5.佐藤泰志
文学賞の候補に何度も名を連ねたのに日の目を見なかった。
自殺してしまうのは非常に残念だ。普通2作も映画の原作になるなんてことはそうあるものではない。かわいそうだなあ。
(参考作品)
これは胸にしみるすばらしい映画だった。
おそらく本年屈指の名作と評価されるはずである。
何よりすごいのが菅田将暉である。悪いけど綾野剛よりも断然いい。
池脇千鶴は社会の底辺を生きていく女になりきる。大胆な演技で八方塞がりのつらい状況を表現する。
姉弟の活躍で影が薄いが、世を捨てた流れ者を演じた綾野も悪くはない。
佐藤泰志の原作では以前「海炭市叙景」が映画化された。そんなにいい映画には思えなかった。
それもあり、期待半分で映画館に入ったが、予想以上の映画のできばえに驚く。
何より俳優の力を存分に引き出している。菅田と池脇の2人が前作から比較して格段によくなっている。これは呉美保監督の手腕だろう。
西川美和、タナダユキと日本の女流監督が実にいい仕事をしている。
今までの日本の映画史ではなかったことだ。今後に期待したい。
真夏の函館が舞台だ。
仕事を辞めて何もせずに生活していた達夫(綾野剛)は、パチンコ屋で拓児(菅田将暉)と知り合った。遊びに来いよと誘われ、拓児の家に向かう。海辺に立つ家はバラックのようで、寝たきりの父親、父親の世話をする母親、そして姉の千夏(池脇千鶴)がいた。達夫が行くと歓迎されたが、貧しさがにじみ出る家庭状況は複雑に見えた。
夜飲み歩いていた達夫が場末のスナックに酔ってたどり着いた。店のママから1人空いたからどう?と女をあてがわれる。なんと、会ったばかりの千夏であった。彼女の顔を見て思わず笑う達夫に怒り、ピンタをくらってその場は帰った。外には男が待っていた。彼女は自分の身体を売るばかりでなく、植木屋の経営者(高橋和也)の情婦になっていた。
刑務所帰りの拓児は仮釈放を受け保護観察の状態であった。植木屋に面倒見てもらった。
植木屋と姉の関係は知っていて、むしろよくしてあげてよという感じだった。
一方、達夫は以前砕石場で働いていた。現場で発破の処理に失敗し、部下をなくして仕事をやめていた。
今達夫のところには、以前お世話になった土木会社の上役(火野正平)がもう一度一緒にやろうといい訪ねてきていたが、その気にはなれなかった。千夏を怒らせたことに反省した達夫はあやまりに行く。最初は相手にされなかったが、元々達夫に好意を持っていた千夏は機嫌を直し急接近する。
千夏は腐れ縁を断ち切ろうと植木屋と別れようと試みるが、植木屋はしつこく追いかけてくる。
そこから植木屋、千夏、達夫、拓児の関係が複雑になっていく。。。
1.菅田将暉
酔って人を刺してしまい刑務所行きを経験、今は保護観察処分となり、植木屋を手伝っている。
茶髪のあんちゃんだ。社会の底辺で育っているが、屈託なく人と接する。実にテンションが高い。
テレビ「傷だらけの天使」で水谷豊が演じたアキラのイメージが近い。こういう短慮な男は東映ヤクザ映画路線にはいくらでもいる。でも高倉健演じた「人生劇場 飛車角」の弟分ほど強くない。本当の下っ端だ。
そういう役がうまい。前作「共喰い」よりも明らかにパワーアップしている。
2.池脇千鶴
あの可愛かったリハウスガールがずいぶん大人になったなあという印象だ。
肌を見せると、身体にうっすら脂がのっている。
綾野と濡れ場があるが、むしろブラジャー姿でいる方がエロスを感じさせる。
もちろんきっちりバストトップを見せてくれたことには感動
「凶悪」の記者の妻役も難しい役だったが、今回は社会の底辺を彷徨う役だ。
難しい役をうまくこなしている。
3.函館
セリフには函館という地名は出てこない。
市電やネオンきらめく繁華街、海に向ってなだらかな坂になっている地形など
映像を見ればここは函館と物語っている。
北海道経済の停滞もあり、高層ビルが立ち並ぶところではない。
そのため、この映画の時代設定はいか様にもとれる。現代、昭和どちらとしても不自然さはない。
祭りの場面では花火がきれいに打ちあがる。以前映画「八日目の蝉」では、小豆島の祭りの場面を
映し出していたが、異様に長かった。それなので時間オーバーの感を持ったが、ここでは簡潔だ。
池脇千鶴演じる女の子が売春するちょんの間がある。
飲み屋の奥で客と売春行為にいたるパターンは昔の青線と同じ。警察の取締りでかなり減っているのではないか?
地方都市には今でも残っているのであろうか?
4.呉美保監督の演出
彼女の作品をはじめて見た。
呉美保監督は間の取り方がうまい。カットの連続で映画を成立させるのではなく、ゆっくりとあせらず芝居をさせる。先ほど日本に優秀な女流監督が増えたという話をした。いずれも共通する。
綾野、池脇2人の濡れ場もにっかつポルノを思わせる間合いで演じている。
この映画では「長まわし」になるケースが多い。長まわしが多い映画では、放映時間が2時間半程度に延びすぎることがある。でも2時間以内にまとめる。それは映画の構図がしっかりできているのと編集の巧さによるのであろう。映像作りの巧みさで今後が楽しみだ。
5.佐藤泰志
文学賞の候補に何度も名を連ねたのに日の目を見なかった。
自殺してしまうのは非常に残念だ。普通2作も映画の原作になるなんてことはそうあるものではない。かわいそうだなあ。
(参考作品)
そこのみにて光輝く | |
ジーンと胸に響く恋 | |
オカンの嫁入り | |
呉美保監督作品 | |