映画「ウェストサイドストーリー」を映画館で観てきました。
1961年の名作
「ウエストサイドストーリー」を
スティーブンスピルバーグ監督がリメイクした新作がようやく公開された。もちろん字幕版で観た。巨匠スピルバーグもこの作品に憧れみたいなものもっていたのかな?生きているうちにつくりたかったんだろう。
シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」を基調にして作られたストーリーはあまりにも有名であるので、ネタバレも問題ないだろう。
1950年代後半のマンハッタンのウェストサイドでは、ポーランド移民とプエルトリコ移民の不良グループが縄張り争いをしていた。中立エリアでのダンスパーティでポーランド系のトニー(アンセルエルゴート)とプエルトリコ系のマリア(レイチェルゼグラー)がお互い一目惚れで恋に落ちる。争いに決着をつける決闘が決行され、トニーが止めようと向かったが、逆に争いに巻き込まれてしまうという話である。オリジナルストーリーの基調と
レナードバーンスタイン作曲の音楽は変わらない。でも、
進化した新作が生まれる。
繰り広げられるダンスには圧倒された。本当にすごい!
前半から
スピルバーグは飛ばす。まだ幼児で1961年の作品はリアルで観ていないが、その後映画館の大画面で迫力たっぷりの完璧なダンスを堪能している。そんな名作を受けた本作は、
前作をさらにボリュームアップしたダンスで気分を高揚させる。
ものすごい躍動感である。しかも、衣装や美術も
色彩感覚にすぐれ、カラフルなドレスを身にまとった女性陣の動きはこんなの観たことないと思わせる凄みがあった。
⒈ダンス会場での出会い
プエルトリコの移民である
マリアは自分の兄ベルナルドとその恋人アニータと一緒にダンスパーティに向かう。
プエルトリコのシャーク団の仲間だけでなく、ポーランドのジェット団の連中も来ている。まだ若いマリアにとっては晴れ舞台である。ダンスフロアでは、双方がペアでまちまちに
マンボダンスを踊っている。
動きに隙のないテクニックでピタッと決まっている。前作でも、このダンスはすごかった。これぞ完璧なダンスだと思ったものだ。
今回は一段とボリュームアップした印象を受ける。
カラフルなドレスでより躍動的だ。圧倒的なダンスシーンが続くうちに、
トニーとマリアが目をあわせる。お互いビビっとくるのだ。そして、
恋のはじめのときめきを得た2人の恋がはじまる。むしろマリアの方がみずからキスをして積極的だ。常夏の島で育ったマリアの情熱を感じさせる。
⒉トゥナイト
1961年の前作で
ナタリーウッド演じるマリアが夜トニーと落ち合い、
アパートの階段で「トゥナイト」を歌うシーンは映画史上で最も好きなシーンの一つである。マリアがレナードバーンスタインのオーケストラに合わせて
歌い始める場面はいつ見ても背筋がゾクゾクしてしまう。ナタリーウッドは自ら歌っていないという有名な話があってもどうでもいいことだ。
「ウエストサイドストーリー」予告編で、
レイチェルゼグラー演じるマリアがゆったり
「トゥナイト」を歌うので、少し違った感じかな?と思ったら、基調は同じだった。新作でも
マリアの歌声で背筋に電流が走った。座席の斜め前の若い男性が歌に合わせて身体の動きが変化するのがよくわかる。ただ、2人を映すカメラワークにちょっと疑問、マリアの顔が階段にかぶさってしまうのはちょっとどうかな?それでも
3万人の俳優から選ばれたレイチェルゼグラーの歌唱力は抜群だった。
⒊アメリカ
「アメリカ」で踊るダンスが映画のピークかもしれない。前作でも
ジョージチャキリスとリタモレノを中心に盛り上がった場面である。スタジオでのダンスと思われるが、今回は大挙して一気にアウトサイドに飛び出し踊りまくる。そこでリードを取るのは
マリアの兄ベルナルドの恋人アニータだ。演じる
アリアナ・デボーズは
エキゾチックな雰囲気をもった色っぽい女性だ。周囲は
カラフルなドレスを着た女性が躍動的なダンスを踊っている。ビシッと決まっていて、動きにスキがない。こんなダンスは見たことがない。
アリアナデボーズの
アカデミー賞助演女優賞は当確に思える。
⒋ジョージチャキリスとリタモレノ
小学校の頃、映画
「ウエストサイドストーリー」がたびたびロードショーで公開されていた記憶がある。洋画好きの父はミュージカルには関心がなく、連れていってもらえなかった。街に貼ってある映画紹介のポスターでは
男性ダンサーが大きく足を上げている写真が写っていた。てっきりあのダンサーが主人公かと思っていた。なぜなら雑誌などの
「ウエストサイドストーリー」の記事で紹介されるのは、
ジョージチャキリスの写真だったからだ。ようやく映画を観ることができたのは大学生になった後かもしれない。
今回
ベルナルドはジョージチャキリスと比較すると、
ワイルドな中米系の顔をした俳優が演じている。前作では、プエルトリコ側は普通の白人が若干黒く見えるメイクをしていた。当時
リタモレノはプエルトリコ出身だけど、よりらしく見えるメイクをしていた。
リメイクをするにあたり、
スティーブンスピルバーグは
ピュアなヒスパニックメンバーを集める。顔つきがちがう。スペイン語が飛び交うのは前回には見られない。よりリアルに移民生活であることを示す。人種差別が顕著に見えた時代と異なり、
ダイバーシティ(多様性)が尊重される現代にあい成功している。
今は便利な世の中で、ウエストサイドストーリーの重要シーンがYouTubeで見ることができる。そこで見られる
ジョージチャキリスとリタモレノのダンスはビシッと決まっていてすばらしい。新作でもう一度
リタモレノを登場させるのはすごい。
ドラッグストアの老いた女性店主を90近い年齢で演じる。これが効いている。
今のご時世で考えると、こんな不良グループの争いというのはちょっと考えづらいかもしれない。
こんなバカな決闘をする奴はいないだろう。しかも、前作の原型を保ったストーリーは
後半に向かって高揚感が急激に失速する。なんか寂しい気持ちになってくる。それでも、この新作で株を上げた若手メンバーの活躍を引き出した
スティーブンスピルバーグの手腕はさすがとしかいいようにない。