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映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「フラッグデイ」 ショーンペン

2022-12-26 18:34:08 | 映画(洋画 2022年以降主演女性)
映画「フラッグデイ」を映画館で観てきました。


映画「フラッグデイ」はアカデミー賞主演男優賞を2度も受賞した俳優ショーンペン監督の新作である。自ら犯罪者を演じている。ショーンペンは監督作も出演作も自分の好きな映画が多い。今回監督作は久しぶりだが、「リコリスピザ」や「博士と狂人」といった最新出演作も観ている。その中でショーンペンは独特の存在感を示す。予告編でどうやら犯罪者の役というのはつかめた。意外にも評価は高くないけれども、すぐさま映画館に向かう。

当初の予想と異なり、この映画でショーンペンが主演ではない。娘ジェニファー(ディランペン)の視点で話が展開する。子どもの頃から可愛がってくれた父親ジョン(ショーンペン)は普段は家にいないで、たまに帰ってくるだけだ。母親は夫をワルだと信用していない。


父親が悪さをして警察に捕まると、別々に暮らすようになる。しかし、娘ジェニファーと継父との折り合いが悪く、ジェニファーは家を飛び出しジョンの元にいったん行く。もともと父親への愛情に満ちていたのだ。ただ、長くは同居できない。ジョンはいつでも悪事の企てが脳裏にあった。一方で娘は猛勉強してジャーナリストへの道を歩もうとしているが。


映画の性質上おもしろいという作品ではない。でも、いかにもショーンペンらしいセンスある映像の作り方だと思う。好感がもてる。
ロケハンをきっちりやっているなあという風景美とバックミュージックを選択する抜群のセンスはプリッジイントゥザワイルドなどのショーンペン監督作品に共通する。いつも通りでいい。

しかも、こういう悪のダメ男を演じると、ショーンペンは実にうまい。虚言癖があり、ウソをウソで埋めようとして、ニッチもさっちもいかない男だ。犯罪者に多いタイプで、典型的な詐欺師の要素もある。それでも、身内には特別な愛情を持っている。そんな奴って身近にもいる。


そんな男だとわかっていても、娘は完全には父親を見捨てられない。そのあたりの微妙な心境が映像で伝わる。娘の辛い立場それ自体は哀しい。娘役がショーンペンの実娘ディランペンだというのは映画を観終わり初めて知った。母親ロビンライト譲りの美貌である。

この映画は予告編では事件が起きはじめて娘が知ったようなつくりかたをしているが違う。でも、かえって自分にはよく見えたし、複雑な家庭環境だったジェニファーを見事にディランペンは演じたと言って良い。
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映画「ザリガニの鳴くところ」デイジー・エドガー=ジョーンズ

2022-11-26 20:02:21 | 映画(洋画 2022年以降主演女性)
映画「ザリガニの鳴くところ」を映画館で観てきました。


映画「ザリガニの鳴くところ」は動物学者ディーリア・オーエンズの書いたベストセラー小説をオリビアニューマン監督で映画化した作品である。当然原作は未読。リース・ウィザーススプーンが原作を読んで感激して、プロデューサーをかって出たという。予告編で若い女性の冤罪物語だと推測した。著名な出演者は出ていないが、舞台となる湿地帯を映し出す景色がきれいでオーソドックスなアメリカ映画という印象をもつ。

ミステリー仕立てのラブストーリーである。
予想よりおもしろかった。2時間以上映像に目が釘付けになる。飽きない。背景となる水辺の景色が美的感覚に優れ、音楽のセンスも抜群だ。カイアという野生の少女に焦点をあてたストーリーだが、法廷劇の要素ももつ。この映画は予備知識なしで観たい。

ノースカロライナ州の湿地帯で、若い男性チェイス(ハリス・ディキンソン)が死体で発見される。水辺の小屋に1人住むカイア(デイジー・エドガー=ジョーンズ)が殺人犯として逮捕された。少女時代のカイアはDVの父親に耐えかね母親や兄が家を飛び出したにも関わらず、父親と2人暮らしていた。学校にも行かず文盲で、雑貨屋の黒人夫婦だけがカイアの味方だった。そのうち、父親も飛び出して小屋で1人で暮らしていた。


エビ漁師の息子テイト(テイラー・ジョン・スミス)がカイアに好意を持ち、字も読めないカイアにABCから勉強を教えた。結局のところ、大学進学することになったテイトは町を出て行くが、湿地帯の生物を観察してスケッチブックにまとめたものは編集者にウケて金になるよと教える。その後、町の有力者の息子チェイスと知り合う。チェイスはデートに誘い、徐々に孤独な少女に近づいていったのだ。

そんなチェイスが死体で発見されて、カイアが関係しているとされる証拠品などで、犯人と特定された。もはや無期刑か死刑かという崖っぷちになった時に、老弁護士がカイアの弁護に立つ。

⒈学校に行かない野生の少女
町からは離れた湿地帯の水辺の小屋に、両親や兄姉と住んでいた。父親が面白くないとすぐ暴力を振るう。母親をはじめとしてみんな嫌気がさして家を出て行くのにカイアはとどまる。父親から学校には行くなと言われるが、町の人の勧めで授業を受けると、クラスメイトからバカにされて1日で登校拒否だ。字も読めないし、買い物をしてもおつりの計算もできない。そんな中、父親まで家を出て行く。

1人になったカイアは貝を獲り、それを町の雑貨屋で売って生計をたてる。町の福祉課は1人暮らしのカイアをグループホームに入れようとするが、ひたすら逃げ回るのだ。そんなカイアを見るに見かねて、テイトという青年が勉強を教えると同時に、カイアが湿地帯の生態系をよく観察しているのに注目して、その能力を伸ばそうとする。2人の間に恋が芽生えて行く。


孤独な野生の少女の成長と恋の物語でもある。人嫌いの少女が心を許しても、うまくいかない。そんなストーリーを織り交ぜる。そのストーリーのバックには美しい湿地帯の景色が映し出されて目の保養になる。ロケ地はニューオリンズだという。映画を観ながら、ハンフリーボガードの「アフリカの女王」を連想する。ロケハンに成功していると言えよう。


⒉ミステリー要素と法廷劇
死体が発見されたのは、カイアの家の近くの物見櫓(やぐら)のそばだ。そこからは指紋は発見されていない。近くに足跡もない。物見櫓の屋上からチェイスが落ちたとも推定できる。検察側の追及とそれをかわそうとする弁護側の対決は、一級の法廷劇を観ているようでおもしろい。

必ずしも被告側に有利になる証言が多いわけではない。当日、カイアが書いた生態系に関する本の編集者に会うためバスで街を離れていたアリバイもある。でも、その気になれば、とんぼ返りで戻れば殺人を犯すこともできるという検察側の指摘もあるのだ。最後まで目が離せない。


そんなおもしろい展開が続いた結果は言わぬが花だろう。でも、最後の最後にアレ?と驚かせるシーンには一瞬これってどういうことかと思わせる。さすがベストセラーだけのことはあると感じる。
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映画「ドント・ウォーリー・ダーリン」 オリヴィアワイルド& フローレンス・ピュー

2022-11-19 05:04:06 | 映画(洋画 2022年以降主演女性)
映画「ドント・ウォーリー・ダーリン」を映画館で観てきました。


映画「ドントウォーリーダーリン」は悪夢と現実が交差するサイコスリラー映画である。オリヴィアワイルド監督の作品、名前を聞いてもピンと来なかったが、エンディングロールで出演者と監督の名前が一致していることに初めて気づく。「え!誰」と作品情報を見直して、主人公と仲良しの女性とわかる。映画を観ながら、この女性は観たことあると思っていた女性だった。

オリヴィアワイルドの履歴を見ると、クリントイーストウッド作品「リチャードジュエル」で主人公を陥れようとする女性新聞記者を演じていた。あの時はストーリーのカギになる女の役柄だったけど、むちゃくちゃ嫌な女をうまく演じていた。キャスティングのうまいイーストウッドらしいなと思っていた。他にも自分の好きな「ラッシュ」などでいい女役を演じていて、顔を見たことがあると思う人は多いと思う。


オリヴィアワイルドによるこの映画の感想を書くのは難しい。観終わってしばらくしてもストーリーの全容がまだ理解できていない。ゴールデンエイジ時代の幸せなカップルに焦点をあてる。ヤシの木が道路に立ち並ぶヴィクトリアという郊外の美しい街で、同じ仕事に従事して鮮やかな色のアメ車で通勤する夫とそれを支える家族が暮らしている。リッチな感じだ。


50年代を思わせるアメリカの家庭を映す映像は、ヴィジュアルセンスあふれるアメリカ映画の優秀なスタッフを集めた結晶によるものではないか。衣装、美術、インテリアを含めて美的感覚にあふれた映像だ。色合いもいい。エスターウィリアムズ「百万ドルの人魚」を水上からダンスフロアに移したような映像も含めて、名作からの引用的な映像もある。オリヴィアワイルドの映画的センスを感じる。

誰も彼もが幸せムードたっぷりの中で、「何かおかしい?」と感じる若き美人妻アリスのヒロインの不安をクローズアップする。ラブラブなはずの夫ジャックの動きも途中からおかしくなる。周囲もこの仲間たちを仕切るリーダー(クリスパイン)もどこか変だ。妙な展開が続く。Netflix「イカゲーム」にでてくるピンクの服装の不気味なスタッフのような集団も登場する。これって新興宗教扱った映画なの?と一時思った。類したテイストもある。


でも、正直ついていけなかった。
夢と現実が交差する映像はデイヴィッドリンチ監督が得意な世界だけど、それとは違うものを感じた。デイヴィッドリンチ作品は常にどんより陰だけど、この映画陰と陽のコントラストが強い

ヴォリューム感あふれるピチピチの主人公アリスを演じたフローレンス・ピューは、今の日本の女優にはいないタイプで、スッピンの映画ポスターよりもずっといい女だ。ジャックとの大胆なからみは脱いでいないのにエロチックだ。その主人公とクールビューティたちでつくる映像は日本映画で作るのは不可能と思われる映像美だと思う。視覚、聴覚だけは楽しめたが、意味は未だよく理解できていない。
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Netflix映画「グッドナース」ジェシカ・チャステイン&エディ・レッドメイン

2022-10-31 20:20:47 | 映画(洋画 2022年以降主演女性)
「グッドナース」は2022年日本公開のNetflix映画


Netflix映画「グッドナース」は医療事故の実話に基づく作品。ジェシカ・チャステインとエディ・レッドメインの演技派2人の主演である。巧者2人の演技合戦で恐怖感を盛り上げる。ただ、ケチってロードショーに行かず、Netflixで見てしまったのは失敗だった。自分は映画館原理主義者ではないが、映画館でこの緊張感を味わった方が良かったと思わず反省する。

病院の緊急治療室の看護師エイミー(ジェシカチャスティン)は、子持ちのシングルマザーだ。自らも心臓疾患を患っているのを隠して重病患者に向き合う。その病院に新しい看護師チャーリー(エディレッドメイン)が加わってきた。やさしく接するチャーリーにエイミーの母娘とも好感をもつ。ところが、病院内で異常な急死が増え、意図的なものを感じた警察の捜査が病院に入っていく。

題材は単なる医療事故に止まらない。現代アメリカの社会事情を物語る話が含まれている。アカデミー俳優2人の演技は期待通り、怪演とも言えるエディレッドメインには恐怖感すら感じる。この恐怖感は映画館で味わうべき題材だったなあ。俳優2人で思いっきり引っ張るが、実話なので意外性には欠ける。物足りなく感じる気持ちもある。

⒈ジェシカチャスティン
前半戦は看護師エイミーの貧困事情にも焦点があてられる。心臓疾患で本当に苦しそう。心臓移植をしなければもたない。小さな娘もいる。でも、無保険者である。日本では考えられない世界だ。あと数ヶ月勤務して初めて健康保険に入れる。懐もさみしい。緊急治療で多額のお金を支払う。何度も治療費を支払う余裕がない


そんなエイミーにやさしく接してくれる看護師チャーリーが入ってきた。自分の境遇も打ち明け、家族ぐるみの付き合いをする。でも、突然死が続き、病院に捜査が入る。どうやらチャーリーがあやしい。かばおうとしても、かばいきれない。別のエビデンスがあらわになる。そういうエイミーの心理状態を映画が追っていく。

以前から追っているジェシカチャスティンなのに、念願のアカデミー賞を受賞した前作が観れていない。ネット配信のみだ。これも困ったものだ。今回も一瞬だけの公開だ。なんかおかしい!

⒉エディレッドメイン
これまでの演技歴では、怪演というべき特殊な役柄に本領を発揮する。スティーブンホーキングもうまかった。殺人鬼なのに、それらしき振る舞いはない。むしろやさしい。重篤な病気なのに、金がなく治療できないエイミーに同情する良い人だ。

それでも、エイミーが発作を起こして倒れた後で、チャーリーが面倒をみようと近づくシーンにはドッキリする。何かされてしまうのではないかと恐れる。その辺りのヒッチハイク的サイコサスペンスムードが映画の見どころである。やさしい顔をしながら、実は殺人鬼というギャップを演じる演技力にエディレッドメインの凄みを感じてしまう。
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映画「ドライビング・バニー」

2022-10-22 10:27:08 | 映画(洋画 2022年以降主演女性)
映画「ドライビング・バニー」を映画館で観てきました。


映画「ドライビングバニー」はニュージーランド映画、夫殺しで服役したあと出所して窓拭きなどでギリギリの生活をしている女が大胆な行動に踏み出す物語である。「ラストナイトインソーホー」トーマシン・マッケンジーが出演している。

バニー(エシー・デイヴィス)は渋滞している車の窓拭き掃除のチップで生計を立てている女、刑務所暮らしから出所して妹の家に居候している。実娘と別れ別れになり、ときおり面会できるが短時間で一緒に暮らせる日を楽しみにしている。


バニーがある時ガレージで妹の主人が妹の連れ子トーニャ(トーマシン・マッケンジー)に言い寄っている姿を見つけ、妹の主人に食ってかかり追い出される。そのあと、バニーはトーニャを連れて妹の家のクルマに乗って娘の誕生日を祝うために飛び出してしまうのであるが。

あまり面白くなかった。
まずはこの主人公に感情移入することができない。犯罪者にありがちで常に嘘をつく、繕っても隠しきれずバレる。それの繰り返し、娘への愛情を見せても自業自得と思わせるだけ。規範逸脱になっても仕方ないと思わせる部分があっても、ラストへの籠城場面に関してもまったく同情できない。
ロッテントマトで100%と聞き、ただただ呆れるしかない。意味不明??せっかくのマッケンジーちゃんの登場もねえ。
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映画「キュリー夫人 天才科学者の愛と情熱」ロザムンドパイク

2022-10-16 07:09:22 | 映画(洋画 2022年以降主演女性)
映画「キュリー夫人」を映画館で観てきました。


映画「キュリー夫人 天才科学者の愛と情熱」ノーベル賞を2度受賞した科学者マリキュリーの物語だ。小学生時代に子ども向けの伝記でキュリー夫人の物語を読んだことがある。最近はどうかわからないが、自分と同世代だった子どもたちは皆同じであろう。そんなキュリー夫人をロザムンド・パイクが演じているという情報を得た。「ゴーンガール」「パーフェクトケア」と自分には相性のいい女優である。

観に行こうとしたら、都内の上映館は立川だけ。まいったなあ!それでも気合いで映画館に向かう。会場内には自分より年上の老人が目だった。みんな子どもの頃にキュリー夫人の伝記を読んだクチだろう。ただ、子どもの偉人伝とは少し違う

ポーランドで育ったマリ・スクウォドフスカ(ロザムンドパイク)は才能を認められてパリのソルボンヌ大学で学ぶが、女性は彼女1人だけだった。ピエール・キュリー(サム・ライリー)の研究室を使うことになったマリはピエールと共に、ラジウムとポロニウムの2つの元素を発見して、放射能研究を進める。その功績で夫婦連名でノーベル物理学賞を受賞し、夫ピエールキュリーはソルボンヌ大学教授に昇進する。その後、夫は馬車の事故で不慮の死を遂げ失意のどん底に落ちる。それでも研究に打ち込んだマリは単独で2度目のノーベル化学賞を受賞する。

偉人キュリー夫人の意外な一面を観て驚く
そのむかし誰もがキュリー夫人の伝記を読んだ。そこで書かれているのは、自分が上記で書いた要旨であろう。ノーベル賞を2回受賞したこと、夫が馬車の事故で亡くなったことだけは記憶にある。ところが、そこに抜けていることがあった。

キュリー夫人が少数派だった女性科学者として、男性主体の権威への対抗心が強いこと。非常に性格的に激しい人で、傲慢でへそ曲がりであったこと。夫が亡くなったあと、研究者の同僚ポール・ランジュバン不倫に陥り、パリ中からパッシングを受けたことなどを知っている人は少ないであろう。この映画はロザムンドパイクの一人舞台に近い。キュリーは性格的にはイヤな女である。彼女が演じているというだけで一定以上の映画の水準は確保されている。適役だと思う。


⒈放射能研究の発展について
キュリー夫人の人生を振り返ると同時に、研究の成果として、がんの放射線治療、広島で投下された原子爆弾の話、米国内での原子爆弾投下の実験で破壊される場面やソ連のチェルノブイリ原子力発電所の事故などの映像が挿入される。

映画のセリフによると、ピエールは放射能の研究を他の人が応用することに寛容だったようだ。応用範囲は広い。ピエールは馬車の事故で亡くなった訳だが、死ぬ前から 血を吐いたり咳をしたり結核にかかっているように見受けられる。放射能の影響もあるのであろう。マリも咳をする場面が目立つ。

第一次世界大戦の時、マリは戦争で負傷した兵士が最も簡単に腕や足を失うのを知った。放射線の活用で切断するまでは悪化していないことを判断できると、レントゲンのような機械を導入せよと当局にくってかかる場面がある。そのために金の足しにとノーベル賞の純金のメダルまで差し出す。勇気ある立派な行動だ。


⒉不倫と家族
ピエールのソルボンヌ大学での助手ポール・ランジュバンについて、予備知識はなかった。調べると、物理学でかなり功績があるという。ランジュパン方程式というブラウン運動に関する確率微分方程式は見たことがある。キュリー夫妻の研究に協力してきた訳だが、ピエールの死去に落胆するマリと一気に接近してしまう。

キュリーの家に居ずっぱりで家には帰らないので、ポールの妻が心配する様子やゴシップが報道されてパリの街で後ろ指を指される姿が映画で描かれる。キュリー夫人は全く悪気がない。もっとも性的にもっとも熟している時期だったのは間違いない。周囲にゴシップが流れた直後に2回目のノーベル賞を、今度は2つの元素を発見したことによる化学賞で受賞する。それでもパリのマスコミ受けが悪かったようだ。

娘のイレーヌをアニャ・テイラー=ジョイが演じる。Netflixの「クイーンズギャンピット」や昨年の「ラストナイトインソーホー」にも出演している。両作品とも大好きだ。ただ、キュリー夫人の映画が2019年製作で先の作品だ。優秀な遺伝子は受け継がれるもので、娘イレーヌも夫婦でノーベル賞を受賞している。娘の婚約者が母親マリに結婚の許しを得ようと訪ねて尋問されるシーンもある。


マリキュリーはポーランド生まれとはいえ、フランスでの生活を描いているので英語のセリフに違和感を持ったが、どうも彼女の人生はフランスの国と相性がイマイチだった感じである。英国の俳優によりキュリー夫人が描かれるのもそういう根深い何かがありそうだ。
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映画「炎の少女チャーリー」ライアン・キーラ・アームストロング

2022-06-20 17:52:36 | 映画(洋画 2022年以降主演女性)
映画「炎の少女チャーリー」を映画館で観てきました。


映画「炎の少女チャーリー」スティーヴンキングの原作「fire starter」の映画化である。1980年にドリューバリモア主演で公開された同じ題名の作品のリメイクである。前作は観ていない。ITツールを使い現代風に設定を変えている部分はあるが、世界的な超能力ブームになった頃の70年代B級映画の匂いがプンプンする。

少女は自ら発火する超能力をもっている。少し古いが、口から火を吹いているプロレスのザ・シークを連想する。想像していたよりもホラーやスリラーといった観客をびっくりさせる要素は少ない。

アンディ(ザック・エフロン)とヴィッキー(シドニー・レモン)には、生まれながらに不思議な能力を持つチャーリー(ライアン・キーラ・アームストロング)という娘がいた。彼女が成長するにつれ、その能力は覚醒し始め、多感な10代を迎える頃には、感情の揺らぎに呼応するようにチャーリー自身もコントロールできないパワーへと変化していた。父親アンディはその能力を懸命に隠し続けようとしたが、政府の秘密組織“ザ・ショップ”はついにチャーリーの存在に気づくのであるが。。(作品情報 引用)


超能力系スリラーをロードショーで観ることはめったにない。少女が際立った能力を持つという設定が気になり、他の映画を差し置いて勢いで観てしまったといったところだ。学校で少し変わっているキモい子と見られている子が、男の子にドッジボールでぶつけられたことに腹を立てて、トイレにこもる。慌てて担任がトイレに様子を見に行くと、その怒りが爆発してトイレのドアを破壊するシーンからチャーリーの炎が炸裂する。


このあとは、チャーリーことライアン・キーラ・アームストロングの独壇場だ。B級キャラクターヒーローを観ているような雰囲気で、立ち向かうところ敵なしだ。動物から人間まで次々に火に包む。炎を発する前の苦味をもった表情が脳裏に残る。アメコミ系のクロエ・グレース・モレッツ「キックアス」のような展開も予測したが、チャーリーには炎に包むという強い武器があり、ちょっと違う。結果的にはごくふつうの域を超えないB級映画。こういう少女が大暴れするこういう映画を見て、ふつうの小学生はどう思うのかな?大人より子どもが喜びそう
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映画「帰らない日曜日」

2022-06-01 18:46:26 | 映画(洋画 2022年以降主演女性)
映画「帰らない日曜日」を映画館で観てきました。


映画「帰らない日曜日」は原題「mothering Sunday」の小説の映画化である。3月の日曜日にメイドが帰京することを許される日がmothering Sundayである。15禁映画で主演のオデッサヤングがバッチリ脱ぐが、名優コリンファースとオリヴィアコールマンが脇を固める。この2人の存在感は強い。

栄誉ある文学賞の受賞作家が,若き日にメイドだった1924年に身分の違う名家の御曹司と戯れる一日を描いている。いくつかの過去の時代の時制が激しく交差する。


緑あふれる草原の中に建つお屋敷が印象的な英国風の上質な肌あいを持つ映画である。ただ、シーンごとに時間が激しく移り変わるので,頭が混乱する。わかりづらい映画だ。ようやく時間が経って頭が整理されていくが,正直自分には合わない映画であった。


15禁映画なので、濡れ場がいくつかあると予測された。階級社会英国で高貴な人がメイドに手を出すという展開はいかにもどこかで既視感がある。いくつか意外な展開を示してストーリーの起伏をつくる。でも、大して驚くほどではない。2人の営みは激しい絡みというわけではない。ただ、だらんとした男のぺ◯スが何度も映像になるのには驚く。主人公オデッサヤングが全裸で書斎の中を歩き回る絵はきれいだけど、それだけだなあ。

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映画「ベルイマン島にて」ティムロス&ヴィッキークリーブス&ミア・ワシコウスカ

2022-04-27 05:00:19 | 映画(洋画 2022年以降主演女性)

映画「ベルイマン島にて」を映画館で観てきました。


「ベルイマン島にて」は映画監督の夫婦が、構想を得ようとスウェーデンの名匠イングリッドベルイマンが晩年過ごした島に行った日々を描く.。「未来よこんにちは」のミアハンセン-ラブ監督の作品である。名脇役ティムロスが夫で、ファントムスレッドでの好演が光るヴィッキークリーブスが妻役である。「映画の中の映画」の手法での妻が構想するストーリーでは、久々にミア・ワシコウスカが主演となる。予告編で観たとき、島の雰囲気がよく見えて、出演者も自分とあいそうなので、映画館に向かう。

クリス(ヴィッキークリーブス)とトニー(ティムロス)は倦怠期に入ったともに映画監督の夫婦である。新作の構想を得ようとアメリカからはるばるスウェーデンの孤島フォーレ島に向かう。名監督イングマールベルイマンが晩年過ごした静かな島で、クリスは脚本を書いていく。そこでは若き日の自分にダブらせたエイミー(ミアワシコウスカ)が友人の結婚式に参列したときに昔の恋人ヨセフに再会して復活の恋によろめく話である。


実はそれほど期待せずに観に行った映画だった。逆の意味で裏切られた肌合いの良い作品である。
倦怠期に入った映画監督の夫婦の会話は大したことない。普通だ。それが、妻が構想した自分の恋を基調にした脚本が映像になってきて、物語が一つ増える。ストーリーはビックリするような話ではないけど、この島で執り行われる結婚式やその後のパーティーのシーンのもつ雰囲気もいい感じで、恋に揺れるミアワシコウスカが次第に大胆になっていく姿とその後に現実と虚実を交錯させる展開が良いと思った。

一生行くことはないであろうスウェーデンの離島は、湖と思うくらい波の少ない海や海岸べりの風景がきれい。それよりも、ここまで見どころがあるのかと思うくらいポツリと建っている特徴のあるいくつかの建物が魅力的だ。風車もある。暖房効率を気にしてか大屋根の家が多い。自転車で島を走るシーンを観ながら、この独特の空気に身を包むと快感を覚える。


⒈イングマールベルイマン
ベルイマンの映画を難解と思って好きでない人でもこの映画はすっと入っていけるはずである。50年も前の話だが、1961年処女の泉、1962年野いちごで2年連続キネマ旬報ベストテンの1位である。その翌年に死神とチェスをする名場面がある「第七の封印」がノミネートされているが、「アラビアのロレンス」という超名作がトップなので6位にとどまる。日本でも当時の知識人たちに圧倒的に支持されている。

ベルイマン島と言われるだけに、イングマールベルイマンの住んでいた家が残っていたり、記念館と思しき場所でベルイマン作品が上映される。本棚が壁を埋め尽くしている海を見渡す書斎にはあっと驚く。処女の泉」や「第七の封印」には強い宗教的な要素を感じるが、野いちご悪夢のような夢と現実が交錯する物語である。今回、「映画の中の映画」の手法を用いているので、若干通じる要素がある。


⒉ミアワシコウスカとヴィッキークリーブス
ダニエルデイルイスの引退作ファントムスレッドでダニエルと対等に渡りあいヴィッキークリーブスはすごいなあと思った。映画を観ながら、気づくのに時間がかかった。最初は淡々とティムロスと倦怠期に入った夫婦を演じているだけと思ったら、後半戦で本領を発揮する。いい感じだ。

ミアワシコウスカはある意味一世を風靡したといっても良いかもしれない。イノセントガーデン」「永遠のぼくたち」など10年近く前にずいぶんと彼女の映画観たなあ。でも、最近見ない。どうしたんだろう。昔の恋人に出会い、心が揺れる恋のときめきをうまく演じている。ボリューム感のないスレンダーなかわいいバストトップも見せてくれて大サービスだ。


⒊ティナチャールズ
予告編の時に、往年のディスコ系で聞いたことのある曲がバックで使われているのに気づく。とっさに題名が浮かばない。映画館に入って場内でその曲が流れる。アレ?と思う。映画では結婚式の二次会的なパーティーで流れてミアワシコウスカが元カレと踊り出す。しばらくして曲のバックのリズムで思い出す。そうだ、歌っているのはティナチャールズだ。

ずっと流行っていた歌手でない。日本では「恋のレディダンス」という曲が1977年のディスコティックで流れていた。再上映された「サタデーナイトフィーバー」の前年である。そのあと、化粧品のCMソングティナチャールズが歌っている。東京女学館の夏目雅子がスターダムに駆け上がる「クッキーフェイス」を歌っていたのだ。まあ、こんなことみんな忘れてるだろう。


そのティナチャールズの英国におけるヒット曲が流れているわけだ。ウキウキするのは当然だ。でも、この映画の選曲は絶妙だね。

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Netflix映画「ロストドーター」 オリヴィアコールマン&マギーギレンホール

2022-03-20 21:50:30 | 映画(洋画 2022年以降主演女性)
映画「ロストドーター」はNetflix映画


「ロストドーター」はオスカー女優オリヴィアコールマン主演のNetflix映画だ。今年のアカデミー賞に3部門でノミネートした作品ということで気になったのでピックアップする。女優のマギーギレンホールが監督でダコタジョンソン、エドハリス、ピーターサースガードなど脇はそれなりの俳優をそろえている。先入観なしに映画を観てみる。ギリシャの避暑地での出来事の設定となっているがそれらしき固有名詞はでてこない。

避暑地の海辺のコテージで静養している女性大学教授リダ(オリヴィアコールマン)が、現地のビーチサイドで出会った子連れ家族を見ながら自分の育児体験を回想し感慨にふける話である。


バカンス地の話でも優雅な部分はなく、暗い展開だ。サイコサスペンスの様相を呈している。主人公が若き日に育児ノイローゼにかかった経験の映像と旅行先で出会った母娘に関わりをもつ主人公の姿を交差させる。不思議な肌合いをもつ作品で、緊迫感が伝わる。主演と助演がオスカー候補になるのは理解できる作品だ。どちらかいうと、子どもを育てる女性から共感を得ようとする映画なのかなあ。

⒈回想
現地に着き、主人公リダは早速ビーチサイドで日光浴をする。すると、アメリカから来た大家族がすぐ横に来る。場所を移してくれないかといったり、うっとうしい家族だ。そうしているうちに、幼い娘の行方が一瞬わからなくなる。周囲は大騒ぎで、みんなで探すが見つからない。探す場面にダブってくる映像がある。アレ?こんな女の人大家族の中にいたっけかな?と一瞬思うとそれはリダの若き日だった。ジェシー・バックリーが演じる。


ジェシー・バックリーアカデミー賞助演女優賞にノミネートされている。洒落っ気のない感じの母親で、2人の娘を扱うのに精一杯だ。髪の毛のセットも整えていないままで、家事と学問の道の両天秤に右往左往する。日常に疲れ果て夫と違う学者との恋に狂う。役柄に没頭していて実にジェシー・バックリーは上手い。ノミネートは納得という名演である。


⒉育児ノイローゼ
避暑地の海岸に現れたアメリカ人家族は、雰囲気も尋常じゃない裏社会からみのような雰囲気を持つ。やたらにリダに絡む少女の叔母もいる。そんな家族の中に5歳前後と思しき人形を抱えている女の子がいる。でも、母親(ダコタジョンソン)は子育てに嫌気がさしているようだ。子どもはほったらかしている。



そうしているうちに娘が行方不明になる。大慌てでみんなで探すが、結局見つけるのはリダだ。でも、子どもが大事に持っていた人形はリダがこっそり持ち帰るのだ。その人形がこの映画のストーリーの行方に影響を与える。

一方で、同じように育児ノイローゼになっていた20年ほど前のリダを映し出す。2人の娘の片方が特にめんどくさい。自分で自分を傷つける自傷行為の性向がある。一方で大学で比較文学を専攻しているリダは、学問の世界で認められようと必死だ。泣き止まず面倒な娘を扱うのに難儀した上で、夫をさておいて学者(ピーター・サースガード)とのよからぬ恋にふけっていこうとする。


情熱的な若き日のリダの行動は支離滅裂だ。情緒不安定な母親でまさに育児放棄状態だ。オリビアコールマン演じる現在のリダが、その昔の自分を現地で出会った育児ノイローゼの若き母親にダブらせる。実は殺人とか大きな事件が起きてもおかしくないような、不安心理が今のリダを覆う。そして、不穏な動きを取り続けていく。そのあたりをサイコサスペンス風に描いて、まずまず楽しめた。
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映画「ウェストサイドストーリー」スティーブン・スピルバーグ

2022-02-11 23:19:05 | 映画(洋画 2022年以降主演女性)
映画「ウェストサイドストーリー」を映画館で観てきました。


1961年の名作「ウエストサイドストーリー」スティーブンスピルバーグ監督がリメイクした新作がようやく公開された。もちろん字幕版で観た。巨匠スピルバーグもこの作品に憧れみたいなものもっていたのかな?生きているうちにつくりたかったんだろう。シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」を基調にして作られたストーリーはあまりにも有名であるので、ネタバレも問題ないだろう。

1950年代後半のマンハッタンのウェストサイドでは、ポーランド移民とプエルトリコ移民の不良グループが縄張り争いをしていた。中立エリアでのダンスパーティでポーランド系のトニー(アンセルエルゴート)とプエルトリコ系のマリア(レイチェルゼグラー)がお互い一目惚れで恋に落ちる。争いに決着をつける決闘が決行され、トニーが止めようと向かったが、逆に争いに巻き込まれてしまうという話である。オリジナルストーリーの基調とレナードバーンスタイン作曲の音楽は変わらない。でも、進化した新作が生まれる。

繰り広げられるダンスには圧倒された。本当にすごい!
前半からスピルバーグは飛ばす。まだ幼児で1961年の作品はリアルで観ていないが、その後映画館の大画面で迫力たっぷりの完璧なダンスを堪能している。そんな名作を受けた本作は、前作をさらにボリュームアップしたダンスで気分を高揚させる。ものすごい躍動感である。しかも、衣装や美術も色彩感覚にすぐれ、カラフルなドレスを身にまとった女性陣の動きはこんなの観たことないと思わせる凄みがあった。


⒈ダンス会場での出会い
プエルトリコの移民であるマリアは自分の兄ベルナルドとその恋人アニータと一緒にダンスパーティに向かう。プエルトリコのシャーク団の仲間だけでなく、ポーランドのジェット団の連中も来ている。まだ若いマリアにとっては晴れ舞台である。ダンスフロアでは、双方がペアでまちまちにマンボダンスを踊っている。動きに隙のないテクニックでピタッと決まっている。前作でも、このダンスはすごかった。これぞ完璧なダンスだと思ったものだ。


今回は一段とボリュームアップした印象を受ける。カラフルなドレスでより躍動的だ。圧倒的なダンスシーンが続くうちに、トニーとマリアが目をあわせる。お互いビビっとくるのだ。そして、恋のはじめのときめきを得た2人の恋がはじまる。むしろマリアの方がみずからキスをして積極的だ。常夏の島で育ったマリアの情熱を感じさせる。

⒉トゥナイト
1961年の前作でナタリーウッド演じるマリアが夜トニーと落ち合い、アパートの階段で「トゥナイト」を歌うシーンは映画史上で最も好きなシーンの一つである。マリアがレナードバーンスタインのオーケストラに合わせて歌い始める場面はいつ見ても背筋がゾクゾクしてしまう。ナタリーウッドは自ら歌っていないという有名な話があってもどうでもいいことだ。


「ウエストサイドストーリー」予告編で、レイチェルゼグラー演じるマリアがゆったり「トゥナイト」を歌うので、少し違った感じかな?と思ったら、基調は同じだった。新作でもマリアの歌声で背筋に電流が走った。座席の斜め前の若い男性が歌に合わせて身体の動きが変化するのがよくわかる。ただ、2人を映すカメラワークにちょっと疑問、マリアの顔が階段にかぶさってしまうのはちょっとどうかな?それでも3万人の俳優から選ばれたレイチェルゼグラーの歌唱力は抜群だった。

⒊アメリカ
「アメリカ」で踊るダンスが映画のピークかもしれない。前作でもジョージチャキリスとリタモレノを中心に盛り上がった場面である。スタジオでのダンスと思われるが、今回は大挙して一気にアウトサイドに飛び出し踊りまくる。そこでリードを取るのはマリアの兄ベルナルドの恋人アニータだ。演じるアリアナ・デボーズエキゾチックな雰囲気をもった色っぽい女性だ。周囲はカラフルなドレスを着た女性が躍動的なダンスを踊っている。ビシッと決まっていて、動きにスキがない。こんなダンスは見たことがない。アリアナデボーズアカデミー賞助演女優賞は当確に思える


⒋ジョージチャキリスとリタモレノ
小学校の頃、映画「ウエストサイドストーリー」がたびたびロードショーで公開されていた記憶がある。洋画好きの父はミュージカルには関心がなく、連れていってもらえなかった。街に貼ってある映画紹介のポスターでは男性ダンサーが大きく足を上げている写真が写っていた。てっきりあのダンサーが主人公かと思っていた。なぜなら雑誌などの「ウエストサイドストーリー」の記事で紹介されるのは、ジョージチャキリスの写真だったからだ。ようやく映画を観ることができたのは大学生になった後かもしれない。


今回ベルナルドはジョージチャキリスと比較すると、ワイルドな中米系の顔をした俳優が演じている。前作では、プエルトリコ側は普通の白人が若干黒く見えるメイクをしていた。当時リタモレノはプエルトリコ出身だけど、よりらしく見えるメイクをしていた。
リメイクをするにあたり、スティーブンスピルバーグピュアなヒスパニックメンバーを集める。顔つきがちがう。スペイン語が飛び交うのは前回には見られない。よりリアルに移民生活であることを示す。人種差別が顕著に見えた時代と異なり、ダイバーシティ(多様性)が尊重される現代にあい成功している。

今は便利な世の中で、ウエストサイドストーリーの重要シーンがYouTubeで見ることができる。そこで見られるジョージチャキリスとリタモレノのダンスはビシッと決まっていてすばらしい。新作でもう一度リタモレノを登場させるのはすごい。ドラッグストアの老いた女性店主を90近い年齢で演じる。これが効いている。


今のご時世で考えると、こんな不良グループの争いというのはちょっと考えづらいかもしれない。こんなバカな決闘をする奴はいないだろう。しかも、前作の原型を保ったストーリーは後半に向かって高揚感が急激に失速する。なんか寂しい気持ちになってくる。それでも、この新作で株を上げた若手メンバーの活躍を引き出したスティーブンスピルバーグの手腕はさすがとしかいいようにない。
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映画「Coda コーダあいのうた」エミリア・ジョーンズ

2022-02-02 19:20:22 | 映画(洋画 2022年以降主演女性)
映画「Coda コーダあいのうた」を映画館で観てきました。


「コーダ」はサンダンス映画祭で人気を集めた作品だ。いくつかの映画の前に観るつもりであったが、お決まりの健全なストーリーという評価もあり後回しにした。でも、先に観た映画には容認できないキャラクターが並び少々疲れ気味になっていた。ここではまったく真逆で応援したくなる人たちばかりである。

といっても、規範逸脱の話に満ち溢れている。コンプライアンスとは無縁の人たちだ。それなのに登場人物に感情移入してしまうのには女性監督のシアン・ヘダー監督の手腕を感じる。以前タルーラというエレンペイジ主演の赤ちゃん泥棒の映画を見たことがある。それも良かった。

さわやかな映画だ。
耳が聴こえない障がい者ばかりの家族なのに暗さはまったく感じない。家族愛もわざとらしくない。心が和らぎ快適な時間を過ごせた。

海辺の町に暮らす17歳のルビー(エミリア・ジョーンズ)は、漁業を営む両親と兄の4人家族の中で1人だけ耳が聴こえる。毎朝漁船に乗って家業を手伝っている。獲れた魚を市場に卸す通訳の役も背負っている。


新学期が始まると、憧れていたマイルズ(フェルディア・ウォルシュ=ピーロ)と同じコーラス部に入部する。顧問のV先生(エウヘニオ・デルベス)はルビーに音楽の才能を見いだし、秋のコンサートでマイルズとデュエット曲を歌うことになる。進学するつもりはなかったのに、名門バークリー音楽大学を勧められてV先生からレッスンを受けることになる。

父兄は漁獲量制限などうるさい漁協と対決して自ら販路を作って魚を売ろうとする。それにはルビーの力が必要だ。しかも海上警備隊に父と兄が捕まったり、レッスンにかかりっきりにはなれずV先生から遅刻連発でクビ宣告を受けるのであるが。。。


ルビー演じるエミリア・ジョーンズに心がひかれる。普通の家庭とは違う。3人耳が聞こえない家族がいて、3人の代わりにやらなければならないことがたくさんある。普通の高校生とは違うのだ。でも、困難な状況であってもルビーはいつもめげない。そんなルビーに応援歌を歌いたくなるのだ。久々に好きなキャラクターに出会えた。


⒈海と池
映画がはじまり、大画面に航行している船から見る海の映像が映る。オオーと唸ってしまう。漁のシーンもダイナミックだ。これだけで映画館で観るべき映画だと感じる。父母と兄は耳が聴こえない。魚が獲れても売り渡すのは通訳に入るルビーの仕事だ。そんなルビーは家族のために自分が犠牲にならざるを得ないと自覚している。大学進学なんてありえないのだ。

そんなルビーにとっての気晴らしの場所が湖とも池ともなんとも言えないところだ。崖から飛び込む。一緒にデュエットをすることになったマイルズと泳ぐシーンは青春の響きを感じさせて清々しい。透き通った水のようにピュアな心が流れている。初老の域に入ってこんな高校生にひかれることが多くなった。


⒉ちょっとおかしいコーラス部の顧問教師
ルビーが所属するコーラス部の顧問教師V先生がいい味だしている。映画に深みを与える。メキシコ系でラテン系の匂いを出す。少し見て、「シャルウィーダンス」でラテンダンスを踊る竹中直人が登場した時の髪型を連想する。宮本亜門の雰囲気も若干残っている。

ルビーは歌が上手いのになぜか自信がない。コーラス部に入っていても人前で歌いたがらない。そんなルビーだけど、歌声を聴いただけで、V先生は才能を見出す。男子高校生のマイルズとデュエットのコンビを組ませるのと同時に、個別レッスンを引き受ける。V先生の母校バークリー音楽院を目指せというのだ。こんな面倒見のいい教師はそうはいないだろう。キャラクターに魅かれる。


⒊ジョニミッチェル
ピアノレッスンでV先生のピアノで歌うのはジョニミッチェルの歌だとすぐわかる。先生はジョニミッチェルの歌だからちゃんと歌えよと言う。世の中に反戦の空気が高まる真っ只中1968年に歌った「青春の光と影」が引用される。この名曲を聴いて、60代後半から70代の人たちの方は違った感動を持つであろう。


⒋愛情あふれる家族とおかしなシーン
デュエットを練習するのにルビーの家にマイルズが来て2人で歌っていると、きしむ音となんかおかしな音が聴こえる。ルビーは両親を疑い、すぐさま2人のベッドルームへ行くとメイクラブをしている最中だった。両親は身体がかゆいので通訳係のルビーを連れて病院に行くと、インキンタムシだからSEXを控えるようにと言われ困るなあという顔をしていたばかりの話だ。

セックスレス夫婦の真逆の話だ。まさに夫婦生活が円満で、仲がいい。そんなルビーの家は幸せに満ち溢れる。この映画の好感度が高いのも素朴で裏がない家族全員に魅かれるからだろう。


⒌無音の効果
「ドライブマイカー」で主人公の西島とドライバーが雪の北海道に向かうシーンがある。その際、完全な無音となるシーンがある。いい感じだった。そして、「ゼログラビティ」サンドラブロックが宇宙を彷徨うシーンでも無音になった。この無音の感覚は映画館でしか味わえない醍醐味だ。

それを「コーダ」でも体験できた。どこで体験するかは観てのお楽しみだが、耳が聴こえず娘の才能がわからない父親にある示唆を与える。素敵なシーンだった。
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