映画「さらば愛しきアウトロー」は2018年のデイヴィッド・ロウリー監督作品
「セインツ」のブログアップ時も言及したが、蓮實重彦にはめずらしい新書本「見るレッスン」でデイヴィッド・ロウリー監督を絶賛している。同時にこの「さらば愛しきアウトロー」についてもいいことばかりが書かれている。この作品の存在は知っていたが、往年のハンサムな姿からずいぶんと年老いたロバート・レッドフォードのしわだらけの顔立ちを見ると、正直ちょっと見る気にはなれなかった。
それでも、蓮實重彦がデイヴィッド・ロウリー監督を「アメリカ映画を刷新する」とまで絶賛するのに怖いもの見たさで思わず観てみる。amazon primeって便利だね。タダで観れる。
脱獄を繰りかえした一瞬紳士に見える老銀行強盗があっさりと銀行でお金を次から次へと相手も無傷で奪っていくという話だ。流れは淡々として60年代から70年代のアメリカ映画を思わせる。この映画の共演者は豪華だ。ロバート・レッドフォードがひょんなことで知り合う未亡人の恋人にオスカー女優シシー・スペイスク、「歌え!ロレッタ愛のために」で主演女優賞を受賞してからもう40年だ。強盗犯を追う刑事役に「マンチェスター・バイ・ザ・シー」でオスカー主演男優賞を受賞したケイシー・アフレックだ。それに加えてダニー・クローバーとトム・ウエイツと役者が揃っている。
1981年のアメリカ。ポケットに入れた拳銃をチラリと見せるだけで、微笑みながら誰ひとり傷つけず、目的を遂げる銀行強盗がいた。彼の名はフォレスト・タッカー(ロバート・レッドフォード)、74歳。被害者のはずの銀行の窓口係や支店長は彼のことを、「紳士だった」「礼儀正しかった」と口々に誉めそやす。事件を担当することになったジョン・ハント刑事(ケイシー・アフレック)も、追いかければ追いかけるほどフォレストの生き方に魅了されていく。彼が堅気ではないと知りながらも、心を奪われてしまった恋人ジュエル(シシー・スペイスク)もいた。
そんな中、フォレストは仲間のテディ(ダニー・クローバー)とウォラー(トム・ウエイツ)と共に、かつてない“デカいヤマ”を計画し、まんまと成功させる。だが、“黄昏ギャング”と大々的に報道されたために、予想もしなかった危機にさらされる(作品情報引用)
1.蓮實重彦とデイヴィッド・ロウリー監督
この映画はロバート・レッドフォードの俳優としての最終作というのが売りのようだ。蓮實重彦は推薦文を書いてくれと言われ、レッドフォードをアピールしたいという声に、これはデイヴィッド・ロウリー監督の新作だと反発して書かなかったという。(蓮實重彦「見るレッスン」p.19)ましてや「映画90分説」(同 p.16)掲げる蓮實からすると、きっちり90分でおさめているこの映画の簡潔さも気に入っているだろう。「被写体に対する距離感の意識が抜群で安心感がある」(同 p.37)ここまで褒めるとはすごいものだ。老いた姿を隠そうとしないシシー・スペイスクヘの評価も高い。
2.ロバートレッドフォード
これで俳優業は卒業だという。さすがにもう限界だろう。彼と出会ってからの歴史も長い。「明日に向かって撃て」のロードショー時はまだ小学生だったので、中学生になってから名画座で観た。主題歌と言うべき「雨にぬれても」はポップスを聴くようになったきっかけの一つだ。中学生の時、「追憶」は有楽町に行ってロードショーで観た。スマートな大学生とバーバラ・ストレイザンド演じる学生運動の闘士との不自然な恋が今でも心に残る。主題歌はシングルを買って、何度も聴いた。そんな時期からもう47年も経つんだなあ。
主演作では全盛時代の「華麗なるギャツビー」もいいけど、いちばん好きなのは野球映画の「ナチュラル」だな。ロバート・レッドフォード監督作品それ自体では「リバー・ランズ・スルー・イット」と「モンタナの風に抱かれて」という地方を描いた映画の持つのんびりしたムードが流れる映画が好きだ。都会人的レッドフォードなのに田舎風景での出来事を描くのが上手い。正直メリルストリープ共演の「大いなる陰謀」のふけ姿を見て自分は限界だと思った。しかも、面白くなかった。それにしてもここまでよく頑張ったなあ。お世話になりました。
3.やる気のない刑事
ものすごく感動したという映画ではない。この老銀行泥棒、普通だったら一仕事終えたらもう止めてしまって姿をくらましても良さそうなのに止めない。へんな奴だ。それよりも注目したのが犯人を追うケイシー・アフレックが演じる刑事だ。黒人の妻を持った異色の刑事だ。ともかくやる気がない。どうでもいい感じだ。犯人を見つけようとする気がないようにさえ見える。FBIの邪魔が現れ、少しやる気を出す。そんな刑事をカメラが追う。
ケイシー・アフレックはそんな世捨て人のような役がうまい。
「マンチェスター・バイ・ザシー」もこんな感じだったなあ。デイヴィッド・ロウリー監督からすれば、ケイシー・アフレックは黒澤に対する三船のような存在になるのかもしれない。いいコンビだ。
「セインツ」のブログアップ時も言及したが、蓮實重彦にはめずらしい新書本「見るレッスン」でデイヴィッド・ロウリー監督を絶賛している。同時にこの「さらば愛しきアウトロー」についてもいいことばかりが書かれている。この作品の存在は知っていたが、往年のハンサムな姿からずいぶんと年老いたロバート・レッドフォードのしわだらけの顔立ちを見ると、正直ちょっと見る気にはなれなかった。
それでも、蓮實重彦がデイヴィッド・ロウリー監督を「アメリカ映画を刷新する」とまで絶賛するのに怖いもの見たさで思わず観てみる。amazon primeって便利だね。タダで観れる。
脱獄を繰りかえした一瞬紳士に見える老銀行強盗があっさりと銀行でお金を次から次へと相手も無傷で奪っていくという話だ。流れは淡々として60年代から70年代のアメリカ映画を思わせる。この映画の共演者は豪華だ。ロバート・レッドフォードがひょんなことで知り合う未亡人の恋人にオスカー女優シシー・スペイスク、「歌え!ロレッタ愛のために」で主演女優賞を受賞してからもう40年だ。強盗犯を追う刑事役に「マンチェスター・バイ・ザ・シー」でオスカー主演男優賞を受賞したケイシー・アフレックだ。それに加えてダニー・クローバーとトム・ウエイツと役者が揃っている。
1981年のアメリカ。ポケットに入れた拳銃をチラリと見せるだけで、微笑みながら誰ひとり傷つけず、目的を遂げる銀行強盗がいた。彼の名はフォレスト・タッカー(ロバート・レッドフォード)、74歳。被害者のはずの銀行の窓口係や支店長は彼のことを、「紳士だった」「礼儀正しかった」と口々に誉めそやす。事件を担当することになったジョン・ハント刑事(ケイシー・アフレック)も、追いかければ追いかけるほどフォレストの生き方に魅了されていく。彼が堅気ではないと知りながらも、心を奪われてしまった恋人ジュエル(シシー・スペイスク)もいた。
そんな中、フォレストは仲間のテディ(ダニー・クローバー)とウォラー(トム・ウエイツ)と共に、かつてない“デカいヤマ”を計画し、まんまと成功させる。だが、“黄昏ギャング”と大々的に報道されたために、予想もしなかった危機にさらされる(作品情報引用)
1.蓮實重彦とデイヴィッド・ロウリー監督
この映画はロバート・レッドフォードの俳優としての最終作というのが売りのようだ。蓮實重彦は推薦文を書いてくれと言われ、レッドフォードをアピールしたいという声に、これはデイヴィッド・ロウリー監督の新作だと反発して書かなかったという。(蓮實重彦「見るレッスン」p.19)ましてや「映画90分説」(同 p.16)掲げる蓮實からすると、きっちり90分でおさめているこの映画の簡潔さも気に入っているだろう。「被写体に対する距離感の意識が抜群で安心感がある」(同 p.37)ここまで褒めるとはすごいものだ。老いた姿を隠そうとしないシシー・スペイスクヘの評価も高い。
2.ロバートレッドフォード
これで俳優業は卒業だという。さすがにもう限界だろう。彼と出会ってからの歴史も長い。「明日に向かって撃て」のロードショー時はまだ小学生だったので、中学生になってから名画座で観た。主題歌と言うべき「雨にぬれても」はポップスを聴くようになったきっかけの一つだ。中学生の時、「追憶」は有楽町に行ってロードショーで観た。スマートな大学生とバーバラ・ストレイザンド演じる学生運動の闘士との不自然な恋が今でも心に残る。主題歌はシングルを買って、何度も聴いた。そんな時期からもう47年も経つんだなあ。
主演作では全盛時代の「華麗なるギャツビー」もいいけど、いちばん好きなのは野球映画の「ナチュラル」だな。ロバート・レッドフォード監督作品それ自体では「リバー・ランズ・スルー・イット」と「モンタナの風に抱かれて」という地方を描いた映画の持つのんびりしたムードが流れる映画が好きだ。都会人的レッドフォードなのに田舎風景での出来事を描くのが上手い。正直メリルストリープ共演の「大いなる陰謀」のふけ姿を見て自分は限界だと思った。しかも、面白くなかった。それにしてもここまでよく頑張ったなあ。お世話になりました。
3.やる気のない刑事
ものすごく感動したという映画ではない。この老銀行泥棒、普通だったら一仕事終えたらもう止めてしまって姿をくらましても良さそうなのに止めない。へんな奴だ。それよりも注目したのが犯人を追うケイシー・アフレックが演じる刑事だ。黒人の妻を持った異色の刑事だ。ともかくやる気がない。どうでもいい感じだ。犯人を見つけようとする気がないようにさえ見える。FBIの邪魔が現れ、少しやる気を出す。そんな刑事をカメラが追う。
ケイシー・アフレックはそんな世捨て人のような役がうまい。
「マンチェスター・バイ・ザシー」もこんな感じだったなあ。デイヴィッド・ロウリー監督からすれば、ケイシー・アフレックは黒澤に対する三船のような存在になるのかもしれない。いいコンビだ。