映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「さらば愛しきアウトロー」 ロバートレッドフォード&デイヴィッド・ロウリー

2021-02-09 07:41:05 | 映画(洋画:2019年以降主演男性)
映画「さらば愛しきアウトロー」は2018年のデイヴィッド・ロウリー監督作品

セインツのブログアップ時も言及したが、蓮實重彦にはめずらしい新書本「見るレッスン」デイヴィッド・ロウリー監督を絶賛している。同時にこの「さらば愛しきアウトロー」についてもいいことばかりが書かれている。この作品の存在は知っていたが、往年のハンサムな姿からずいぶんと年老いたロバート・レッドフォードのしわだらけの顔立ちを見ると、正直ちょっと見る気にはなれなかった。

それでも、蓮實重彦がデイヴィッド・ロウリー監督を「アメリカ映画を刷新する」とまで絶賛するのに怖いもの見たさで思わず観てみる。amazon primeって便利だね。タダで観れる。

脱獄を繰りかえした一瞬紳士に見える老銀行強盗があっさりと銀行でお金を次から次へと相手も無傷で奪っていくという話だ。流れは淡々として60年代から70年代のアメリカ映画を思わせる。この映画の共演者は豪華だ。ロバート・レッドフォードがひょんなことで知り合う未亡人の恋人にオスカー女優シシー・スペイスク、「歌え!ロレッタ愛のために」で主演女優賞を受賞してからもう40年だ。強盗犯を追う刑事役に「マンチェスター・バイ・ザ・シー」でオスカー主演男優賞を受賞したケイシー・アフレックだ。それに加えてダニー・クローバートム・ウエイツと役者が揃っている。


1981年のアメリカ。ポケットに入れた拳銃をチラリと見せるだけで、微笑みながら誰ひとり傷つけず、目的を遂げる銀行強盗がいた。彼の名はフォレスト・タッカー(ロバート・レッドフォード)、74歳。被害者のはずの銀行の窓口係や支店長は彼のことを、「紳士だった」「礼儀正しかった」と口々に誉めそやす。事件を担当することになったジョン・ハント刑事(ケイシー・アフレック)も、追いかければ追いかけるほどフォレストの生き方に魅了されていく。彼が堅気ではないと知りながらも、心を奪われてしまった恋人ジュエル(シシー・スペイスク)もいた。


そんな中、フォレストは仲間のテディ(ダニー・クローバー)とウォラー(トム・ウエイツ)と共に、かつてない“デカいヤマ”を計画し、まんまと成功させる。だが、“黄昏ギャング”と大々的に報道されたために、予想もしなかった危機にさらされる(作品情報引用)

1.蓮實重彦とデイヴィッド・ロウリー監督
この映画はロバート・レッドフォードの俳優としての最終作というのが売りのようだ。蓮實重彦は推薦文を書いてくれと言われ、レッドフォードをアピールしたいという声に、これはデイヴィッド・ロウリー監督の新作だと反発して書かなかったという。(蓮實重彦「見るレッスン」p.19)ましてや「映画90分説」(同 p.16)掲げる蓮實からすると、きっちり90分でおさめているこの映画の簡潔さも気に入っているだろう。「被写体に対する距離感の意識が抜群で安心感がある」(同 p.37)ここまで褒めるとはすごいものだ。老いた姿を隠そうとしないシシー・スペイスクヘの評価も高い。



2.ロバートレッドフォード
これで俳優業は卒業だという。さすがにもう限界だろう。彼と出会ってからの歴史も長い。「明日に向かって撃て」のロードショー時はまだ小学生だったので、中学生になってから名画座で観た。主題歌と言うべき「雨にぬれても」はポップスを聴くようになったきっかけの一つだ。中学生の時、「追憶」は有楽町に行ってロードショーで観た。スマートな大学生とバーバラ・ストレイザンド演じる学生運動の闘士との不自然な恋が今でも心に残る。主題歌はシングルを買って、何度も聴いた。そんな時期からもう47年も経つんだなあ。


主演作では全盛時代の「華麗なるギャツビー」もいいけど、いちばん好きなのは野球映画の「ナチュラル」だな。ロバート・レッドフォード監督作品それ自体では「リバー・ランズ・スルー・イット」と「モンタナの風に抱かれて」という地方を描いた映画の持つのんびりしたムードが流れる映画が好きだ。都会人的レッドフォードなのに田舎風景での出来事を描くのが上手い。正直メリルストリープ共演の「大いなる陰謀」のふけ姿を見て自分は限界だと思った。しかも、面白くなかった。それにしてもここまでよく頑張ったなあ。お世話になりました。

3.やる気のない刑事
ものすごく感動したという映画ではない。この老銀行泥棒、普通だったら一仕事終えたらもう止めてしまって姿をくらましても良さそうなのに止めない。へんな奴だ。それよりも注目したのが犯人を追うケイシー・アフレックが演じる刑事だ。黒人の妻を持った異色の刑事だ。ともかくやる気がない。どうでもいい感じだ。犯人を見つけようとする気がないようにさえ見える。FBIの邪魔が現れ、少しやる気を出す。そんな刑事をカメラが追う。


ケイシー・アフレックはそんな世捨て人のような役がうまい。

マンチェスター・バイ・ザシーもこんな感じだったなあ。デイヴィッド・ロウリー監督からすれば、ケイシー・アフレックは黒澤に対する三船のような存在になるのかもしれない。いいコンビだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「ヒルビリーエレジー」ロン・ハワード&グレン・クローズ&エイミー・アダムス

2020-11-29 19:49:41 | 映画(洋画:2019年以降主演男性)
映画「ヒルビリーエレジー」は2020年のNetflix映画


「ヒルビリーエレジー」はNetflix映画で何気なく見つけた最新配信作、エイミーアダムス、グレンクローズの大物女優の登場に思わず観てしまう。スタートしてしばらくして監督がロンハワードという文字に驚く。久しぶりに見る名前だ。さすがロンハワードと思われる本格的な映像でストーリーにも引き込まれた。上質な映画でおすすめである。ケンタッキー生まれオハイオ育ちのイエール大学ロースクールに通う若者が親子3代生活苦にもかかわらず暮らしてきた軌跡を振り返る物語である。原作はベストセラーになったJ・D・ヴァンスの小説で本人の実話に基づいている。

J・D・ヴァンス (ガブリエル・バッソ)はイエール大学ロースクールに学ぶ元イラク戦従軍者だ。就職にあたってロースクールには名門法律事務所から勧誘が来ている。インターシップ最終の法律事務所パートナーたちとの懇親ディナーは格式あるレストランで行われている。自称田舎者の主人公は馴染めない。インド系の同級生の恋人に電話してマナー作法を聞く始末だ。ケンタッキー出身でオハイオ育ちの略歴を話すと、あるパートナーの一人がヴァンスを田舎者扱いしたので折り合いが悪くなってしまった。

そんな大事な時故郷オハイオにいる姉リンジー(ヘイリー・ベネット)から母親ベヴ (エイミー・アダムス) の具合が良くないので帰郷してほしいと連絡があった。

ヴァンスの家族は大家族だった。13歳で結婚をした祖母マモーウ (グレン・クローズ) はきかん気が強い女性で夫とも争いが絶えなかった。何とか娘ベヴを育ててきた。ベヴは結婚したが結局出戻り3世帯でオハイオで暮らしていた。主人公はそういう強い女性のいる家庭で優しく育っていた。しかし家計は厳しかった。ヴァンスもバイトを3つかけ持ちしても奨学金を返しきれないくらいで、当然ながら実家の援助はないし、母親は健康保険にすら加入していない


大事な時だったので戻りたくなかったが車で故郷に向かう。もともと看護婦だった母は昔からヘロインの過剰摂取でトラブルを何度も起こしていた。何人もの男を渡り歩いていた。母のあばずれぶりは地元でも有名で施設から入所を断られていた。そんな時主人公に第一志望の法律事務所から最終面接のアポイントの電話が入ってくる。時間を変えてくれないかという話をしたがそれは無理で面接時間を決めた。オハイオに帰郷すると母親は入院している病院から退院するよういわれている。母親の元の勤務先とはいえ、問答無用で追い出される。ヴァンスは母親の行き先のめどをつけて車で戻り、面接の場所まで定時に行かなければいけないわけであるが。。。

1.エイミーアダムスのあばずれぶり
シングルマザーで姉弟の子どもを育てる。母親譲りで気性は激しい。看護婦だったが、患者に投与するヘロインをみずから飲み込んでしまう。病院内でラリってローラースケートで走りまくったり、息子を乗せたままフルスピードでぶっ飛ばした上、他人の家に不法侵入する。警察沙汰も一回や二度ではない。

本当は息子のことを殴っているけど、母親思いの息子はけがをしているにもかかわらず母親は何もしていないと取り調べの警察にいう。そういう優しさで助けられてきた。高校のときは学年2番だったけど、周囲が誰も自分を引き立ててくれないからこうなったんだと息子にのたまう。まさに薬物依存症、あえて喫煙者であるところも見せる。


そんな役柄をエイミーアダムスは見事に演じる。これはアカデミー賞モノである。エイミーの主演作はほとんど観ている。あばずれ役はアメリカンハッスル」「ザ・ファイタ-などいくつかあるが、ここまでのパフォーマンスはなかった。この映画の主演って息子だと思うんだけど、助演女優賞ということなのかな?出演者のクレジットは一番前だったからどうなんだろう?これまで何度もエントリーされているけど、今回はいけるような気がする。

2.グレンクローズのやさしさ
気がつくと13歳で夫と結ばれる。今の日本では淫行か?出来の悪い夫が酒癖悪いので、身体に火をつけたりもする。血筋というべきか娘と同様に気性は荒い。でも、娘の方が異常なので、火消しに入ることも多い。男を次から次へと渡り歩く娘ベヴが、ある男と一緒に暮らすようになりヴァンスも一緒に暮らす。ところが、継父の息子が良からぬことを教えて成績が急降下、それが気になって仕方ない祖母グレンクローズは孫を悪い道から取り戻そうとする。

「努力もせずにチャンスがあると思うな」祖母の名言だ。そんなわけで孫の成績は急上昇してクラスのトップに躍り出る。成績表を見ながら微笑むグレンクローズが素敵だ。「ターミネイター2」を100回観ているというキャラにもご注目


この映画はまさにエイミーアダムスグレンクローズの演技合戦で、どっちもどっちである。同じ映画でアカデミー賞を競うなんてすごい話だ。世紀の悪女を演じた危険な情事で受賞していればという思いはあるが、年の功でグレンクローズにもチャンスがあるかもしれない。

3.イエール大学のロールスクール
アイビーリーグのイエール大学のロールスクールは世界を代表する名門である。フォード元大統領やクリントン元大統領夫妻など卒業生には政府高官クラスが山ほどいる。

日本ではハーバードが名高いが、1987年にランキングができて以降、ずっと1位の座を保ち続けているのは、実はイェールの方だ。(山口真由ブログ 2017年2月16日引用)日本人からすると意外だがアメリカには法学部というものはない。各大学の他の学部を卒業した英才がここに集まっている。

主人公はある意味とんでもないエリートだけど、田舎育ちの主人公は浮いてしまうような存在だ。ちょっと大げさな映像だと思うが懇親会の席でテーブル上の大量のフォークとナイフをどう扱っていいか戸惑う主人公のパフォーマンスを映す。あえてそういうところで田舎者ぶりを目立たせる。

作品情報には「貧困が親から子へと引き継がれ固定化されていく白人貧困層の過酷な現実」となっているけど、ここまでのエリートになれたんだから、この家族に限っていえば貧困は引き継がれてはいないよな。映画の宣伝文句はちょっと違う気もする。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「セレニティー 平穏の海」マシュー・マコノヒー&アンハサウェイ

2020-10-18 18:54:05 | 映画(洋画:2019年以降主演男性)
映画「セレニティー」は2019年公開のNetflix映画


映画「セレニティー」ではマシューマコノヒーアンハサウェイというアカデミー賞俳優のカップリング主演である。何気なくNetflixの中で見つける。元妻からDVが激しい今の夫の殺人依頼された男がどう立ち向かうかという題材に関心を持つ。ネットで見ると、主役の2人に加えてダイアンレイン、ジェイソンクラークといったスター俳優が出演している割にはあまり評判はよろしくないようだ。

でも、時間の合間に見てみると、わりと面白い。カリブ海に浮かぶ島が舞台で、マシューマコノヒー演じる主人公はイラク戦線の退役兵で今は漁師に身を隠している。島の様々な場所を映し出す映像は美しく、視覚的に楽しませてもらえる上にスティーブン・ナイト監督自らの脚本も練られている。登場人物が適切に配置されており、展開を読みづらくする。土壇場で意外な展開があるわけだが、その評判が良くないらしい。確かに、正直アレ!?と呆気にとられるが、ムキになってけなすほどではない。娯楽として一見の価値はある。

カリブ海に浮かぶプリマス島、イラク戦線で負傷した退役兵ベイカー(マシュー・マコノヒー)は相棒の現地人ディーンと自前のクルーザーで観光客を乗せながら魚を釣っていた。大物のカジキを狙いながら、ゲットできないでストレスが溜まっていた。気難しいところがあり、ちょっとしたことでディーンを首にしたり偏屈である。ベイカーにはコンスタンス(ダイアン・レイン)という恋人がいる。

そんなベイカーの元へ別れたカレン(アン・ハサウェイ)が訪ねてきた。ベイカーのことをジョンと呼んでいた。夫フランク(ジェイソン・クラーク)のDVに悩んでいて、ベイカーとの間にできたパトリックもその被害を受けている。今までのことは悪かったとカレンが謝り夫を殺してくれと依頼する。1000万$報酬を出すという。フランクはもうすぐこの島に来て2日滞在する。一緒にベイカーの船に乗るので、海に沈めてくれというのだ。ベイカーは即答を避ける。


息子のパトリックはDVに耐えかね引きこもりになっていた。一日中部屋でパソコンに向かう毎日である。フランクが島にくると、釣りがしたいとベイカーの船にやってきた。案の定横柄な奴だった。ベイカーは息子がフランクの暴力に苦しんでいるのではと心配してしまう。

フランク夫妻は金満家で乗船したら1万$の謝礼をくれるという噂が島を駆け巡り、クビになったディーンが一緒に乗ると申し出る。3人で乗船して釣り竿の糸を垂らす。しばらくして、強い引きがある。どうもサメのようだ。ずっしり重みがある感触にフランクが2人の助けを借りて釣り竿を引き上げようとするのであるが。。。


この島は広くない。見慣れぬカレンが島にやって来てしかも金満家の奥さんで、彼女はどうもベイカーのこと知っているみたい。それだけで周囲は何があったかとひそひそ話だ。ベイカーの船に乗るだけで1万$になりそうだ。ベイカーの恋人も落ち着かない。カレンが気になってしょうがないのだ。バーのマスター、釣具店のおばさん、しかも、ベイカーの行方を探す謎の男もいる。周囲がざわつく。

以下は半分ネタバレあり、映画を観ていない方は観てからにして下さい。

⒈フランク殺しができるか?
フランクは自分が殺されるとは思っていないし、妻の元恋人がベイカーだとは夢にも思わない。ベイカーは金づると思って態度のでかいフランクに対しても余裕を持って対応する。でも、助手のディーンや周囲もきっと奥さんに対するDVがあって何かあるんじゃないかと思っている。サメが餌に引っかかってして右往左往する時に一気にやられるかとドキドキしたら、映像はフランクがオレが釣ったんだと喜ぶ姿を映す。まだ終わらないんだね。


フランクは「また乗って大物釣るぞ!お前ら釣りを教えてやる」と言っている。それでも大雨降る夜になるとカレンはベイカーの乗っているクルーザーにやってくる。そして念押しで夫を殺すように依頼する。ところが、カレンが目を覚ますとなんとフランクは真っ赤に血に染めて倒れているではないか。死んではいない。数人に取り囲まれたという。その話を聞いて息子を自分の元に戻そうとしていたベイカーは一気にやる気を喪失する。どうなるのか?!

ここで寸止めとしよう。この後は実は意外な大逆転がある。それは見てのお楽しみだ。
評判は悪いけど、この脚本は伏線もしっかり入れて、登場人物にそれぞれ役割を持たせる。それが徐々に効いてくる。自分にはそんなに悪くは見えないんだけどなあ。Netflix映画普通に契約している人はタダだし評判を気にせず楽しんでほしい。

⒉カリブ海に浮かぶプリマス島
猥雑な港のバーを映し出し、ラム酒を1人飲むベイカー(マシュー・マコノヒー)の姿が粋だ。そこへカレン(アン・ハサウェイ)が亭主の殺人を依頼にくる。バーのまわりのお店や市場、美しい砂浜、ベイカーが海に飛び込む絶壁など目の保養になる美的センスにすぐれる。途中でプリマス島という名前がでて、これをしらべると、今は無人島だという。何それ?どんでん返しって島がなくなるってことなの?とまで思ってしまうが、違う。あくまで実際の島にかこつけた架空の島なのである。


実はロケ地が日本企業がたいへんなご迷惑をかけたあのモーリシャス島と知ってビックリだ!いやーきれいだな。


この映像の場所が原油流失でやられたの?確かにこれはヤバイね。わあショックだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「mid90s ミッドナインティーズ」 ジョナ・ヒル

2020-09-07 19:32:56 | 映画(洋画:2019年以降主演男性)
映画「mid90s ミッドナインティーズ」を映画館で観てきました。


映画「mid90s ミッドナインティーズ」はマネーボールウルフオブウォールストリートの名脇役で存在感を示したジョナヒルの初監督作品だ。13歳の不器用な少年がスケートボード好きの年上の不良少年たちの仲間に入って大人の世界に一歩踏み入れようとする青春映画だ。これといったスターは誰も出演していない。評論家筋の評価は高く、女性陣からは感涙というコメントもあるが何で泣くのかな?ちょっと大げさかなという感じを持つ。

1990年代半ばのロサンゼルス。13歳のスティーヴィー(サニー・スリッチ)は兄のイアン(ルーカス・ヘッジズ)、母のダブニー(キャサリン・ウォーターストン)と暮らしている。小柄なスティーヴィーは力の強い兄に全く歯が立たず、早く大きくなって彼を見返してやりたいと願っていた。


そんなある日、街のスケートボード・ショップを訪れたスティーヴィーは、店に出入りする少年たちと知り合う。彼らは驚くほど自由でかっこよく、スティーヴィーは憧れのような気持ちで、そのグループに近付こうとするが…。(作品情報より引用)

⒈背伸びした13 歳の主人公
ちょっと古いが「小さな恋のメロディ」マーク・レスターに似ている。13歳の男の子は小学生の雰囲気が抜けきれない少年も多い。背も小さい。片親で兄貴と暮らしているが、兄貴にはいじめられている。スケートボードショップにたむろう不良グループの中で存在感を認めてもらおうと一生懸命だ。気持ちはよくわかる。


スティーヴィーはただ突っ張っているだけの嘘つき少年である。タバコ吸ったことないくせに、無理やり吸ってゴホン、いつも吸うけどこれじゃないんだなんていう。パーティで知り合った年上の少女と2人きりになって、デートしたことある?と聞かれ、思わずフロリダのディズニーランドに行ったなんていってしまう。

でもこのくらいの年齢ってこんなものでしょう。悪さの数々がばれて母親が何でなんでも話してくれないの?と言うけど、なかなか母親には本当のこと言わないよね。

でもあることで仲間に認めてもらう。黒人は日焼けするか?と不良の先輩たちに質問されてしばらく考えこんで、「黒人って何?」といってしまい、周囲がなごむのだ。

⒉アメリカの格差社会をのぞく
ジョナヒルの自叙伝的意味合いを持つという。どちらかというと、片親で、持ち家には住んではいるが下層階級に近いかもしれない。最近日本は格差社会なんて言うけど、アメリカは極端だ。比較的まともな本の部類の小林由美「超格差社会アメリカの真実」によれば、「公立の小中高等学校ヘいけば、麻薬、セックス、暴力が蔓延している」となっている。この映画はそれを地でいっている。ともかく途中からめちゃくちゃである。


日本では私立の名門も多いが、一時の公立の低落傾向も収まり公立名門校は数多く存在する。「低所得に生まれ、低水準の公共教育しか受けられなかった人は、その後の人生を通じて衣食住すべての日常生活で大きなハンデキャップを背負う」とまで言い切る。不良仲間の一人が高2になったので、うちは金があるからそろそろハーバード大を目指すなんてセリフもある。少しづつ格差をのぞかせるのだ。ジョナヒル自身も「マネーボール」でイェール大出のインテリ野球オタクを演じてそっちの部類かと思ったらどうやら違うようだ。

⒊優しい年上の女の子
13歳のくせにタバコをすうだけなく、ドラッグにも酒にも手を出す。ただ、うらやましいのは、パーティで年上の女の子にちょっかいを出してもらえることだ。しかも、ドラッグでメロメロだ。ラリっているときに流れるのがハービーハンコック「ウォーターメロンマン」なかなかいい取り合わせだ。


デートをしたこともないのに、したよとドキドキしながら嘘を言う。でも女の子にも好奇心があるのか?別室に誘われてペッティングをしたと大騒ぎだ。このころは、憧れだけはあったけど、そんなことには当然無縁だった自分からするとうらやましい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「最後の追跡」 ジェフ・ブリッジス&クリス・パイン

2020-08-23 19:24:33 | 映画(洋画:2019年以降主演男性)
映画「最後の追跡」は2016年のNetflix映画


「最後の追跡」は日本未公開でNetflixのみ配信である。大ファンのジェフブリッジスが主演というのに映画の存在すら知らなかった。コロナ騒ぎまでNetflix派でなかったことを悔いた。なんとアカデミー賞で4部門(作品、助演男優賞、編集、脚本)でノミネートされているというではないか。アメリカで公開されたとはいえ、一部の公開で実質Netflix映画である。米国の評論家たちの評価は極めて高い。

銀行強盗とそれを追うレンジャーという構図は伝統的題材である。ここでは、テキサスの田舎町を映し、都会に比較すると前近代的にゆったり時間が流れる。まさに古典的な西部劇的要素が強い。ハイテクな要素が少ない。え!何度もこんなに銀行強盗できてしまうの?とまで思ってしまうが、この地方の風土がトランプ大統領を生んだ素地なんだろう。クリス・パインが持つ迫力とベン・フォスターの破茶滅茶な姿は30年前だったらジェフ・ブリッジスが演じたであろうに。そんなことを思いつつ映像を追った。


テキサス西部の田舎町で、開店前のミッドランズ銀行に覆面をかぶった2人組の強盗が入る。周囲には人が少なく、あっという間に逃走し、別のミッドランズ銀行の支店でも同様に強盗に入って現金を強奪する。兄タナー(ベン・フォスター)と弟トビー(クリス・パイン)は母親の借金で実家につけられている銀行抵当を返済により外して、弟が別居している息子に財産を残すのが強盗の目的だ。銀行が抵当権を行使する期限は間近に迫っている。一方で地元レンジャーのマーカス(ジェフブリッジス)とアルベルトは捜査に着手する。


兄は刑務所から出所したばかりで、向こう見ずだ。弟が銀行を下調べして念入りに計画していたのに、弟が食事している時に1人で別の銀行に入り込み、慌ててその場を脱出しようとする。勝手な行動で弟は腹を立てるが、ゲットしたお金はオクラホマのカジノでチップに替える。


マーカスとアルベルトはある支店に来ると読んで銀行前で待機していたが、おそらくは別の支店に狙いをつけるはずだと移動する。そう思ったときに兄弟はポストという町の支店に強盗に入る。しかし、給料日で大勢の顧客が来ていた。今までのようにはいかず、銃を所持している顧客の抵抗を受けた。逃走車を何台もの自警団の車が執拗に追っていくのであるが。。。

小技が効いている脚本である。メキシコとアリゾナ州の国境ラインでの攻防を描いた「ボーダーライン」でも脚本を担当したテイラー・シェリダンテキサス出身、地元を知り尽くしているのであろう。寂れた町の状況を映し出し、ストーリーと並行して突飛な人物を放つ。ウェイトレスもみんなかわっている。変人だらけで会話がおもしろい。人種差別用語もひんぱんにでてくる。それが映画のレベルを昇華している。

⒈ジェフブリッジス
退任寸前のレンジャーをジェフ・ブリッジスは演じる。相棒は先住民族の男だ。人種差別的発言連発でいつも相棒をからかっていて、性格はいいとはいえない。見ようによってはいやな奴だ。ここでの捜査はヤマカンもいいところ、まったく科学的ではない。追われた兄貴が必死の抵抗をするが、ふと背後から捕らえることを考える。ここだけは老練である。


念願のアカデミー賞主演男優賞に輝く飲んだくれミュージシャンを演じたクレイジーハートやコーエン兄弟の巧みな脚本で引き立つトゥルーグリットと比較してもずいぶんと老けて落ち着いてしまったなあという感じだ。でももう少しがんばって!

⒉クリス・パイン
クレジットでは格でジェフ・ブリッジスがトップとなっているが、実質的にはクリス・パインが主演である。ここではかなり躍動的活躍をする。兄貴に町の暴走アンちゃんが絡んできて、それをコテンパンに倒す暴力表現が本気かつワイルドで、やられた役者大丈夫かと思ってしまう。


離婚して家庭破壊になっているんだけど、何としても息子には石油が出るとわかった自己所有の土地を残したい。その思いが強い。抵当権を行使されたらそれができない。母親に不利な条件の融資をして抵当を付けている銀行をあえて狙う。強盗に入る銀行の支店では、いずれも監視カメラの映像がその場に残らないのをわかっている。無鉄砲な兄貴と違って、銀行員にバラのお札のみ出せと言ったり、下調べもした上の慎重な計画を実行していく。でも、慣れないのでスキはできる。途中でウエイトレスに惚れられるシーンがある。このやりとりがお遊びで楽しい。

⒊前提条件に疑問?
いくら田舎のテキサスとはいえ、1950年代のアメリカを舞台にしている訳ではないから、もう少し科学的な捜査をしても良さそうだ。これが現実なんだろうか?被害に遭った銀行は、テキサス州内しか支店がなく、被害額もさほど大きくないのでFBIが出動しないという。

それにしても、被害に入られた銀行に防犯カメラがあるが、すぐさま本部に転送になりすぐ映像を確認できないとか、一つの銀行に強盗が入ったのに別の銀行にすぐさまその事実が通知されないとか、このあたりはそんなことあるの??という感じである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「黒い司法 0%からの奇跡」 マイケルジョーダン&ジェイミーフォックス

2020-08-06 19:48:59 | 映画(洋画:2019年以降主演男性)
映画「黒い司法」は2020年公開のアメリカ映画


「黒い司法」は理想にあふれた若い黒人弁護士が、証拠がなく死刑判決を受けた死刑囚の再審を勝ち取るために奮闘する姿を描く。グレゴリーペックが正義感あふれる弁護士を演じた「アラバマ物語」から続く伝統的な黒人冤罪映画と言っていいだろう。

黒人男性が警官によって逮捕される時、拘束時に強くクビを圧迫して死亡する事件があった。全米で黒人差別問題が再燃している。以前に比較すれば、差別問題は随分と落ち着いていると思っていたけど、そうでもないようだ。80年代にはまだ差別はかなり強かったのか?これは今から30年以上も前の話であるが、この映画の中で語られることが事実であれば、ちょっとやるせないなあと思ってしまう。

ブライアン・スティーブンソン(マイケル・B・ジョーダン)はハーバード大学のロースクールを卒業し、弁護士資格を取得した。ブライアンは使命感から黒人差別が著しい1980年代のアラバマ州で弁護活動に携わることにした。受刑者の人権擁護活動に励むエバ・アンスリー(ブリー・ラーソン)の協力もあって、彼は小さな事務所を設立することができた。


1988年黒人男性ウォルター・マクミリアン(ジェイミー・フォックス)は検問で止められ、保安官との世間話の後、全く身に覚えがない“18歳の少女を惨殺した罪”で逮捕される。死刑囚に仕立て上げられてしまうのだ。だが、彼が犯人であることを示す証拠はがないことが裁判記録を読み込むとわかる。検察側によって仕組まれた証人発言によりウォルターを犯人に仕立て上げた疑いをもつ。ブライアンはウォルターの無実を証明するためにその弁護を買って出た。死刑囚に仕立てられたウォルターもブライアンとふれあううち徐々に心を開くようになる。


ブライアンは有力な目撃証言をしたラルフ・マイヤーズ(ティム・ブレイク・ネルソン)と面会をして、真実を探ろうとする。話好きなマイヤーズも肝心なことととなると、口を閉ざしガードは堅いのであるが。。。

⒈若手黒人弁護士にのしかかる差別
ブライアンが受刑者との接見をしようと刑務所に行き、入り口を入ろうとすると、看守から持ち物検査を受ける。「脱げ!」それも全裸にだ。弁護士にそこまでやる?という感じだけど、いやいや脱ぐ。

しかも、警察の幹部と話した後でブライアンが夜間に車を走らせていると、後ろからパトカーが来る。尋問を受けるのだ。たいしてスピードを出しているわけでない。スピード違反じゃないですよねと言うと、いきなり銃を突きつけ脅される。もう1人の警官が車の中を探って、そのまま退散するけど、明らかに警察からの妨害工作でお前この事件に関わるなよという脅しである。


⒉ジェイミーフォックスと死刑囚の処刑
アカデミー賞主演男優賞をはじめ名誉ある賞を受賞しているジェイミーフォックスもここではチンケな死刑囚である。自分よりも年下の弁護士の動きにも、当初はあきらめの表情を見せる。でも、ブライアンの粘りでウォルターの不利な証言をした白人受刑者を法廷に引っ張り出すことに成功させたり、証人、証拠をいくつも集めてくる。そうやって明らかに再審できるような状況になったにもかかわらず、再審請求は却下される。うーんと思ってしまうが、ブライアンはあきらめない。


そんな時、同じ収容所に死刑囚として入所している男が処刑される。これも比較的丹念に電気椅子での処刑が履行される寸前まで追っていく。収監されている囚人たちが牢屋を叩いて抗議の意思を示す音が響き渡る。その音が印象に残る。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「トゥルーストーリー」ジョナ・ヒル

2020-07-21 20:18:44 | 映画(洋画:2019年以降主演男性)
映画「トゥルーストーリー」Netflixで見つけた日本非公開作品である。


マネーボールの好演が印象的な個性的俳優ジョナ・ヒル主演で実話に基づく作品だ。
事実をでっちあげた記事を書いてニューヨークタイムズ誌を追われた記者が、自分の名前を名乗って殺人を犯した男と会う。元記者が無罪を主張する犯人から殺人の真相を聞き出版しようとするが、寸前になって犯人の証言が二転三転するという話である。当然、アメリカでこういう事件があったことすら知らない。でも、見てみると、意外に話の内容にスルッと入っていける。さすがにこのキャストじゃ日本では受けそうもなく、公開はスルーされた。

ニューヨークタイムズの敏腕記者である主人公マイケルフィンケル(ジョナヒル)はアフリカの困窮したエリアで取材して記事を書き掲載され反響を呼ぶ。会社の上司から個別に呼び出されたので、ほめられるのかと思ったら逆に記事の信憑性について問われた。クレームも入っているようだ。謝罪文を自ら書くのは記者であることを否定されることだと自ら退社する道を選ぶ。

マイケルは夫婦でニューヨークからモンタナへ引越し、次のチャンスを待っていた。そんな折、一家4人を惨殺した事件の犯人ロンゴ(ジェームズフランコ)が、逃亡中自分の名前であるマイケルフィンケルと名乗ったということを知る。何で自分の名を名乗ったのか関心を持ち、本人に面会する。マイケルが書いた記事のファンだったという。マイケルだけにこっそり真実を伝えるので、裁判まで黙っていてほしいという条件を伝えられ、面会で事件のいきさつを語るようになった。それをマイケルは一冊の本にまとめた。

裁判が近づき、マイケルはこの企画をある出版社に持ち込み、前金25万ドルを得る見込みがたった。しかし、いざ裁判となった時、ロンゴは実際には2人を殺して、2人は妻が殺したというマイケルへの告白と違う証言をして驚かさせるのであるが。。


⒈被疑者の告白
妻と子供3人を惨殺したという酷い事件だ。マイケルにはまったく何も関係ない。ただ、被疑者ロンゴはマイケルが書いた記事を好きというだけだ。きっとマイケルは自分のもとへ連絡をよこすであろうという予測を立て、来訪した時にはこう言ってやろうと頭を働かせていたのかもしれない。映画を見ている途中にはそうは思えない。よくある冤罪の話かと思ったくらいだ。でも、証言では2人を殺して2人は妻が殺したという。新たなストーリーを立ててマイケルに話す。


⒉元記者の出版への意欲
汚名挽回をねらう。一度でっち上げの記事を書いた男の話は誰も相手にしない。裁判の証言には呼ばれない。信用のない状況に陥った時のチャンスにすがりつく。出版社への売り込みは成功し、あとは出版を待つばかりである。ところが、逆転。改めて出版は保留となってしまう。


それでも、この元記者はへこたれない。判決の出るまでの一部始終を再度本とするのだ。執念だと思う。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「ジョジョ・ラビット」

2020-06-21 08:38:39 | 映画(洋画:2019年以降主演男性)
映画「ジョジョ・ラビット」は今年公開のアメリカ映画

第2次大戦末期のナチスドイツを描いた作品は最近多い。この種の類にはネクラな作品が多い中で思ったよりも面白い。巧みにコメディに仕立てたと言ってもいいだろう。アカデミー賞脚色賞を受賞している訳で原作があるはずである。

青年になりきれない子どもの目を通して、語っていく。ナチスを崇拝する子どもの前に年上の若きユダヤ人少女が現れる。周囲があれだけ軽蔑し、排除しているユダヤ人の女の子が目の前に現れ、気がつくと異類への好奇心と幼き恋心に揺れる少年心理が素直に示されている。


出演者の中でいちばんメジャーといえば、スカーレットヨハンソンであろう。他にもスリービルボードの巡査役からのっているサムロックウェルがいるが、ここでは主演の少年の愛くるしさがいい感じだ。

第二次世界大戦下のドイツ。10歳の少年ジョジョ(ローマン・グリフィン・デイビス) は、 母親ロージー(スカーレット・ヨハンソン)と2人暮らし。 ジョジョの父親 は2年間音信不通である。ナチスの党員たちは脱走したと決めつけていた。 空想上の友達であるアドルフ・ヒトラー (タイカ・ワイティティ) の助けを借りて、青少年集団ヒトラーユーゲントの立派な兵士になろうと戦闘訓練の指導を受けていた。


しかし、ジョジョは、訓練でウサギを殺すことができず、 戦いで片目を失ったクレンツェンドルフ大尉(サム・ロックウェル)や、教官のミス・ラーム(レベル・ウィルソン)から「ジョジョ・ラビット」という不名誉なあだ名をつけられる。 それでも、空想のアドルフの激励で元気を取り戻したジョジョは、張り切って手榴弾の投てき訓練に飛び込むのだが、失敗して顔に大ケガを負う。

退院して自宅に戻ったジョジョは亡くなった姉のインゲの部屋で隠し扉を発見する。扉を開けるとユダヤ人少女エルサ (トーマシン・マッケンジー) が匿われていた。エルサにユダヤ人の秘密を話をしてくれたら住んでいいと持ち掛ける。そうして、一緒に暮らすようになると、思春期手前のジョジョは次第にエルサに惹かれていくようになる。そんな中、秘密警察のディエルツ大尉が部下を引き連れて、突然、ジョジョの家に家宅捜索で訪れ、ジョジョはうろたえるのであるが。。。


1.ハードデイズナイト ドイツ語版
いきなりオープニングで流れる。ビートルズがドイツのハンブルグにあるライブハウスで下積み生活を送っていたのはあまりにも有名、そこで腕を磨いてチャンスを掴む。この映画はナチスドイツ時代の映像なのにドイツ語でなく、英語が基調、その不自然さがあってかドイツ語の歌でスタートする。

2.ユダヤ人少女が出現してからの展開
映画が始まってから軽い起伏があるものの今ひとつノリがない。単なるいじめられっ子物語じゃないか。子どもにも大人にも気持ちを同化しづらいと思っていた時にユダヤ人少女が登場して急にテンポがよくなる。ユダヤ人のことを教えよ。有名人はだれか?こんなにいるのか?


ほのかな恋、目の前に年上の美女、惹かれないほうがおかしい。エルサには心が通じあった恋人ネイサンがいる。ガキのくせに焼きもちをやくジョジョはネイサンのフリをしてエルサにこういう手紙が来ていると、なんとか心が離れていくように仕組む。姉のふりをする場面、「カサブランカ」のラス前シーンの浪花節的見逃しのシーンがある。いい感じだ。

3.スカーレットヨハンソン
好きな女優である。この映画では色合いの良いファッションでジョジョの母親を演じる。なぜか、イタリア降伏に喜ぶ。子どものことで青少年武闘隊に勇敢に乗り込む一方で、ドイツ敗戦を望むビラを撒いて歩く。実は反ナチスだ。そのビラを見て息子はビックリする。スカーレットヨハンソンは1940年~50年代の女になりきるのがお上手だ。

ハイルシーザーの若手女優役や映画「ヒッチコック」のジャネット・リー役同様に今回のドイツ人女性も巧みにこなした。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「アンカット・ダイヤモンド」 アダム・サンドラー&イディナ・メンゼル

2020-05-27 10:06:05 | 映画(洋画:2019年以降主演男性)
映画「アンカット・ダイヤモンド」は2019年のNetflix映画


映画「アンカット・ダイヤモンド」はギャンブル好きで何もかも破綻しているニューヨークの宝石商がエチオピア産の複数のオパールが埋め込まれた原石 をめぐって一世一代の勝負に出る話である。結局のところ、原石に入っているのはオパールなんだけど。自分はそもそも宝石というものに関心がない。アンカットの宝石といわれてもよくわからない。不快な主人公を中心にいやらしい話が展開する。

日本ではアメリカでものすごい興行収入を残したコメディがあっさりDVDスルーになったりする。笑いのオチが違うのであろうか?アダムサンドラーは コメディ映画のスターで、けったいな顔とパフォーマンスはいい感じだけど日本での知名度は低いかもしれない。


そんな彼が詐欺師まがいのギャンブル好きな宝石商を演じる。ともかくハイテンション、いわゆる躁鬱病の「躁の世界」にいる男である。最初から最後までフルスピードの演技で駆け抜ける。正直この男に親近感はまったく起きないし、気持ちも全く同化しない。むしろ付き合いたくないやつだ。

1.博打好きの主人公
博打好きである。日々乱れた生活をおくっている。ギャンブルからみで 借金まみれになり、取り立て屋に追われる。 当面の危機を切り抜けようと調子のいいことを言っても人相の悪い取り立て屋に噴水に投げ込まれたり、丸裸で車のトランクに閉じ込められる。そんなみじめな姿をさらけ出しても復活する。懲りない男だ。


宝石店で働く女の子に手を出し、マンションで囲っている。妻とは実質別居状態。 自分が持っているアンカットの宝石をNBAバスケットボールプレイヤーを見せると縁起物だと思ってほしがる。これがあると、試合で素晴らしいプレイができると。とりあえず、欲しがった宝石を いったん 預ける。そのカタにもらった指輪をすぐさま質屋に差し出してお金を引き出す。そのお金をバスケットボールの賭けに突っ込む。めちゃくちゃだ。

2.ユダヤ教とイディナ・メンゼル
映画の中盤以降に親族の寄り合いのシーンが出てくる。参加者が帽子のようなものをかぶっている。見ているときはてっきりイスラム教徒かと思ったが、ユダヤ人である。こんなバカな男がまさかと思ったけど、そうなんだ。たしかに宝飾とか扱っているユダヤ人は多いかもしれない。

別居状態でも親族の寄り合いには妻が参加する。こういう男にこういう女という感じで、金目のものは身につけているけど品のない女だ。あんまり好きじゃないなと思っていた。ところが、見終わってクレジットを見たらなんとアナ雪のエルサ役のイディナ・メンゼルではないか!!


あの歌声がまったく想像つかない。松たか子の上品な感じのかけらもないその姿に驚く。ここだけは一緒にいるという場面がユダヤ教徒の親族の集まりで、彼女はどうやらユダヤ系らしい。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「アメリカン・ファクトリー」

2020-05-25 08:47:58 | 映画(洋画:2019年以降主演男性)
映画「アメリカン・ファクトリー」は2019年のNetflix映画


「アメリカン・ファクトリー」は本年のアカデミー賞最優秀ドキュメンタリー映画である。その評判だけで観てみた作品である。オハイオ州に中国企業が進出してGM工場跡を居抜きで稼働させる。その経緯をドキュメンタリーにまとめている。フィクションのシナリオができていたが如くに、経営者と労働者側の両方の立場を随時映像として捉える。それを巧みに編集して一本の映画にまとめた。片方の立場だけでは浮かび上がらない裏話がすべて織り込まれているところがすごい。


 中国は共産主義国というけれど、どちらかというと今は一国資本主義で統制をとる。むしろアメリカ企業の工場の方が前近代的資本主義の色彩が強い。それがくみ取れる映画である。ただ、この映画を観てアメリカ工場労働者の自信のなさとレベルの低さに正直驚いた。 

2008年冬、ゼネラルモーターズ(GM)社はオハイオ州デイトンの工場を閉鎖し、1万人が解雇された。その後オバマ大統領はGMの再建を試みるがデイトン工場は復活できなかった。2016年、中国の自動車ガラス製造会社フーヤオが廃工場の再生にあたることになり、GM社を解雇された人を含むアメリカ人労働者が雇用された。


アメリカ人の幹部のもと、中国から派遣された人々とアメリカ人が合同で工場を稼働させた。米中の従業員同士ではプライベートの交流も生まれている。しかし、アメリカ人は仕事に慣れない。また、従業員の組合結成については経営者側が反対し対立が徐々に深まっていく。アメリカ人の幹部も解雇され、英語も堪能の新しい幹部が工場を仕切ることになる。

1.どっちが資本主義国?
中国企業フーヤオのデイトン工場開所式には、地元オハイオ州選出の共和党の上院議員が来賓で登場しスピーチする。この上院議員はスピーチで経営者側と組合側がうまく協力し合ってという話をする。アメリカの工場では当然という労使関係である。しかし、下打ち合わせができていなかったせいか、これを聞いてフーヤオの会長は組合ができるのであれば撤退すると納得しない。


たしかに、まだ出来たての工場でいきなり組合ができたら困るというのは経営者側からみたら全くごもっとも。従業員を懐柔しようとパーティを仕掛けて一緒にYMCAなんて歌って踊ったりして経営者側も労使協調を仕掛ける。組合を作らせないためのコンサルタントなんてすごい人物が登場する。

米国は資本主義で、中国は共産主義というように学校では今でも教えているんであろうか?米国の資本主義は今だ変わらないが、中国に関しては一国資本主義というべき、中国共産党主導の資本主義経済前提の全体主義という体制である。絶対的な権力を持つ中国共産党には誰も逆らえない。全体主義ということではナチスやスターリン時代のソ連と同じだ。逆らったらたいへんなことになる。

ここでは昔のGM時代の流れもあったので、組合をつくって従業員の権利を主張したいという意向のようである。ただ、組合を作らせないフーヤオの動きを見て、自動車労連のような外部の連中までがプラカードもって大騒ぎする。むしろ外野がうるさい。おいおい、これって昭和40年代までの日本の学園紛争や労働運動みたいじゃない。レベル低い。別の会社に共産党系の闘士がちょっかい出すといった感じだ。昔の教育を受けてきた人がみると、米中どっちが資本主義かと一瞬違和感を覚えるだろう。

2.階級闘争が日本と違う
工場の作業に慣れきれないアメリカ人が続出している。それはそれで仕方ない。でも、日本であれば熟練工になろうと努力するであろうが、それもない。日本の場合、いわゆるブルーカラーと言われる工場労働者とホワイトカラーとの障壁はなくなってきている。昭和40年代から大企業ではブルーカラーの待遇がホワイトカラーと一般社員なら大きく変わらない人事制度を作り上げてきた。(小熊英二 日本社会のしくみ pp.463-465、477-488) 


それだけに社員の中での分断はなく欧米にまだみられる職種別の労働運動というのは日本ではみられなくなっている。今朝の日経新聞の記事によると労組組織率は16%だという。それでも十分労使はうまくいっている。この映画で見る限りは日本の労働者と比較すると、工場労働者は組合に頼らないと何もできないように見受けられる存在だ。

GAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、Amazon、マイクロソフト)5社の株価の時価総額が日本の一部上場会社の時価総額を抜くほど大きく経済が進化したアメリカで労働者とインテリジェンスと知的格差が極端になっていると言える。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「オペレーション・フィナーレ」 オスカー・アイザック&ベン・キングスレー

2020-05-16 21:23:20 | 映画(洋画:2019年以降主演男性)
映画「オペレーション・フィナーレ」は2018年のNetflix映画


1960年、イスラエルの諜報特務庁モサドの選抜された部隊が、アルゼンチンのブエノスアイレスで密かに生活しているユダヤ人大惨殺の責任者アドルフ・アイヒマンを捕らえて母国イスラエルに輸送するまでを描いている。

以前自分がブログアップした映画「ハンナアーレントでは、主人公である哲学者ハンナアーレントが傍聴するアドルフ・アイヒマンのイスラエルでの裁判が焦点になっている。ニュース映画映像で裁判の模様が挿入されていた。映画「ハンナアーレントではアドルフ・アイヒマンが捕らえられたシーンは一瞬だけど、今回はその経緯に焦点があたるということでみることにした。


アドルフ・アイヒマンをオスカー俳優ベン・キングスレーが演じ、アイヒマンを捕らえようとするイスラエルの秘密部隊ににオスカー・アイザック、フランスの美人女優メラニー・ロランが登場する。バックで流れる音楽も緊迫感を高め、映画の質は高い。傑作というわけではないが、これによっていろんな歴史的背景がよくわかり楽しめた。

1960年のブエノスアイレス、ユダヤ人のシルビアがひょんなきっかけでクラウスと知り合う。2人は恋に落ちていく。クラウスがシルビアの家に招かれ、盲目のシルビアの父と食事をしているときに、ドイツ人のクラウスの父親はすでに戦死していて、今は伯父と暮らしていることを話す。その後、クラウスはある集会にシルビアを連れて行く。反ユダヤ人で一致団結する集会でシルビアは圧倒されその場を去って行った。一連のことでシルビアの親子はその伯父リカルド・クレメントがユダヤ人虐殺の指揮官アドルフ・アイヒマンではないかと疑い、イスラエルに通報する。

イスラエルの諜報特務庁モサドに情報が入り、ピーター・マルキン(オスカー・アイザック)やハンナ(メラニー・ロラン)をはじめとしたチームが結成された。ピーターはアイヒマンと誤ってオーストラリア人を殺したことがあった。部隊のミッションはアイヒマンを見つけてその場で射殺するのではなく、そのままイスラエルに連行して裁判にかけるというシナリオである。


モサドのメンバー2人がシルビアとともにアイヒマンが住んでいると思われる家に向かった。シルビアが訪問する口実はクラウスとともに行った集会から先に帰ってしまった失礼を詫びるということである。家では母親と伯父(ベン・キングスレー)が出迎えた。帰宅したクラウスがシルビアに対してそっけない対応したために伯父は怒る。そのとき、横にシルビアがいたが、父さんわかったと思わず言ってしまう。


改めて、クラウスの父親がアイヒマンだということがわかった。モサドの特殊部隊がアイヒマンをおびき寄せて本人の身柄を確保する作戦を組み、夜分にアイヒマン宅の近くで待機するのであるが。。。

映画ハンナアーレントでもアドルフ・アイヒマンが捕まるシーンがある。「オペレーションフィナーレ」ではまったくの異国でアイヒマンの身柄拘束するまでの長い道のりを映画でじっくり追っていくのかと思っていた。ところが、意外に早い時間でアイヒマン本人を捕まえてしまう。あれ?という感じ。どちらかというと、この後がたいへんなわけである。単純にはいかない。この映画の焦点はむしろそこである。

1.イスラエル収監への道
アイヒマンを確保して、隠れ家に連れて行く。まずは、アイヒマン本人であることを認めてもらわなければならない。それに時間がかかる。しかも、自分で手を下したことも認めてもらう必要がある。アイヒマンはあくまで上の命令と主張する。しかも、アイヒマンは裁判を受けるならイスラエルでなく、アルゼンチンで受けるとも言っている。そう簡単にはいかない。この手順に時間がかかる。

もともと、アイヒマン本人を確保してアルゼンチンからイスラエルに連れて行くミッションがある。何でアルゼンチンに来るのかという口実も必要だ。アルゼンチン建国150周年を記念して、政府要人がアルゼンチンへ行って祝う名目で向かう。要人を乗せる空港会社の乗務員に諜報部隊が扮するのだ。この脱出劇は映画「アルゴ」なども連想させる。ある意味、滞在国の隙をついて脱出するということではカルロス・ゴーンの日本脱出も近い気がする。当然国際法に違反する。たやすいことではなかったのだ。


2.親ナチスのアルゼンチン政権
アルフレッドヒッチコック監督の作品に日本題汚名という1946年の映画がある。ケイリー・グラントイングリッド・バーグマンがこれでもかという位熱いキスを何度も交わす映画である。この映画では、イングリッド・バーグマンの父親がナチスのスパイとして裁かれているという役柄で、ケイリー・グラントが南米に逃亡したナチスの残党を探し出すFBIの捜査官という設定だ。そして、映画「カサブランカ」の人情派警官クロードレインズが演じるナチス残党の親玉を南米リオ・デ・ジャネイロまで追っていくという話だ。


汚名をみたときには南米に逃れたナチス残党もいたのかという感じだった。その後ハンナアーレント、そして「オペレーション・フィナーレ」と併せた三作を通じて、南米にナチスの残党が数多く居住していた事実がよくわかる。


ハンナアーレントではアドルフ・アイヒマンが南米で捕まったシーンが出てくるが、一瞬でそのシーンが終わるので、現地の警察が捕まえたと推測していた。ここでのイスラエルの特殊部隊はアルゼンチン政府に承認されたものではない。しかも、ナチス残党は離陸ギリギリまでアイヒマンを取り戻そうとしていたのだ。

南米にはもともとドイツ移民が多く居住しており、第二次大戦中にもアルゼンチンナチスドイツは親しい関係にあった。大戦中は基本的に中立の立場でいたが、独裁政権を率いるファン・ペロン大統領ナチスドイツに恩義を感じていたのだ。戦後多くのナチス残党が亡命するときには人道的立場でローマカトリック教会も絡んだ。1955年にいったんファン・ペロン大統領が失脚するが、政策の流れは大きくはかわらない。この事件のあった1960年当時もナチス残党は勢力を保っていたのであろう。

高校の世界史では、当然のことながら1940年代半ばからアルゼンチンは親ナチスのファン・ペロン政権だったとは習わない。まったく知らない世界であった。映画は勉強になる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「ジョン・デロリアン」 

2020-05-10 09:56:58 | 映画(洋画:2019年以降主演男性)
映画「ジョン・デロリアン」は2019年に日本公開のアメリカ映画


ジョン・デロリアンは一世を風靡したアメリカのカー・デザイナーである。元々GM(ゼネラルモーターズ)の花形開発者で、自ら自動車会社を立ち上げ世間をあっと言わせるデザインの車をつくっている。

この話はジョン・デロリアンの伝記ではない。証人保護プログラムで守られている麻薬密輸の前歴のある元パイロットが、FBIに協力して大物麻薬ディーラーを売り渡すように仕組んでいく。その話に元パイロットの隣家に住むジョン・デロリアンがからんでいく。この映画はその一部始終に焦点を合わせている。

麻薬取引に関わる映画は当事者関係が複雑でいつもわかりにくいことが多い。ここでも、序盤戦にこまかい説明は少ない。なんで捕まえたのに普通に生活しているんだ?なんで捕まえたFBIの捜査官と話しているんだ?と頭の整理をしていくにつれ、途中でようやく脳が追いついていく。ディスコパーティのシーンには自分の世代は親しみがあり、少しずつ気分が高揚する。いくつかのエピソードがおもしろく、70年代後半独特のにおいも充満させている。まあまあって感じかな。


1977年、南カリフォルニア。副業でドラッグの密輸をしていたパイロットのジム・ホフマン(ジェイソン・サダイキス)は、麻薬密売の現場をFBIに押さえられる。罪を問われない代わりにFBI捜査官のベネディクト(コリー・ストール)の情報提供者となる。ジムは引っ越した家の隣に住むのがポンテアック・GTOの開発に携わったジョン・デロリアン(リー・ペイス)だと知り驚く。


ジョンはゴージャスな家に住み、派手なホームパーティにはジム夫妻も招待された。自らの会社を立ち上げ、斬新なデザインの新型車“デロリアン”を開発している。しかしせっかくの新車も様々なトラブルが発生し、思うようには売れていないことがわかる。会社運営のために資金繰りに窮しているようだ。そこで、ジムは、麻薬ディーラーのモーガンとジョンを取り引きさせて、FBIに麻薬密売の罪で売り渡す計画を立てるのだったが。。

映画はあくまでパイロットのジム・ホフマンの視線がメインだ。基本的な映画のストーリーと平行してジョン・デロリアンの罪が問われる裁判でジム・ホフマンが証人台に立つシーンを映し出す。焦点はジョン・デロリアンが自らの意思で麻薬取引をやろうとしていたのか?FBIによるおとり捜査かどうかである。

1.証人保護プログラム
ジム・ホフマンはパイロットの立場を利用して麻薬をこっそり運んでいくのが、FBIにばれる。映画「バリー・シール」でもトムクルーズがドラッグを密輸するパイロットを演じていた。こんな奴いっぱいいたのかね?普通であれば、逮捕されて終わりである。

ところが、麻薬ディーリングのことを知っているジムはFBIにとって利用価値がある。いったん、白紙にして証人保護プログラムを活用する。パスポートや証明書まで新しいものが交付され完全な別人になる。 アメリカ映画にはたびたび出てくるが、日本ではこういう制度はない。実際には国家機密でそれらしき人がいるのかもしれないが、われわれにはわからない。


2.典型的70年代後半のホームディスコパーティ
ジョン・デロリアンは自宅に大勢の招待客をあつめてディスコパーティを開いている。この時代であれば、日本でも不思議ではないシーンだ。ここでかかるディスコミュージックがゴキゲンである。


まずはクール&ザ・キングの「ゲットダウン オン イット」、おなじみの曲だ。フロアでみんな揃ってのステップダンスを踊る。77年だとステップダンスがなくなる境目かも?ジョン・デロリアンはいかにも遊び人モードをだしていて、招待客の美女と踊っている。それをみつけて焼きもちを焼く奥さんと華麗にダンス。理屈なく気分が高揚する。



そして、当時六本木のでディスコでもよくかかったピーチス&ハープの「ファン・タイム」、この映画って1977年の想定だというけど、いずれももっと後80年くらいの曲だよ。映画をみながら一瞬時代背景に?って感じである。



そのあとが、テイストオブハニーの1978年9月の全米ヒットチャートナンバー1でこれもディスコでよくかかった「今夜はブギウギ」だ。六本木ロアビルの道路を隔てた正面のかどにハンバーガーインがあった。そのすぐ奥に2階がディスコだったTGIフライデーがあり、そこではじめて聴いた記憶がある。このころ、新宿と六本木ではかかる曲がまったくちがっていた。



これらの曲がバックで流れるだけで当時のあっけらかんとした雰囲気が伝わる。われわれより5年上になると簡単なことでもむずかしく話す学生運動世代なんだよね。これがまたバカで最低な人種が多い。

3.麻薬ディーラーのパフォーマンス
このド派手なパーティに麻薬ディーラーの大物モーガンがジムの友人ということで自分の情婦を連れて遊びにくる。ジムは2人を引き合わせて、派手な暮らしをしているようで裏では金に困っているジョン・デロリアンとモーガンを結びつけようとしているのだ。


ただ、モーガンとその情婦はまわりとはまったく違うあばずれカップルである。ジムとこの2人がジョンの寝室に入って、麻薬をやり始める。すると、モーガンの情婦は自分の服を脱いで裸になり、ジョン・デロリアンの妻のドレスを着始める。もうラリっている情婦の動きはとりやめられない。周囲にからんでパーティはぶち壊し、自分のドレスを着てプールに入り込む情婦をみてジョン・デロリアンの妻はあ然、このシーンのバカさ加減には笑える。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「バスターのバラード」 コーエン兄弟

2020-05-02 16:57:53 | 映画(洋画:2019年以降主演男性)
映画「バスターのバラード」は2018年のコーエン兄弟監督のNetflix映画


コーエン兄弟監督による西部劇のオムニバス映画で、6つの短編映画でできている。コーエン兄弟監督作品は欠かさずみている。むしろこのブログができた10年ほど前の方が熱心に彼らの作品を追っていた。「バスターのバラード」っていつの間に完成していただろうなあと感じてみた。まさしく短編小説を読むが如くそれぞれが楽しめる。全部が好きというわけではないが、コーエン兄弟監督作品独特のユーモアが満ちあふれるショットに魅せられる。

The Ballad of Buster Scruggs
最初の主役はバスター・スクラッグスティム・ブレイク・ネルソン)というカウボーイ、いつも歌っているいかにも調子のいい男だ。でも、拳銃の腕前はピカイチ、無法者をあっという間に片付ける。


ポーカーゲームが繰り広げられている酒場に入って因縁をつけられる。相手は銃をこちらに向けるが、この酒場は入り口で銃を預けるシステムだ。どうするバスター?と思いしや、バスターはテーブルの板を思いっきり踏み込むと板がテコの原理で反対側が跳ね上がり、無法者の銃が自らにむけて暴発で相手がイチコロ。このシーンで一気に目が覚める。他の因縁をつけられた男との対決では相手の指を次から次へと撃ち落とす。

このあと、別のオチがつくのであるが、コーエン兄弟作品らしく芸が凝っていて、なかなかおもしろいじゃんと一気に映画に引き込まれる。

このあとも、2話)荒野の一軒家のように建つ信託銀行に強盗に入ってきた男と銀行の主のやりとり。3話)金塊を掘り出すために緑あふれる山の間を流れる川のそばで生活する男がようやく見つけたときに、背後から襲われる話。


4話)手足のない男を見世物にして生計を立てている興行主が、四則演算ができる鳥で繁盛している小屋を見つけて乗りかえてしまう話。5話)オレゴンにいる婚約者のもとに向かおうとしていた若い娘が、途中で別のいい男に求婚されているときにインディアンに襲われる話。


6話)駅馬車で同乗する6人の男女の会話。

それぞれ5つの物語がある。6話は訳のわからない会話が続いてちょっとつまらないのを除けば、オチを書くのもためらうくらいおもしろい。
1.短編小説のような物語
オムニバス映画って、全然別々のストーリーが実はどこかでつながっていることが多い。でもここではそれぞれが独立している。時代背景がほぼ同じというだけである。コーエン兄弟が映画作りのためにシコシコネタをため込んできた形跡が感じられる。かといって、一つの物語の流れでは全部のネタは使えない。そんな感じでできた短編集なのであろう。


短編小説の名手吉行淳之介がこう書いている。「長い棒があるとしますね。長編は左から右まで棒の全体を書く。短編は短く切って切り口で全体をみせる。あるいは、短い草がはえていて、すぐ抜けるのと根がはっているのとがある。地上の短い部分を書いて根まで想像させるものがあれば、いくら短いものでもよいと思う。」

金塊を見つけた男や見世物でもうけている興行主の行く末、若い娘に求婚していた男が究極の事実を知ってどうなるのか?など想像に任せるのがいいのであろう。そのあたりはコーエン兄弟は自分なりに考えているんだけど、芥川龍之介の「藪の中」が如く観客に想像させるのだ。

2.ネイティブアメリカンの襲撃
自分が子供の頃までは、アメリカのTV西部劇がそのままゴールデンタイムに放映されていることが多かった。「ララミー牧場」にしろ「ローハイド」にしろそうだ。自分はまだ子供で主題歌には親しみを持ったけど、ストーリーがよくわかるというわけではない。そのときはいつもインディアンに襲撃されて立ち向かうという場面によく出会った気がする。

ジョン・ウェイン主演の名作映画「駅馬車」でもいわゆる最後のスピード感あふれる名場面はインディアンとの対決だ。そのせいか、今は「駅馬車」自体人種差別を助長していると言われることがあると聞いたことがある。あり得そうな話である。


ここでは2話と5話にインディアンの集団が襲撃する場面がある。いずれも無法者の連中という設定である。え!こういうのも作れるんだと思った。これってNetflix映画だからというわけではないと思うけど。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「アイリッシュマン」 ロバート・デ・ニーロ&アル・パチーノ

2020-04-28 19:50:28 | 映画(洋画:2019年以降主演男性)
映画「アイリッシュマン」は2019年公開のNetflix映画


「アイリッシュマン」は今年のアカデミー賞レースでも最有力と言われたマーチン・スコセッシ監督の作品である。ネット配信映画が受賞するのもどうかという話もあった。ともかく、上演時間が3時間半と長い。映画館でも上映したが、これだけ長いと時間調整が難しい。途中にインターミッションがあるアラビアのロレンス並みの長さである。ともかくNetflixで見ることにした。

デニーロ、パチーノと大スターの共演だが、実質的な主演はロバート・デ・ニーロである。役柄は面倒な奴を始末する殺し屋である。アイルランド出身で第二次大戦中イタリア戦線に進駐したことがあり、片言のイタリア語が話せる。それもあってかイタリア系マフィアに可愛がられる。アル・パチーノ は全米トラック運転手組合委員長であるにもかかわらずマフィアにも近い。組合で預かっている年金の資金を思うがままに動かしている。そして、デニーロを引き立てたマフィアの親分ジョー・ペシは裏社会の大物とこの三人を中心にストーリーは流れる。

トラック運転手のフランク・シーラン(ロバート・デ・ニーロ)は牛肉の塊肉を運ぶ仕事をしている。フランクは肉を横流しして、他の店に格安で売りつけていた。盗んでいたことがバレて裁判にかけられる。裁判では運よく弁護士のビルに助けられ無罪となる。弁護士の紹介でマフィアのボスであるラッセル・ファブリーア(ジョー・ペシ)に会う。フランクはたまたまトラックの応急処置をしてもらったことで面識があった。フランクは度胸の良さを買われ、ラッセルのマフィアの仕事を手伝うことになる。


フランクは、ウィスパーズという男から商売敵のユダヤ系クリーニング店を放火するという仕事を引き受ける。ところが、放火する直前でラッセルに止められる。フランクはラッセルに引き連れられフィラデルフィアのマフィアのボスであるアンジェロ・ブルーノ(ハーヴェイ・カイテル)に会う。フランクが放火しようとしたのはブルーノも投資していたクリーニング店であることを知る。危うくクリーニング店を焼くところだった。ブルーノはフランクに、仕事を依頼したウィスパーズを殺させる。フランクはこれを機にマフィアの殺し屋として次々と暗殺を繰り返していく。使用した銃は橋の上から投げ捨てていた。

フランクは、ラッセルから全米トラック運転手組合「チームスターズ」委員長ジミー・ホッファ(アル・パチーノ)を紹介されます。ホッファのボディーガードを務めながら、家族ぐるみの付き合いを築いていたフランクでしたが、ホッファは組合の年金積立金を不正使用した罪で逮捕されるのであるが。。。。


1.ジョーペシ
グッドフェローズカジノでの背が小さいのにキンキンうるさいマフィア役が印象深かった。こういう背が小さくてうるさい奴って我々の周りにも割といるよね。若き日のロバートデニーロがアカデミー賞主演男優賞を受賞したボクシング映画「レイジングブル」でのコーチ役が一番適役って感じがする。ここでのジョーペシも激しかった。主演を引き立てる意味でも好演だった。


今回は若干違う。背が低いのは画面で見るとよくわからない。しかも、うるさくない。言葉を選んで話す役だ。貫禄がある。マフィアの黒幕という雰囲気を醸し出している。誰かに似ているなと思ったら、そう麻生太郎だ。彼もそれくらい人相が悪いということだ。今回久々の映画出演で、マーチンスコセッシ監督が直々に何度も説得してようやく出たそうだ。彼でよかったと思う。

人相が悪いといえば、この映画に出てくるマフィアの男たちはともかく悪玉の顔だ。昨年「ケーキの切れない非行少年たち」という本を読んだ。衝撃を受けた。非行少年はもう直しようがないほどすべてがゆがんで見えて、ケーキもまともに切れないということが書いてあった。この映画に出てくる悪いやつらに一度同じことをさせてみたい。

2. ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノ
ロバート・デ・ニーロ演じるフランクは次から次へと請け負った殺人をこなしていく。必殺仕事人というべきだろう。これが意外とあっさりだ。じれったく時間をとることはない。イタリアンレストランでマフィアの生意気な親分を殺す場面がある。「ゴッドファーザー」アルパチーノがマフィアの親分を同じイタリアンレストランでじれったく殺す場面を連想する。個人的には映画史上でも好きな場面だ。そのときと同じような雰囲気かと思ったら割とあっさりだ。外に車が待機しているのは同じだけど。

それでも殺しでは捕まらない。今だったら町中に監視カメラがあるわけだから、当然犯人だとわかってしまうだろう。そこが20世紀半ばを描いた映画だとできてしまう。でも、娘のペギーの目だけはごまかせない。殺しのあと、家に帰って殺人事件の報道をTVでみているフランクを鋭いまなざしで見る。これもこの映画の見どころだ。


アルパチーノ演じるジミー・ホッファはトラック組合の委員長でこの当時はケネディ大統領と同じくらいの影響力があった有名人だったそうな。日本でも労働貴族という言葉があった。労働組合の下っ端はみんな貧乏だけど、上はいろいろと裏金も動いたんじゃないかな?クルーザーにのって豪華な生活という記事を昔みたことがある。ジミー・ホッファは運転手たちの年金資金を組合で運用する名目で預かる。ところが、その資金で銀行からまともに融資されないカジノに提供していたという今だったらたいへんなことになる話だ。それが通るだよね。60年代は。

ロバートデニーロとアルパチーノとの共演はありそうで少ない。ともに主演級だからであろう。「ゴッドファーザーⅡ」では全く違う時代の二人なので、共演とは言えない。銃撃戦が激しい「ヒート」で共演しているが、かたやはぐれ刑事のアルパチーノに対して、マフィア親玉のロバートデニーロの2人が同じ画面に出るのはワンシーンだけである。 「ボーダー」は同じ刑事で相棒同士という設定なので、実質的な最初の競演かもしれんない。


この二人年を取ってしまったものだ。超一流としての存在感はあるのであるが、格闘シーンに動きの鈍さは感じる。2人とも70代後半、しかもアルパチーノは80歳に到達する。これが10年前に撮られていたのであればまだ違うのであろう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「1917 命をかけた伝令」 サム・メンデス

2020-02-19 06:43:54 | 映画(洋画:2019年以降主演男性)
映画「1917 命をかけた伝令」を映画館で観てきました。


映画「1917 命をかけた伝令」はゴールデングローブ賞作品賞を受賞してアカデミー賞の本命と言われた作品である。「アメリカン・ビューティ」「007スカイフォール」「007スペクターサム・メンデス監督が祖父から聞いた話をもとに脚本を作り自ら監督をした。第一次世界大戦中に最重要伝令を伝えるために敵の陣地を抜けて味方部隊がいる最前線に進む英国軍の2人の兵士を追う。

映画を観ていて主人公にシミュレーションゲームのように数々の難関が押し寄せる様子は太宰治の「走れメロス」を連想した。一筆書きのように連続してワンカットで主人公を追っていく。ワンカット作品では「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」が有名である。

カメラワークが実に素晴らしく、緊迫感のある中でさまよいながら進んでいく主人公を捉える。撮影監督ロジャー・ディーキンスのアカデミー賞撮影賞の受賞は当然とも言うべきカメラ捌きといえる。

第一次世界大戦中の1917年、欧州西部戦線ではドイツ軍と連合国軍の消耗戦が続いていた。4月6日、イギリス軍のマッケンジー大佐の部隊は撤退したドイツ軍を追撃していたが、敵軍は退却したと見せかけて、要塞化された陣地に最新兵器を揃えて待ち構えていることが判明する。明朝の突撃を中止しなければ、1600人の友軍の全滅は避けられない。伝えるための電話線が切れている。

英国軍の兵士スコフィールド(ジョージ・マッケイ)とブレイク(ディーン=チャールズ・チャップマン)は、大佐の部隊に戦闘中止を伝達する命をエリンモア将軍から受ける。

ドイツ軍の占領地に分け入る2人に、敵が仕掛けたトラップが襲いかかかるが。。。

1.押し寄せる難関
相手の砲撃から身を守るための塹壕(ざんごう)が延々と続いている。その中を伝令を受けた二人は延々と歩く。それをカメラが連続的に追う。そのあとで敵の陣地だったエリアを歩く。たしかに相手は撤退しているように見える。しかし、洞窟のような場所をさまようとトラップに引っかかる。爆破でスコフィールドは埋まってしまう。それをブレイクが助ける。スコフィールドは目が見えない。なんとか立ち上がり目的地に向かう。

数軒の空き家が見える。誰もいない。上を見上げると、ドイツ軍と自国軍の空中戦がおこなわれている。ドイツ軍機が墜落してきて空き家にぶつかる。思わず敵のパイロットを助けようとしたら、ブレイクがうずくまっているのであるが。。。


このような形で、シミュレーションゲームのように難関が2人に襲いかかる。味方の部隊の車に助けられるが、車が泥沼に埋まったり橋が爆破されて車がこれ以上行けない。一人で潰された橋を渡って向かおうとすると、ドイツ軍の兵士の銃撃を受ける。こうして戦場の中、常に殺されるかもしれない緊張感の中で進んでいくのだ。


2.走れメロス
メロスは自分を処刑するなら、3日待ってくれといい、親友を人質にして妹の結婚式に向かう。ちゃんと帰らないと友人が処刑される。結婚式を終え戻ろうとすると、山賊に襲われたり、激流の川に流されたりする。やっとの思いで帰還するストーリーを連想してしまう。

主人公は敵の射撃から逃げるために川に飛び込む。一気に流される。このあたりもカメラがずっと追っている。セットなのか、実際の川なのかわからないが、主人公は大変な目に遭う。

流されて死んでもおかしくない。死体も川にはたくさん岸に積んである。

戦争映画と言っても、相手との攻撃を映すというわけではない。伝令をうけたまま、なんとか伝えようと懸命に陣地へ向かう兵士に押し寄せる難関をどう乗り越えていくのかをみせる映画である。それにしてもロジャー・ディーキンスの腕前には承服した。次に彼の映すカメラワークをみるのが楽しみである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする