映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「草原に抱かれて」

2023-09-29 05:10:37 | 映画(アジア)
映画「草原に抱かれて」を映画館で観てきました。


映画「草原に抱かれて」は中国のモンゴル自治区に住む認知症の母親とミュージシャンの息子の親子の交情を描く作品である。中国語原題は臍の緒(へその緒)である。親子のつながりを意味するということだろう。モンゴル国に面して、モンゴル人が約500万人居住する中国のモンゴル自治区がある。いったん都市部を離れると大草原地帯にはいる。文化大革命の頃から大量の漢人が入ってきて、今では自治区の80%は漢人でモンゴルの方が少ない。しかも、モンゴル人がひどい迫害を受けた歴史があるという。まったく縁のない世界に関心があり、この映画を選択する。

電子楽器のミュージシャンアルス(イデル)が久しく会っていない母親(バドマ)を訪ねて兄の家へ行くと、母は認知症が悪化して息子が誰だかわからなくなっていた。近隣にも迷惑をかけて兄夫婦は嫌気がさしている。そこで母親を連れて大草原地帯にある昔住んだ家に向かう。当然電気も水道もないところだ。そんなところでも、目を離すと外へ出て行方不明になってしまう。自分と母親に腰にひもをつけて行動する。近くに住む女性にも助けてもらいながら、ミュージシャンとしての創作活動の拠点を移す。


大草原の映像を観ると心がなごむ。
自宅の近所でも年寄りが行方不明になっているとの尋ね人の放送がよく流れている。息子の存在すらわからない母親はわがままで周囲に迷惑をかけている。お漏らしもしてしまうこともある。放っておくと外に出て行ったきり行方知れずになってしまう。かなり面倒な話である。でも、まるで幼児に戻ったような動きを見せる時がある。母息子をむすぶひもは見ようによってはへその緒だ。認知症なだけで裏のあるような人間ではなく、嫌気がするような映画ではない。


映画が始まる前に中国の映倫が承認しているという画面がでる。反体制的な動きはないと予想される。その通りだった。政治に関わる話、黒社会的要素が一切ない。面倒な姑を抱えた時の女の愚痴くらいでこれは万国共通だ。せいぜい葛藤が誰が認知症の母親の面倒を見るかでの兄弟の争いもかわいいもんだ。

緯度的には北海道と同じくらいか?場所によってはもう少し北か?地名は出てこない。冬場の撮影でないので、寒そうだけどは降っていない。気がつくと最後まで雨も降らない。果てしなく草原が続いていて、たまに牛や羊がでてくる。遙か遠くに地平線がみえる。監督は若手の女性監督チャオスーシュエだ。主役がベテラン女優なのでやりやすかったのでは?こんなのどかなところに行ったらどうなるんだろう。飽きちゃうだろうなあ。


最後に向けての結末は、本当だったらどうなっちゃうんだろう?
怪獣映画のような終わり方だった。
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映画「兎たちの暴走」

2023-09-01 18:16:13 | 映画(アジア)
中国映画「兎たちの暴走」を観てきました。


映画「兎たちの暴走」は中国映画、内陸部の工業都市で起きた殺人事件を描くクライムドラマだ。実際の事件にもとづく。中国映画でも裏びれた町の一角での泥くさい犯罪モノは好きだし、ピックアップして観ている。今年はじめに日本公開された「シャドウプレイ」も中国の裏事情にスポットをあてた自分が好きなタイプの映画だった。同じスタッフが今回参加しているという。2020年に映画祭に出品された映画が今さら公開というのもずいぶんと遅い気もするが、興味深い。でも、公開館は少ない。

中国四川省の工業都市の女子高校生シュイチン(リーゲンシー)は、父と継母と弟と暮らしている。しかし、継母とは折り合いが悪い。その街に一歳の時に別れ大都市に移った実母チューイン(ワンチェン)が帰ってくる。ダンサーの母親は感傷的にならず冷静だが、シュイチンは実母に接近する。ところが、実母は200万元の多額の借金があり、黒社会筋のヤミ金の取立てに追われていて、しかも期限が迫っていた。


女性監督らしくきめが細かい。あらゆる映像に目が行き届いた感触をもつ良作である。
女の子の微妙な心理状態がよく描かれている。エンディングなどに欠点もあるけど、掘り出し物の一つだろう。

ポイントは、継母といい関係が築けない女の子のもとに、幼い頃に別れた母親が身近なところに戻ってくる時に女の子が感じる心の動きだ。その母親は美しく、スポーティーな黄色のクルマを乗りまわし、学校で仲間にもダンスを教えてくれる自慢の母親だ。再会できて誰よりもうれしい。その実母が怪しい奴らに追われている。しかも、多額の借金をしていて、遠方から取り立てが来ている。何とか実母を助けなければという健気な気持ちだ。そこでインチキ誘拐事件を装って友人の実家からカネを引き出そうと企むのだ。


実質主役とも言える高校生を演じるリーゲンシーは、「初恋のきた道」の頃のチャンツィーを彷彿させる純真な少女だ。一歳の時に自分を捨てた母親だけど、実母には違いない。母親を慕う気持ちで犯罪に加担した主人公が実に切ない。珍しく実際の犯人に同情心を持ってしまう。

ここでは、主人公シュイチンの友人として2人女の子を登場させる。1人は家は裕福なんだけど、意地の悪い子でいわゆる女のいやらしさを兼ね備えている。もう1人はモデルになるくらいの美貌をもち金持ちから自分の養女にしたいと言われている子で、心配性の実父から虐待を受けている。この2人の使い方は女性監督ならではかもしれない。ストーリーのネタバレになるので言わないが、事件にも関わってくる。


つい最近も韓国映画「あしたの少女」で女性監督が巧みに脚本監督をこなしたが、ここでもシェン・ユー監督が巧い。四川省といっても広い。今回の舞台となる工業都市は中核都市成都とは700km以上離れている。東京から青森の距離だ。金沙江と言う川に沿った工業都市で,煙突から煙がもうもうと出ている。実際には別の都市で起きた事件のようだが,ロケハンがうまく良い撮影地を見つけて,現地の高校生たちにも協力してもらったようだ。その辺の配慮が映画を見ているとよくわかる。
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映画「君は行く先を知らない」

2023-08-31 20:22:52 | 映画(アジア)
映画「君は行く先を知らない」を映画館で観てきました。


映画「君は行く先を知らない」はイラン映画のロードムービーである。父親が反体制の映画監督ジャファル・パナヒの長男であるパナー・パナヒが本作のメガホンをもつ。シーア派のイスラム国で常にアメリカと対立しているイランの映画も、別の中東の国で撮影してイランのことを描く作品に見るべきものがある作品もある。でも、昨年の「白い牛のバラッド」などを除いては相性は良い方ではない。それでも、映画ポスターに映る子どもの表情が無邪気な感じで好感を持ったのと、自分のロードムービー好きもあり映画館に向かう。


夫婦と成年に達したばかりの長男とまだ幼い次男の4人と一匹の犬を乗せた車で、イランの国土を縦断している。そのまま高原地帯に入っていき、不穏な人物と出会う映像が続く。


よくわからない映画だった。
宗教的な背景やイラン国に住む人たちに関する潜在的知識がないと、映画の内容を理解するのは難しいのではないか?自分はさっぱり意味不明だった。解説を読んでも、書いてある言葉に対応するシーンで、ハッキリと言葉で示されていないのでよくわからない。何かしら登場人物をバックストーリーの映像で示すと背景がわかったかもしれないが、それもない。

長男の目的が隣のトルコへ移り住むということなのに、それを幼い弟に示さないで最後の旅をするということなので、言葉にされないのでよりわかりづらい。ここまで観客の能力を要求されると自分にはきつい。

もともとイランというと、自分は乾いた国土というイメージを持っていた。実際に砂漠のようなエリアやまさに乾いた荒野のような場所も走る。その一方で、緑あふれる山を映し出し、涼しげに流れる川で水際にいるシーンや温泉のようなところに皆が浸かっているシーンなどを観ると、まず人生でイランに足を踏むことはないだろう自分にとっては興味深い。


反体制派の監督がメガホンを持つのに,イランイスラム共和国大使館イラン文化センターが後援となっているのは,国家批判の言葉が少なく見ようによっては観光映画のように描かれているせいかもしれない。

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香港映画「私のプリンスエドワード」ステフィー・タン

2023-06-03 17:42:17 | 映画(アジア)
映画「私のプリンスエドワード」を映画館で観てきました。


映画「私のプリンスエドワード」は武蔵野館の新世代香港映画特集で「縁路はるばる」に引き続き観た。香港好きの自分としては、現代香港を撮ったこの映画を観ないわけにはいかない。「縁路はるばる」は自分の好みの作品であった。ここでは新鋭女性監督ノリス・ウォンによる偽装結婚も題材に加えた現代香港の結婚事情を覗き込む。

香港のプリンス・エドワード地区(太子)にある金都商場は、結婚式に必要なものすべてが格安で揃えられるショッピングモールだ。ウェディングショップで働くフォン(ステフィー・タン)は、ウェディングフォト専門店のオーナーであるエドワード(ジュー・パクホン)と同棲中。ある日、エドワードからプロポーズを受けたフォンだったが、実は10年前に中国大陸の男性と偽装結婚しており、その婚姻がまだ継続中であることが判明する。それでフォンは偽装結婚の離婚手続きと結婚式の準備を同時に進めるという話だ。


結婚式グッズが揃うショッピングモールで働く男女が、結婚に向かって準備している。でも、女性には大陸の男との偽装結婚の履歴があってそれを打ち消さねばならないという課題を解決せねばならないというわけだ。

現代香港の若者のウェディング事情がよくわかる。
主演のステフィータンを東京の街に放っても誰も中国人だとはわからないだろう。素敵な女性だ。広東語でまくしたてるといかにも気の強い香港人女性ぽくなる。相手役のジュー・パクホンはラブコメデイ的要素を意識させるお笑い系のキャラを持っている。その一方で、クールな主役女性のキャラクターがシリアスに見えてしまう。いかにも香港人女性監督による作品というのがよくわかる。香港人の気質を知っている自分からすると、全く不自然ではない。でも、コメディになりきれないのでのれない日本人もいるのでは?


⒈偽装結婚
主人公が何で偽装結婚しなければならなかったのか?という理由はよくわからない。実家を飛び出して1人暮らしをするためにお金がいるという。たしかに家賃が高い香港に住むのは大変だ。日本から移り住んだ日本人も大手企業の香港駐在員以外はほとんどルームシェアだ。

でも、ほんの少しのお金を得るために戸籍を汚すという心理がよくわからない。逆に大陸の中国人からすると香港の居住権が欲しい。実際にカネで偽装結婚した人がいるから映画の題材になったのであろう。自分には香港人の心理の方が意味不明といった感じがする。

結婚解消するために、偽装結婚した大陸に住む男性と交渉する過程や偽装結婚をそうでないと示す写真を撮ったりする場面に奇異な印象を持つ。相手が住む大陸の福州にまさに遠路はるばるバスで向かう。中国の知らない町を映し出すそれ自体はありがたい。


⒉マザコンの婚約者
女性監督がつくったというのが顕著に出るのは、男性側のマザコンぶりである。母親が結婚式の段取りを一気に仕切る。披露宴をやるつもりはなかったのに、母親が自分の友人を中心に招待客をかき集める。見栄っ張りだ。フィアンセ側があきれた顔をしても、母親が一気に突き進む.。母親の暴走を極端に強調する。いかにも姑を嫌う女性監督がつくったと思わせる構図だ。


実は香港のプリンスエドワード(太子)には行ったことがない。旺角(モンコック)の次の駅だ。今回の舞台の金都商場は典型的な香港の商店モールである。親しみをもつ。「縁路はるばる」の主演のお兄ちゃんがこの映画でも、エドワードのアシスタント役で出演していた。自分には「縁路はるばる」の方がよくできている映画だと感じる。
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香港映画「縁路はるばる」

2023-05-22 04:28:33 | 映画(アジア)
映画「縁路はるばる」を映画館で観てきました。


映画「縁路はるばる」は香港映画、IT系企業に勤める若き男性が、香港の中でも僻地に住む5人の女性と付き合うラブコメディである。新世代香港映画特集として観た。アモス・ウィー監督の作品だ。民主化デモ以来なかなか香港に行けていないので、こういったミニシアターの特集は現代香港を知る上でもありがたい作品だ。香港島や九龍の中心部が描かれることの多い香港映画では異色の存在で行ったことがないエリアだ。しかも、黒社会系ドンパチの類ではないし、民主化デモにも触れていない。変わりつつある辺境部を中心に現代香港の若者の偶像が見れてうれしい。


香港のIT系の企業につとめるハウ(カーキサム)は大学で情報工学を学んだ28才のいわゆるオタク系の社員だ。これまで2人の女性と付き合ったが、結局フラれてしまった。恋愛には自信がない。そんなハウにもモテ期が訪れて、美女5人と次々とデートをするチャンスに恵まれるという話だ。

香港好きの自分としては、心地よく観れた映画だった。
あえて、香港の中心部でなく、中心から約40km以上離れた中国本土との境や離島方面に女性たちが住んでいるという設定にする。沙頭角、下白泥、大澳、船灣荔枝窩、長洲、茶菓嶺という地名だ。香港には方々行った自分でもなじみは薄い。


その昔からすると、なくなりつつある村部エリアを舞台にする。緑あふれる山間部や海を見渡すなかなか貴重な映像だ。目の保養になる。ハイキングもできてしまう場所もある。島部といえば自分も南Y島には中環からフェリーで向かったことがある。海辺のオープンエアで食べる海鮮料理がおいしかった。最後に空港のあるランタオ島に近い長州島で締めくくるのはうれしい。


ハウはもともと女性と面と向かって会話するのも苦手な男性だ。ただ、香港ではエリートとされる香港中文大学を卒業して、IT系企業でそれなりの仕事はしている。同じような婚活をしている女性たちから見て、結婚相手としては悪くはない存在だろう。そんなハウが奥手ながら5人の女性とデートするようになる。会社の同僚、親友の結婚式の介添の女性、婚活アプリで知り合った女性、大学時代のマドンナや一緒にチームを組んだ仲間などである。以前から知っている女性からすると、空気みたいな存在だったのが一気に近づく。森山未來「モテキ」のような要素をもつ。


もしかして、日本の30前後の女性よりも香港の女の子の方が結婚願望が強いのではないかと思わせるセリフが目立つ。30までに子供が欲しいという女性もいる。積極的な女性が多い。女性には疎いハウも少しづつ修練を重ねていく。

日本でいうと、酒井法子のようなかわいいタイプの顔を香港人は好む。5人の女性はまさにそのタイプでいずれも美人揃いだ。性格的には気の強い女性が多い香港人そのものである。現代のIT気質を象徴するようなタッチで描く新しいタイプの香港映画が観れたのはうれしい。
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映画「セールスガールの考現学」

2023-04-30 17:30:21 | 映画(アジア)
映画「セールスガールの考現学」を映画館で観てきました。


映画「セールスガールの考現学」モンゴルのアダルトグッズ屋で働く大学生バイトに焦点をあてた作品である。モンゴルについては、行ったこともないしほとんど知識がない。共産国だと昔学校で習ったのが、ソ連崩壊とともに自由主義経済となっている。当然モンゴル映画は初めてだ。評判がまあまあなので、映画館に向かうとこれが大当たりだ。

大学で原子力を学ぶサロール(バヤルツェツェグ・バヤルジャルガル)が友人が骨折をしたことで、代わりにアダルトグッズのショップでバイトすることになった。ショップののオーナーは怪しげなムードを持ったカティア(エンフトール・オィドブジャムツ)という謎めいた女性だけど、毎日売上を持っていくと色々と教えてくれる。イヤなことに遭って辞めようとしてもなだめられ続けていくという話である。それをコミカルタッチに描く。

これはむちゃくちゃおもしろかった。
主人公のサロールはごく普通の大学生で、大人のおもちゃを扱うといってもエロさはないかわいい女の子である。一昔前の薬師丸ひろ子にも似ている。世間一般でいうモンゴル人ぽい細目のルックスではなく、日本人の中に入ってもまったく違和感は感じないだろう。「パターソン」ジムジャームッシュ監督やフィンランドのアキカウリマスキ監督の作品がもつ朴訥なムードが流れる快作だ。

セールスガールというのは英語原題であるが、日本ではいわゆる外回りの営業に使う言葉である。ここでの彼女はいわゆるショップの「売り子」である。そう題名につけては元も子もないのかもしれない。

そんな女の子が一人で店番をするお店に、いろんな客が来店してきて数多くのエピソードが生まれる。巨根の「男根」を贈り物と言って求める女性や、顔を隠しながらあわててバイアグラを買いにくる男性など大勢くる。配達にも行く。ラブホテルにグッズを持っていき代金を授受する。ホテルで警察による売春の一斉摘発があり、配達で現場にいると他の売春婦とともに引っ張られる。すぐ釈放されて、もう辞めるというにも関わらずオーナーに慰留されて辞めない。


⒈考現学
原題にはない考現学なんてすごい言葉を題名に使う。今和次郎の「考現学入門」を読んだことあるけど、戦前の街の様子を調べた本だ。街を歩いている人の服装が和装か洋装か?とか歩いている人が職人か小僧か?とかを数字でカウントして統計的に今ある世相を調べていく。最近でいうフィールドワークの手法だ。

この女子学生がそのように学問的に調べているかというと違う。でも、アダルトグッズをどんな人が買いにくるのかなんてことは店員にならないと絶対にわからないだろう。別の意味で店に固定した定点観測になっている。


⒉モンゴルの街
現代モンゴルに関することはほとんど知らない。13世紀にモンゴル民族がアジアを制覇して、21世紀に大相撲を制覇したことくらいはわかる。大草原の中で固定的に居住せず遊牧民が生活するというイメージを持っていた。

ここで映る現代モンゴル(たぶんウランバートル)は都会だ。ビル群が建ち並び、道路では最新のクルマが走る。登場人物が住むアパートのキッチンや設備も新しいし広い部屋だ。(最近の日本映画に映るアパートの方が貧相だ。)オーナーの住居もリッチにできている。そんなに貧しそうな国には見えない。とは言え、大草原のシーンも一部用意されていた。小さい子供たちがサロールが乗る車に向かってキノコを売り込んでいた。まだまだ国としては発展途上かもしれない。


⒊ロシアの影響
映像に映る文字を観て、ロシア語みたいだと思った。調べてみると、どうやらアルファベット系は似たような文字を使っているようだ。ロシア革命以降、早い時期に共産化したモンゴルなので、文化的にもソ連の強い影響を受けていたのであろう。中国人とほぼ同じ顔立ちなのに漢字文化は映画を見る限りでは見当たらない

ショップのオーナーのカティアの家に行って食べる料理がピロシキとボルシチのロシア料理のようだと思ったら、主人公のサロールとカティアがロシア料理のレストランに行くシーンがある。そこで魚料理を食べて、カティアはロシア語でロシア人の客と会話する。すると、サロールが自分の父親がロシア語教師だったというセリフもある。ロシアとの関係は今でも強いようだ。

ロシア料理好きの自分からすると親近感を感じる。


⒋コミカルなエピソード(ネタバレなのでご注意)
エピソードが盛りだくさんだ。アダルトショップに大学の女性教員が現れて、サロールは一瞬驚くが後日「2人だけの秘密」プレゼントをあげるシーンがあったり、倦怠期のサロールの父親に更年期かと母親が心配しているので、父親のお茶にバイアグラを入れる。一転して元気になった父親と機嫌のいい母親が寝室に消えていくシーンなど満載だ。あらゆるエピソードにコミカルなムードを含ませる。

その中でも、観客の笑いを最も誘ったシーンがある。ラストに向けてサロールが男性の友人を自宅の自室に誘ってコトをいたそうとする時に男性が暴発するシーンだ。自分のような年寄りは約50年前だったら同じようなことがあったかもしれないとほくそ笑むのかもしれない。これには笑えた。
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映画「崖上のスパイ」チャン・イーモア

2023-02-12 18:30:18 | 映画(アジア)
映画「崖上のスパイ」を映画館で観てきました。


「崖上のスパイ」は中国の巨匠チャンイーモアが1934年満州国統治時代のスパイ活動を題材にした新作である。2つのオリンピック開会式で演出をつとめたチャンイーモアは中国映画界では最高の監督であるのは誰もが認めること。日本の傀儡政権満州国の特務組織に対して、正体を隠しての潜入者も含めてスパイ活動を描いていく。

1934年ソ連で教育を受けた4人の共産党のスパイが満州国の大雪が降る山間部に降り立つ。2人の男女で二方向に分かれて行動するのを、内偵者によって満州国の特務警察はつかんでいた。泳がされながら移動するが、リーダー格が当局に捕まる中で寝返りした者たちも作戦に助言を与えてスパイ戦が続く。


いかにもチャンイーモア監督の映画らしく映像は美しい
騙しだまされて敵味方が交錯するのはスパイ映画にはありがちなパターンだ。ただ、それぞれの場面の理解がしづらい。あまり事前情報を得ずに映画を観るタイプなので、女性陣はわかっても男性陣の顔が同じように見えてしまう。深く雪が積もる山間部にパラシュートで降り立った後も、極寒のため服で顔が隠れている。登場人物がよくわからないままにストーリーが進む。それでも、列車の中での緊迫感のある場面など見どころは数多く用意する。

この映画をこれから観る人は作品情報で登場人物の顔を確認してから行くことを勧める。

映画ではずっと雪が降り続く。音楽も極寒の景色にあっていてムードを高める。ハルビンの街の撮影はセットなのであろうか?それともそのまま残っている古い建物の中で撮影されたのであろうか?戦前のクラシックカーでカーチェイスのシーンもある。こんなに車潰して大丈夫なんだろうか?と思ってしまう。


中国共産党の先人にはこういう人たちがいたという宣伝映画の様相も呈している。すこし興ざめしてしまう。サスペンス映画としては弱い気がする。

巨匠チャンイーモア監督の新作であると同時に、中国共産党を評価する映画なので映画予算はふんだんにあるのであろうか?気になったのは、満州国の特務警察の中に日本人がいなかったこと。さすがにトップは日本人だったんじゃなかろうか?


あとは、女性スパイの1人がいかにもチャンイーモア好みの女の子だったこと。コンリー、チャンツィイーの若き日を彷彿させる小蘭役のリウハオツンがかわいい。出演しているチャンイーモアの前作「ワンセカンド」はコロナ期で上映館が少なく観れていない。おそらく人気スターになるだろう。
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映画「シャドウ・プレイ」 ロウ・イエ

2023-02-01 20:13:20 | 映画(アジア)
映画「シャドウ・プレイ」を映画館で観てきました。


映画「シャドウプレイ」は中国のロウイエ監督が広州の都市開発エリアで実際に起きた事件に基づいて制作した作品だ。台湾、香港のロケ撮影を含めて2017年には完成していて2019年に中国公開、今回ようやく日本公開となる。中国の裏社会に通じるフィルムノワール映画ってわりと好きだ。「罪の手ざわり」以降のジャ・ジャンクー作品でも裏社会が絡んだ移り行く中国を映し出す。ただ、こういう類の映画はあまり当局からはよく見られていない。完成から中国公開に2年かかったことでもよくわかる。

強烈に電圧の高い映画である。
アクション映画としてのレベルが高い。一見の価値がある。
カット割りが多く、スピード感がある。「仁義なき戦い」を思わせる手持ちカメラの映像を駆使して素早いテンポで進む。ブレまくりの映像で緊迫感が高まる。タンの妻リンがアユンと車の中でもめに揉めるシーンがある。激しいシーンでこちらまで身をくねらせてしまう。ただ、いったいどうやってこのシーンを撮ったんだろうと思わせる。カメラワークが凄すぎる。



2013年広州天河区の高層ビルが建ち並ぶ横にゴチャゴチャした住宅が並ぶエリアがあった。開発業者が立ち退きの条件交渉をしている時に、解体工事が着手された。


怒った住民たちが暴動を起こすと、役所の補償責任者タン(チャン・ソンウェン)が仲裁に入る。ところが、肝心のタンがビルの上から転落して死亡する。開発業者の社長ジャン(チン・ハオ)がタンの殺しに絡んでいるのではとの疑いもあり、ヤン刑事(ジン・ボーラン)が捜査を始める。いきなり妨害に入られて要らぬ疑いを持たれる。タンの妻リン(ソン・ジア)がジャンの元恋人だったことやビジネスの相棒アユンが行方不明になったことを含めてヤン刑事が事件を追う。


香港ノワールやクライムサスペンスが得意な韓国映画でもここまで凄まじいアクションを観たことがない。香港や台湾ロケも含めてお金がかかっている印象を受ける。他の中国映画同様エロティックなシーンは抑え気味だが、残虐さは半端でない


中国人からすると、立ち退き「収用による補償金をたくさんもらえて儲かる。這いあがるチャンスだ」という気持ちが強い。その趣旨でいくと、他にも似たような作品はある。でも、ここまでのすごいアクションは見せない。

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映画「柳川」 中野良子&池松壮亮

2022-12-31 21:40:47 | 映画(アジア)
映画「柳川」を映画館で観てきました。

映画「柳川」は中国朝鮮族のチャンリュル監督による福岡県柳川を舞台にした中国映画である。映画ポスターの夜のムードが雰囲気良さそう。2011年の夏と2019年の冬の2回柳川でお堀を舟で遊覧したことがあり、なじみがある。中国人男女3人が主演だが、池松壮亮と中野良子が日本人俳優として加わる。

末期がんを宣告されたドン(チャン・ルーイー)が飲みながら兄チュン(シン・バイチン)を日本の柳川への旅に誘う。行く気のなかった兄に、柳川は中国読みでリュチュアンで、元恋人の名前と同じだと伝える。しかも、柳川に行方不明だった元恋人チュアン(ニー・ニー)がいるらしいと連れ出す。2人は柳川のバーで歌を歌っているチュアンと再会するとともに、宿泊している宿の主人中山(池松壮亮)や居酒屋の女将(中野良子)と交流する日々を描いていく。

予想通り柳川のお堀付近の映像はきれいだった。
人気のない街路のしっとりとした夜のムードも、船頭が誘導するお堀を遊覧する舟に乗る姿も優雅である。観ていてたのしい。美しいショットも数多く、エピソードも次から次へと盛りだくさんに出てくる。ただ、つぎはぎの感はある。つながりに流れがないのが残念である。(筆者撮影↓)


⒈中野良子
久々にみる。自分が中学から高校にかけての人気はすさまじかった。NHKの「天下御免」をはじめとしてTVドラマで見ない日はなかった。田宮二郎主演TVドラマ「白い影」での看護婦役がなぜか印象に残っている。

高倉健主演「君よ憤怒の河を渡れ」が中国で大ヒットした影響はその後も残っている。文化大革命の悪夢が明けたあとで、観れる映画も限られていただろう。オリンピックの開会式の演出もやった中国映画界の巨匠チャンイーモウ監督高倉健主演の映画をつくったくらいだ。当然ヒロインの中野良子はもてはやされる。

日本では忘れられた存在の中野良子もここではいい感じの居酒屋の女将を演じる。中国人兄弟の会話を絶妙に交わす会話は手慣れているプロの水商売の女将の雰囲気すらある。


⒉池松壮亮
中国人兄弟が泊まる古民家の民宿の主で、最初は大した役ではないのかと思った。ここで中国人兄弟と関係があった中国人女性チュアンとロンドンで出会い、君の名前と同じ「柳川」という町が日本にあるんだよと伝える。17歳の時にできてしまった15歳の娘がいる設定だ。

いつも通りのマイペースな演技である。
英語でチュアンと会話する。酒に呑まれる役で、いいところはまったくない。でも彼らしい感じである。


⒊柳川の町とと印象深いシーン
中国の朝鮮族だったというチャンリュル監督はかつて柳川の町を訪れたことがあったのであろう。そこで、ヒロインの名前が「柳川」を中国語読みしたリュチュアンという女性になったことや今回のストーリーの流れを思いついたと思われる。特に、お堀の近くの街路を中国人の3人が夜散歩するシーンが素敵だ。

でも、それだけではない。お堀をクロールで泳ぐ人を登場させたり、松岡修造が高校時代テニスに励んだ柳川高校の女子生徒が出演したり、柳川にルーツがあるジョンレノン夫人の小野洋子さんにつながる歌が流れたりする。おひな様がでてくる。確か、地域の領主だった立花家の邸宅で見たことがある。(筆者撮影↓)


ただ、いちばん素敵に見えたのは、自動販売機のそばでチュアンことニーニーがダンスするところ。かっこよかった。
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映画「七人樂隊」

2022-10-22 10:41:20 | 映画(アジア)
映画「七人樂隊」を映画館で観てきました。

映画「七人樂隊」は香港の7人の映画監督が時代の片隅に埋もれているショートストーリーを描いた作品である。アクション映画の巨匠ジョニートーが全体をまとめる。1時間50分で7作なので、1本あたりは短い。1950年代から現代まで追っていく。短い短編小説を読んでいる感覚だ。香港好きの自分としては、非常に親しみの持てる作品が続く。7本もあると、何をどう書いて良いのか迷う。

1作目は50年代の中国のアクロバットな舞踏団のきびしい稽古、練習をサボると罰を受けて延々と逆立ちをやらされる話、


2作目は恩師だった校長先生と旧交を温めるときにやさしかった若くして亡くなった美人教師をしのぶ話、3作目は付き合っていた高校生のカップルが、女の子の家族が海外に移住する別れの前に自分たちの将来がないことで葛藤する話、


4作目は海外に移住した息子の娘が一時帰国して、むかしカンフーの達人だった祖父と孫娘がチグハグな交情を交わす話

この辺りまでが香港返還くらいまでの時期である。ビル群の上を飛行機が飛び交う啓徳空港がまだあったころの時代背景だ。猥雑な部分とコロニアル文化が混じった自分が大好きな90年代の香港だ。物価も安い上に円高でいい買い物ができた。2〜4作で出ている女性がみんなかわいい。特に2作目の美人教師がやさしそうで素敵だ。香港人好みの若手美人女優を集めた。


1作目では体操の選手を一斉に集めたようなバク転連発の曲芸のようなパフォーマンスがいかにも香港的、3作目で山口百恵のコスモスの中国語版が流れる。香港でも流行ったのかな?出演者のヘアルックスはいかにも80年代後半頃だ。4作目のハンバーガーを食べる孫娘と彼女のために蒸し魚を作ってあげるカンフーの達人とのアンバランスさがおもしろく見れる。自分はやっぱり広東料理の蒸し魚の方がいい。


1997年のチャールズ皇太子(現国王)が参列した香港返還のセレモニーがつい昨日のような気がしてくる。

5作目はマネーゲームに関心を持った男女3人が、株や不動産の価格の上げ下げを感じながらもゲームに加われずうまくのれない話、6作目は久々に海外から香港に帰郷した男が、以前あった場所に同じ建物がなく右往左往してしまう話、最後は精神病院の入院患者のやりとりだけど意味がよくわからなかった。


5作目で、株を買おうとしたら気がつくと株価があっという間に高騰していて買えず、どんどん上がっていた後で急落してあたふたする光景は株を買う人は誰もが経験するパターン、その後SARSでどんどん不動産の売り物がでて、叩き売りになった時に誰も買わないシーンもある。結局その時点から比較して今は8倍になっている皮肉の話だ。なかなかうまくいかないことをコメディタッチにしておもしろい。ジョニートーの作品だ。「奪命金」という相場に関わる人たちを描いた作品を思い出す。


6作目で名優サイモンヤムが演じる初老の男が、香港中環(セントラル)でフェリー乗り場の移転に戸惑い、以前建てた建物がなくあたふたする話を見て、しばらく行けていない香港に自分が行った時に大丈夫なんだろうか?とふと感じてしまう。自分の好きなジョニートー「スリ」で香港の街で悠々とスリをする姿を見せるサイモンヤムとは正反対なので思わず吹き出す。


あたふたしているうちに主人公が交通事故に遭ってしまう話と仲本工事の事件が妙にダブる。この作品をつくったリンゴラムは亡くなってしまう。
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映画「アメリカから来た少女」

2022-10-08 19:32:35 | 映画(アジア)
台湾映画「アメリカから来た少女」を映画館で観てきました。


映画「アメリカから来た少女」は台湾映画、母娘3人でアメリカから台湾に帰国した13歳の少女が母国の学校生活に慣れずに戸惑う生活を描いている。韓国映画はちどりが好きな人はこの映画を気にいるかもしれないというコメントを見て気になり早速映画館に向かう。主人公と同じような境遇でアメリカで育った女性監督ロアン・フォンイーがメガホンを持ち、台湾映画界の各種映画賞を受賞したようだ。

2003年冬、母と妹とロサンゼルスで暮らしていた13歳のファンイー(ケイトリン・ファン)は、母(カリーナ・ラム)が乳がんになったため、3人で台湾に戻ってきて父と暮らす。台北の中学に通い始めたファンイーは、アメリカとは違う学校生活になかなか馴染めない。母に対しファンイーは反抗的な態度を取り続ける。親子の溝が広がっていく話である。


流れているムードは静かである。
比較的平坦な映画である。細かい逸話をいくつも重ねていくが、起伏は小さい。ちょうどSARSが流行した時期で、ストーリーに少しだけ織り交ぜる。自由なアメリカでの学校生活に比較すると、規則でがんじがらめになり戸惑う少女の心の動きと周囲から冷たい目で見られる姿を描く。病気で苦悩する母親は女のイヤな部分をここぞとばかり見せつけるので、自分はちょっと苦手。女性の方が気持ちが同化しやすいかもしれない。

「はちどり」は主人公の他に、漢文塾の先生という魅力的な女性を登場させたので傑作というべきレベルになった。オーディションで選ばれたケイトリン・ファンの演技はすばらしいが、映画としては「はちどり」と比べるとちょっと弱い。


⒈台湾の学校生活と意外な側面
アメリカではAの数が多いので、主人公ファンイーはいわゆる台北の名門校に編入できた。幼なじみとも仲良くなれた。でも、校則で髪を切らねばならずガッカリ、漢文の授業は苦手だ。しかも、母親の精神状態が不安定で家庭内がバラバラだ。とても勉強できるムードにない。成績もわるい。ここで、漢文の授業で点数が発表されて成績のわるい人は立てと言われるが、ファンイーは立たない。そこで女教師に体罰を受ける。この時代でもまだ残っていたのかと驚く。

さすがに大人扱いを受けた自分の高校では体罰はなかったが、昭和40年代半ば過ぎだった公立中学時代は、当然の如く体罰の嵐だった。別に部活動ではない。課題の出来が悪いだけで、美術の教師はお尻を竹刀で叩いたし、英語の教師も小さな棒で叩いていた。体育の教師は生徒をしょっちゅう殴っていた。当然その当時の教員は体育の教員を除き戦前派で軍隊こそ行くかどうかの境目くらいで、旧制中学くらいまで行っていた。戦前の体罰は自分の時代よりもひどかっただろう。

台湾は戦前は日本が統治していた訳で、この体罰の習慣も日本人教師が持ち込んだのであろう。映画の学校の保護者会の場面で体罰を肯定する発言が親から出ていたのには驚く。
今はどうなっているのであろうか。


⒉旧式のインターネットとSARS
2003年ってついこの間のような気もするが、はや19年経つ。ネット時代に入っているが、携帯電話も旧式だし、インターネットは電話回線で立ち上がりに時間がかかる。それでも、ファンイーは一人でネットカフェに入り、台湾の学校生活は不自由だとアメリカの親友にメールして愚痴をこぼす。母との衝突をブログ記事にして、学校の先生にもバレてしまう。

自分もSARSのおかげで毎年のように遊びに行っていた香港に行けなかった。ここでは、妹に熱が出て学校行事に行けるかどうかの問題が最後のストーリーの詰めの題材になっていく。


ここでは、父親の発言が気になる。台湾だけでは商売が成り立たないので、大陸に長期出張して家を空けざるを得ない。そもそも、そういう事情で母親と娘2人がアメリカに行ったのだ。現状、台湾海峡をめぐる事情も徐々に緊迫している。台湾人は当然現状維持を望むだろうが、そうはさせないと試みる。でも、台湾のビジネス上では大陸の影響を大きく受けるというのがセリフからわかり複雑な気持ちになる。
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インド映画「スーパー30 アーナンド先生の教室」

2022-10-01 19:57:47 | 映画(アジア)
インド映画「スーパー30」を映画館で観てきました。


「スーパー30 」はインド映画、貧しい境遇で育った勉強好きの子を無料で教える塾の教師の物語だ。目標はインド工科大学入試合格だ。中国映画少年の君では大学受験が題材になっていて現代中国受験事情がつかめた。ゼロを発見して古代から数学に強いインドはどうなんだろう。以前観たインドの数学の天才ラマヌジャンを描いた奇跡がくれた数式はおもしろかった。興味を持って映画館に向かう。

数学に長けて、英国のケンブリッジ大学から留学を認める通知がきたアーナンド(リティク・ローシャン)なのに、渡航して暮らす就学資金を懸命に用立てようと試みたが難しく断念する。

結局、インド工科大学を目指す高額所得者層の子弟が通う予備校の経営者ラッラン(アーディティヤ・シュリーワースタウ)に拾われ、たちまちカリスマ人気講師となる。ところが、勉強好きなのに金がなく進学を断念する少年を路上で見て、無料で学べる塾を始める。恵まれない子たちを選抜で30人に絞り、インド工科大学を目指して勉強を始めるのだ。

もといた進学塾からはクレームがつき、徹底的に妨害されても運営していたが、金欠では塾の運営もうまくいかない話の展開だ。


十分楽しめた。
実話に基づいているとはいえ、オーバーな表現も目立つ。バックの音楽はうるさいくらい奏でられるので、嫌な人もいるかもしれない。しかも、インド映画だけに上映時間が長いのが気になっていた。途中でインターミッションの表示も出ていた。それでも最後まで飽きなかった

いきなり、1.618のフィボナッチ数が出てきて、数学や物理の専門的な用語も出てくるかと思ったらそうでもない。歌に踊りのインド映画の中に、「王の子どもは王じゃない。王になるのは能力のある者だ」と金言を交えて生徒たちを教育する姿を描く。ただ、90年代から2000年代にかけてのインドが、同じ時期の中国と比べてあらゆる面でここまで遅れていて非常に貧しいのは意外だった。中国に比べて市場経済導入が遅れた。社会主義経済が主軸の国の危うさだろう。

⒈制度がない
奇跡がくれた数式ラマヌジャンは有名なインドが生んだ数学の天才ラマヌジャンの物語で、ラマヌジャンの天才ぶりが認められケンブリッジ大学の教授から招聘されて英国に向かう。これって今から100年前の1914年の話である。それなのに、アーナンドは20世紀の最後の話なのに行けない。父親の年金の前借りをした上に、文部大臣が数学の賞の表彰式で渡航費用を持つと言ったことを信じていく気になっていたのがオジャンだ。

どこへ陳情に行っても行っても「制度がない」の一言だ。奨学金とかの制度がないということなのか?悲劇だ。これが今から50年くらい前ならともかくインドってやっぱり貧しかったんだなあ。ラマヌジャンはカースト制のバラモン階級だったのでその違いか?


⒉スパルタ教育とインド工科大学
インド工科大学がすごいというのはいろんな本に書いてあるし、卒業生のGoogle CEOのサンダー・ピチャイなどがIT系のトップにいることも知っている。でもそれだけ。恥ずかしながら、インド工科大学がインド各地にいくつもの校舎があることは知らなかった。競争率50〜100倍というのは半端じゃない。そう簡単には入れないね。数学の入試問題を初めて見てみた。数Ⅲ程度の証明って感じだけど、ネットでわかる範囲では一部だし、何題をどれくらいの時間で解かねばならないのかわからないのでなんとも言えない。難しいのは確かだ。

まずは30人を選ばねばならないのにテストする。そこで振り落とすわけだ。次点の子が自分も入れてくれとお願いにきても、アーナンドは入れない「入試とは一点の差が大きい。甘くない。来年またきてくれ」という。


インド工科大学に入るために塾で講義するといっても、知恵の出し方を塾で教えているという印象を受ける。最後に向けて、インド工科大学の入試に行けないように妨害されて、頭を使って対抗する場面がある。福山雅治のガリレオシリーズの物理的な思考という感じを持った。本当にこんなことあったの?という感じも持ったがまあインド映画だし、いいでしょう。


歌って踊って大はしゃぎの場面もある。
インド人って普段の生活でもこんなことしているのかな?と思ってしまう。
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映画「女神の継承」

2022-08-04 18:39:17 | 映画(アジア)
映画「女神の継承」を映画館で観てきました。


タイ映画「女神の継承」は韓国のナ・ホンジンが原案を書き、プロデューサーに加わっている作品である。ナ・ホンジンといえば、「チェイサー」でわれわれの度肝を抜き、「哀しき獣」「コクソン」とクライムサスペンスの傑作を続けて世に出した名監督だ。

「女神の継承」はナ・ホンジン監督コクソンで描いたシャーマンの世界の延長上にあるようだ。「コクソン」では名優ファン・ジョンミンが祈祷師を演じて、人智を超えた何かに取り憑かれる世界を描いてわれわれを恐怖に陥れた。これは観るしかないと映画館に向かう。想像以上に観客は多い


タイの山奥の村落にいる祈祷師一族にスポットをあて、ドキュメンタリー映画っぽい展開で進む。一族の1人ミンという普通の女性が突然何かに取り憑かれるように狂い出す。周囲が解脱させようと懸命に試みるというストーリー展開だ。


正直自分には合わない映画だった。
クライムサスペンスのタッチはなく、どちらかというと実録ドキュメンタリーホラーTVのようなものだ。連想したのは「エクソシスト」である。主演のリンダブレアが緑色の嘔吐物を吐き出したシーンが衝撃的だった。自分が観たのは中学生の時だったけど、主役のミンが見せる狂気の姿は「エクソシスト」のエッセンスをかなり含んでいると感じる。今回のタイの監督バンジョン・ピサヤタナクーンはかなり意識したのではなかろうか?


一連のナ・ホンジンの映画は先を読ませないストーリーと予想外の展開に毎回驚かされた。でもこれはちょっと違う。ただ、気が狂っている女性を追うだけで物語の性質をあまり持たない。これでもかと次から次に凄いシーンをみせてくれる。でも、それだけなんだよなあ。悪霊に取り憑かれるミンは、白目をむいて発狂している姿を見せる。これが演技だとするとすごい。
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映画「blue island 憂鬱の島(香港)」

2022-07-17 05:16:11 | 映画(アジア)
映画「blue island 憂鬱の島(香港)」を映画館で観てきました。


2007年から映画を観るたびに、ノートに作品名を書いている。実は、記録した本数がついに3000本まで達した。大台に近づくにつれ、どの作品にしようかと思っていた。結局、大好きな香港に関する映画が公開されるので、これは好都合と記念の作品にしてしまう。3000に向かう気持ちは別の機会に雑感を書くことにする。

「Blue island 憂鬱之島」香港では公開されない香港在民たちの苦楽を描いたドキュメンタリーだ。途中では、若手俳優たちによる再現フィルム劇が挿入されている。正直、2019年からの民主化デモだけを取り上げるレポート的作品であれば、観にいかなかった。「香港デモ史」的な要素を持ち、文化大革命あたりからの反体制運動を描いているドキュメンタリーフィルムも織り込まれているとのことで関心を持つ。


1967年の六七運動、1989年の天安門事件にかかわる同胞支持のデモの話に加えて、2019年から2020年にかけて日本のTVでも随分と報道された民主化運動にかかわる話が中心だ。予想を超える感動は特にはない。こんなもんだろう。大好きな香港の見慣れた風景が出てきて、慌ただしくせわしない香港在民たちの動静を見ているだけで十分満足できる。

⒈ヴィクトリアハーバーで泳ぐ陳さん
文化大革命の頃に海を泳いで香港に来たという陳克治さんはなんと、毎日のように九龍サイドと香港島の間のヴィクトリアハーバーで泳ぐという。軽い準備運動をした後に、海パン姿で、優雅に泳ぐシーンには驚く。決してきれいな水とはいえないところだ。嵐の日も泳ぐ「007は2度死ぬ」ショーンコネリーが一旦姿を消したあの海だ。


陳さんは当時英国領だった香港に、中国から山を越えて妻と2人で逃げ込んだ。それを再現フィルムで、若手俳優が演じる。ともに香港返還がなされた後に生まれた俳優だ。このシーンを観て、「ラストエンペラー」ジョン・ローン主演で日本映画として香港で撮った「チャイナシャドー」を思い出した。香港のマスコミ界で活躍している黒幕のジョンローンが、中国本土から海を渡って香港に来たという設定だ。中国本土から脱出する似たようなシーンがある。「チャイナシャドー」では毛沢東が死んだ1976年に国境を越えているが、陳さんは1973年に渡っている。


当時の中国では1968年以降高校を卒業したら、産業の根幹である農業をやるために農村に行かねばならなかったそうだ。16日の日本経済新聞に中国の大学生の就職内定率が47%で、24歳までの若者の失業率が19%であるという記事があった。驚いた。大学進学率が58%で、一学年の大学卒業生がなんと1000万人以上だという。

日本は人口減少という問題を抱えている。でも、いまだ就職は売り手市場である。20代の安倍元首相支持率が高いことを不思議がる人がいるが、民主党政権時代の就職氷河期を連想する若者がアベノミクスによる雇用の回復を支持するのは当然だろう。リベラルという名で金儲けしているエセ知識人や駅で共◯党のビラを配っている赤ババアにはわかるまい。

⒉六七運動と天安門事件
六七運動という英国統治に対する反旗をあげた運動が1967年にあったのは知らなかった。文化大革命に影響された左派香港人が、中国のことは中国に任せろとばかりに大騒ぎをしたようだが、本土の中共は手助けをしなかったという。当時活動した人物が登場したけど、2019年のデモに関しては無関心を装っている。

1989年天安門事件の時には、北京での民主化運動を中国共産党が強行に鎮圧したのは歴史上有名な話だ。その時も、同胞として香港の運動家たちが支持したという。結局、2019年からの民主化運動も共産党政府にデモを鎮圧され、騒乱に対しては法令改正で強硬に取り締まるようになった。


映画によれば、文化大革命で20万人が本土から香港に移り住み、今回の民主化運動の顛末で9万人が去ったという。もっとも、中国返還が決まった時に、カナダなどに移住した人も多かったはずだ。個人的には、デモは自己満足と思っているクチで周囲に迷惑をかける騒乱は意味はないと思っている。鎮圧は当然だろう。

ただ、1997年の英国から中国への返還の趣旨からすると、中国共産党による高圧的な一党支配でなく、もっと香港在民に自由をという気持ちはものすごくよくわかる。世界中でもっとも自由経済がうまくいっていると言われる香港である。その自由にメスが入れば、シンガポールあたりに移住してしまう人が増えるだろう。良き時代の香港の自由が失われていくことを個人的には残念に思う。

平成になった後で、大学の同期が転勤で香港に行くことになり、そのあと初めて香港へ行ったのが香港好きになったきっかけだ。猥雑な街の雰囲気なのに、植民地文化の英国テイストが織り混ざる洗練された部分がある。しかも、食事のおいしさにぶったまげた。当時は今よりずっと安かった。こんなにおもしろいところはないと毎年のように通った。民主化運動のデモやコロナの影響で行けないのが残念で仕方ない。あの雑踏に身を任せたい。また行きたい。
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映画「英雄の証明」アスガー・ファルハディ

2022-04-04 21:36:26 | 映画(アジア)
映画「英雄の証明」を映画館で観てきました。


イラン映画「英雄の証明」アカデミー賞国際映画賞を2度受賞したアスガー・ファルハディ監督の作品である。ハイレベルの2021年カンヌ映画祭で2位にあたるグランプリを受賞している。善意の出来事で称賛を浴びた主人公が、SNSにアップした悪い情報で転落するという映画という情報だけで観に行く。

イランといえばイスラムシーア派の国で、イラン革命以来アメリカと政治的な争いを続けている。映画とは無縁に見えるが、レベルは高く、日本でも次々と公開されている。アスガルハーディー監督の「別離」は傑作の誉れが高いものの、自分には合わなかった。民族としての考え方にギャップを感じた。それでも、先日公開されたイラン映画白い牛のバラッド刺激的で重厚感のある傑作だと感じた。これで3作連続で2021年カンヌ映画祭の上位作品を観ることになる。

借金未払いの罪で収監されている男が、一時的出所の際に金貨をひろう。それを換金せずに、届け出た持ち主に返すのがネット上で美談とされマスコミの取材を受ける。ところが、これはでっち上げというのがSNSに投稿され拡散して立場を失うという話だ。


傑作とされるが、自分にはよくわからない映画だった。
これから観に行く人には、事前情報で予習することを勧めたい。おそらく2回目を観ると、もう少し情報があってディテールまで馴染むのであろう。でも、情報が少ないままに映画がスタートして、登場人物、特にヴェールをかぶっている女性の見分けがつかず、主人公が徐々に転落していくのはわかっても、理解度が弱く内容がつかめないままに最終場面を迎える始末だ。

普通は事前情報が少ない方が楽しめる。サスペンス仕立ては特にそうだ。この映画はイランの国に行ったことのある人などの現地生活や建物、宗教、風習などいろんなことに精通している方がたやすく理解できる映画だと思う。「別離」同様自分には理解しづらい映画だった。


ただ、驚いたのは、イランでネット文化が進んでいるということ。独裁国で言論統制されている国はもっといろんな情報が遮断されているかと思った。イスラムというだけで団結して国家の支持率も高く、反逆も少ないのであろう。もしかして、ネットにプアな高齢者が多い日本の方が遅れていたりして?

⒈主人公の転落を招く行動
借金のことが会話に出てくるが、そもそも主人公は何か刑事罰でも起こしたのかと思った。この男の罪は借金にまつわる話らしい。イランで借金未返済での刑務所暮らしの罰があると知らないと、映画に馴染めない。でも、何でそんなに多額の借金をしてしまったのかは映画では語られていない。

主人公は元妻と離婚している。吃ってうまく話せない息子がいて、姉家族に同居してもらっている。その元妻の兄貴に多額の借金がある。一部返済できそうになっても、満額返済でないとダメだと言われている。そんなやりとりの後で、SNSに悪い噂がupされる。てっきりこの兄貴のせいだと思い、小突いてしまうのだ。


あくまで一時的な出所なのに、暴力を振るってしまうなんて理性のあるふつうの人間だったら、耐えるところだ。それが難しいのだ。多額の借金といい、この暴力といい、我慢することができない主人公のダメさを見せる映画である。なので、感情移入する要素は少ない。自業自得という言葉しか浮かばない。

⒉ウソに包まれた言い訳
この金貨は自分がひろったわけではない。いまの恋人がひろったものなのだ。そこから始まって、嘘で固めているわけで、これも同情の余地がない。この映画で大きな対立軸は、カネを借金している元妻の兄との葛藤と仕事に就こうとして申請した管理官との葛藤だ。何をどう言っても、職を斡旋する管理官は納得しない。ふつうだったら、こういう妨害で主人公に同情がいきそうだけど、ウソに包まれた主人公には嫌悪感しか感じない。


イラン版ダメ男物語といったところかもしれない。もう少しマシな映画かと思ったけど、そうでもなかった。2021年カンヌ映画祭ではドライブマイカーが脚本賞を受賞している。パルムドールのチタンは激しすぎ、監督賞のアネットはストーリーが中途半端、そしてこの「英雄の証明」だ。自分にとってのパルムドールは「ドライブマイカーだな。
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