映画とライフデザイン

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映画「英雄の証明」アスガー・ファルハディ

2022-04-04 21:36:26 | 映画(アジア)
映画「英雄の証明」を映画館で観てきました。


イラン映画「英雄の証明」アカデミー賞国際映画賞を2度受賞したアスガー・ファルハディ監督の作品である。ハイレベルの2021年カンヌ映画祭で2位にあたるグランプリを受賞している。善意の出来事で称賛を浴びた主人公が、SNSにアップした悪い情報で転落するという映画という情報だけで観に行く。

イランといえばイスラムシーア派の国で、イラン革命以来アメリカと政治的な争いを続けている。映画とは無縁に見えるが、レベルは高く、日本でも次々と公開されている。アスガルハーディー監督の「別離」は傑作の誉れが高いものの、自分には合わなかった。民族としての考え方にギャップを感じた。それでも、先日公開されたイラン映画白い牛のバラッド刺激的で重厚感のある傑作だと感じた。これで3作連続で2021年カンヌ映画祭の上位作品を観ることになる。

借金未払いの罪で収監されている男が、一時的出所の際に金貨をひろう。それを換金せずに、届け出た持ち主に返すのがネット上で美談とされマスコミの取材を受ける。ところが、これはでっち上げというのがSNSに投稿され拡散して立場を失うという話だ。


傑作とされるが、自分にはよくわからない映画だった。
これから観に行く人には、事前情報で予習することを勧めたい。おそらく2回目を観ると、もう少し情報があってディテールまで馴染むのであろう。でも、情報が少ないままに映画がスタートして、登場人物、特にヴェールをかぶっている女性の見分けがつかず、主人公が徐々に転落していくのはわかっても、理解度が弱く内容がつかめないままに最終場面を迎える始末だ。

普通は事前情報が少ない方が楽しめる。サスペンス仕立ては特にそうだ。この映画はイランの国に行ったことのある人などの現地生活や建物、宗教、風習などいろんなことに精通している方がたやすく理解できる映画だと思う。「別離」同様自分には理解しづらい映画だった。


ただ、驚いたのは、イランでネット文化が進んでいるということ。独裁国で言論統制されている国はもっといろんな情報が遮断されているかと思った。イスラムというだけで団結して国家の支持率も高く、反逆も少ないのであろう。もしかして、ネットにプアな高齢者が多い日本の方が遅れていたりして?

⒈主人公の転落を招く行動
借金のことが会話に出てくるが、そもそも主人公は何か刑事罰でも起こしたのかと思った。この男の罪は借金にまつわる話らしい。イランで借金未返済での刑務所暮らしの罰があると知らないと、映画に馴染めない。でも、何でそんなに多額の借金をしてしまったのかは映画では語られていない。

主人公は元妻と離婚している。吃ってうまく話せない息子がいて、姉家族に同居してもらっている。その元妻の兄貴に多額の借金がある。一部返済できそうになっても、満額返済でないとダメだと言われている。そんなやりとりの後で、SNSに悪い噂がupされる。てっきりこの兄貴のせいだと思い、小突いてしまうのだ。


あくまで一時的な出所なのに、暴力を振るってしまうなんて理性のあるふつうの人間だったら、耐えるところだ。それが難しいのだ。多額の借金といい、この暴力といい、我慢することができない主人公のダメさを見せる映画である。なので、感情移入する要素は少ない。自業自得という言葉しか浮かばない。

⒉ウソに包まれた言い訳
この金貨は自分がひろったわけではない。いまの恋人がひろったものなのだ。そこから始まって、嘘で固めているわけで、これも同情の余地がない。この映画で大きな対立軸は、カネを借金している元妻の兄との葛藤と仕事に就こうとして申請した管理官との葛藤だ。何をどう言っても、職を斡旋する管理官は納得しない。ふつうだったら、こういう妨害で主人公に同情がいきそうだけど、ウソに包まれた主人公には嫌悪感しか感じない。


イラン版ダメ男物語といったところかもしれない。もう少しマシな映画かと思ったけど、そうでもなかった。2021年カンヌ映画祭ではドライブマイカーが脚本賞を受賞している。パルムドールのチタンは激しすぎ、監督賞のアネットはストーリーが中途半端、そしてこの「英雄の証明」だ。自分にとってのパルムドールは「ドライブマイカーだな。

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