2004年のアメリカ・イギリス映画『ネバーランド』を観ました。主演はジョニー・デップ。共演にケイト・ウィンスレットやダスティン・ホフマン。
内容は、名作『ピーターパン』をイギリスの劇作家ジェームズ・バリが書くきっかけとなった、デイビス夫人とその四人の子供との交流を描いたもの。ただ、映画の最初に“Inspired by True Stories”とあるように、あくまで実話にインスパイアを受けているのであって、史実をそのままなぞった話ではないそうです。実際にあった出来事を基に、ファンタジー映画として成立するように内容は変更されています。
ジェームズ・バリは新作の公演が不評に終わり、落ち込みを紛らわすために公園で書き物をします。そこで彼は未亡人のデイビス夫人と四人の子供たちと出会います。バリはその男の子たち、とりわけ三男のピーターとの交流を通して、あの『名作ピーターパン』を書き上げるのですが・・・
これはまるでジョニー・デップのために作られたような映画。一体この映画のバリ役を他に誰が演じることができるのか想像がつきません。デップ演じる劇作家バリは、年齢は大人でも子供のような純粋さとユーモアを兼ね備えた人物。彼は、父親をなくし塞ぎこんでいるピーターや、必死に母親を助けようとするその子供たちに、その持ち前のユーモアと想像力で、現実の中に喜びを見出すことの大切さを教えていきます。
ジョニー・デップはこの役でアカデミー主演男優賞にノミネートされましたが、確か当時は批評家に「ノミネートされるべきではない」「彼のベストの演技ではない」と評されていました。
しかし私には、今まで見た中でもこの映画のデップがベストです。おどけたようなユーモアを出しながらも、基本的には感情を抑えた彼の演技は、ファンタジーでありながら派手な演出を見せないこの映画に見事にフィットしています。『エド・ウッド』よりも、『スリーピー・ホロウ』よりも、私はこの映画のデップが好きです。
他の役者もまたみな素晴らしい。ケイト・ウィンスレットやダスティン・ホフマンも、知名度は一流なのに、静かに進行する映画にピタっと合う演技を見せ、画面に溶け込んでいます。
他にも、バリの妻役やデイビス夫人の母親役の女性など、出てくる役者みなが的確に役柄を演じて行きます。
これだけ有名な役者を起用しながら、映画は派手な演出もなく、ファンタジーでありながら、そこに嘘を感じさせません。音楽も、これも静かながら素晴らしい。
そのような落ち着いた展開だからこそ、ラストの場面で感動を呼び起こすのです。
ただ、とても感動的な映画だけに、デイビス家に実際にその後に起きた出来事を知ると、複雑な気持ちにさせられます(長男のジョージは第一次大戦で戦死し、四男のマイケルは20歳のときに、友人と共に溺れ死にます。さらに、「ピーターパン」のモデルとなったピーターは、ピーターパンと自分が世間で同一視されることに生涯悩み続け、63歳のときに、バーを出た後で列車が向かってくる線路で投身自殺します)。
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