風の谷通信

専業農家からの引退を画策する高齢者。ままならぬ世相を嘆きながらも、政治評論や文化・芸術・民俗などに関心を持っている。

偽装請負 その後

2007-02-28 18:21:03 | 世相あれこれ

風の谷通信 さん農園便りNo.2-050

偽装請負で汚く儲けていた企業がマスコミで叩かれて少しは変わったかも知れない。
厚生労働省のほうはその方針を少し変えた。今までは、偽装請負を発見すると派遣契約へと切り替えるように指導してきたが、今後は早期に直接雇用に切り変えるように指導することになった。派遣可能期間を越えて雇う場合には、企業がその労働者に直接雇用を申し込む義務も導入する。派遣労働形態がこれだけ広く定着すると、厳格に指導しなければならないという姿勢である。

派遣労働は、最初の導入から適用範囲を徐々に拡大して04年には製造業の一般労働にまで適用されるようになった。ある種の報道によると、今では全労働者の約30%が非正規雇用労働者であるという。大阪市のある弁護士が「労賃のピンはね」にも等しい方法を容認する労働者派遣法は廃止すべきだと主張している。

一方、世界の優良企業・キャノンが偽装請負を用いていたことが既に明らかになっているが、同社を率いる御手洗会長は「派遣・請負の分野ができ、会社が一人ひとりに声をかけなくても大量に雇えるようになった」とこの制度の意義を強調した。また「私はできるだけ日本で仕事をして失業を防ぐ覚悟でやってきた。海外工場の拡充でなく、日本で採用した。そうした採用が派遣・請負業界ができることで容易になった」と強調した。(発言の文言は朝日新聞の記事から引用) 言い換えれば、会社が個々の労働者に注意することなく、派遣業者という外注先を通して一括入手できることである。無責任な雇用体制である。

同時に、御手洗氏は経団連で求めている法人実効税率約10%引き下げの財源としては、消費税率の引き上げを想定していて、その引き上げ幅は11年までに2%、15年までに3%くらいだという。その心は「企業が国際競争力を持てば、雇用を増やし、税収も増え、循環する」とのこと。

果たしてその言葉通りに進むだろうか。経済学者の論評を聞きたいものである。市民を(国民といっても構わないが)不安定な非正規労働者に固定しておいて、企業は人件費を抑え労働者のための社会保険負担さえも逃れておいて、事業税率を下げて国際競争力を高めて税収を増やせば、市民が消費税10%を負担しても国内消費が伸び、社会や企業の富が増えて循環するのであろうか。非正規労働で劣悪待遇に甘んじる労働者達は、家庭の中で支えられてかろうじて生存している。一人では生きてはゆけない低賃金労働・結婚さえできない若者・幼児が病気になっても仕事を休めない母親・妊娠すると派遣契約を打ち切られると言う若い女性。そういった「最下層労働者」について、企業は各家庭の力を頼り、家庭に寄りかかって、家庭の犠牲において、企業の立場を守っていると言える。家庭協力がなければ企業は労働者を確保できないのだ。単純に労働者と雇用者という法的関係では維持できない労使関係である。 それが不純であることは明白。

私が働いたアメリカ系企業は8時間労働で労働者の1日全体を保護した。病欠は有給休暇以外の枠であった。日本企業は8時間の給与で労働者の1日全体を拘束して憚らない。しかも人格全体を拘束しようとする。  派遣労働者やパート勤務者については、その勤務時間の正規な給与さえ割引してして、24時間生きるはずの人間の数時間ぶんだけを切り取って利用しているだけだ。更に、安全対策といった人格の基本に関わるようなことの負担さえ逃れようとしている。それは派遣労働と偽装請負にそれぞれ部分的に・あるいは全体的に関わる真実である。

それでいて、法人税を下げよ!と言う。どこまで意地汚いのか。いい加減に日本人同士の叩き合いのような労働慣行を排してもらいたい。それで企業が成り立ち行かないのなら経営者が退陣すればよろしい。前任の奥田会長が「クビにするような経営者はダメ経営者だ」と言ったのに、現在の経団連会長はその力量が無いらしい。


関西テレビの刷新

2007-02-27 21:21:55 | 世相あれこれ

風の谷通信 さん農園便りNo.2-049

関西テレビの社長が辞任する方向で動いている。「あるある大事典」の捏造問題による引責辞任である。

もうだいぶん前からテレビは自壊の道を歩んでいる、と唱えてきたのが、やっぱり現実化したナ、という感じである。 言葉を道具として何かを伝えることを役割とするテレビが、その言葉を軽々しくも破壊し、伝えるべき内容をも歪めてきた。その心は「視聴率」であり、スポンサーがついて儲かれば何をしても構わない、自らを省みる気持ちはさらさら無し、といった姿勢である。 公共の電波を割り当ててもらって、報道の自由を持ちながら、無軌道なバカ番組を垂れ流すだけになり下がった。だから、以前に書いたが、テレビ育ちの大橋巨泉に「インテリと勝ち馬はテレビを見ない」といった意味の言葉を投げつけられた。

おかげで、放送業界に政府の干渉が強まりそうな雰囲気である。現在の政権党はこうした機会をてぐすね引いて待っているはずである。常々そんな姿勢で待ち構えているところへ「飛んで火に入る夏の虫」の如く、わざわざ規制を招くようなことを業界側がやってしまった。 大衆が無軌道な生活をすると、ある種の人たちが「道徳教育」を主張するのと同じことで、テレビが羽目をはずしたばっかりに規制を掛けようとする機運に火をつけてしまった。 自ら招いた桎梏である。

ほんとうは、何事も規制なんかやめて自由に振舞ってほしいのだけど、そしてそのほうが心豊かな表現活動ができるのだけど、無軌道に振舞うのを見るとつい目を背けたくなり、ついでにあんなものはなくなってほしい→なくしてしまえ→なくしてやろう・・・となってしまう。まして、権力を握る者にそう思わせると権力者は必ずその思いを実行する。

この事件に関して日本民間放送連盟が関西テレビの会員活動を当面停止処分にしたのはせめてもの救いではあるが、ことはそれでは終わりそうにない。そして関西テレビ自体は経営陣の刷新によりこの問題にケリを付けたい胎らしいが、後を襲うであろう経営陣がフジテレビ出身者になるとすれば果たして刷新が可能か? 捏造問題の波及は止まるだろうか。 更に、無秩序に無軌道にしたい放題の政治風土の中で、テレビ業界だけが襟をただせるだろうか、疑問である。 要注目。  合掌     


南極の新生物

2007-02-26 20:33:13 | 文化・文芸

風の谷通信 さん農園便りNo.2-048

地球温暖化の影響か?・・・ 南極大陸周辺の棚氷が消えた領域に、新種の生物が多数発見されたという(神戸新聞)。 記事に紹介されたラーセン棚氷が消えた海域では1940年代に比べて約2.5℃もの気温上昇が観測されていて、これが棚氷崩壊の原因と見られている。 棚氷が失われると、大陸から流れ込む水量が増えて、大幅な海面上昇が起きる可能性がある。

新種の生物達=深海性の魚、新種の甲殻類、脚が12本もあるヒトデ等など=が現れた、なんとも気持ち悪い状況変化である。人間が人間の世界を狭め、潰している。自らの足下を掘り崩している。杞憂と言うなかれ。世界の科学者達は警告しているが、政治や経済の世界で体制側にいる人たちはこれを黙殺している。曰く、原因がはっきりしない。化石燃料のせいではない。また曰く、経済活動が停滞する。あるいは曰く、産業活動のせいではなくて家庭生活や民生分野の廃棄物が原因である。

・・・・・・ そんなことを言ってるうちに、ますます気温は上がり、砂漠化が進み、森や耕地はやせ衰えて減り、飲用水は枯渇し、低緯度の熱帯植物が高緯度地域に拡散して温帯・寒帯の食用植物は衰え、氷は消えて海水面を高め、小さな島は沈み、都市は熱帯地獄と化す・・・。 でも影響が即座に見えないので多寡をくくっているのだ。既に影響は明白であるというのに。

それなのに・・・飽きもせずドンパチやって戦争に明け暮れる人達がいる。食糧確保を図るよりも、環境保全を図るよりも、征服欲と支配欲を優先させる人達がいる。曰く「人間を・国民を守るために」。 そりゃそうだが、人類そのものが生きてゆけなくなったら安全保障も戦争も何もあったもんじゃないだろうが。それこそは「ソドムとゴモラ」の退廃に至るしかない。イヤ、現在の世界は既にソドムやゴモラになっているのだろう。欲望は留まるところを知らず、ヒトは利だけを求めて走る。

これで、極地の氷が溶け、異常気象により特定地域に豪雨が降って、海面上昇・土地崩壊なんてことになったら、まさに「ノアの洪水」の再来、ヒマラヤ氷河湖の崩壊であり、グラハム・ハンコックの「神の世界」の再現である。 なんとかそれだけは御免蒙りたい。   合掌


ケヤキ再びのコンサート

2007-02-25 18:23:58 | 文化・文芸

風の谷通信 さん農園便りNo.2-047

高砂市の市民活動「ケヤキ再びのコンサート」を聴きました。

市民レベルの活動から、市の保存樹となったケヤキの樹は、いま県道43号線の東側沿いの公園に立っています。交番の少し北寄りですが、確か米田交番だったと思います。

移転に際して切り落としたケヤキの枝から作った「パンの笛」が澄み切った音を奏でてくれました。パンの笛はギリシャ神話に現れた楽器で牧神パンの持ち物です。この流れは正倉院の簫(しょう)に残っています。
パンの笛の奏者は岩田英憲(広島県人)です。伴奏はエレクトーンの藤原由紀さん、歌の共演はサラエボ出身のヤドランカさん。

コンサートの中心テーマは樹との交流ですが、風・野の花・樹の葉の世界が主体でした。背景写真は空を流れる小さな雲の群れでした。 悩みを持つ人たちに私は「風の音を聴きなさい」ということが多いですが、風が流れる世界がいろいろな心の世界で広く語られるのはうれしいことです。

 会場は1階700席が満杯の盛況であり、昨日からの冷たい風が続く中で、心温まる音楽を聴いて、楽しい一日でした。


追記 : 訂正の必要があり、一日遅れで追記しますが、再投稿するともとの日時で表示されるものと思います。さて上に、会場は1階700席が満杯と書きましたが、後で案内図を見ると1階で870席あり、2階席にも入っていたので恐らくは900人が入ったものと思います。いずれにしても高砂という土地柄でこんな大勢が参加した文化行事というのはいかにもすばらしかったことが判ります。 

揚げひばり

2007-02-24 19:44:33 | 季節の便り

風の谷通信 さん農園便りNo.2-046

きょうは朝から冷たい風が吹きました。実はきのうからの寒波です。急に数℃も下がるので身体の調子が狂います。  そして明日は高砂でコンサート「ケヤキ再びのコンサート」です。 先に2月4日の記事で紹介しておきましたが、その後神戸新聞で二回紹介されたしコラム「正平調」にも紹介され、今朝の朝日新聞でも紹介記事がありました。大きなケヤキの樹が伐採を免れて移植され生き延びた物語です。どんな音楽になるのか楽しみにしています。当日券もあるらしいのでどうぞ出かけてみてください。       合掌

  揚げひばり  2. 25, 97

冬の陽が淡く低い朝まだき/ 東から西へと山に霞がたなびき/
季節はずれの春を思わせる谷間に/ 揚げひばりの初鳴きを聞く//
ルリルリルリルリ ルリルリルリリ/ ルリルリルリルリリ  ルリルリルリリ/
飽かずたゆまず鳴き続ける//
誰よりも早く「この野は我が領土」と/ まわりの仲間に告げる鳴き声/
本物の春はまだ遠いけれども//