図はS.ランボーがチンパンジーに覚えさせた図形文字の一部です。
チンパンジーは人間のように発声できないので、人間の音声をまねさせることは出来ません。
そこで、彼らに言葉を教えようとすると、視覚に訴える形の言葉を使うことになって、このような図形言語が考案されるのでしょう。
人間が言葉を伝える手段として文字を作る場合、ものの形に似せた象形文字からスタートするのが普通ですが、チンパンジー用として作るときはなぜか象形文字ではありません。
象形文字を作るのがが一番簡単そうに見えますが、じっさい象形文字を作ろうとすると、結構難しいことがわかります。
たとえば漢字で「木」という文字は象形文字ということになっていますが、桃の木とか樫の木、松の木などいろんな木があって、それぞれを姿に似せて文字を作るのは大変で、その上それらをまとめた形で「木」という文字を作るのには相当程度の抽象力が必要です。
言葉を記号で表すとき、記号がその言葉が表すものの形をしていなくても差し支えないのです。
サルがモノを表す記号を覚えるときに、記号がそのモノの形に似ていなくても良いならば、いっそのことカナとかアルファベットを覚えさせて、カナやアルファベットで表された単語を覚えさせてもよさそうなものです。
たとえばカナを覚えさせ、「いし」は「い」と「し」をつなげたものと教えれば、かな文字をつなげて言葉を表すことが出来そうに思えます。
ところが実際にはこのような方法はチンパンジーには難しいので、ひとつの記号にひとつの言葉を対応させて覚えさせるという方法をとっています。
表音文字のように要素を組み合わせて作った単語を覚えるのは手間がかかるので、漢字のようにひとつの記号で一気に覚えるほうが楽なのです。
幼児でも簡単に漢字が覚えられるとして、文字と写真を同時に見せ(たとえば鷹という漢字と鷹の絵)て覚えさせるという教育法があります。
幼児はこの段階ではサルと同じで、右脳でしか文字を覚えられないで、この文字がどのような要素で成り立っているかということまでは分らないのです。
それでも漢字とその読み方、意味(ひとつだけ)をどんどん覚えていくので大人はびっくりするのですが、このような覚え方が本当に良いのかどうかは分りません。
文字のかたまりをを見て、ひとつのまとまった意味として理解するというのは、幼児やチンパンジーのように要素に分解できないで丸ごと理解するのとは違います。
細かい要素をつなぎ合わせて全体の意味を理解する、という過程を経験した上でのことです。
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