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遠近法による説明の不思議

2006-07-10 23:21:24 | 視角と判断

 左の図は長方形なのですが、左側が手前に、右側が奥に後退しているように見えます。
 右側が暗く左側が明るいので、明るいほうが浮き出て見え、暗いほうが後退して見えるのです。
 このとき明るく見えるほうの辺xは暗く見えるほうの辺yよりも長く見えます。
 明るいほうが膨張して見え、暗いほうが収縮して見えるためですがその結果、明るいほうが手前に、暗いほうが奥に見えます。
 xとyは同じ長さなのに、手前に見えるほうが遠くに見えるほうよりも長く見えます。
 遠近感が感じられると、手前が大きく見え遠方は小さく見えるというのが普通の見え方なのです。

 右の図はいわゆるポンゾ錯視の図で、線 a と線 b の長さは同じなのですが、 a のほうが長く見えます。
 a のほうが長く見える説明としては、「斜めの線が遠近感をもたらすため、a のほうが遠くにあるように見え、遠くにあるほうは見かけより長いと脳が判断する」というように遠近法の知識によるとするのが一般的です。
 この説明はひねった解釈なのですが、遠近法のようなものを持ち出されるとなんとなくもっともらしく聞こえ、説得されてしまうから不思議です。

 左の例では遠くにあると感じられる側が小さく(短く)見えたのですから、右側の例では遠く見えるほうが大きく(長く)見えるというのは逆の見え方で、これは矛盾しているということになります。
 遠近法というのは近くのものが大きく見えるように、遠くのものは小さく見えるように描くのですから、この図は逆だということになります。
 図の例でいけば、bは 見かけでは短いのですが、図の中では c と同じ長さのものとして表現されています。
 a は c よりはるかに長いものとして表現されていますが、それは図の世界でのことで、cより長く見えるとは限りません。
 遠近法の図としては、脳はaのほうがはるかに長いと解釈しているのですが、眼は少し長いと感じています。
 眼は脳の解釈どおりに見ているわけではないのです。

 なぜaのほうが長く見えるかというと、aと b を見比べるとき同時には見ていないからです。
 aのほうが遠くにあると感じるため、無意識のうちに焦点距離を変えるのですが、実際は遠くにないので焦点よりてまえにあるaの像が少し大きく見えるのです。

 aとbを同時に見れば二つの長さが同じに見えるのですが、無意識のうちに眼を動かしているので気がつかないのです。
 二つを同時に見ると斜めの線による遠近感は失われて、この斜めの線は富士山のように立ち上がって見えます。
 このときaとbは同じ長さに見えます。
 あるいはaが斜めの線から浮き出て空中にあるように見えたりして、aがbより遠くに見えない場合も二つの線は同じ長さに見えます。
 斜めの線を道路のようなものと見ずに、富士山のような図形としてみると遠近感がなくなります。
 図を見るとき、焦点を無限大にして見るともなしに見ると、やはり斜めの線は富士山のように立ち上がって、図の遠近感はなくなります。
 


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