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右脳と遠近法

2008-02-09 23:35:52 | 視角と判断

 三次元の世界を絵のように平面に描こうとすると、モノの輪郭を正確に描くことがとても困難です。
 B.エドワーズ「右側の脳で描け」には正確な輪郭を描く方法として、窓ガラスを通して見た風景を写し取る方法を紹介しています。
 格子状の窓ガラス越しに風景を見ると、窓ガラスの格子とモノの輪郭の位置関係が見えるので、これをそのまま画面に描けば、モノの輪郭が正しく反映されているからです。
 
 三次元のものの輪郭を平面に正しく描く方法として、格子越しに見える像を利用するという方法は、すでにルネッサンスの時代に考えられています。
 図はデューラーの「ヌードを描く図」という版画で、モデルと画家の間に格子状の枠が垂直に立てられています。
 机の上には垂直に立てられた枠二対応した格子の線の入った紙が置かれ、画家は垂直の格子を透して見た輪郭を、机の上の紙に描いています。
 画家の目の前には一本の棒が立っていて、画家は棒の先端に片方の目を合わせて前方を見ています。
 
 これは目の位置を固定させるためで、目を動かしてしまうと格子とモデルの輪郭の位置関係が変わってしまうためです。
 たとえば窓ガラス越しに見える風景を、ガラスの上に直接なぞって輪郭を描こうとしても、目の位置を変えてしまうと見え方が変わってしまうのでうまくいきません。
 見え方を変えないためには目を動かしてはいけないので、目の位置を固定するために棒を立てているのです。

 またこの図では右目で前方の枠を見ているようですが、これは片方の目で見ないと近い場所にある枠に焦点をあわせれば、モデルはダブって見えてしまうからです。
 両眼で見れば、手前にある垂直の格子に焦点をあわせるとモデルがダブって見え、モデルに焦点を合わせると格子がダブって見えてしまいます。
 また焦点を一定にしないとものの見え方が変わってしまうので、モデルのほうに焦点を合わせるのではなく、平面を作る格子に焦点を合わせてみているのです。

 このように厳重な規制を加えないと、写真のような正確な輪郭を平面には描けないのは、目がカメラのレンズとは違うからです。
 目の網膜は写真機のフィルムと違って、中心部分だけが解像度が高く、中心から少し離れた部分は視神経がまばらで解像度が極端に低くなっています。
 ものを見るときにはまた常に目を動かし、また焦点距離を変えて見ているの、カメラのように焦点を固定し、方向を固定して見ているわけではありません。
 カメラで写したような正確な輪郭を描こうとすれば、カメラのような見方をしなければならないのです。
 右脳で見れば写真のような正しい輪郭が描けるというのは誤解で、視点や焦点を固定させればよいのです。


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