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左上の絵は若い女の顔に見えたり、老婆の横顔に見えることもあるという多義図形です。
どちらに見えるかは見る人の関心のあり方によるという説明がありますが、それはあとから考えた理由付けです。
例えば真ん中の図の赤丸をつけた部分に眼を向けると、たいていにひとにはこれは老婆の顔に見えるでしょう。
これに対して、右の図の赤丸部分に眼を向けた場合は、今度は若い女の横顔に見えるでしょう。
つまり眼を向けた場所によって全体の見え方が変わるのであって、見る側の心理状態とか、関心のあり方で見え方が決まるわけではないのです。
見る側の心理が見え方を決めると言う説明のほうが面白いので説得力があるのですが、関心のありかたがどうであれ、眼を向けた場所によって見え方が変わっているのです。
といえば、眼を向けた場所というのがそもそも、見る側の関心のあり方や心理状態によって変るのだ、というふうに反論されるかもしれません。
しかし、はじめから関心のあるところに眼が向けられるとは限りませんし、関心がどうであれ、眼を向ける場所によって見え方は変わるのです。
下の図ではAの場合は二本の斜線はつながっていないように見えますが、B図ではつながっているように見えます。
A図の場合は長方形と斜線とが接している部分に注意が自然に向かいますが、B図の場合は斜線の両端に丸印が加わりそこに注意が向けられるので、長方形と斜線の接する部分に注意が向かわなくなるためです。
長方形と斜線が接する部分が問題なのだということは、C図のように接する部分をとった図形を見るとよりハッキリします。
C図の場合は線が切れているにもかかわらず、かえってこの方が上の斜線と下の斜線がつながって見えるのだから不思議です。
C図とは別にD図のように斜線を縮めて長方形と接する部分だけにすれば、かえって二本の斜線は食い違って見えます。
この場合は斜線が短いため、長方形と接する部分に自然と眼むけられてしまい、二本の斜めの線は著しく食い違って見えるのです。
上の例は図形が絵画的なので、つい心理学的な解釈のようなものが説得力を持つのですが、下の図の場合は幾何学的な図形であるため、心理学的解釈出なく、図形自体の見え方の性質で説明するほうが説得力を持つのです。
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