60歳からの視覚能力

文字を読んで眼が疲れない、記憶力、平衡感覚の維持のために

文字の大きさと視野

2008-12-06 22:58:15 | 文字を読む

 図の一番上の段の文字の大きさは、ワープロなどに標準的に使われる10.5ポイントで、その下の段は9ポイントです。
 一文字の大きさはわずかな違いなのですが、印象はかなり違いずいぶん小さくなっているような感じがします。
 戦前の本には10.5ポイントのものが多くあったようですが、現在では9ポイントのものが主流のようです。
 もしかすると戦前の本は、漢字が旧字体であることや、それに対応してルビ画振られていたためかもしれません。
 
 現在の新書本のようなものもほとんど9ポイントなのですが、この図で見れば実際の新書本の活字のほうが大きいのではないかと感じるでしょう。
 モニターに映った文字が小さく感じるのは、活字に比べれば大きさが同じでも解像度が低いためです。
 視力が落ちると目の解像度が落ち、文字が読み取りにくくなるのですが、同時に字が小さく見えるようになるのです。
 じっさい同じ大きさの印刷文字をモニターにくっつけてみると、字が同じ大きさなのに活字のほうが読みやすく大きく見えます。
 モニターに映る文字は、活字印刷に比べると解像度が低いので文字が大きくないと読みにくく、文字が大きければ中心視野で捉えられる文字数が少なくなるので、活字に比べると読みにくく、ストレスが多くかかります。

 3番目のブロックは8ポイントの大きさですが、こうなると文字が楽に読み取れないので、一つ一つの文字を見極めようとしてしまい、意味を読み取る前に文字の判別にエネルギーを奪われ、かなり読みにくい状態です。
 これはモニターに映った状態なので余計に読み取りにくいのですが、活字印刷の場合でも楽ではありません。
 健全な目を持つ成人が読むことができる活字の大きさの最小限は、8ポイントとされているようですが、戦後から30年ぐらいまでの文庫本などをあらためて見ると、こんなに小さな活字を読んでいたのかと思います。
 岩波文庫などで、字の多いものは一ページ19行、一行43文字というものがあり、文字がぎっしり詰め込まれた感じです。
 紙を節約するための一ページあたりの文字数を増やしたのでしょうが、これでは目が疲れてしまいますから、目を悪くする人が増えても不思議ではありません。

 現在では文庫本よりも少し大きい新書本でも、活字は9ポイント程度が普通で、行数も16行ぐらいで、比較的に文字の詰まった中公新書のようなものでも、16行×43文字で、688字ですから古い文庫本の文字量の多さがわかります。
 最近では一ページあたりの文字数を減らしたものが出てきて、10ポイントの活字で15行×40字というものもあります。
 文字数が少ないほうが読みやすいのですが、文字数が少ない分情報量が少ないように見られがちです。
 16行43字のものに比べれば、単純比較で87%ですから、目の負担を考えれば紙を余分に使ってもページあたり文字数が少ないほうがよいです。
 文字があまり大きいと、認識視野に入る文字数が減るのでかえって読みにくくなってしまうのですが、10ポイント程度までは、ページあたりの文字数が少ないほうが読みやすい感じです。
 文字が小さいと多くの文字が認識視野に入りますが、多すぎれば一度に処理ができないので、妨害刺激となってしまいかえって読みにくくなるのです。