60歳からの視覚能力

文字を読んで眼が疲れない、記憶力、平衡感覚の維持のために

脳の処理スピードの低下

2006-09-22 22:26:15 | 歳をとれば

 歳をとれば老化によって身体能力は低下します。
 視力、聴力の低下や筋力の衰えはある程度の年齢になれば必然的に実感しますが、町を歩けば若年者と高齢者の差が、歩く速度の違いとしてハッキリと観察できます。
 スピードの違いというのは身体活動だけのものではありません。
 脳の処理速度も中年以降は急速に低下しているというデータがあります。
 図はD.C.パーク「認知のエイジング」からのもので、アメリカのデータですが、脳の処理スピードは20代から一貫して低下し、50代からさらに急速に落ちています。
 これは数字や文字の異同判断といった単純なテストなので、実生活の具体的な問題処理能力を反映するものではありませんが、知的作業の基礎的作業の処理スピードは加齢によって低下するということです。

 歳をとると時間や日にちのたつのが速く感じるという現象がありますが、原因は主として身体と脳のスピードの低下にあったようです。
 同じ距離を歩いても若いときと比べ時間がかかってしまうので、主観的には時間が速く経過したと感じます。
 車や電車の利用で歩く時間については補償できても、脳のほうはなかなかそうはいきません。
 仕事をしてもどうも若いころのようにはかが行かないと感じるのはスピードが低下しているためです。
 何をするにもスピードが落ちていれば、自分では気がつかなくても、いつの間にか時間がたってしまったということになるのです。
 歳をとって時間が短く感じるのは、生活が単純になるからだという説がありますが、脳のスピードが保たれていれば非常に退屈するはずです。
 退屈を感じないで時間が速くたつと感じたら、脳の働きが遅くなっているなと思ったほうが間違いがないと思います。

 右の図は知能検査での語彙課題での成績で、加齢によって少しづつ成績が上がり、80代になってわずかに低下しています。
 知識の量は加齢によって増加するのですが、忘れていく量は案外少ないのです。
 それでは加齢によって低下するのは単純な課題に対する処理速度だけかというと、そうではなく推理能力なども同じように低下しています。
 基礎的な課題の処理速度が低下してくると、いくつもの要素を積み上げる推理課題も成績が悪化してしまうようです。
 
 脳の処理速度の低下というのは個人差はありますが、誰でも避けられないものです。
 心理学での調査は平均を出して全体の傾向を示していますが、個人差とか訓練による差といったものは示されません。
 実生活では個人差の原因は何か、生まれつきなのか、訓練や努力あるいは環境などで、どのくらい差が出るかということが関心事になります。