60歳からの視覚能力

文字を読んで眼が疲れない、記憶力、平衡感覚の維持のために

周辺視野と文章の見通し

2006-09-02 23:16:39 | 文字を読む

 文Aを音声で聞いたら「えぇ?何を言っているのか分からん」と思うのではないでしょうか。
 文字で書かれたのを読んでも、前のほうから順々に頭に入れたつもりが文章の終わりまで読んでいったときに分からなくなってしまうのです。
 父、母、兄、弟、描く、絵、見せる、人評判、聞くといった単語を頭の中に入れて組み立てるということは結構難しいのです。
 名詞と動詞と合計9つあるので、一時的に記憶するだけでも難しいのに、これを組み立てた関係を考えるのは非常に難しい課題です。
 脳が一時的に覚えておける量は7つ前後といわれているので、覚えるだけでも容量オーバーで、組み立ててて考える余地はなくなっているのです。
 歳をとってくると、ワーキングメモリが少なくなってきて、いくつもの単語を頭に入れてそれを組み立てて意味を考えるといったことが不得手になってきます。
 わかいときになら楽に理解できた文章などが、すぐに理解しにくくなっていたりするのです。

 Bは同じ意味の文章なのですが、一部語順を変えてあります。
 こちらのほうが文章の骨格を把握しやすいので、こちらで文章の構造を把握してからもういちどAを読めばすっきり理解できます。
 Aの文章の骨格は、「父が、評判を聞いた」というもので、評判の対象は「絵」で、聞いた相手の「人」は母が絵を見せた人で、「絵」は兄が弟を描いた絵ということです。
 (兄が弟を描いた絵)というのを一つのかたまりとしてみれば(母が○○を見せた人)を一つのまとまりとしてみることが出来ますから、(父が、××からその評判を聞いた)と意味を理解することができます。
 
  音声で聞くときは言葉が順に聞こえて消えてゆきますから、頭の中で単語を覚えておいて文章の構成をしなければなりません。
 それに対し、文字で書かれたものは、同時にいくつもの単語を見ることが出来、単語を見ながらそのいくつかを、ひとまとまりのものと見ることが出来ます。
 そのため音声で聞いても理解できない文章でも理解が可能になります。
 こうしたことが可能になるのは、いくつもの文字を同時に見ることが出来るからですが、そのためにはある程度視野の広さが必要です。
 視野といっても単に文字が見えるというだけでなく、文字が認識できる有効視野の広さが必要です。
 ハッキリと見える中心視窩で見える範囲は七文字程度なので、ややぼけて見える中心近くの周辺視野で文字認識が出来ることが必要となります。

 音読をした場合は、音読している部分からあまり目を離すわけにはいかないので、どうしても視野が黙読に比べ、狭くなってしまいます。
 そのため、込み入った文章になると意味が理解できないということが起こりがちになります。
 文章の理解という面から言えば、視野を広げても功徳をするほうがよいといえます。