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60歳からの視覚能力

文字を読んで眼が疲れない、記憶力、平衡感覚の維持のために

注意の向け方で見え方が変わる

2005-12-27 23:57:05 | 眼と脳の働き
 図Aで、一番上の図形は一番下の図形と同じなのですが、矢羽根にはさまれた軸線は透明にしてあります。
 真ん中の図の軸線と一番下の図の軸線とを比べると、真ん中の軸線のほうが長く見え、一番上の透明の軸線とを比べても、真ん中の軸線が長く見えます。

 B図では真ん中の軸線も透明にしてあります。
 こうすると、一番上の図の透明の軸線よりは真ん中の透明の軸線は長く見えますが、一番下の透明でない軸線よりは短く見えます。
 真ん中の図形は、A図の場合は両側の矢羽根によって注意が外側に向かうため、軸線が長く見えますが、B図の場合は注意が矢羽根にはさまれた部分に向かうため、短く見えるのです。
 A図では両側の矢羽根が拡大をイメージさせ、、B図では縮小をイメージさせるのです。
 
 B図で一番上の図の透明の軸線と真ん中の図の透明の軸線とを比べれば、真ん中の図の軸線のほうが長く見えるのですが、一番上の図形を真ん中の図形の矢羽根にはさまれた部分を通り抜けさせることはできない感じがします。
 つまり、一番上の図形の幅は、真ん中の矢羽根にはさまれた間の幅より長く感じてしまうのです。
 これは、一番上の図を通り抜けさせようと意識すると、両側の矢羽根の外側に注意が向かい、通り抜けられるほうの図形の場合は矢羽根の内側に意識が向かうためです。
 
 A図の場合でも真ん中の図の場合は両側から挟まれているとイメージし、一番下の図の場合は外側に引き伸ばしているとイメージすれば下のほうが軸線が長く見えてきます。
 脳が感じる長さはどのような見方をするかによって変わってくるのです。

実は眼の自動調節

2005-12-26 23:25:44 | 眼と脳の働き
 図aの中心の円と図bの中心の円は同じ大きさなのですが、aのほうが大きく見えます。
 周囲のものが小さければ対比効果で大きく見え、周囲のものが大きければ対比効果で小さく見えるとされています。
 中央大学の山口真美助教授によると、中心の円をつまもうとすればaの場合とbの場合とは指の動きが違うはずなのに、実験すると同じであったといいます。
 どちらの場合も最初から実際の円の大きさに合わせて指を開いてつまんだということです。
 見かけの大きさによって指を開いて、つまむ直前で開き加減を調整するのでなくはじめから適切に指を開いてつまみに言ったということです。
 指の動きは視覚で起きている錯覚に惑わされず正確だったと解説されています。
 意識をともなう見えとは別の見えがあり、指の動きは意識をともなわない別の見えによっているというのです。

 ところでaの中心の円が大きく見え、bの中心の円が小さく見えるのは錯覚なのでしょうか。
 a図の中心の円は小さな円に囲まれていますが、その結果、図全体が小さくなっています。
 b図は大きな円に囲まれているので図全体は大きくなっています。
 そうすると、a図を見るときは狭い範囲を見ようとするので視野が狭くなり、カメラでたとえればズームアップした感じで図全体が大きく見えます。
 中心の円だけでなく周りの小さな円も大きく見えます。
 対してb図は広い範囲を見るのでズームアウトした感じで全体が小さく見え、周りの大きな円も小さく見えます。
 眼が無意識のうちに焦点距離を変えるために見え方が変わるのです。
 見え方が換わるだけだということがわかっているので、そのため、指でつまもうとするとき指の形を変えたりしないのです。
 このように無意識のうちに見え方が変わらなければ、見るものの距離が変わるたびに意識的に焦点をあわせなければならないので、たちまちくたびれ果ててしまって眼を開けていられなくなります。

 ふだん眼を開けているときは、多くの場合無意識的に眼を動かして見ていて、意識的に見るときはわずかです。
 視覚だけでなく、聴覚でも触覚でも感覚のすべてを意識して調節していたのではたちまちくたびれて身が持ちません。
 感覚器官に自動調節機構が備わっているから生きていけるのです。

 a図の中心の円とb図の中心の円の中間点あたりに視線を向け、全体の図を見ると、中心の円の大きさは両方とも同じ大きさに見えます。
 a、bをひとまとめにして一つの図として見れば、同じ大きさの二つの円が同じ大きさに見えるのは当然なのです。
 aとbを別々に見ると、眼が見え方を自動的に調節するため大きく見えたり、小さく見えるのであって錯覚ではないのです。

注意を集中すると実際の奥行きがわかる

2005-12-25 22:43:36 | 眼と脳の働き
 暖色が進出色で、寒色が後退色であるかどうかは上図を見れば確かめられます。
 a図では暖色と白色が対比されています。
 暖色が進出色であれば右側のほうが進出して見え、その結果右側の辺のほうが長く見えるはずです。
 ところが実際は白い部分のほうが手前に見え、辺の長さも長く見えます。
 暖色が進出して見えるのではなく、明るいほうが手前に見え、大きく見えるのです。
 b図では、暖色と寒色が隣接しているので、もし寒色が後退色であるならば、右側のほうが交代して見え、辺の長さも短く見えるはずです。
 実際は左右ともに同じ長さに見え、奥行き感も変わりません。
 この場合は暖色のオレンジも、寒色の青も同程度の明度なので、暖色のほうが進出して見えるということはなく、寒色のほうが後退して見えるということもないのです。

 c図では四辺形はすべて同じ形、同じ大きさなのですが上の白い四辺形は右側のほうに広がって見え、下の四辺形は左側のほうに広がって見えます。
 オレンジ色の四辺形と接触している部分が相対的に膨らんで見えるためです。
 オレンジは暖色ですが白よりも明度が低いので、相対的には後退色となっています。
 
 c図の白い四辺形を青い四辺形に置き換えたのがd図です。
 この場合、青は寒色なのですが明度がオレンジと同程度で、やや青のほうが明度が高くなっています。
 そのため、青い四辺形がオレンジの四辺形と接触している部分がやや膨らんで見えます。
 寒色であっても明度が高ければ相対的に進出して見え、暖色であっても明度が低ければ相対的に後退して見えることがわかります。

 色ではなく、明度が高いか低いかで進出して見えるかどうかが決まる、ということが実は自然なのです。
 光が当たっているほうが明度が高くなるので、手前に見え、光が当たらないほうは陰になって奥に見えるのは、太陽光が上から注ぐことから人間にとっては自然の見え方です。
 そのため、平面でも明度の高いほうが手前に見え、明度の低いほうが奥に見えるのです。

 しかし平面上に描かれた図形では、明度の高いほうが手前に見えて、大きく見えるといっても、実際は同じ平面に描かれている以上眼からは同じ距離です。
 a図で左側の辺と右側の辺を同時に注視し続けると両方の辺は同じ長さに見え、奥行き間は消え、左側が膨らんで見えた図形が、平たい四辺形に見えるようになります。
 注意を集中することによって実際の姿が見えるようになるというわけです。
 両方の辺を同時に見ることができないと、つい片方づつ見てしまい、ひだい側が大きく手前に見えてしまいます。


 

錯覚とはいえない錯視

2005-12-24 19:11:02 | 眼と脳の働き
 眼に近いと物は大きく見えますが、そのため大きく見えるものは近くに感じます。
 a図は長方形なので右の辺と左の辺は同じ長さなのですが、右側が短く見えます。
 左側のほうが手前に、右側のほうが奥に感じられます。
 明るい部分は手前に感じられるので広がって見え、暗い部分は奥に感じられるので縮小して見えるためです。
 そのため左側の辺が長く、右側の辺が短くみえるのです。
 
色彩心理学では前進色とか後退色というのがあります。
 前進色というのは近くに寄ってくるように見え、後退色は縮小して見えるので後退色というのかと思いますが、暖色が前進色、寒色が後退色というような説明もあります。
 ところが、この図形で白い部分をオレンジ、黒い部分を青にして両方の色の明度を同じにすると左の辺と右の辺は同じ長さに見えます。
 暖色であるか寒色であるかということでなく、明度つまり明るいか暗いかで大きく見えるかどうかは換わってくるようです。

 逆に大きいものは手前に見えるという現象もあります。
 b図は大小の円を並べたものですが、大きい円は手前に、小さな円は奥にあるように見えます。
 遠近法によって描いたわけではないのですが、だんだんに大きくなるように並んでいると、大きなものは近くに感じられるのです。
 近づいてくるものが大きく見えるようになるというのは、人間に自然に備わった機能なので、大きく見えるものは近くに感じられるのです。
 
 c図は白と黒の同じ形、大きさの長方形で作られています。
 横の境目の線は水平なはずなのですが、中間の二本の横線は傾いて見えます。
 傾いて見えるのは白い長方形が広がって見え、黒い長方形が縮んで見えるためです。
 理由はd図で見るとわかります。
 左上の白い長方形は広がって見えるので、下の黒い長方形に食い込んで見え、右下の白い長方形は逆に上の黒い長方形に食い込んだ形に見えます。
 その結果、間の仕切り線は斜めに見えるようになるのです。
 白が前進色、黒が後退色であるために起きる現象で、眼の錯覚とされているのですが、自然な見え方で錯覚とはいえません。

 この場合も同じ明度の白の代わりにオレンジ、黒の代わりに青を使うと間の線は水平に見えるようになります。
 白と黒の場合も横の仕切り線をじっと見続けると、いつのまにか水平に見えるようになります。
 横線に意識が集中すると、白黒の部分が全体的に見渡せるようになるためです。
 

立体図形で感じる奥行き感

2005-12-23 10:52:49 | 眼と脳の働き
 図a,b,cは形も大きさもすべて同じ平行四辺形です。
 bはaよりも細長く見えるのですが、平行四辺形には見えます。
 図形を回転させると、角度によって見え方が異なることがわかります。
 cの場合はaより細長く見えるというだけでなく四辺形の奥のほうが広がって見えます。
 つまり、変形して平行四辺形に見えなくなっています。
 これは四辺形の周りに枠をつけ、足のようなものを書き加えた結果、テーブルのように見え、3次元図形のように感じられるためです。
 3次元図形のように感じれば、下のほうが手前に、上のほうが奥に感じられますから、同じ長さの辺であれば手前のほうが長く見えるはずです。
 ところが手前の辺も奥の辺も同じ長さに描かれているため、手前の辺は短く見えてしまうのです。

 遠近法では近いほうが大きく、遠いほうが小さくなるように描くことによって遠近感を感じさせるのですが、この場合はテーブルの形のような立体的なものを描くことで遠近感を感じさせています。
 正しい遠近法で長方形のテーブルを描けば、遠いほうの辺が小さく見える図となるのですが、同じ長さに描かれているため、遠いほうの辺が長い変形テーブルに見えてしまうのです。
 立体的な図形だと感じると、眼は手前の方の辺を見るときと、奥のほうの辺を見るときと出で焦点距離を自動的に変えてしまうのです。
 ただ単に脳が解釈して奥のほうの辺を長いはずだと思い込むのではなく、実際に奥にあるものを見るように焦点距離を変えるから長く見えるのです。
 したがって、奥のほうが長く見えるのは錯覚ではなく、また視覚能力が低いわけでもありません。

 a,bが同じ平面に見えるのに、cは立体的に見えるためcの面は手前が持ち上がっているように見えます。
 ここでbとcを同時に見ていると、同じ平面にあるように見えてきます。
 同じ平面上に書かれているのですから、当然なのですがつい一つ一つ視線を動かして別に見るので、cが別平面に見えるのです。
 b、cを同時に見て二つが同じ平面上にあると感じられれば、cはbと同じ平行四辺形に見えてきます。(aとcを同時に見てもよい)
a,cあるいは、b,cを同時に見ることができたかどうかは、cが平行四辺形に見えたかどうかによって確かめることができます。
 同時視ができず片方づつ見てしまうとcは奥に広がったように変形した四辺形に見えてしまいます。

集中力をはかる

2005-12-22 07:17:51 | 眼と脳の働き
 a図の横の2本線は平行線なのですが右側に広がっているように見えます。
 心理学の本でよく紹介されているツエルナーの錯視と呼ばれているものです。
 これも子供や、高齢者ほど全体と部分を分離できないため錯視の度合いが大きいとされています。
 心理学では、なぜ平行に見えないのかという説明ではなく、もっぱら斜線の角度がどのようなとき錯視が激しくなるかといった研究をしているようです。
 
 なぜこの錯視が起きるかは、b図を見れば見当がつきます。
 b図は同じ大きさの菱形を重ねた状態を描いたものです。
 左側より右側の方が大きく見えるのは、左側が手前にあるように感じられるためです。
 右にゆくにしたがって奥にあるように感じられるので、見るときに眼が自然に焦点距離を変化させるため右側が大きく感じられます。
 a図の斜めの線はb図の斜めの線の一部を写したものです。
 a図は左側が手前に感じられ、右側が奥に感じられるために右側のほうが大きく見える結果平行線が広がって見えるのです。

 したがってこの錯視の本質は、水平線と斜線が交差しているということではなく、左側が右側より手前に見えるということにあります。
 したがって、c図のように円弧が並んでいる場合でも同じ錯視現象が発生します。
 この場合は左右を逆にしているので、右側が手前に感じられ左に広がって見えます。
 この図形は、同じ大きさの円盤を重ねた形のd図を基に作成したものです。
 右側が手前にあると感じられるため、右側が小さく見えます。

 手前に感じられるほうが、奥にあると感じられるものより小さく見えるのは、錯覚というよりごく自然の現象です。
 遠くにあると感じたものを見るときは、眼は焦点距離を変えるのですが、実際は同じ平面に書かれていれば大きく見えてしまうのです。
 それでは、なぜ子供や老人のほうが錯視の度合いが大きいとされるのでしょうか。

 a図の場合で、2本の水平線をじっと見続けてみます。
 そうするといつの間にか2本の水平線は平行に見えてきます。
 これは水平線に注意を集中した結果、斜めの線によって、左側が手前に見えるという効果が失われたためです。
 つまり、全体の図形から横の水平線だけに注意を集中できたからです。
 子供や高齢者は視覚能力が低いため集中して見ることができないとされているのです。
 逆に言えば、じっと二本線に集中して、平行に見えるようになれば、視覚能力はまだ衰えていないということになるかもしれません。