国鉄フライヤーズ

目指せカネ、ヒマ、若さ

差別と日本人

2009-08-28 01:00:00 | 本、映画、イベント
野中広務さんと言う人、黒幕とか政治屋みたいな印象が強い。
経世会(田中派)で小沢一郎のライバル、郵政族、自治族のドン。
ハト派で親東アジア、どちらかと言うと反米。
金丸、森の訪朝団メンバー。

私としてはかなり距離感を感じるタイプ。
この人、所謂「」出身。
問題というとエセとか特権とか言う言葉が浮かぶ。
事実20年前ならこの話題をすることにさえ圧力がかかった。

この同和行政、自民、共産相乱れての利権の温床だったと理解しているが
野中さんは一貫して補助金廃止を主張していたと聞き興味を持った。

この本、在日朝鮮人の辛さんとの対談です。
といっても狂言回しは辛さんで野中さんがぼそぼそっと話す感じ。

この辛さん55年体制のサヨクにように反日吠えまくりで声高に人権を主張する。
日本人とは、京都人とは、政治家とは、という差別発言のオンパレード。
怨念深いのでしょうね。

過去には北による拉致は無いと発言しその後訂正していないらしい。
そんな調子で自分の歴史観を主張するので途中で投げ出しそうになった。

こんなに言われると差別のリマインダー、再生産でないかと思ってしまう。
日本人に在日を嫌いにさせるのが目的?憎しみの永続化。

でも我慢して読んでいるうちに野中さんの懐の深さというか人間的魅力が
じわじわと伝わってきた。

この人ハト派だが国旗国歌法制定に尽力。一方の辛さんは日の丸は
ナチの「ハーケンクロイツ」だそうだ。おっとー。

野中さん、中央政界に出たのは57歳。それまで地元でエセ利権や
蜷川共産京都知事と戦った。
もし地方に留まっていれば彼の出自が取りざたされ家族(奥さんは非)を
悩ますことはなかった。

ハンセン病では小泉首相の上告取り下げを裏で画策した。
その救済に在日が入ってないと指摘され「知らなかった、悪かった」。

個人的には無償で重度障害者救済の仕事を長年続けていて
今後もライフワークと語る。

あの最低な金丸訪朝団の一員として国益を損なう一助になり
森訪朝団にも参加したが、この時点で北朝鮮に見切りをつけた。
盟友加藤紘一がコメ利権など、どんどん北に深入りしたのと好対照。

極めて現実的、合理的な人のようだが温かみがあるのかな。
力も抜けていい感じだし。

辛さんも野中さんを評して「オバマ流の演説政治を信じない。
人間を知りぬき、談合と裏取引で平和、人権を守ったあっぱれな生き方」。
さすが、よく見ていますね。

最後のほうで野中さんが「疲れた」と本音を語る。自分が頑張れば頑張るほど
出自が取りざたされ家族との距離が開くそうだ。

辛さんも自分が在日をカミングアウトして先鋭的な発言をすることで
家族につらい思いをさせ、親戚中に恨まれたと語っている。

事実婚の相手の日本人も「君が発言しなければ丸く収まるのに」と
疲れ果てたらしい。
「人権は好きだが当事者とは暮らせない」と悟ったそうだ。

厳しいですね。
これを聞くと、「差別される側」にとってはやはり差別はあるのだと実感する。
ほろりときた。

辛さんはウザいほど差別と直球で戦っている人。
正義感でしょうか、つらい人生だね。
正しいことをとことん追求することは、時に正しくないと思いますが。
わかっているけど闘う。

勉強になることも多かった。

戦後ガード下の白衣の傷痍軍人。あれは国の恩給、福祉から切り捨てられた
三国人のひとが多かったんですね。

そしてなにか事件が起きるとあいつは在日、だという都市伝説。
あると思います。

日本では半分でも四分の一でも血が入っていると朝鮮人と言われるらしい。
ばい菌みたいですね。確かにオバマも半分白人なのに黒人大統領と言われる。

麻生さんという人、初選挙で福岡県飯塚(が多いらしい)の駅前で、「下々のみなさん」とやって落選したらしい。
バカにつける薬はないですね。

差別発言の王様、石原慎太郎さんは辛さんにはとっては悪魔も同然。
昨日食事をしたという野中に、

「なんで、あんな人と御飯たべれられるんですか!」

ー あれはまたいい男だから

「何がいい男なんですか、もう私にはわからない!」

ー 彼にも僕のように忠告できる人間がおらないといかんでしょう。

父と娘のような年齢差の二人、このなんともいえない「噛み合わなさ」微笑んでしまいました。