白杖のトライリンガル

難聴だけじゃない?網膜色素変性症を併せ持つアッシャー症候群の息子達の日常を母の目からつづります。

我輩は猫である

2006-07-23 08:00:06 | その他
私は昔から英語が嫌いだ。
でも昔と今とでは理由が違う。
昔は単に一つの勉強科目として、苦手だから(できないから)嫌いだった。
今はというと、もちろんできないというのも理由の一つにはあるのだけど、それよりも英語を知れば知るほど自分の言葉にはなりえないということに気づく。
『始めに言葉ありき』だとるすと、私は日本語があって初めて存在する。
その私を英語ですべて表現することはできない。
英語とは、私にとって「無味乾燥」の言語だ。

約10年前、私と夫がまだ初々しい恋人同士だった頃の話。
夏目漱石の話が出たとき夫が言った。
「あ~、知ってるよその作家、『私は猫です』を書いた人でしょ」
私はそれを聞いて叫んだ
ちがぁ~~~う!『私は猫です』じゃなく『我輩は猫である』なのぉ!!!」

『私は猫です』などと許せるはずがなかろう。
この本の面白みはこの題名に凝縮されているといっても過言ではない。
ただの一匹の猫が、しかも名前もないほど人間には軽んじられているその辺のなんでもない猫が、高飛車に「我輩」などと言って、自分では偉い何様かのように思っているそのギャップの面白みすべてがこの題名に出ている。
この猫がどれだけ気取った生意気な猫かとということが「我輩は猫である」という一文ですべて伝わる。
私があまりにも熱くなって語るもので、夫は少しびっくりしながらもちゃんと考えを改めてくれた。。。っと思っていたのだが。。。

先日日本からきた友達が、『我輩は猫である』の絵本をお土産に持ってきてくれた。
冒頭の有名な文と、面白い部分を抜き出して、絵本にしてある。
絵本といえども文章は夏目漱石様の原文を使ってある。

夫はその絵本をマー君に読み聞かせていた。
彼はいつも日本語の絵本は適当に英語に訳して読む。
まぁ、それは許してやろう。
私も英語の絵本は適当に日本語に訳して読んであげるから。

し・か・し。。。

"I am a cat"
"I still don't have a name"

まっ待ったぁ~~~~。
だめ、だめだめ、「アイ アム ア キャット」じゃだめぇ~~~。
しかし、今度ばかりは夫も抵抗。
『私は猫です』は明らかに間違えであったのに対して、「I am a cat」は間違えではない。
他にどう訳しようもない。
『私は猫です』も『我輩は猫である』も英語に直せば「I am a cat」なのだから。

英語に直したら、文学もへったくりもないやん。

ね?私が「英語は無味乾燥な言葉だ」と言う気持ち、わかるでしょ。
英語には日本語にある奥行きがない。
だから私は英語が嫌いなの!

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1 コメント

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Unknown (みわ)
2006-07-24 00:30:23
あ、こないだまでさ 昼ドラで 吾輩は主婦である てのがアッタヨ。夏目漱石が現代の主婦にのりうつって 生活をおくるってコメディな感じの。 意外とうけてた。あ、ま、でも行間をよむみたいなのとか 言葉の種類とか日本より少ないかもしれないけど、あの率直な感じと音の響きが美しくていいとも思うのよね。ただ アイアム ア キヤット は伝わらないねえ。
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