出演:ヤンネ・フーティアイネン、マリア・ヤンヴェンヘルミ、イルッカ・コイヴラ
『街のあかり』、観ました。
ヘルシンキの警備会社に勤めるコイスティネンは、同僚や上司に好かれず、黙々と
仕事をこなす日々。彼には家族も友人もいなかった。そんな彼に美しい女性が
声をかけてきた。ふたりはデートをし、コイスティネンは恋に落ちた。人生に光が
射したと思った彼は、起業のため銀行の融資を受けようとするが、まったく相手に
されなかった。それでも恋している彼は幸せだったのだが‥‥。
ホントは、もうチョット後に観ようと思っていたアキ・カウリスマキの最新作。だけど、
他のどんな用事より、他のどんな映画を観るより、この作品を優先したのには
理由がある。実は、そのタイトルにもなり、この映画がインスパイアして作られたと
されるC・チャップリンの『街の灯』こそ、ボクにとって“生涯不動のベストワン
ムービー”なのだ。心優しきホームレスが、目の見えない少女に献身的な愛を
捧げる物語―――それがチャップリンの『街の灯』。しかし、観てみれば、本作
『街のあかり』には、お調子者でお人よしのホームレスも居なければ、清く美しい
天使のような盲目の少女の姿もない。ただ、そこには、無口でミジメな男の存在と、
彼を巡る“対照的な2人の女性”の影があるだけだ。では、この2作品の共通点は
一体どこに…??、その“答え”を探しながら観ているうち、ボクは思ったんだ、
カウリスマキがこの作品でいう“盲目さ”とは、表面的な盲人のそれとは異なる、
常人としての我らに問う“心の盲目さ”ではなかったのかと。普段から会社で
バカにされている主人公は、いつの日か世間をアッと言わせて一目置かれたいと
願う。いつの日か自分の会社をたてて成功し、イイ女とも付き合いたい。主人公の
男が求めたもの…、いわゆる、それは“勝者としてのステータス”。が、果たして
本当にそうなのか。結局のところ、それを手にしたところで何になる?、世間の
奴らを見返したところで何になる?、そんな事よりも、時折人生に少し立ち止まり、
普段の生活でその周りに目を凝らしてみれば、気付かないところに“小さな
幸福”が落ちている。人知れず自分の事を大切に想ってくれてる女性(ひと)がいる。
もしかしたら、本当の不幸とは、そんな“ささやかな日常の幸福”に気付かないまま、
ただ毎日をやり過ごしてしまっている事じゃないのか、ってね。
この映画のラストシーンは、チャップリンの『街の灯』を象徴した“ある印象的な
ワンシーン”で幕を閉じる。それは『街の灯』同様、何千何万の美辞麗句を使っても
表わすことの出来ない“人間同士の繋がり”…、そして“心の温かさ”なんだ。
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