肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『ブラッド・ダイヤモンド』、観ました。

2007-09-14 19:31:48 | 映画(は行)





監督:エドワード・ズウィック
出演:レオナルド・ディカプリオ. ジャイモン・フンスー. ジェニファー・コネリー

 『ブラッド・ダイヤモンド』、観ました。
アフリカ・シエラレオネ共和国。反政府軍組織RUFに捕まり、闇ダイヤの採掘場で強制
労働を強いられていたソロモンは、作業中に大粒のピンクダイヤを発見。再び家族と
暮らすために危険を承知でそれを隠すが、直後に政府軍によって捕らえられてしまう。
一方、刑務所で巨大なピンクダイヤの話を耳にしたダイヤ密売人のアーチャーは、
その在り処を聞き出すために、ソロモンを釈放させようと画策する…。
 とりわけレオナルド・ディカプリオは嫌いじゃないし、その役者としての資質もボクは
高く評価をしている。人気だけはなく、真の実力も兼ね備えた“文字通りのスーパー
スター”だと思うのだが、反面“近年の彼”をみていると、スコセッシの大作志向に
付き合わされて(?)、悪い意味で“(年齢の割に)妙に落ち着いてしまった印象”を
抱かせる。ただ、そんな中にあって今作は、彼にとっては珍しいアクションシーンも
ふんだんに取り入れられ、良い意味で再び“若々しさ”を取り戻したかのように見える。
これならば、その方向性に疑問を感じていた彼のファンにとっても満足出来るのでは。
勿論、普段からチャリティーや寄付金などに協力を惜しまぬ彼のこと、単なるエンター
テイメントだけでは終わらせず、強いメッセージ性を併せ持つ内容は、彼がこの作品を
選んだ理由も頷ける。スコセッシの呪縛から解き放たれた(?)ディカプリオの新作は、
久々に見応えのある作品だった。
 さて、これが『ラスト・サムライ』と同じエドワード・ズウィック監督だと知って、
なるほどなと自分自身で納得した。というのは、アメリカ人が“他の異文化”へと
入っていった時に直面する“民族間の壁”と、“その思想の違い”について。が、一方で
一端“現地の人の心”に触れてみれば、その文化や価値観を共有し合うことだって
不可能じゃない。言い換えれば、国籍を超えた部分での“モラル”だとか、“真の
正義”みたいなもの‥‥、『ラスト・サムライ』とこの映画にある“目に見えない
繋がり”を垣間見る。更に、“ある者の死”をもって古い時代に終焉を告げ、“新しい
時代の夜明け”を予感させる結末は、この監督の持つ“美学の表れ”かもしれない。
反面、この両作品の違いに目を転じれば、『ラスト・サムライ』は“日本の武士道”に
対する深いリスペクトが感じられるのだが、この『ブラック・ダイヤモンド』では
アメリカの巨大資本主義社会によって、アフリカの豊かな資源が食されていく現実を
目の当たりにする。そして、その貧困の中から“テロリズム”が生まれ、少年の純粋な
心が蝕(むしば)まれ、結果として、多くの命が奪われていくのは、この映画を観れば、
むしろ必然の事のように(勿論、肯定は出来ないが)思えてくる。しかし、考えてみると、
その元凶となるものは、ダイヤという名の“透きとおった小さな石ころ”と、人間の醜い
“欲のかたまり”に過ぎないのだ。ラストシーン、見慣れたはずのアフリカの大地と
空がこの上なく美しく感じられたのは、きっと主人公が欲望を捨て、その“澄んだ瞳”で
大きな世界を眺めたからではなかろうか。


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