ジッタン・メモ

ジッタンは子供や孫からの呼び名。
雑読本の読後感、生活の雑感、昭和家庭史などを織り交ぜて、ぼちぼちと書いて見たい。

〔昭和家庭史〕光男終戦日記(11) 昭和21年2月

2007年02月27日 | 昭和家庭史
2月1日
 辰雄から便り来る。案じてゐた通り、底収入と食糧難とで、相当深刻な生活をしてゐるらしい。
早速、見舞金として百円送る事とする。
           ○ 夜、順子と二人で雨の中を霞浦劇場へ行き、万才や浪曲、軽音楽を聞いて来る。
           ○ 工場から臨時賞與として五十円貰ふ。
 Bさんから、釣竿を四十円で買ふ。 労務米二升弱。

2月2日
○ 辰雄へ見舞金送る。
 旧正月で工場は休み、釣りに行く。

2月3日
日曜。物凄い風。 午後、英生と土浦劇場へ行く。
 夜、こたつにあたって二時間程読書。

2月5日
 前原氏の老母死去。
夜、取り敢えず悔みに行く。

2月6日
 前原氏通夜。

2月7日
 午後から雪。 會社を休んで、隣家の手傳ひに行く。
君子も手傳ひ。
 今日は、とても寒くて、先日来、気管支カタルをやってゐるので、とてもこたえた。
香典十円。

2月8日
 昨日、風を引いたらしく、気分勝れず。

2月12日
 君子買出しに行く。
薯が一貫匁遂に二十円となった。
煙草一個と一貫匁と交換して二貫匁持って来る。
麥、一升三十五円。------国民大衆の餓死は文字通り明日に迫った。
去る二日に出した辰雄の見舞いの返事今日来る。
         ○ 夜、千代子さんを呼んで、先日来の件に就き種々
           懇談する。


2月16日
 戦災者配給の毛布一枚八円。
靴下一足五十銭。

2月17日
”絶對安息日”----------
午前中、暖く快晴。ドックと川へ行ったが一匹も釣れず。
 午後、又ドックへ行く。
 曇って寒さが酷くなり、二匹釣ったのみで帰る。
         ○ 今日、貯金凍結令発布。 (注1)

2月23日
 給料を貰ふ。
今日は七百五十円程ある可き所、五百二十何円。
一、二月分の所得税を引かれたのと、三十短の頭を約束を違えて十四銭とかで計算したのに依る。
酒井さんと談判して訂正させる。
勘定の度に、こんな事を繰り返すのは実に不愉快だ。
でもかうして、二人以上が共同して突っ張れば通るのだから、矢張り團結は強い。

2月25日
 朝から税金問題に関して遂に争議に入る。
自分と荒木が代表となり結局、「臨時賞與」として税金相当額を出させる事に一決する。
その分配法は
一、本給
二、税金
三、家庭事情
 の三方面から案配した。
自分としては自分一個の利益を全然問題とせず、全工員を代表して努力したつもりである。
結果に於いて、自分は百八十円貰ふことにはなったが、そんな事は全然、予期しなかったのだから、後暗い所はない。
さて、明日はガス場だけの交渉に入るのだ。

2月26日
 朝から、ガス場一同、賃銀値上げの爲争議に入る。
 午後に至り、小物約五割、大物二割案を提示し来る。
一同、飽く迄五割を主張して工場をそのまヽ退出。
 小野が、賃銀に等級をつけやうとした事、そして自分や謙ちゃんを二級として扱ほうとした事は、自分にとって堪え難き屈辱的條件であり、骨の髄まで沁みこんだ。
 愈々となったら、工場を止めて、店に専念するつもりだ。

2月27日
 朝から釣りに行く。
今日は珍しくよく釣れ、中小二十數匹。公休日なら、さぞ朗らかかだったろうに。
午後、工場へ行く。交渉成立。
結局大物三割、小物5割値上げとなる。
是で結局税金は工場負担と云ふ訳になった。
 争議三日、終わって神経の疲れをしみじみ知る。

2月28日
工場から罹災者特典として税金百七十円が帰って来たので今日は、店と工場の収入合計千四百八十五円。
支出千百十八円。
差引三百六十七円の黒字となった。
黒字とは実に久しぶりだ。

■■ ジッタン・メモ
(注1)
昭和21年2月17日、インフレ阻止のため金融措置令が施行され、十円以上のお札がすべて封鎖されて預貯金の引き出しが禁止された。2月25日から旧円と新円の交換が始まり、3月3日からは古い札は使うことができなくなった。

昭和21年2月のできごとを年表から追ってみた

昭和21年2月1日 
軍人恩給停止の件、交付。昭和28年復活。
NHKで「英語会話」(講師・平川唯一)が放送開始。

2月17日
新円切り換え。ただし新円の印刷が間に合わず、一部は旧券に証紙を貼付してスタート。

2月28日
戦後初の米映画「春の序曲」が東宝系で、「キューリー夫人」が松竹系で封切り。入場料10円。
(以上   「昭和・平成家庭史年表 下川 耿史 家庭総合研究会
 編集 河出書房新社から引用)

経済危機緊急対策
2月16日、政府はインフレ阻止のための、職業・物質・通貨・物価・就業対策など総合施策を発表。
この日、日銀券発行高は600億円を突破した。
(「物価の世相100年」岩崎 爾郎 読売新聞社より)






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