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気まぐれ読書・映画・音楽の記録。本文に関係のないコメントについてはご遠慮させていただきます。

伊坂幸太郎「ゴールデンスランバー」

2008-12-05 | 小説

俺はどうなってしまった? 一体何が起こっている? 首相暗殺の濡れ衣を着せられた男は、国家的陰謀から逃げ切れるのか?


仙台で金田首相の凱旋パレードが行われている、ちょうどその時、青柳雅春は、旧友の森田森吾に、何年かぶりで呼び出されていた。昔話をしたいわけでもないようで、森田の様子はどこかおかしい。訝る青柳に、森田は「おまえは、陥れられている。今も、その最中だ」「金田はパレード中に暗殺される」「逃げろ!オズワルドにされるぞ」と、鬼気迫る調子で訴えた。と、遠くで爆音がし、折しも現れた警官は、青柳に向かって拳銃を構えた―。精緻極まる伏線、忘れがたい会話、構築度の高い物語世界―、伊坂幸太郎のエッセンスを濃密にちりばめた、現時点での集大成。

 

久々の伊坂作品にまた、ぐっと引き込まれました。

何と言っても個性的な登場人物たちと主人公青柳との会話が軽妙ですね。

きたきた!この感じという満足感です。

友人森田森吾の「森の声が、俺に真実を教えてくれた」

行った先から「森の声なんて、ねえよ、お前だって信じていた訳じゃないだろ?」

でも、死んでなお森田の声が聞こえ、青柳を勇気づける「逃げろ!逃げて生きろ、人間、生きてなんぼだ」と…

「大丈夫だ、よい子はみんな天国に行ける」

THE BEATLES「ABBEY ROAD」に収録される曲を口ずさむ

golden slumber fill your eyes

smiles awake you when you rise 

…おやすみ 泣かないでと、友が最後に残した言葉。

 

やぎさんゆうびんの歌もさりげなく使われていたり。

伊坂さん楽しませてくれました。

 

「人生最大の武器は、習慣と信頼」森田が言い切った言葉を頭の中で反芻し、

「俺にとって残っている武器は、人を信頼することくらいなんだ」という、

そんな青柳を助ける仲間は、

昔の恋人樋口。

後輩のカズ。golden slumberを口ずさみしみじみと

Once there was a way to get back homeward…

「今はあの頃には戻れないし。昔は、帰る道があったのに、いつの間にかみんな年取って」

連続ナイフ殺人犯。「人間最大の武器は、思い切り」

「思えば俺たち、ぼうっとしている間に、法律を作られて、税金だの医療の制度を変えられて、そのうちどこかと戦争よって流れになっていても反抗できないようになっている。何か。そういう仕組みなんだよ。~国家ってさ、国民の生活を守るための機関じゃないんだって」

「おっさん、がんばれよ」と路上にたむろする若者「俺たちいつもやってねえことをやった、って言われてるんだ。濡れ衣ほど辛いものはねえよな」、

妙に元気な入院患者・保土ヶ谷。

花火師の息子。

「ロックだぜ」が口癖の元同僚・岩崎。

父。マスコミに向かって「金じゃねえぞ。何か自分の人生にとって大事なものを賭けろ。お前たちは今、それだけのことをやっている。俺たちの人生を勢いだけで潰す気だ。これがお前たちの仕事だと言うことは認める。ただな、自分の仕事が他人の人生を台無しにするかもしれねえんだったら、覚悟はいるんだよ。バスの運転手も、ビルの設計しも、料理人もみんな最善の注意を払ってやっているんだよ。何故なら、他人の人生を背負っているからだ。覚悟を持てよ」

 

こんな状況にあっても、笑おうと思ったら笑える。人間最大の武器は、笑えることではないか?

どんな困難で、悲惨な状況でも、もし万が一、笑うことができれば、何かが充電できる。それも真実だ。

人事を尽くして天命を待つ…

 

アメリカ映画の展開のようで、すべて、そんな幸運があるわけもなく、ことごとく先が潰され、様々な人の想いや命までも…。

森田の墓参りのシーンが心に残る。

「たいへんよくできました」の掌の判子…。

もう、すれ違って一度のも会話のないまま終わるもと恋人同士だが、なんとさりげない距離感だろう…。

伊坂作品は、読者の好き嫌いがはっきりしますが、私は、この軽快な会話と、仲間や親との関係やその思いなど実際にはあり得ない話かもしれないけど、この世界観は好きです。スッキリ解決でもなし、勧善懲悪でもなし、でも…。

そういうところ、日本人の感性かもって思いますけど…。まあ、現代風の…。

充分楽しませてもらいました。

 

 



 



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