ティーンズ向け小説。小学校5年生で交通事故で足が不自由になった恵美を中心にクラスの人間関係、ちょっと目立たないけど、いじめに敏感な年頃の少年少女の行動と心情をそれぞれ違うみんなじゃない、ただひとりのその人から見たお話が描かれている。
不器用な男の子、何でもできちゃう子、威張っている子、みんなに気を使ってくたびれちゃう子、スポーツも勉強も何でもできちゃう子、ライバルで親友で相棒…、病気で入退院をくり返しにこにこしているけどゆっくりで仲間に入れない由香ちゃん、万年補欠の先輩。
一匹狼、つっけんどんだけど、本当の友達を知った恵美の一言一言が、本当の意味を持っていて、素敵だ。「うつむいてから顔をあげるでしょ、その瞬間って、結構笑顔になってるの。なにも考えずに顔を上げたとき、本当に、笑顔が浮かんでるわけ」
「私達は他の子よりたくさんうつむいてきたから、二人でいたら、沢山笑えたの。本当はずっと、笑えるはずだったけど」松葉杖をつくため下を向く恵美が、由香のお墓の前で顔をあげる情景が浮かびます。
ほんとうに悲しいのは、悲しい思い出が残ることじゃないよ。思い出がなにも残らないことがいちばん悲しいことだよ。
「結局、気が合う合わないじゃなくて、松葉杖の私とぐずの由香は歩く速さが同じだった、ってことだと思う、それだけ」
恵美の結婚式でお話が締めくくられるところがよかったなあ。