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気まぐれ読書・映画・音楽の記録。本文に関係のないコメントについてはご遠慮させていただきます。

浅井リョウ「桐島、部活やめるってよ」

2010-08-31 | 小説

バレー部の「頼れるキャプテン」桐島が、突然部活をやめた。それがきっかけで、田舎の県立高校に通う5人の生活に、小さな波紋が広がっていく…。野球部、バレー部、ブラスバンド部、女子ソフトボール部、映画部。部活をキーワードに、至るところでリンクする5人の物語。

桐島はどうして部活をやめたのか?17歳の彼らは何を抱えているのか?
物語をなぞるうち、いつしか「あの頃」の自分が踏み出した「一歩」に思い当たる……。

世代を超えて胸に迫る青春小説。第22回小説すばる新人賞受賞作

早稲田の現役大学生による小説。

17歳。白いキャンパスに描くのは…。

17歳の俺たちは思ったことをそのまま言葉にする。そのとき思ったことを、そのまま大きな声で叫ぶ。空を殴るように飛び跳ね、街を切り裂くように走りまわる。二人乗りの自転車をかっとばす。勢いのまま生きるって、楽だし今しかできないような気がする。

同じような髪型をして、個性を出そうと変わったことをしようとしている奴も結局一緒で、みんな揃って何していいかわかんないって感じだ。真っ白なキャンパスも。真っ暗闇の中で見れば真っ黒だだ。もう何も描けない

俺たちはまだ17歳で、これから何でもやりたいことが出来る、希望も夢もなんでも持っている、なんて言われるけど本当は違う。これからなんでも手に入れられる可能性のあるてのひらがあるってだけで、今は空っぽなんだ。

いろんな音や誰かの言葉が耳の中で溶けて、どろどろに混ざる。おれは一体何にイライラしてんだ?

一人でグラウンドに出ると、夕日が体全体を包んでくれた。夕方の光は人の掌みたいだ。体温のような温かさを内包したまま、俺の体をたっぷりと撫ででく。それはやさしかったけれど、俺は、悲しくなった~菊池宏樹

桐島「やめた」のかな。もう一度噛み砕いて考えてみると、なんだか自分の周りのこと全てが不安になってきた。今まで当然のように立っていた場所が、よく見たら深い井戸の底だったような。~小泉風助

私の中の神さまは、きっともう小さくしぼんでしまっている。食べ終えてしまったチョコレートの後味は、届かない恋の切なさだけを集めたようだ。…歩きなれた音楽室への廊下に、ぽっかりと浮かんでいる、私の嘘。~沢島亜矢

かすみは、映画とか、音楽とか、友だちからの言葉を、とても愛しく大切にする人なんだと思った。誰かが何かを伝えようとすると、両手を広げてやわらかく大切に受けとる。伝える、ということに敏感で、だから相手の目を見つめてちゃんと伝えようとする。僕はかすみに伝えたいことがあったけど、いつもその半分以下も伝えられていない様な気がしていた。~前田涼也

うらやましい、と思う。おもったとおりそのままに生きているなんて、うらやましい。いつも大きな声でわあわあ話していて、単純に生きているように見えるけど、女子はそんなことしてない。絶対に。なんでもかんでも計算しちゃうこんな頭、どっか行けばいいのに。

ぺたん、ぺたん、と私の足音のリズムは更に遅くなっていた。夕日もすっかり沈んでしまい、私はひとりだけ世界に取り残されたような気分になった。いつも見慣れている光景なのに、私の姿だけがぽっかりと浮かんでいるような感じがする。私だけ、時の流れに置いていかれている。~宮部実果

17歳

それぞれ自分の中に、葛藤し。問題を抱えている女子から見て男子は、屈託なく自由に見えても。内部はフクザツだ。表面上と抱える屈折したもの…。打ち込めない弱さを笑いに変えて。

一度も登場しなかった「桐島」こいつは違う。流されずに、熱い男。だからこそ浮いてしまった。キャプテンとして、まとめることが出来なかった。チームを引っ張るには孤高でも当然だ。

桐島。おい。おまえ、お前には。やっぱ、部活だろ。

と呼びかけたくなった。

実果の義母との関係は、思わずぐっとくる。 



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