一年前の今日はみどりの日、かつての天皇誕生日に取り上げたのが、半藤一利氏の名著 『聖断』 でした。涙なくして読めない一冊ですし、今年もそれをもう一度取り上げたい気持ちは非常に強いのですが、“ズルイ”と言われそうなので(笑)…。
で、本書です。『聖断』のような、感動ノンフィクションではありませんが、とても読み応えのある一冊です。
昭和という時代、特に大正から戦争にいたるまでの歴史の分析をライフワークと位置付けている筆者の集大成の感のある著作、平和論です。
氏はまだまだ昭和史は解明されるべき事柄も多く残っているし、これからも研究され続けると述べていますが、存命中の戦争証言者が減り続ける現状でそれなりの総括をしたという形です。
保阪氏の意見では、まず、「歴史家」を名乗る以上は、
1・ 入手可能なあらゆる資料、論文に目を通している
2・ なるべく数多くの当事者達に直接の取材をしている
3・ 自分なりの歴史観を持つ
この3点を最低条件としてあげていますが、そうでない者たちの説がまかり通っていることが多いと指摘しています。つまり資料も読まず、取材の労を惜しみ、曖昧な歴史観で、よく考えもせず発言している人が多いということでしょう。厳しいですね。
そして、真に平和を考えるのであれば、その前に “戦争” というものをしっかり考えなければならない、日本は “戦争をする「資格」” が欠けていたにもかかわらず、戦闘行為に出てしまった。
このことを本書で論じています。
かつて旧社会党系から出て来た一国平和主義などは、戦争観が欠けていて、単に怖いから、かわいそうだからというのは、戦争をただの“戦闘” だと考える幼稚な論理であると指摘します。国会の答弁などを引用し、そのあたりを詳しく解説しています。
ただ、“戦争をする資格” という表現。平和で高度経済成長の日本の中で育っている我々から見れば、やはりピンときませんよね。そんなものどこの国にもないだろうと…。
昭和20年以降続いているこの平和はどうやってもたらされているのか、考えさせられる一冊でした。
目次は以下の通りです。
1 昭和史のキーワード(昭和天皇;統帥権;国家総動員法 ほか)
2 戦争観なき平和論(近代日本の愚かな選択と自省;戦争観なき平和論―真珠湾攻撃から六〇年;「二十世紀の昭和史」への訣別 ほか)
3 昭和恐慌を脱した人々(昭和金融恐慌―「信頼される政治」があった時代;高橋是清と昭和恐慌;脱恐慌の企業人1―鮎川義介と大原孫三郎 ほか)
昭和天皇論、憲法論、アメリカ論などなど、資料や証言に基いた非常に興味深い分析にあふれています。かなりボリュームもありますが、本当に平和を考えるために、ぜひお読みいただきたい一冊です。
P.S. 今見ましたら、本書のタイトルをサブタイトルにした文庫がありました。目次が同じでしたので、本書の文庫版でしょう。
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