アメリカ人の中には、ソニーを日本ではなくアメリカの会社だと思っている人がいると聞いたことがあります。それだけソニーのイメージは、グローバル企業そのもので、他の日本企業とは異なるようです。現在のトップは外国人ですしね。
トランジスタラジオやテープレコーダーの時代からの 井深大、盛田昭夫 という両カリスマ経営者が去ったあとでも、ソニーのブランドイメージは非常に高いですね。かくいう私も大学3年生になる時、ゼミの試験を受ける時、尊敬する人という欄に、盛田昭夫と書いた記憶があります。
その頃(1980年前後)は、エズラ・ヴォーゲル氏の書いた『ジャパンアズナンバーワン』 という本が象徴的ですが、日本の経済力はそのうちにアメリカを抜くのではないか、欧米は日本式経営に学べ、という時代でしたから、盛田氏のことが英雄のように見えたのでしょう。
その後、結局バブルがはじけ、ついこの前まで、日本経済はデフレに苦しみ、ソニーもいろいろ困難な時期がありましたが、95年~2005年という長期に渡ってソニーの最高経営責任者(CEO)を務めたのが著者の出井氏です。6代目だったそうです。
本書は出井氏の回想録のようなものです。創業者グループに属さない、はじめてのプロ経営者として登場するわけですが、在任中にも、しっかりとプレイステーションやVAIOなどの強力なブランドイメージを作ることに成功し、今や従業員16万人、売り上げ総額7.5兆円の巨大企業に育て上げました。
やはり、当然のごとく様々な苦労や失敗談もあるわけですが、本書ではそのあたりを非常に率直に、専門的なことには深入りせずに振り返っています。世界中を飛び回り超多忙なスケジュールをこなすビジネスマン、超人並みの精神力を持っているはずですが、やはり基本的な経営者の悩みは、レベルの違いはあれ、その本質はみな同じだなという気がしました。
笛吹けども踊らず、苦境に追い込まれこのままでは倒産するという危機感が共有できずにいらだちます。短期でしかものを見ない外部の人間。外からは想像もできないような、社内の壁にいくつもぶつかっています。眠れずに、ずっと睡眠薬も服用していたことも告白します。
世界にまたがる企業の経営を、出井氏は 「時速120km以上の猛スピードでハイウェイを失踪する車の運転席にいるようなもの、と思って下さい。一瞬の判断ミスが大きな事故につながります」 と述べています。絶え間ない緊張の連続なんでしょう。
ソニーは、意地とプライドがじゃまして、時に失敗もする企業というイメージがありますが、それを恐れない文化、魅力があります。どこまでもチャレンジを続け、勝つまでやめないという根性が良いですね。
そういう個性の強い会社の中で、創業者グループ以外の人間がトップになったわけですから、自分がどれだけ求心力を保てるかが、巨大組織を動かせるかどうかのポイントになるわけです。企業としてのソニーの魅力というより、副題にもあるように、そのための “格闘” が印象に残りました。
上場企業というのは、組織や業績を維持するだけではなく、絶えず成長させなければならない。そのためには先を読んだ布石も必要だし、常にどこかの変革が迫られるわけですね。現在の成功に少しも安住できない。企業経営は厳しいものだと実感しました。
日本経済が本当に復活したといえるのは、起業しようという若者が大勢出てきた時だと、どなたかが指摘していました。その通りかもしれません。経済・経営学部や商学部などに進もうと考えている高校生には良い刺激、勉強になる一冊だと思います。
迷いと決断
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『迷いと決断 - ソニーと格闘した10年の記録』 出井伸之
新潮社:218P:735円
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