goo blog サービス終了のお知らせ 

gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

日露戦争と同調圧力

2022年12月02日 | インポート


 ワールドカップ、スペイン戦勝利の熱狂報道を見ていて、私が最初に脳裏に浮かんだのは、日露戦争勝利の熱狂だった。民俗学を学んできた者なら、たぶん同じように感じたのではないだろうか?

 このとき、日本中で、たぶん日本史上最大の提灯デモが行われて、勝利に浮かれた狂気の祭礼となった。

 そして、その熱狂に醸されたナショナリズムが、第二次世界大戦における日本の凄まじい敗戦を生み出した。

 

nitiro01

  日露戦争勝利記念切手



日露戦争とは?

 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E9%9C%B2%E6%88%A6%E4%BA%89#:~:text=%E6%97%A5%E9%9C%B2%E6%88%A6%E4%BA%89%EF%BC%88%E3%81%AB%E3%81%A1%E3%82%8D,%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%81%9F%E6%88%A6%E4%BA%89%E3%81%A7%E3%81%82%E3%82%8B%E3%80%82



 1904年~1905年、大日本帝国とロシア帝国との間で行われた戦争。

 朝鮮半島と満洲の権益をめぐる争いによって起こされ、満洲南部と遼東半島がおもな戦場となったほか、日本海でも大規模な艦隊戦が繰り広げられた。



 講和条約の中で日本は、朝鮮半島における権益を認めさせ、ロシア領であった樺太の南半分を割譲させ、またロシアが清国から受領していた大連と旅順の租借権を獲得した。

 しかし交渉の末、賠償金を得るには至らず戦後外務省に対する不満が軍民などから高まった。



 当時のロシアはニコライ二世の君主制統治下で、帝国主義による膨張主義を国是とし、極東においても、不凍港を求めて南下政策を続け、日本の北方領土を侵略しようとしたり、朝鮮、満州にも侵出を企てていた欧米列強の一角だった。



 開戦時の戦力は正規軍比で、ロシア100万VS日本16万、予備軍は、ロシア400万、日本46万で、7倍差、比較にならないほどロシアは圧倒的で、世界中がロシアの勝利を予想した。



 だが、当時のロシアによるユダヤ人大虐殺=ボグロムを日本が糾弾したことを背景に、米英のユダヤ金融資本(ロスチャイルド)から大規模な融資(外債引き受け)を得ることができ、装備の近代化を行うことが可能になっていた。

 日本必敗の国際的観測のなかで、勝利できたのは、おそらく日本海海戦によるものとの分析が多いが、日露戦争の経過は、司馬遼太郎の「坂の上の雲」のなかに詳しく描写されている。



 ロシアの敗因として最初に挙げられているのは、伝統的な階層差別の構造と世襲制貴族の特権的地位を保全していて、軍隊が民主的ではなかったことである。

 それは、今起きているウクライナ戦争でも、ロシア軍の腐敗体質として敗勢の理由なっている。そもそも、膨張主義というのは、軍隊が腐敗していることの証であり、無理な侵略を行う理由は、帝国の権威を高めたいという強欲から生まれるものだ。



 当時のロシア=ニコライ二世も、今のプーチンも、ロシアの国勢を拡大したいとの強欲だけが侵略の動機であり、底辺の国民の人権や経済的事情を無視した傲慢で権力的な徴兵によって、兵士の士気が著しく低かったのに対し、維新後、38年を経て、国家として、まさに昇竜のような勢いに満ち、四民平等政策による圧倒的な士気を持った日本軍では、7倍の兵力差は問題にならなかった。



 「国民が平等である」ことが、ナショナリズムを高揚させる最大の力になると私は思う。今回のワールドカップにおいても、合理性のある選手団を仲間意識の強い日本人が、喜びを共有できたことが、圧倒的な熱狂を生み出している。

 例えば、ウルグアイサッカーは、「世界でもっとも素晴らしい大統領」と評されるムヒカの施政下で、国民の国家に対する期待と団結力が高まっていたことで、古豪としての実力が再来したといわれている。

 民衆が国を愛すれば、サッカーも強くなるわけだ。



 しかし、そのナショナリズムが暴走して、太平洋戦争の凄まじい敗戦を招くことになった。もし、日本にナショナリズムが弱かったなら、あれほどの残酷な敗戦にはならなかった。

 国民が一丸となって、物理的に勝てるはずのない超大国であったアメリカに真正面から戦いを挑み、いわば玉砕したのだ。



 アメリカは、ニューデール大恐慌による経済低迷からの脱出を、対日戦争による巨大な損耗が救うと期待し、日本を戦争に巻き込むための陰謀を弄していた。

 この戦争は計画された陰謀戦争だったが、日清日露戦争に勝利したことで、日本の国力を過信した大衆が、自分から陰謀の罠に嵌まりにいったと考えるしかない。



 日露戦争の戦勝におけるナショナリズムとは、どのようなものだったのか?



 M37 日露戦争報道と野馬追 中村原町の提灯行列

 https://domingo.haramachi.net/haramachi-100year/meiji/m37-%E6%97%A5%E9%9C%B2%E6%88%A6%E4%BA%89%E5%A0%B1%E9%81%93%E3%81%A8%E9%87%8E%E9%A6%AC%E8%BF%BD%E3%80%80%E4%B8%AD%E6%9D%91%E5%8E%9F%E7%94%BA%E3%81%AE%E6%8F%90%E7%81%AF%E8%A1%8C%E5%88%97/



 1904年(明治37年 中7回) 戦勝を祝って提灯行列

 https://www.k-alumni.org/?page_id=1541



 そして1937年、いわゆる「南京事件=南京大虐殺」によって、朝香の宮を先頭に国民党軍が追放された南京城への凱旋パレートが起きたときも、日露戦争戦勝パレートに倣った提灯行列が企画された。

 https://www.k-alumni.org/?page_id=1541



 1937年の盧溝橋事件や南京事件から始まって、1945年の敗戦に至るまで、最初の数年間は、まさに破竹の勢いで、日本軍の大陸侵攻が続いた。

 戦況が劇的に悪化したのは、1942年のミッドウェー海戦やガダルカナル戦における惨敗からだ。

 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%83%E3%83%89%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%BC%E6%B5%B7%E6%88%A6



 そして、1944年のインパール作戦の大失敗や、南方海域の制空権喪失によって、敗戦が決定的に確定した。

 それでも、1942年いっぱいで、日本国民は、日本軍の勝利を信じて疑わなかった。

 この頃には、正力松太郎が創設した大政翼賛会が、全国民を監視し、日本の弱点や敗勢を予想する報道や、論評者たちを「非国民、鬼畜米英のスパイ」と決めつけて、弾圧する体制が成立していた。

 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E6%94%BF%E7%BF%BC%E8%B3%9B%E4%BC%9A



 ナショナリズムの高揚は、必ず「同調圧力」を生む。それが国家的規模で行われたのが、1940年代であった。

 当時、もし私が今と同じような反体制発言を行っていたなら、真っ先に、逮捕され拷問で殺されていたにちがいない。

 そして、それを「民主主義の否定」とする意見は、ナショナリズムの同調圧力の前にかき消されていたに違いない。



 私は、必ず同調圧力を生み出すナショナリズムが、どれほど危険なものかを理解してほしいと思う。

 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%8C%E8%AA%BF%E5%9C%A7%E5%8A%9B



 今、ネット上では、麻生太郎グループのドワンゴが制作している「ゆっくりシリーズ」が高い人気を博していて、「日本は凄い」というコンセプトで、大量のコンテンツを提供している。内容は非常にレベルの高い、説得力のあるものだ。

 同じような「日本凄い」アニメ・コンテンツの大半がドワンゴによって作られている。



 これは、「愛国心」を醸成するという自民党の方針に基づいて作られている情報操作、洗脳メディアなのだが、その道のプロが作っている高度なもので、彼らの意図は見事に成功していると思わざるをえない。

 インターネット情報は、ロシアの敗勢を定めた最大の要因である。それは、世界中のあらゆる情報を総合して知ることによって、プーチンの情報操作の嘘を若者たちが見抜けるようになっているからだ。プーチンは、ネットの力を見誤ったのだ。



 だが一方で、麻生ドワンゴによる高度な洗脳コンテンツが、大量の若者たちに対して、愛国心=国家主義への傾斜を招いていると危惧するしかない。

 十数年前から、麻生太郎は、ネットを利用した情報操作が、若者たちの自民党保守寄りの思想を作り出すことに気づき、秋葉原のオタク産業に、愛国心教育を取り入れてきた。それがドワンゴのYouTubeメディアの正体だ。



 私は、こうしたナショナリズムを強めるためのメディア攻勢や、国際スポーツにおける勝利への同調圧力に、強い危機感を抱いてきたが、今回のワールドカップの戦勝報道の嵐を見せつけられ、こうした傾向が、再び、戦前の愛国心同調圧力に転化すると思うしかなかった。

 

 もしも、FIFAカップで勝ち抜き、何かの間違いで南米勢を抑えて優勝でもしてしまったなら、いったい日本に何が起きるのだろう?

 日露戦争戦勝が招いた侵略的ナショナリズムの再興を招くことへの危機意識が、私には強くある。

 我々は、勝利における負の側面を、もっと真正面から見つめて議論すべきではないのか? 喜んでばかりいるなよ、ナショナリズムには悪魔が潜んでいるのだ。