6月末から7月はじめ、カナダブリティッシュコロンビア州など、北米大陸西海岸の広い範囲で、ヒートドーム現象により、気温が50度前後を記録し、カナダでは500名以上、アメリカでも数百名の熱死者が出たと報道された。
http://tokaiama.blog69.fc2.com/blog-entry-1542.html
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/06/475.php
この報道は、人々に極高温気象の恐怖をもたらし、「二酸化炭素増加が招いた高温化現象」という解説がなされ、「だから二酸化炭素を出さない原発エネルギーが必要」という詭弁が原発推進側によって宣伝されている。
だが、この二酸化炭素増加、異常高温現象の本当の原因は、CO2抑止を謳われる原子力発電の温排水が海水温を上昇させていることにある。
今すぐ世界中の原発温排水を停止させ、新自由主義=資本主義競争社会によるエネルギー浪費を抑制させないと、全世界で取り返しのつかない超高温気温が続くことで、本当に、我々の生きているうちの人類滅亡が視野に入ってきている。
世界最大のウラン鉱所有者であるオクシデンタルペトロリウム社のCEO、アルゴアらによって地球温暖化が叫ばれたのは今世紀初頭であり、CO2増加原因説が提唱され、温室効果ガス(CO2他)排出権取引という科学的根拠不明の奇っ怪な国際合意が成立し、我々への徴税から相当額の支出が行われてきた。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8E%92%E5%87%BA%E6%A8%A9%E5%8F%96%E5%BC%95
だが、この問題、CO2が、本当に地球温暖化に寄与しているのか? という問いについては、科学的根拠の確認できない一方的な決めつけだけがまかり通り、「だからCO2を出さないクリーンな原発電気が必要」という詭弁が世界を席巻している。
本当にCO2増加が温暖化の犯人なのか? これに対して、元名城大教授、物理学者の槌田敦氏が、すでに12年前から明確な回答を示している。
CO2温暖化脅威説は世紀の暴論【槌田敦(名城大学商学部)】2009 年 9 月 27 日
http://www.asyura2.com/09/nature4/msg/209.html
環境経済・政策学会 和文年報 第4集より CO2温暖化脅威説は世紀の暴論
― 寒冷化と経済行為による森林と農地の喪失こそ大問題 ―槌田敦(名城大学商学部)
CO2温暖化脅威説は,たとえば南極ボストーク基地における氷床の調査により,大気中のCO2濃度と気温とが過去22万年にわたって関係があることなどを根拠にしている。
しかし,2つの現象が長期にわたって関係するとき,どちらが原因でどちらが結果なのか,または別に本質的な原因があって,この両者はともにその結果なのか,その考察をすることなく,人々はCO2濃度上昇で気温が上がると信じ,その対策を一大国際政治課題にしてしまった。
これにより,寒冷化説をとりつづける地道な学者は,研究費が得られず,また研究してもこれを発表する場をレフェリー制度によって奪われ,さらに圧倒的に多い温暖化論者の前に意欲を失い,沈黙を余儀なくさせられたように見える.寒冷化説の指摘した問題点は,現在もなお有効である。
ここでは,CO2温暖化脅威説やO3ホールのフロン原因説が間違っており,また京都議定書を受けて提案される太陽光や原発などの取組みが無意味であることを示す.さらに,穀物の過剰生産,自由貿易,債務という経済行為を原因とする農地と森林の喪失がこのCO2温暖化説の陰に埋没しているという現実を打破するため,あえて思うままを率直に書くことにした.
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1.気温の変化がCO2濃度の変化に先行する
2.南半球大気中のCO2濃度の季節変化
3.両半球大気中のO2濃度の季節変化
4.海洋での炭素循環
5.気温を決めるのは太陽光と地球の受光能
6.温暖化ガスとしてのCO2の効果
7.地球寒冷化の心配
8.大気汚染による寒冷化と温暖化
9.無意味な温暖化対策
10.原子力発電ではCO2排出量も減らない
11. ナンセンスといえばオゾンホールも
12. 森林と農地の喪失こそ最大の環境問題
13. 債務返還と利子払いが途上国の農地破壊を加速
14. 途上国における森林破壊
15. 環境問題を正しく理解するには、開放系の熱学が必要
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1.気温の変化がCO2濃度の変化に先行する
多くの研究者は,大気中のCO2濃度の増大が気温を上昇させるという.しかし,事実は逆である.ハワイのマウナロア観測所でのCO2の長期観測者として知られるC.D.Keelingグループの研究によれば,図1に示すように,気温の上がった半年~1年後にCO2が増えている。
(事実①)
(アマ註、図表がないので、代わりに気象庁の海水温とCO2の相関関係評価をリンクする) https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/db/mar_env/knowledge/global_co2_flux/global_co2_flux_map.html
C.D.Keelingらは,エルニーニョ発生の1年後にCO2が増えたことも発表した[1],[2].赤道付近の海面温度の上昇がCO2濃度の上昇の原因となっているのである。
(事実②)
したがって,大気中のCO2濃度の増加で温暖化するのではなく,気温(海面温度)の上昇でCO2濃度が増えるというべきである.根本順吉は,このC.D.Keelingらの仕事に注目し,「現在の温暖化のすべてを温室効果ガスによって説明することはたいへん無理である」と述べた。
しかし,このC.D.Keelingらの研究も,根本氏の見解も無視されたまま,現在に至っている.
2.南半球大気中のCO2濃度の季節変化
人間が発生させたCO2が大気中に留まるとする説の論拠は,海洋の表層水は10~20℃で軽く,深海水は0~5℃で重いから,これらの海水は混合しない,また,表層水のCO2溶解量は少ないから,大気と表層水との間でCO2交換があってもその量は少なく,大気中のCO2濃度に深海水のCO2が影響することはない,という考え方に基づいている。
しかし,それでは,北半球で大気中のCO2濃度に10ppm程度の季節変化があるが,南半球でほとんど季節変化がないという周知の事実を説明できない。
(事実③)
北半球と南半球の違いは海と陸の面積の違いである.北半球(30゚N~70゚N)では海と陸の面積はほぼ等しいが,南半球(30゚S~70゚S)では海は90%以上を占めている.その南半球で,夏,表層水で植物プランクトンが活発に光合成するが,大気中のCO2を必要としていない。
表層水での光合成に必要なCO2は深海水から供給される以外には考えられないから,表層水と深海水の間にCO2のやりとりがないとする説は正しくないことを示している。
3.両半球大気中のO2濃度の季節変化
R.F.Keelingらは,大気中のO2濃度が北半球でも南半球でも季節変化していると発表した[4].海の生物にとって,表層水に溶けているO2だけでは不足し,またCO2と違って深海からのO2の供給は考えられないので,大気中のO2が必要なのである。
(事実④)
ここで,大気中のO2とCO2濃度を合計すると,生物の光合成や呼吸の効果を消去できる.R.F.Keelingらによれば,この合計の季節変化は,北半球,南半球とも,生物効果とほぼ同じ大きさである。
(事実⑤)
このO2とCO2の濃度の合計の季節変化は主に,海洋と大気の間のこれらの気体の交換の結果である.夏には海洋から大気へ,冬には大気から海洋へこれらの気体が移動している.海洋と大気の間で気体の移動は少ないとすることが間違いであることがわかる。
4.海洋での炭素循環
深海水との関連で表層水のCO2濃度を論ずるには,海洋における炭素の全体の流れを考える必要がある.それは海洋の炭素の上下循環で決まる。
表層水への炭素の供給は炭素濃度の高い深海水の湧昇でなされている.赤道で貿易風が吹くと西向きの海流が生ずるが,この東端で深海水が湧昇する。
太平洋ではペルー沖である。中緯度で赤道に向かう風が吹くと赤道に向かう海流が生ずるが,これは地球の自転についていけず,西向きに方向を変える。
この海流と大陸西海岸との間にすき間ができるが,ここで深海水が湧昇する.太平洋ではカリフォルニア沖とチリ沖である.また極洋では,冬に表層水の温度は氷点の-2℃になる.この温度の海水は最大密度であり,また氷結によって塩分濃度も増えるため重くなって沈降し,代わりに0~3℃の軽い深海水の湧昇となる。
この深海からの湧昇水は炭素化合物とリンや窒素などの養分が豊富である.表層水に供給された炭素化合物は細菌などの餌となり,大気から供給されるO2によってたちどころに酸化されCO2になる.この豊富なCO2と養分によって海洋の光合成が進行し,この湧昇海域は漁場となる。
ここで生育した海洋生物は,世界の海に拡散し,海洋動物の餌となり,結局は糞になる.糞は海水より重いので沈降し,炭素と養分は深海に帰っていく.つまり,表層水のCO2濃度は深海永の湧昇と糞の沈降で決まることになる。
植物プランクトンの元素構成比(Redfierd 比)はC:N:P=106:16:1であるが,深海の元素構成比もこれとほとんど同じであるから,湧昇海域では,光合成に必要な養分濃度とCO2濃度は過不足なく均衡している.したがって,南半球の光合成にとって大気のCO2は必要がなく,その濃度は季節変化しないのである。
5.気温を決めるのは太陽光と地球の受光能
このように,大気中のCO2濃度はヘンリーの法則により海洋表層水の温度とそのCO2濃度で決定される.表層水の温度は太陽活動と地球の受光能で決まる。
太陽活動の大きさは黒点の数と対応している.黒点の数の変化と気温の変化は直接関係し,CO2の変化はこれに遅れて続くという事実も報告されている。
(事実⑥)
北極圏では,過去350年にわたる気温の変化と太陽光の受光量の変化はよく対応している。
(事実⑦)
さらに,1992年から2年間,人間がCO2の放出をやめたわけではないのに,大気中のCO2濃度はまったく増えていない.CO2温暖化説によれば,このCO2は完全に行方不明ということになる.
(事実⑧)
この原因は1991年のピナツボ火山の噴火により,微粒子が成層圏に放出され,地表の受ける太陽光が減ったからである。
これらの事実によって,大気中のCO2濃度は人間の発生するCO2によって決まるのではなかったことがわかる.そもそも,人間社会の発生したCO2が大気中に溜まるとすると,その半分が行方不明になるという欠陥は20年も以前から指摘されていた.これを放置したまま,CO2温暖化説を信じたことに間違いがあった。
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ヘンリーの法則
ある温度における比較的水に溶けにくい気体の溶解度は、気体の分圧に比例する。ある温度 t において1気圧の気体の溶解度をF(t) とすると、気体分圧がp(atm) の場合の溶解度は、F(t)・p で求められる。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%B3%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%81%AE%E6%B3%95%E5%89%87
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6.温暖化ガスとしてのCO2の効果
以上述べたように,気温の上昇で大気中のCO2濃度が上昇する.しかし,そのCO2が気温を上昇させる効果も2次効果としては無視できない.ところで,温暖化ガスの中でもっとも影響の大きい気体はH2O=水蒸気である。多くの議論ではこのことが無視されている。
熱帯または温帯の夏,大気中のH2Oの量が多いので,CO2が多少増えたところでCO2による影響はない。しかし,寒帯または温帯の冬,大気中のH2Oの量は少ないので,地表から放出される遠赤外線は宇宙にそのまま逃げていく。これはいわゆる放射冷却である。ここで,大気中のCO2濃度が増えるとこの放射冷却は妨害され,地表は保温されることになる。
(事実⑨)
これは温室での保温効果ではない。地球の温室効果は他に実在し,重力が原因である.これにより窒素や酸素は地球から抜け出せず大気を作っている。この大気がなければ地表の温度は-18℃となる.CO2による温暖化効果を温室効果(greenhouse effect)と呼びつづけることは大きな間違いをそのままにすることである。
H2OやCO2温暖化効果は,これらの分子が遠赤外線を吸収し,また放出する能力によって生じる。この温暖化効果は,真綿をかぶると空気の出入りが自由であるのに,暖かい効果が得られるのと同じである.したがって,このH2OやCO2の温暖化効果は,真綿効果(silk effect)とでも呼ぶべきであろう。
このCO2の二次的な保温効果によって,寒帯または温帯の冬は暖かくなるが,この温暖化は,地球上の生命にとって悪い効果をもたらしたことはない。
5000年以前の古代文明(日本では縄文文明)や1000年前のノルマンの侵略(日本では平安末期)以前の気温の高かった時代を,気象学者は,ヒプシサーマル(気候最適期)と呼び,人類にとって高温時代は暮らしやすいと判断していたのである。
7.地球寒冷化の心配
逆に,気温が低い時代は人類は不幸であった.その理由は,陸の光合成は気温が15℃以上でなければならないからである.
(事実⑩)
現在,平均気温が15℃ということは,陸地の半分で光合成ができないことを意味する.これが低温になると,この面積が増えて,食料が得られなくなる。
1950年代,暖冬続きで地球の温暖化が問題になった.そのころ南極の氷がとけて海面が上昇し,大都会が水没するおそれがあると騒がれた。
ところが1970年代に入り,気温が上がらず,地球寒冷化が問題となった。実は,1940年以後,気温は徐々に下がっていることが確かめられた.そこで気象学者の多くは1980年ごろから,寒冬・冷夏が増え,小氷河期の気候に近づくと予想した。
図3 過去2万5000年間の北半球の気温の変化
(アマ註、図表が見つからないので代わりに南極気温変化図を掲載)

図3は,過去2万年の花粉,樹相,氷河からまとめた気温の変化(連邦研究協議会記録,1975年)である。これによれば,7000年前に高温期があり,それ以後長期低下傾向にある.とくに注意すべきは,その間に3回,約2000年の間隔で,約2℃の温度降下をもたらす小氷期がある。
前回の最高気温期が2000年前であるから,現在が最高気温であり,まもなく気温が下がっていくとした1970年ごろの気象学者の予想はやはり正しいのである.
蛇足であるが,世論に迎合して寒ければ寒冷化説を主張し,暖かくなれば変更の理由も示さず温暖化説を唱えるような,最近の気象学者の生態には,私はとてもついていけない。
8.大気汚染による寒冷化と温暖化
人間による地球気候への影響について,もっとも考慮すべきは,CO2ではなく,大気汚染である.
地球を開放系の熱物理学の対象とするとき,重要な事項は入力としての太陽光の受光状態,出力としての宇宙への放熱状態,そして地球に存在する物質循環の3点である。
まず,太陽光を15℃の地表で受ける。次に,対流圏上空のマイナス23℃で宇宙に放熱する。これによって,下が熱せられ,上が冷やされるので,対流圏の大気の循環活動が成立する.まさに地球エンジンである。
この大気の循環が,地表の水と大気中の水蒸気の間の循環活動を作る。つまり,地球は空冷と水冷の機能をもつことになる。この大気と水の循環は海水の上下循環活動を発生させ,また養分の循環を作って生態系を成立させている。つまり,大気の循環こそが地球での諸現象の根源である。
そこで,この大気の循環を阻害する人間活動を考える。それは,大気汚染である。まず,可視光と赤外線に対して汚染物質が白い場合,太陽光は宇宙に散乱されるから気温を降下させる。
大気汚染が,可視光と赤外線に対して黒くて,成層圏にある場合,太陽光は吸収されて成層圏の温度は上がるが,この熱はそのまま宇宙へ放熱され,対流圏の大気循環に対してはほとんど影響がない。しかし,この汚染は地表に届く太陽光を少なくするので,白い汚染と同様に寒冷化をもたらすことになる。
黒い汚染物質が対流圏に放出される場合は,深刻な影響を受ける。太陽光はこの汚染物質に吸収されてその高度の大気を加熱する。そして,地表に到達する太陽光は減少する。その結果,上が加熱され,下が減熱されることになるので,大気の循環は阻害され,地表は熱平衡に近づく。
また,大気循環が滞るため,風が吹かず,水があっても蒸発しない.地球の持つ空冷と水冷の機能を損なうことになる.これは温暖化というよりも,熱地獄である.
(事実⑪)
この現象は都市気象(ヒートアイランド)として知られるが,これが世界各地に広がっている。インドネシアやブラジルの焼畑を原因とする熱帯林の火災による煙は,赤道上空を覆い,貿易風や積乱雲の発生を妨害して,赤道海面の温度を上げる原因となった。
また,北極圏では,工場や航空機の黒い煙による対流圏大気の汚染がある.これは北極圏の気温上昇の一因である。
以上述べたように,CO2温暖化脅威説は11の事実から否定される.CO2温暖化脅威説では,まず人間の活動を考えた。しかし,人間の活動はまだ地球全体に及ぼすほど大きくはない。したがって,より根源的な事象としてまず太陽活動,次いで地球の受光能,そして人間活動の地域に及ぼす影響の順に考えることである。これを逆にすれば矛盾した結果になるのは当然である.
9.無意味な温暖化対策
CO2温暖化脅威論がナンセンスである以上,この脅威を防ぐためのCO2対策もナンセンスということになる。もしも,文明批判が目的であれば,結果として発生するCO2を論ずるのではなく,石油など資源の大量使用を直接論ずるべきである。
それだけでなく,提案された対策の多くは発生するCO2を減らすことにもなっていない・これらの対策は,ほとんどすべてコスト高である.コスト高ということは,間接的に石油や石炭などを大量に消費することを意味する。
たとえば,太陽光発電の場合,半導体や関連機器の生産や設置に巨大な費用が必要だが,それは石油の消費でなされている.つまり,余計にCO2を放出することになっている。
ここで,エネルギーまたは物質収支の計算がなされるが,この種の計算の最大の欠点は積上げ方式をとっていることである。このため,入力の積上げを忘れても,出力損失の積上げを忘れても,効果はよいほうに傾き,提案者に誤った希望を与えることになる。
10.原子力発電ではCO2排出量も減らない
このことは,とくに,原子力発電の推進根拠の失敗に現れている。原子力発電所には,小さな重油タンクがあるだけだから,発電時にはCO2をほとんど出さないと説明される。しかし,この発電時以外のところで大量のエネルギーが投入されており,原子力発電はCO2を大量に発生している。
アメリカのエネルギー開発庁(ERDA)が1976年に計算したところによれば,エネルギー産出量100を得るために26のエネルギーを投入している。産出投入比は100/26=3.8である.電力中央研究所による1991年の計算も4.0とほとんど変わらない。
この結果は原発が有利なように見える.しかし,これは積上げ計算であるから,積残しを考慮していくと,投入量は増え,産出量は減り,結果として産出投入比はどんどん減ることになる。
ERDAの場合も,電中研の場合も,運転での電力投入(7),遠方送電の建設(5),揚水発電所の建設(10)という投入が忘れられている。これを考慮すると,投入量は26+7+5+10=48となる.また遠方送電損失(7),揚水発電損失(20)という欠損があり,産出量は100-7ー20=73となる.その結栗,産出投入比は73/48=l.5となる。
さらに,計算不可能な投入として,放射能対策,廃炉対策,事故・故障対策がある.これを評価すれば,産出投入比は1に近づき,そして1を割ることになっていく.原発は事故で庶民を加害し,また処理処分不可能な放射能を残すだけでなく,石油石炭を大量に消費するのである.
現代の温暖化キャンペーンは,このような原子力をCO2削減のエースとして推進するためであった。アルゼンチンで開催された気候変動枠組条約 第4回締結国会議(COP4)は,さながら原子力発電の売込みの場であったと伝えられている.これに誘導されて大騒ぎするなどまったくナンセンスとしかいいようがない。
11. ナンセンスといえばオゾンホールも
通説では、フロンから塩素が出て化学反応で成層圏のオゾンを壊し、南極にオゾンホールが広がり、地表に届く紫外線が増え、皮膚ガンが増えると心配されている。
オゾンを壊すという化学反応には、塩素のほかに紫外線が必要である。しかし、南極の春先、太陽光は水平に入ってくるので、光が通過する大気の厚さは、真上から入射したときの10倍にもなる。
そのため、紫外線は南極の上空に届く前に宇宙に散乱され、ほとんど存在しない。これではオゾン破壊になるわけがない。
フロンがオゾン層を破壊するという説の論拠は、南極の高層成層圏では強い西風が吹き、.その極渦がエアカーテンとなって南極の大気を隔離する。オゾンの出入りがないのにオゾンが減るのだから、ここでオゾンが破壊されているとしなければならない、と。しかし、ほんとうに南極の大気は閉ざされているのだろうか。
高層成層圏での強い西風の原因は地球の自転である。地球が西から東へ動いているため、大気も一緒に西から東へ動いている。赤道の大気はもっとも速く動いており、南極の大気はあまり動かない。
ここで、赤道の大気が南極に向かって移動すると、地球表面の速度は、南極に近づくにしたがって遅くなるので、大気のほうが速く動くことになる。つまり、緯度が高くなる方向に大気が動くと、西風になる。
南極の周辺で高層成層圏に強い西風が吹いているということは、赤道から南極の方向に向けて大気が流れていることを示している。高層成層圏の西風はエアカーテンではなかったのである。
南極に流れこむ高層成層圏の大気にはオゾンが1/10と少ない。したがって南極のオゾンが減るのは当たり前である。この南極成層圏の西風という事実だけからフロン原因説は覆されてしまった。
そのうえ、オゾンは紫外線が存在すると大気中の酸素から直ちに生産され、蓄積される。したがって、太陽光の有害紫外線はそれほど気にする問題ではもともとなかったのである。
12. 森林と農地の喪失こそ最大の環境問題
現状では、環境問題はCO2温暖化とO3ホールの話題がほとんど独占している。しかし、最大の環境問題は、農地と森林の喪失である。この原因は、過剰農業、過剰放牧、過剰伐採といわれているが、そもそもなぜ過剰になるのか、ということの議論が欠けては、対応できるわけがない。
まず、科学技術はアメリカなど先進国で穀物の過剰生産をひき起こし、穀物の価格を下げてしまった。その結果、まだ穀物を生産できる農地であっても、採算がとれなくなって放棄されている。
この放棄された農地は風水害で荒地となり、砂漠化している。
また、先進国での穀物価格の低下は、農民を離農させ、失業問題となった。そこで農民の失業を抑止するため、この過剰穀物は輸出されている。
農産物の代表的輸出国アメリカの穀物生産最は、入口を養う約5倍という。そのうち1は国民が食べ、3は家畜の鋳にし、残りの1を輸出している。これさらに安い価格で輸出されている。また援助物資という形は補助金をつけて、さらに安い価格で輸出されている。また援助物資という形で輸出される穀物も、実は失業対策であった。
1994年の世界の小麦の貿易量は9900万トンであった。その輸出国の筆頭はアメリカ(31%)で、これにカナダ(22%)、オーストラリア(13%)、フランス(13%)、ドイツ(6%)、アルゼンチン(5%)、イギリス(4%)が続く。これらの国だけで小麦の輸出量のほとんどすべてになっている。
これらの先進国の穀物の輸出攻勢を受けて、途上国の穀物生産は壊滅状態になった。とくに、アフリカの場合、昔は小麦を食べなかったが、たびたびの飢饉の際、援助物資の小麦で食の嗜好が変わり、都市の住人に小麦を食べる習慣ができてしまった。
そうなると農家がミレット(きび)などの雑穀を生産しても、都市の住民は買ってくれない。やむなく農業を放棄して、都市のスラムの住民になる。先進国の失業対策は、途上国への失業の輸出を意味している。そして、放棄された農地は、風水害によって荒地となり、砂漠化することになる。
先進国の科学技術による穀物の生産性の向上は、世界の人々を飢えから解放すると期待された。しかし、事実は逆で、先進国でも途上国でも有用な農地を砂漠化し、将来の飢えの原因を作っている。
13. 債務返還と利子払いが途上国の農地破壊を加速
砂漠化には、植民地から独立国になったことによる政治問題も関係する。植民地時代、植民地政府は綿花やコーヒーを栽培させた。それでも、農民を永続的に働かせるため、穀物生産のための農地は保護していた。
ところが、独立で状況は一変する。独立した政府に、先進諸国から多大な資本の貸付が行われた。ところが、1982年以降、債務の返還と利息の支払いで資金は一方的に途上国から先進国へ流れることになった。
世界の富は貧しい国から豊かな国へ流れている。途上国ではこの債務や利息の支払いのために、穀物生産をやめて換金作物を作っている。しかし、多くの途上国ではコーヒーなど換金作物を売った額の半分近くをこの返済にあてている。
このような無理をして換金作物を作っているため、農地は荒れる一方で、ますます途上国の砂漠化が進むことになる。
14. 途上国における森林破壊
途上国の農民が都市のスラムへ行かないで農業を続けようとすれば、まだ肥沃な土地のある森を焼き、開墾すればなんとかなる。しかし、そのようにして得た農地は2、3年で養分がなくなるので、そこを捨てて、また別の森林を焼くことになる。
日本へ輸出する木材の過剰伐採も森林を破壊する原因であるが、それ以上に焼畑のほうが深刻である。スマトラ島のように、焼畑の火が森林火災の原因となって森を大規模に失うこともある。放牧でも森を焼いている。このようにして利用した森林の跡地はすべて砂漠化している。
このように、砂漠化を進めているのは、穀物の過剰生産と穀物の自由貿易と債務である。これを止めるのは容易ではない。よほど議論して対策を立てなければ、よい結果は生まれない。
ともかく、このままでは、世界中で農地と森林を失い、農耕できない荒れ地ばかりにするのは確実である。このときに地球寒冷化と異常気象が襲うであろう。われわれがこの現象をなすすべもなく見逃したばかりに、子孫は苦しむことになる。
このような農地と森林の破壊こそ大問題であるのに、炭酸ガス温暖化脅威説に振り回わされ、世界各地の環境悪化の経済的原因を十分に論議する機会が奪われていることは、残念というほかはない。
15. 環境問題を正しく理解するには、開放系の熱学が必要
生命は、なぜ、その活動を維持できるのか。この問題の答えは、開放系の熱学を学ぶことによって得られる。いわゆる、エンジンの理論である。地球環境もこのエンジンの法則の範囲の中にあるから、これらの問題を議論するにはこの開放系の熱学が必要不可欠である。
また、人間社会もこのエンジンの法則により維持されている。このエンジンは、需要があれば供給すると儲かるという欲望の法則によって動いている。これを無視して環境問題や人間社会を論ずると、CO2温暖化やO3ホールだけでなく、中途半端な議論に明け暮れ、その結果は、大気汚染や自由貿易や原発など本質的な環境破壊行為を見逃し、これをますます悪い方向に広げることになる。現状は残念ながらそのとおりである。
本論文は、1998年秋の環境経済・政策学会、物理学会、エントロピー学会での講演と質問への回答をもとに作成した。
(「熱物理学および環境経済論」)
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引用以上
槌田敦氏の論文は、極めて的確で学問的価値の高いものだが、残念ながら原発温排水の地球温暖化効果について触れられていない。
以下に、小出裕章氏、中村隆一氏の原発温排水についての文章を転載する。小出氏の文章は、2010年3月、フクイチ事故の一年前に書かれたものだ。消失圧力を懸念して全文掲載する。
原発温廃水が海を壊す 原発からは温かい大河が流れている 小出裕章
https://imidas.jp/jijikaitai/k-40-059-10-03-g112
原子力発電所の稼働に不可欠な冷却水は、その膨大な熱とともに放射能や化学物質をともなって海に排出される。この温廃水(温排水 hot waste water)の存在、あるいは環境への影響が論じられることは少ない。
地球温暖化への貢献を旗印として原子力回帰が叫ばれる中、けっして避けられない温廃水の問題を浮き彫りにする。
蒸気機関としての宿命
地球は46億年前に誕生したといわれる。その地球に人類が誕生したのは約400万年前。地球の歴史を1年に縮めて考えれば、人類の誕生は大みそかの夕方になってからにすぎない。その人類も当初は自然に寄り添うように生活していたが、18世紀最後の産業革命を機に、地球環境との関係が激変した。
それまでは家畜や奴隷を使ってぜいたくをしてきた一部の人間が、蒸気機関の発明によって機械を動かせるようになった。以降、大量のエネルギーを使うようになり、産業革命以降の200年で人類が使ったエネルギーは、人類が全歴史で使ったエネルギー総量の6割を超える。その結果、地球の生命環境が破壊され、多数の生物が絶滅に追いやられるようになった。その期間を、地球の歴史を1年に縮めた尺度に合わせれば、大みそかの夜11時59分59秒からわずか1秒でのことである。
今日利用されている火力発電も原子力発電も、発生させた蒸気でタービンを回す蒸気機関で、基本的に200年前の産業革命のときに誕生した技術である。その理想的な熱効率は、次の式で表される。
理想的な熱機関の効率=1-(低温熱源の温度÷高温熱源の温度)
(※それぞれの温度には「K(ケルビン)」の単位で表す絶対温度を用い、「℃」で表す摂氏温度の数字に「273」を加え、たとえば0℃=273K、100℃=373Kとなる)
だが、現実の装置ではロスも生じるため、この式で示されるような理想的な熱効率を達成することはできない。火力発電や原子力発電の場合、「低温熱源」は冷却水で、日本では海水を使っているので、その温度は地域差や季節差を考慮しても300K(27℃)程度であり、一方の「高温熱源」は炉で熱せられ、タービンに送られる蒸気である。
そのため、火力発電と原子力発電の熱効率は、基本的にそれらが発生しうる蒸気の温度で決まり、その温度が高いほど、熱効率も上がることになる。現在稼働している原子力発電では、燃料の健全性を維持するため冷却水の温度を高くすることができず、タービンの入り口での蒸気の温度はせいぜい550K(約280℃)で、実際の熱効率は0.33、すなわち33%しかない。
つまり、利用したエネルギーの2倍となる67%のエネルギーを無駄に捨てる以外にない。
想像を絶する膨大さ
この無駄に捨てるエネルギーは、想像を絶するほど膨大である。たとえば、100万kWと呼ばれる原子力発電所の場合、約200万kW分のエネルギーを海に捨てることになり、このエネルギーは1秒間に70tの海水の温度を7℃上昇させる。日本には、1秒間に70tの流量を超える川は30筋もない。原子力発電所を作るということは、その敷地に忽然として「温かい大河」を出現させることになる。
7℃の温度上昇がいかに破滅的かは、入浴時の湯の温度を考えれば分かる。ふだん入っている風呂の温度を7℃上げてしまえば、普通の人なら入れないはずである。しかし、海には海の生態系があって、その場所に適したたくさんの生物が生きている。その生物たちからみれば、海は生活の場であり、その温度が7℃も上がってしまえば、その場では生きられない。
逃げることのできない植物や底生生物は死滅し、逃げることができる魚類は温廃水の影響範囲の外に逃げることになる。人間から見れば、近海は海産資源の宝庫であるが、漁業の形態も変える以外にない。
途方もない環境破壊源
雨は地球の生態系を持続させるうえで決定的に重要なもので、日本はその恵みを受けている貴重な国の一つである。日本には毎年6500億tの雨が降り、それによって豊かな森林が育ち、長期にわたる稲作も持続的に可能になってきた。雨のうち一部は蒸発し、一部は地下水となるため、日本の河川の総流量は年間約4000億tである。一方、現在日本には54基、電気出力で約4900万kWの原子力発電所があり、それが流す温廃水の総量は年間1000億tに達する。
日本近海の海水温の上昇は世界平均に比べて高く、特に日本海の温度上昇は著しい。原発の温廃水は、日本のすべての川の水の温度を約2℃温かくすることに匹敵し、これで温暖化しなければ、その方がおかしい。そのうえ、温められた海水からは、溶け込んでいた二酸化炭素(CO2)が大量に放出される。もし、二酸化炭素が地球温暖化の原因だとするなら、その効果も無視できない。
もちろん、日本には原子力発電所を上回る火力発電所が稼働していて、それらも冷却水として海水を使っている。しかし、最近の火力発電所では770K(約500℃)を超える高温の蒸気を利用できるようになり、熱効率は50%を超えている。
つまり、100万kWの火力発電所の場合、無駄に捨てるエネルギーは100万kW以下で済む。もし、原子力発電から火力発電に転換することができれば、それだけで海に捨てる熱を半分以下に減らせる。
さらに、火力発電所を都会に建ててコージェネレーション(cogeneration)、すなわち無駄に捨てるはずの熱を熱源として活用すれば、総合的なエネルギー効率を80%にすることもできる。しかし、原子力発電所は決して都会には建てられない。
熱、化学物質、放射能の三位一体の毒物
温廃水は単に熱いだけではなく、化学物質と放射性物質も混入させられた三位一体の毒物である。
まず、海水を敷地内に引き込む入り口で、生物の幼生を殺すための化学物質が投入される。なぜなら海水を施設内に引き込む配管表面にフジツボやイガイなどが張り付き、配管が詰まってしまっては困るからである。
さらに、敷地から出る場所では、作業員の汚染した衣服を洗濯したりする場合に発生する洗濯廃水などの放射性廃水も加えられる。
日本にあるほぼすべての原子力施設は、原子炉等規制法、放射線障害防止法の規制に基づき、放射性物質を敷地外に捨てる場合に濃度規制を受ける。
原子力発電所の場合、温廃水という毎日数百万tの流量をもつ「大河」がある。そのため、いかなる放射性物質も十分な余裕をもって捨てることができる。洗濯廃水も洗剤が含まれているため廃水処理が難しい。原子力発電所から見れば、苦労して処理するよりは薄めて流すほうが得策である。
たとえば、昨今話題となる核燃料サイクルを実現するための核燃料再処理工場は、原子力発電所以上に膨大な放射性物質を環境に捨てる。ところが、再処理工場には原子力発電所のような「大河」はない。
そこで、再処理工場は法律の濃度規制から除外されてしまった。逆にいえば、原子力発電所にとっては、温廃水が実に便利な放射能の希釈水となっているのである。
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引用以上
中村隆一 「風の便り」 2014/03/06
原発停止で温排水も止まって 周辺の海洋環境が劇的に改善
https://www.windfarm.co.jp/blog/blog_kaze/post-15842
■佐賀県玄海町の玄海原子力発電所が4基すべて運転を停止してから2年以上が経ちました。
■1号機が運転を開始してからおよそ39年、これまでに前例のない長期間の停止によって、周辺の海である変化が起きていました。
玄海原発では1975年に1号機が運転を開始してから、ほぼ連続して原発が動いてきました。ところが、東日本大震災後の2011年12月に、4号機が定期点検に入って以降、4基すべてが2年以上にわたって停止したままです。
なぜ海はこれほど変化したのでしょう? (アマ註、映像は消去されてしまった)
その原因として考えられるのが、原発から出される暖められた海水、『温排水』です。
原子力発電所は、タービンを回す蒸気を、海からくみ上げた水で冷やします。暖められた海水は『温排水』として再び海に戻されます。
原発からは最大で7度まで、周囲より高い温度の水を出すことが認められています。その量は、岩につかまらないとダイバーが流されてしまうほどだったということです。
大量の温排水で海が温められたため、南方系の魚が冬も生き残っていたのです。
原発停止後の変化は、魚だけではありません。
●今林記者・水中リポート
「この四角のコンクリートブロックは原発が動いている時は、全く海藻が生えていませんでしたが、今は一面びっしりと海藻に覆われています」
同じく今から8年前の映像です。(映像は消去された)
原発稼働中は、ほとんど海藻は生えておらず、岩がむき出しの状態でした。
ところが、現在はいたるところにアラメやクロメなど、コンブの仲間が生えていました。
同じ場所で比べてみると違いは一目瞭然です。
原発周辺の海で変化が起きているのは、玄海だけではありません。
京都大学の益田准教授は2004年から若狭湾で潜水調査を続けています。
益田准教授は、原発停止直後の海の劇的な変化に、目を見張ったといいます。
●京都大学舞鶴怜治水産実験所・益田玲爾准教授
「予想よりはるかに急激でしたね。南方系の生き物がたちどころにいなくなって、それで本来の若狭湾の生き物が戻ってきたということですね」
若狭湾沿岸にはあわせて14基もの原発が集中しています。
益田准教授は、そのひとつ高浜原発からおよそ2キロの地点で調査を続けています。
益田准教授によりますと温排水によってこの地点では周辺海域と比べ水温がおよそ2度高くなっていました。この2度が冬場、生き物の生死を分けていたのです。
●京都大学・益田准教授
「水の中では、陸上よりもはるかに熱が伝わりやすいということがあるんですね。ですから、水中の2度の違いというのは、魚にとって非常に大きな違いになります。人間が陸上で2度というのはどうにでも調節できますが、魚にとっての2度というのは、調節がきかないエリアになってしまいがちなんです」
温排水は火力発電所からも出ますが、益田准教授の調査では近隣の火力発電所では大きな変化は起きていませんでした。
原発の運転が海の生態系に大きな影響を与えているのは明らかだと益田准教授は話します。
★福井県・若狭湾の原発停止で北方系の魚介類が戻ってきた
(日刊SPA 2013/12/20)
現在、日本で稼働している原発は1基もない。これまで、原発を冷やすために取り込んだ海水が温められ、海に放出され続けてきた。ところがこの「温排水」が止まったことで、原発周辺の海域の環境が回復してきているという! 原発停止によって(良い意味で)激変した各地の海の状況をリポートする。
<福井県・若狭湾の原発>
◆温排水停止で、減少していた北方系の魚介類が戻ってきた
原発の温排水が海の生態系に与える影響について、実際に海に潜って調査している研究者がいる。京都大学舞鶴水産実験所の益田玲爾所長は、’04年以降、毎年1月下旬~3月上旬に高浜原発の放水口から北東約2kmの「音海」という海域に生息する魚介を定点観測してきた。益田所長は「温排水による生態系への影響は明らか」と語る。
「’04~’11年にかけて、原発から2kmの地点の水温が、湾内外の他の海域より2℃高くなっていました。水中では熱が伝わりやすいため、2℃というのは魚介類にとって大きな違いなのです。熱帯・亜熱帯の南方系の魚介類が生活できるギリギリの温度は11℃なのですが、原発の温排水で、春や夏に来た南方系の魚介類が冬を越せるようになっていました。本来いるはずのない生物が繁殖することで大きな混乱が起きていました」
ところが、温排水が止まったことで、元の健全な生態系が音海の海に戻りつつあるという。
「例えば、ガンガゼという南方系の毒ウニが大量発生していたのですが、温排水が止まったことで死滅。地元特産のおいしいアカウニやムラサキウニはガンガゼとの競合で追いやられていましたが、再び姿を見せるようになりました。同様に、地元特産で食用のマナマコも、南方系のトラフナマコが水温低下で減少すると、また数を増やし始めています」
温排水の停止の好ましい影響の中でも、特に喜ばしいのは海藻の復活だろう。
「海の生態系で非常に重要なのは、浅瀬に生い茂る海藻。さまざまな魚介類の餌である生物が棲むエサ場であり、稚魚が育つ棲み処でもあります。アワビやサザエなどの貝類も海藻を餌としています。温排水が放出されていた頃は、『磯焼け』といって海藻が壊滅した状態でした。海水温の変化による直接的なダメージに加え、本来冬場の音海にはいないはずのアイゴという海藻を食べる魚が温排水の影響で一年中いるようになり、海藻が食い荒らされてしまったのです。
しかし、温排水の放出が止まった途端に海藻が復活し、アミなどの動物プランクトンも一緒に戻ってきました。以前は姿をまったく見なかった、ヒラメの稚魚が姿を見せるようになったことも良い傾向です。若狭湾の特産物で、煮付けにするとおいしいメバルも戻ってきました。基本的に、南方系の魚よりも、もともといた北方系の魚のほうが、商品として高く売れるので、地元の漁師さんにとっても、温排水がないほうがいいといえるのではないでしょうか」
― 原発止めたら[海の環境がもりもり改善!?] ―
◆原発停止で周辺の海洋環境が劇的に改善
(日刊SPA 2013.11.26 ニュース)
現在、日本で稼働している原発は1基もない。そのため、稼働中に海に放出され続けてきた原発から出る温排水が止まったことで、原発周辺の海域の環境が回復してきているという声が各地から挙がっている。
◆鹿児島川内原発の場合……
鹿児島県にある川内原発の近くで海岸の清掃ボランティアやウミガメ監視員を務める中野行男さんは、10年ほど前から月に20日以上、川内原発の南海岸を歩き続けてきた。
「これまで、季節によっては毎日のようにサメやエイ、ダツなどの大型魚類や、クジラ、イルカなどの海生哺乳類、ウミガメなどの死体が海岸に漂着していました。原発ができる前は、こんなことは全然ありませんでした」(中野さん)
サメの死体が1日で4体もうち上げられたこともあったそうだ。
「それが、川内原発が停止した’11年9月以降、これらの死体漂着は一切なくなったのです」
また、この近辺ではウミガメの異常行動がよく確認されていた。
「例えば、通常のウミガメは満潮の夜に産卵のため岸に上がりますが、昼間や干潮時に産卵に来るケースがしばしば報告されていました。ところが、現在では産卵は順調に行われています」
週刊SPA!11/26発売号「原発止めたら[海の環境がもりもり改善!?]リポート」では、他にも、原発が止まったことによって取水口に取り込まれる魚が減ったり、海水温が下がったために外来種が減り、漁業にも好影響が出ていることを報じている。また、福井県の若狭湾周辺の原発、北海道の泊原発周辺地域での(よい意味での)激変をリポートしている。 <取材・文/週刊SPA!編集部>
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◆上関原発建設計画:温排水の影響を懸念
(2010/05/20 風の便り)から抜粋
世界有数の漁場だった瀬戸内海が埋め立てや海洋汚染によって、生態系が破壊されてるなか、今も豊かな自然が残っている周防灘という海域(山口、福岡、大分の3県にまたがる海域)があり、絶滅危惧種や希少な生物がたくさん棲息しています。
そこに上関原発が建てられようとしており、その計画に28年前から反対し続けている人々(祝島や長島の自然を守る会など)がいます。
ここを破壊してしまったら、瀬戸内海の再生は不可能になるだろうと多くの学者が指摘している重要な地域を、生物多様性国際会議を開く主催国が破壊しようとしているわけです。
原発は、過熱した炉心を冷やすために大量の海水を吸いあげて、7~7.3℃熱くなった海水(温排水)を海に放出しますが、その量が恐ろしく多量です。
平均的な規模(100万キロワット)の原発1基で1秒間に70トンも温排水を海に放出します。上関原発は、137万キロワットを2基建設するために、1秒間に190トンもの温排水を海に放出します。
現在、日本にある54基の原発全体から1年間に放出される温排水の量は1000億トン。日本全土に降る雨の量が年間6500億トンで、そのうち河川に流れるのは4000億トン。
つまり原発は、日本の川を流れる水の4分の1に相当する量を7℃温めて海に戻しているのです。
それに加えて、上関原発や各地で増設される原発からの温排水が上乗せされようとしています。
また、海水を冷却水として吸い上げる際にプランクトンや魚卵、そして、稚魚なども大量に吸い込み、原発の高熱でその多くが死んでしまいます。
問題はこれだけでなく、吸排水パイプにフジツボなどが付かないよう殺生物剤(次亜塩素酸ソーダ)が使用され、海洋を汚染しています。
海の小さないのちを吸い上げて殺し、殺生物剤で殺し、膨大な温排水を海に捨てながら「地球温暖化防止のために」原発を増やす現代人に対し、海に暮らしている生きものたちは、どう感じているのでしょう。
まさに今、私たちは「生きものの声を聞く」必要があるでしょう。
上関原発建設計画:温排水の影響を懸念 広島で環境考えるシンポ /山口
中国電力の上関原発建設予定地(上関町)周辺の慎重な環境評価を国や中電に求めてきた日本生態学会、日本鳥学会、日本ベントス学会によるシンポジウムが10日、広島市中区の広島国際会議場であった。学者らは集まった約500人に対し、建設地の生物の多様性の貴重さと、原発建設による影響調査の必要性を強く訴えた。
学者らの一番の懸念は原発から出る温排水。原発周辺海域の温度が上がり、希少生物や魚類の生息環境が変わってしまう恐れが強いという。また、京都大大学院の加藤真教授(生態学)は、冷却水として海水を取り入れる際に投入される殺生物剤、次亜塩素酸ソーダの危険性を指摘した。
建設地周辺では天然記念物の鳥、カンムリウミスズメも生息している。上関地域周辺での生息を初めて発見した九州大大学院の飯田知彦研究員は、上関の海の豊かさを強調。魚の卵や稚魚、イカの子どもといった浮遊生物が冷却水として原発に取り込まれて加熱されることで多くが死ぬことが予想されることから、食物連鎖への影響を懸念した。【矢追健介】
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引用以上、これ以上の説明は不要だろう。
http://tokaiama.blog69.fc2.com/blog-entry-1542.html
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/06/475.php
この報道は、人々に極高温気象の恐怖をもたらし、「二酸化炭素増加が招いた高温化現象」という解説がなされ、「だから二酸化炭素を出さない原発エネルギーが必要」という詭弁が原発推進側によって宣伝されている。
だが、この二酸化炭素増加、異常高温現象の本当の原因は、CO2抑止を謳われる原子力発電の温排水が海水温を上昇させていることにある。
今すぐ世界中の原発温排水を停止させ、新自由主義=資本主義競争社会によるエネルギー浪費を抑制させないと、全世界で取り返しのつかない超高温気温が続くことで、本当に、我々の生きているうちの人類滅亡が視野に入ってきている。
世界最大のウラン鉱所有者であるオクシデンタルペトロリウム社のCEO、アルゴアらによって地球温暖化が叫ばれたのは今世紀初頭であり、CO2増加原因説が提唱され、温室効果ガス(CO2他)排出権取引という科学的根拠不明の奇っ怪な国際合意が成立し、我々への徴税から相当額の支出が行われてきた。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8E%92%E5%87%BA%E6%A8%A9%E5%8F%96%E5%BC%95
だが、この問題、CO2が、本当に地球温暖化に寄与しているのか? という問いについては、科学的根拠の確認できない一方的な決めつけだけがまかり通り、「だからCO2を出さないクリーンな原発電気が必要」という詭弁が世界を席巻している。
本当にCO2増加が温暖化の犯人なのか? これに対して、元名城大教授、物理学者の槌田敦氏が、すでに12年前から明確な回答を示している。
CO2温暖化脅威説は世紀の暴論【槌田敦(名城大学商学部)】2009 年 9 月 27 日
http://www.asyura2.com/09/nature4/msg/209.html
環境経済・政策学会 和文年報 第4集より CO2温暖化脅威説は世紀の暴論
― 寒冷化と経済行為による森林と農地の喪失こそ大問題 ―槌田敦(名城大学商学部)
CO2温暖化脅威説は,たとえば南極ボストーク基地における氷床の調査により,大気中のCO2濃度と気温とが過去22万年にわたって関係があることなどを根拠にしている。
しかし,2つの現象が長期にわたって関係するとき,どちらが原因でどちらが結果なのか,または別に本質的な原因があって,この両者はともにその結果なのか,その考察をすることなく,人々はCO2濃度上昇で気温が上がると信じ,その対策を一大国際政治課題にしてしまった。
これにより,寒冷化説をとりつづける地道な学者は,研究費が得られず,また研究してもこれを発表する場をレフェリー制度によって奪われ,さらに圧倒的に多い温暖化論者の前に意欲を失い,沈黙を余儀なくさせられたように見える.寒冷化説の指摘した問題点は,現在もなお有効である。
ここでは,CO2温暖化脅威説やO3ホールのフロン原因説が間違っており,また京都議定書を受けて提案される太陽光や原発などの取組みが無意味であることを示す.さらに,穀物の過剰生産,自由貿易,債務という経済行為を原因とする農地と森林の喪失がこのCO2温暖化説の陰に埋没しているという現実を打破するため,あえて思うままを率直に書くことにした.
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1.気温の変化がCO2濃度の変化に先行する
2.南半球大気中のCO2濃度の季節変化
3.両半球大気中のO2濃度の季節変化
4.海洋での炭素循環
5.気温を決めるのは太陽光と地球の受光能
6.温暖化ガスとしてのCO2の効果
7.地球寒冷化の心配
8.大気汚染による寒冷化と温暖化
9.無意味な温暖化対策
10.原子力発電ではCO2排出量も減らない
11. ナンセンスといえばオゾンホールも
12. 森林と農地の喪失こそ最大の環境問題
13. 債務返還と利子払いが途上国の農地破壊を加速
14. 途上国における森林破壊
15. 環境問題を正しく理解するには、開放系の熱学が必要
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1.気温の変化がCO2濃度の変化に先行する
多くの研究者は,大気中のCO2濃度の増大が気温を上昇させるという.しかし,事実は逆である.ハワイのマウナロア観測所でのCO2の長期観測者として知られるC.D.Keelingグループの研究によれば,図1に示すように,気温の上がった半年~1年後にCO2が増えている。
(事実①)
(アマ註、図表がないので、代わりに気象庁の海水温とCO2の相関関係評価をリンクする) https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/db/mar_env/knowledge/global_co2_flux/global_co2_flux_map.html
C.D.Keelingらは,エルニーニョ発生の1年後にCO2が増えたことも発表した[1],[2].赤道付近の海面温度の上昇がCO2濃度の上昇の原因となっているのである。
(事実②)
したがって,大気中のCO2濃度の増加で温暖化するのではなく,気温(海面温度)の上昇でCO2濃度が増えるというべきである.根本順吉は,このC.D.Keelingらの仕事に注目し,「現在の温暖化のすべてを温室効果ガスによって説明することはたいへん無理である」と述べた。
しかし,このC.D.Keelingらの研究も,根本氏の見解も無視されたまま,現在に至っている.
2.南半球大気中のCO2濃度の季節変化
人間が発生させたCO2が大気中に留まるとする説の論拠は,海洋の表層水は10~20℃で軽く,深海水は0~5℃で重いから,これらの海水は混合しない,また,表層水のCO2溶解量は少ないから,大気と表層水との間でCO2交換があってもその量は少なく,大気中のCO2濃度に深海水のCO2が影響することはない,という考え方に基づいている。
しかし,それでは,北半球で大気中のCO2濃度に10ppm程度の季節変化があるが,南半球でほとんど季節変化がないという周知の事実を説明できない。
(事実③)
北半球と南半球の違いは海と陸の面積の違いである.北半球(30゚N~70゚N)では海と陸の面積はほぼ等しいが,南半球(30゚S~70゚S)では海は90%以上を占めている.その南半球で,夏,表層水で植物プランクトンが活発に光合成するが,大気中のCO2を必要としていない。
表層水での光合成に必要なCO2は深海水から供給される以外には考えられないから,表層水と深海水の間にCO2のやりとりがないとする説は正しくないことを示している。
3.両半球大気中のO2濃度の季節変化
R.F.Keelingらは,大気中のO2濃度が北半球でも南半球でも季節変化していると発表した[4].海の生物にとって,表層水に溶けているO2だけでは不足し,またCO2と違って深海からのO2の供給は考えられないので,大気中のO2が必要なのである。
(事実④)
ここで,大気中のO2とCO2濃度を合計すると,生物の光合成や呼吸の効果を消去できる.R.F.Keelingらによれば,この合計の季節変化は,北半球,南半球とも,生物効果とほぼ同じ大きさである。
(事実⑤)
このO2とCO2の濃度の合計の季節変化は主に,海洋と大気の間のこれらの気体の交換の結果である.夏には海洋から大気へ,冬には大気から海洋へこれらの気体が移動している.海洋と大気の間で気体の移動は少ないとすることが間違いであることがわかる。
4.海洋での炭素循環
深海水との関連で表層水のCO2濃度を論ずるには,海洋における炭素の全体の流れを考える必要がある.それは海洋の炭素の上下循環で決まる。
表層水への炭素の供給は炭素濃度の高い深海水の湧昇でなされている.赤道で貿易風が吹くと西向きの海流が生ずるが,この東端で深海水が湧昇する。
太平洋ではペルー沖である。中緯度で赤道に向かう風が吹くと赤道に向かう海流が生ずるが,これは地球の自転についていけず,西向きに方向を変える。
この海流と大陸西海岸との間にすき間ができるが,ここで深海水が湧昇する.太平洋ではカリフォルニア沖とチリ沖である.また極洋では,冬に表層水の温度は氷点の-2℃になる.この温度の海水は最大密度であり,また氷結によって塩分濃度も増えるため重くなって沈降し,代わりに0~3℃の軽い深海水の湧昇となる。
この深海からの湧昇水は炭素化合物とリンや窒素などの養分が豊富である.表層水に供給された炭素化合物は細菌などの餌となり,大気から供給されるO2によってたちどころに酸化されCO2になる.この豊富なCO2と養分によって海洋の光合成が進行し,この湧昇海域は漁場となる。
ここで生育した海洋生物は,世界の海に拡散し,海洋動物の餌となり,結局は糞になる.糞は海水より重いので沈降し,炭素と養分は深海に帰っていく.つまり,表層水のCO2濃度は深海永の湧昇と糞の沈降で決まることになる。
植物プランクトンの元素構成比(Redfierd 比)はC:N:P=106:16:1であるが,深海の元素構成比もこれとほとんど同じであるから,湧昇海域では,光合成に必要な養分濃度とCO2濃度は過不足なく均衡している.したがって,南半球の光合成にとって大気のCO2は必要がなく,その濃度は季節変化しないのである。
5.気温を決めるのは太陽光と地球の受光能
このように,大気中のCO2濃度はヘンリーの法則により海洋表層水の温度とそのCO2濃度で決定される.表層水の温度は太陽活動と地球の受光能で決まる。
太陽活動の大きさは黒点の数と対応している.黒点の数の変化と気温の変化は直接関係し,CO2の変化はこれに遅れて続くという事実も報告されている。
(事実⑥)
北極圏では,過去350年にわたる気温の変化と太陽光の受光量の変化はよく対応している。
(事実⑦)
さらに,1992年から2年間,人間がCO2の放出をやめたわけではないのに,大気中のCO2濃度はまったく増えていない.CO2温暖化説によれば,このCO2は完全に行方不明ということになる.
(事実⑧)
この原因は1991年のピナツボ火山の噴火により,微粒子が成層圏に放出され,地表の受ける太陽光が減ったからである。
これらの事実によって,大気中のCO2濃度は人間の発生するCO2によって決まるのではなかったことがわかる.そもそも,人間社会の発生したCO2が大気中に溜まるとすると,その半分が行方不明になるという欠陥は20年も以前から指摘されていた.これを放置したまま,CO2温暖化説を信じたことに間違いがあった。
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ヘンリーの法則
ある温度における比較的水に溶けにくい気体の溶解度は、気体の分圧に比例する。ある温度 t において1気圧の気体の溶解度をF(t) とすると、気体分圧がp(atm) の場合の溶解度は、F(t)・p で求められる。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%B3%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%81%AE%E6%B3%95%E5%89%87
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6.温暖化ガスとしてのCO2の効果
以上述べたように,気温の上昇で大気中のCO2濃度が上昇する.しかし,そのCO2が気温を上昇させる効果も2次効果としては無視できない.ところで,温暖化ガスの中でもっとも影響の大きい気体はH2O=水蒸気である。多くの議論ではこのことが無視されている。
熱帯または温帯の夏,大気中のH2Oの量が多いので,CO2が多少増えたところでCO2による影響はない。しかし,寒帯または温帯の冬,大気中のH2Oの量は少ないので,地表から放出される遠赤外線は宇宙にそのまま逃げていく。これはいわゆる放射冷却である。ここで,大気中のCO2濃度が増えるとこの放射冷却は妨害され,地表は保温されることになる。
(事実⑨)
これは温室での保温効果ではない。地球の温室効果は他に実在し,重力が原因である.これにより窒素や酸素は地球から抜け出せず大気を作っている。この大気がなければ地表の温度は-18℃となる.CO2による温暖化効果を温室効果(greenhouse effect)と呼びつづけることは大きな間違いをそのままにすることである。
H2OやCO2温暖化効果は,これらの分子が遠赤外線を吸収し,また放出する能力によって生じる。この温暖化効果は,真綿をかぶると空気の出入りが自由であるのに,暖かい効果が得られるのと同じである.したがって,このH2OやCO2の温暖化効果は,真綿効果(silk effect)とでも呼ぶべきであろう。
このCO2の二次的な保温効果によって,寒帯または温帯の冬は暖かくなるが,この温暖化は,地球上の生命にとって悪い効果をもたらしたことはない。
5000年以前の古代文明(日本では縄文文明)や1000年前のノルマンの侵略(日本では平安末期)以前の気温の高かった時代を,気象学者は,ヒプシサーマル(気候最適期)と呼び,人類にとって高温時代は暮らしやすいと判断していたのである。
7.地球寒冷化の心配
逆に,気温が低い時代は人類は不幸であった.その理由は,陸の光合成は気温が15℃以上でなければならないからである.
(事実⑩)
現在,平均気温が15℃ということは,陸地の半分で光合成ができないことを意味する.これが低温になると,この面積が増えて,食料が得られなくなる。
1950年代,暖冬続きで地球の温暖化が問題になった.そのころ南極の氷がとけて海面が上昇し,大都会が水没するおそれがあると騒がれた。
ところが1970年代に入り,気温が上がらず,地球寒冷化が問題となった。実は,1940年以後,気温は徐々に下がっていることが確かめられた.そこで気象学者の多くは1980年ごろから,寒冬・冷夏が増え,小氷河期の気候に近づくと予想した。
図3 過去2万5000年間の北半球の気温の変化
(アマ註、図表が見つからないので代わりに南極気温変化図を掲載)

図3は,過去2万年の花粉,樹相,氷河からまとめた気温の変化(連邦研究協議会記録,1975年)である。これによれば,7000年前に高温期があり,それ以後長期低下傾向にある.とくに注意すべきは,その間に3回,約2000年の間隔で,約2℃の温度降下をもたらす小氷期がある。
前回の最高気温期が2000年前であるから,現在が最高気温であり,まもなく気温が下がっていくとした1970年ごろの気象学者の予想はやはり正しいのである.
蛇足であるが,世論に迎合して寒ければ寒冷化説を主張し,暖かくなれば変更の理由も示さず温暖化説を唱えるような,最近の気象学者の生態には,私はとてもついていけない。
8.大気汚染による寒冷化と温暖化
人間による地球気候への影響について,もっとも考慮すべきは,CO2ではなく,大気汚染である.
地球を開放系の熱物理学の対象とするとき,重要な事項は入力としての太陽光の受光状態,出力としての宇宙への放熱状態,そして地球に存在する物質循環の3点である。
まず,太陽光を15℃の地表で受ける。次に,対流圏上空のマイナス23℃で宇宙に放熱する。これによって,下が熱せられ,上が冷やされるので,対流圏の大気の循環活動が成立する.まさに地球エンジンである。
この大気の循環が,地表の水と大気中の水蒸気の間の循環活動を作る。つまり,地球は空冷と水冷の機能をもつことになる。この大気と水の循環は海水の上下循環活動を発生させ,また養分の循環を作って生態系を成立させている。つまり,大気の循環こそが地球での諸現象の根源である。
そこで,この大気の循環を阻害する人間活動を考える。それは,大気汚染である。まず,可視光と赤外線に対して汚染物質が白い場合,太陽光は宇宙に散乱されるから気温を降下させる。
大気汚染が,可視光と赤外線に対して黒くて,成層圏にある場合,太陽光は吸収されて成層圏の温度は上がるが,この熱はそのまま宇宙へ放熱され,対流圏の大気循環に対してはほとんど影響がない。しかし,この汚染は地表に届く太陽光を少なくするので,白い汚染と同様に寒冷化をもたらすことになる。
黒い汚染物質が対流圏に放出される場合は,深刻な影響を受ける。太陽光はこの汚染物質に吸収されてその高度の大気を加熱する。そして,地表に到達する太陽光は減少する。その結果,上が加熱され,下が減熱されることになるので,大気の循環は阻害され,地表は熱平衡に近づく。
また,大気循環が滞るため,風が吹かず,水があっても蒸発しない.地球の持つ空冷と水冷の機能を損なうことになる.これは温暖化というよりも,熱地獄である.
(事実⑪)
この現象は都市気象(ヒートアイランド)として知られるが,これが世界各地に広がっている。インドネシアやブラジルの焼畑を原因とする熱帯林の火災による煙は,赤道上空を覆い,貿易風や積乱雲の発生を妨害して,赤道海面の温度を上げる原因となった。
また,北極圏では,工場や航空機の黒い煙による対流圏大気の汚染がある.これは北極圏の気温上昇の一因である。
以上述べたように,CO2温暖化脅威説は11の事実から否定される.CO2温暖化脅威説では,まず人間の活動を考えた。しかし,人間の活動はまだ地球全体に及ぼすほど大きくはない。したがって,より根源的な事象としてまず太陽活動,次いで地球の受光能,そして人間活動の地域に及ぼす影響の順に考えることである。これを逆にすれば矛盾した結果になるのは当然である.
9.無意味な温暖化対策
CO2温暖化脅威論がナンセンスである以上,この脅威を防ぐためのCO2対策もナンセンスということになる。もしも,文明批判が目的であれば,結果として発生するCO2を論ずるのではなく,石油など資源の大量使用を直接論ずるべきである。
それだけでなく,提案された対策の多くは発生するCO2を減らすことにもなっていない・これらの対策は,ほとんどすべてコスト高である.コスト高ということは,間接的に石油や石炭などを大量に消費することを意味する。
たとえば,太陽光発電の場合,半導体や関連機器の生産や設置に巨大な費用が必要だが,それは石油の消費でなされている.つまり,余計にCO2を放出することになっている。
ここで,エネルギーまたは物質収支の計算がなされるが,この種の計算の最大の欠点は積上げ方式をとっていることである。このため,入力の積上げを忘れても,出力損失の積上げを忘れても,効果はよいほうに傾き,提案者に誤った希望を与えることになる。
10.原子力発電ではCO2排出量も減らない
このことは,とくに,原子力発電の推進根拠の失敗に現れている。原子力発電所には,小さな重油タンクがあるだけだから,発電時にはCO2をほとんど出さないと説明される。しかし,この発電時以外のところで大量のエネルギーが投入されており,原子力発電はCO2を大量に発生している。
アメリカのエネルギー開発庁(ERDA)が1976年に計算したところによれば,エネルギー産出量100を得るために26のエネルギーを投入している。産出投入比は100/26=3.8である.電力中央研究所による1991年の計算も4.0とほとんど変わらない。
この結果は原発が有利なように見える.しかし,これは積上げ計算であるから,積残しを考慮していくと,投入量は増え,産出量は減り,結果として産出投入比はどんどん減ることになる。
ERDAの場合も,電中研の場合も,運転での電力投入(7),遠方送電の建設(5),揚水発電所の建設(10)という投入が忘れられている。これを考慮すると,投入量は26+7+5+10=48となる.また遠方送電損失(7),揚水発電損失(20)という欠損があり,産出量は100-7ー20=73となる.その結栗,産出投入比は73/48=l.5となる。
さらに,計算不可能な投入として,放射能対策,廃炉対策,事故・故障対策がある.これを評価すれば,産出投入比は1に近づき,そして1を割ることになっていく.原発は事故で庶民を加害し,また処理処分不可能な放射能を残すだけでなく,石油石炭を大量に消費するのである.
現代の温暖化キャンペーンは,このような原子力をCO2削減のエースとして推進するためであった。アルゼンチンで開催された気候変動枠組条約 第4回締結国会議(COP4)は,さながら原子力発電の売込みの場であったと伝えられている.これに誘導されて大騒ぎするなどまったくナンセンスとしかいいようがない。
11. ナンセンスといえばオゾンホールも
通説では、フロンから塩素が出て化学反応で成層圏のオゾンを壊し、南極にオゾンホールが広がり、地表に届く紫外線が増え、皮膚ガンが増えると心配されている。
オゾンを壊すという化学反応には、塩素のほかに紫外線が必要である。しかし、南極の春先、太陽光は水平に入ってくるので、光が通過する大気の厚さは、真上から入射したときの10倍にもなる。
そのため、紫外線は南極の上空に届く前に宇宙に散乱され、ほとんど存在しない。これではオゾン破壊になるわけがない。
フロンがオゾン層を破壊するという説の論拠は、南極の高層成層圏では強い西風が吹き、.その極渦がエアカーテンとなって南極の大気を隔離する。オゾンの出入りがないのにオゾンが減るのだから、ここでオゾンが破壊されているとしなければならない、と。しかし、ほんとうに南極の大気は閉ざされているのだろうか。
高層成層圏での強い西風の原因は地球の自転である。地球が西から東へ動いているため、大気も一緒に西から東へ動いている。赤道の大気はもっとも速く動いており、南極の大気はあまり動かない。
ここで、赤道の大気が南極に向かって移動すると、地球表面の速度は、南極に近づくにしたがって遅くなるので、大気のほうが速く動くことになる。つまり、緯度が高くなる方向に大気が動くと、西風になる。
南極の周辺で高層成層圏に強い西風が吹いているということは、赤道から南極の方向に向けて大気が流れていることを示している。高層成層圏の西風はエアカーテンではなかったのである。
南極に流れこむ高層成層圏の大気にはオゾンが1/10と少ない。したがって南極のオゾンが減るのは当たり前である。この南極成層圏の西風という事実だけからフロン原因説は覆されてしまった。
そのうえ、オゾンは紫外線が存在すると大気中の酸素から直ちに生産され、蓄積される。したがって、太陽光の有害紫外線はそれほど気にする問題ではもともとなかったのである。
12. 森林と農地の喪失こそ最大の環境問題
現状では、環境問題はCO2温暖化とO3ホールの話題がほとんど独占している。しかし、最大の環境問題は、農地と森林の喪失である。この原因は、過剰農業、過剰放牧、過剰伐採といわれているが、そもそもなぜ過剰になるのか、ということの議論が欠けては、対応できるわけがない。
まず、科学技術はアメリカなど先進国で穀物の過剰生産をひき起こし、穀物の価格を下げてしまった。その結果、まだ穀物を生産できる農地であっても、採算がとれなくなって放棄されている。
この放棄された農地は風水害で荒地となり、砂漠化している。
また、先進国での穀物価格の低下は、農民を離農させ、失業問題となった。そこで農民の失業を抑止するため、この過剰穀物は輸出されている。
農産物の代表的輸出国アメリカの穀物生産最は、入口を養う約5倍という。そのうち1は国民が食べ、3は家畜の鋳にし、残りの1を輸出している。これさらに安い価格で輸出されている。また援助物資という形は補助金をつけて、さらに安い価格で輸出されている。また援助物資という形で輸出される穀物も、実は失業対策であった。
1994年の世界の小麦の貿易量は9900万トンであった。その輸出国の筆頭はアメリカ(31%)で、これにカナダ(22%)、オーストラリア(13%)、フランス(13%)、ドイツ(6%)、アルゼンチン(5%)、イギリス(4%)が続く。これらの国だけで小麦の輸出量のほとんどすべてになっている。
これらの先進国の穀物の輸出攻勢を受けて、途上国の穀物生産は壊滅状態になった。とくに、アフリカの場合、昔は小麦を食べなかったが、たびたびの飢饉の際、援助物資の小麦で食の嗜好が変わり、都市の住人に小麦を食べる習慣ができてしまった。
そうなると農家がミレット(きび)などの雑穀を生産しても、都市の住民は買ってくれない。やむなく農業を放棄して、都市のスラムの住民になる。先進国の失業対策は、途上国への失業の輸出を意味している。そして、放棄された農地は、風水害によって荒地となり、砂漠化することになる。
先進国の科学技術による穀物の生産性の向上は、世界の人々を飢えから解放すると期待された。しかし、事実は逆で、先進国でも途上国でも有用な農地を砂漠化し、将来の飢えの原因を作っている。
13. 債務返還と利子払いが途上国の農地破壊を加速
砂漠化には、植民地から独立国になったことによる政治問題も関係する。植民地時代、植民地政府は綿花やコーヒーを栽培させた。それでも、農民を永続的に働かせるため、穀物生産のための農地は保護していた。
ところが、独立で状況は一変する。独立した政府に、先進諸国から多大な資本の貸付が行われた。ところが、1982年以降、債務の返還と利息の支払いで資金は一方的に途上国から先進国へ流れることになった。
世界の富は貧しい国から豊かな国へ流れている。途上国ではこの債務や利息の支払いのために、穀物生産をやめて換金作物を作っている。しかし、多くの途上国ではコーヒーなど換金作物を売った額の半分近くをこの返済にあてている。
このような無理をして換金作物を作っているため、農地は荒れる一方で、ますます途上国の砂漠化が進むことになる。
14. 途上国における森林破壊
途上国の農民が都市のスラムへ行かないで農業を続けようとすれば、まだ肥沃な土地のある森を焼き、開墾すればなんとかなる。しかし、そのようにして得た農地は2、3年で養分がなくなるので、そこを捨てて、また別の森林を焼くことになる。
日本へ輸出する木材の過剰伐採も森林を破壊する原因であるが、それ以上に焼畑のほうが深刻である。スマトラ島のように、焼畑の火が森林火災の原因となって森を大規模に失うこともある。放牧でも森を焼いている。このようにして利用した森林の跡地はすべて砂漠化している。
このように、砂漠化を進めているのは、穀物の過剰生産と穀物の自由貿易と債務である。これを止めるのは容易ではない。よほど議論して対策を立てなければ、よい結果は生まれない。
ともかく、このままでは、世界中で農地と森林を失い、農耕できない荒れ地ばかりにするのは確実である。このときに地球寒冷化と異常気象が襲うであろう。われわれがこの現象をなすすべもなく見逃したばかりに、子孫は苦しむことになる。
このような農地と森林の破壊こそ大問題であるのに、炭酸ガス温暖化脅威説に振り回わされ、世界各地の環境悪化の経済的原因を十分に論議する機会が奪われていることは、残念というほかはない。
15. 環境問題を正しく理解するには、開放系の熱学が必要
生命は、なぜ、その活動を維持できるのか。この問題の答えは、開放系の熱学を学ぶことによって得られる。いわゆる、エンジンの理論である。地球環境もこのエンジンの法則の範囲の中にあるから、これらの問題を議論するにはこの開放系の熱学が必要不可欠である。
また、人間社会もこのエンジンの法則により維持されている。このエンジンは、需要があれば供給すると儲かるという欲望の法則によって動いている。これを無視して環境問題や人間社会を論ずると、CO2温暖化やO3ホールだけでなく、中途半端な議論に明け暮れ、その結果は、大気汚染や自由貿易や原発など本質的な環境破壊行為を見逃し、これをますます悪い方向に広げることになる。現状は残念ながらそのとおりである。
本論文は、1998年秋の環境経済・政策学会、物理学会、エントロピー学会での講演と質問への回答をもとに作成した。
(「熱物理学および環境経済論」)
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引用以上
槌田敦氏の論文は、極めて的確で学問的価値の高いものだが、残念ながら原発温排水の地球温暖化効果について触れられていない。
以下に、小出裕章氏、中村隆一氏の原発温排水についての文章を転載する。小出氏の文章は、2010年3月、フクイチ事故の一年前に書かれたものだ。消失圧力を懸念して全文掲載する。
原発温廃水が海を壊す 原発からは温かい大河が流れている 小出裕章
https://imidas.jp/jijikaitai/k-40-059-10-03-g112
原子力発電所の稼働に不可欠な冷却水は、その膨大な熱とともに放射能や化学物質をともなって海に排出される。この温廃水(温排水 hot waste water)の存在、あるいは環境への影響が論じられることは少ない。
地球温暖化への貢献を旗印として原子力回帰が叫ばれる中、けっして避けられない温廃水の問題を浮き彫りにする。
蒸気機関としての宿命
地球は46億年前に誕生したといわれる。その地球に人類が誕生したのは約400万年前。地球の歴史を1年に縮めて考えれば、人類の誕生は大みそかの夕方になってからにすぎない。その人類も当初は自然に寄り添うように生活していたが、18世紀最後の産業革命を機に、地球環境との関係が激変した。
それまでは家畜や奴隷を使ってぜいたくをしてきた一部の人間が、蒸気機関の発明によって機械を動かせるようになった。以降、大量のエネルギーを使うようになり、産業革命以降の200年で人類が使ったエネルギーは、人類が全歴史で使ったエネルギー総量の6割を超える。その結果、地球の生命環境が破壊され、多数の生物が絶滅に追いやられるようになった。その期間を、地球の歴史を1年に縮めた尺度に合わせれば、大みそかの夜11時59分59秒からわずか1秒でのことである。
今日利用されている火力発電も原子力発電も、発生させた蒸気でタービンを回す蒸気機関で、基本的に200年前の産業革命のときに誕生した技術である。その理想的な熱効率は、次の式で表される。
理想的な熱機関の効率=1-(低温熱源の温度÷高温熱源の温度)
(※それぞれの温度には「K(ケルビン)」の単位で表す絶対温度を用い、「℃」で表す摂氏温度の数字に「273」を加え、たとえば0℃=273K、100℃=373Kとなる)
だが、現実の装置ではロスも生じるため、この式で示されるような理想的な熱効率を達成することはできない。火力発電や原子力発電の場合、「低温熱源」は冷却水で、日本では海水を使っているので、その温度は地域差や季節差を考慮しても300K(27℃)程度であり、一方の「高温熱源」は炉で熱せられ、タービンに送られる蒸気である。
そのため、火力発電と原子力発電の熱効率は、基本的にそれらが発生しうる蒸気の温度で決まり、その温度が高いほど、熱効率も上がることになる。現在稼働している原子力発電では、燃料の健全性を維持するため冷却水の温度を高くすることができず、タービンの入り口での蒸気の温度はせいぜい550K(約280℃)で、実際の熱効率は0.33、すなわち33%しかない。
つまり、利用したエネルギーの2倍となる67%のエネルギーを無駄に捨てる以外にない。
想像を絶する膨大さ
この無駄に捨てるエネルギーは、想像を絶するほど膨大である。たとえば、100万kWと呼ばれる原子力発電所の場合、約200万kW分のエネルギーを海に捨てることになり、このエネルギーは1秒間に70tの海水の温度を7℃上昇させる。日本には、1秒間に70tの流量を超える川は30筋もない。原子力発電所を作るということは、その敷地に忽然として「温かい大河」を出現させることになる。
7℃の温度上昇がいかに破滅的かは、入浴時の湯の温度を考えれば分かる。ふだん入っている風呂の温度を7℃上げてしまえば、普通の人なら入れないはずである。しかし、海には海の生態系があって、その場所に適したたくさんの生物が生きている。その生物たちからみれば、海は生活の場であり、その温度が7℃も上がってしまえば、その場では生きられない。
逃げることのできない植物や底生生物は死滅し、逃げることができる魚類は温廃水の影響範囲の外に逃げることになる。人間から見れば、近海は海産資源の宝庫であるが、漁業の形態も変える以外にない。
途方もない環境破壊源
雨は地球の生態系を持続させるうえで決定的に重要なもので、日本はその恵みを受けている貴重な国の一つである。日本には毎年6500億tの雨が降り、それによって豊かな森林が育ち、長期にわたる稲作も持続的に可能になってきた。雨のうち一部は蒸発し、一部は地下水となるため、日本の河川の総流量は年間約4000億tである。一方、現在日本には54基、電気出力で約4900万kWの原子力発電所があり、それが流す温廃水の総量は年間1000億tに達する。
日本近海の海水温の上昇は世界平均に比べて高く、特に日本海の温度上昇は著しい。原発の温廃水は、日本のすべての川の水の温度を約2℃温かくすることに匹敵し、これで温暖化しなければ、その方がおかしい。そのうえ、温められた海水からは、溶け込んでいた二酸化炭素(CO2)が大量に放出される。もし、二酸化炭素が地球温暖化の原因だとするなら、その効果も無視できない。
もちろん、日本には原子力発電所を上回る火力発電所が稼働していて、それらも冷却水として海水を使っている。しかし、最近の火力発電所では770K(約500℃)を超える高温の蒸気を利用できるようになり、熱効率は50%を超えている。
つまり、100万kWの火力発電所の場合、無駄に捨てるエネルギーは100万kW以下で済む。もし、原子力発電から火力発電に転換することができれば、それだけで海に捨てる熱を半分以下に減らせる。
さらに、火力発電所を都会に建ててコージェネレーション(cogeneration)、すなわち無駄に捨てるはずの熱を熱源として活用すれば、総合的なエネルギー効率を80%にすることもできる。しかし、原子力発電所は決して都会には建てられない。
熱、化学物質、放射能の三位一体の毒物
温廃水は単に熱いだけではなく、化学物質と放射性物質も混入させられた三位一体の毒物である。
まず、海水を敷地内に引き込む入り口で、生物の幼生を殺すための化学物質が投入される。なぜなら海水を施設内に引き込む配管表面にフジツボやイガイなどが張り付き、配管が詰まってしまっては困るからである。
さらに、敷地から出る場所では、作業員の汚染した衣服を洗濯したりする場合に発生する洗濯廃水などの放射性廃水も加えられる。
日本にあるほぼすべての原子力施設は、原子炉等規制法、放射線障害防止法の規制に基づき、放射性物質を敷地外に捨てる場合に濃度規制を受ける。
原子力発電所の場合、温廃水という毎日数百万tの流量をもつ「大河」がある。そのため、いかなる放射性物質も十分な余裕をもって捨てることができる。洗濯廃水も洗剤が含まれているため廃水処理が難しい。原子力発電所から見れば、苦労して処理するよりは薄めて流すほうが得策である。
たとえば、昨今話題となる核燃料サイクルを実現するための核燃料再処理工場は、原子力発電所以上に膨大な放射性物質を環境に捨てる。ところが、再処理工場には原子力発電所のような「大河」はない。
そこで、再処理工場は法律の濃度規制から除外されてしまった。逆にいえば、原子力発電所にとっては、温廃水が実に便利な放射能の希釈水となっているのである。
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引用以上
中村隆一 「風の便り」 2014/03/06
原発停止で温排水も止まって 周辺の海洋環境が劇的に改善
https://www.windfarm.co.jp/blog/blog_kaze/post-15842
■佐賀県玄海町の玄海原子力発電所が4基すべて運転を停止してから2年以上が経ちました。
■1号機が運転を開始してからおよそ39年、これまでに前例のない長期間の停止によって、周辺の海である変化が起きていました。
玄海原発では1975年に1号機が運転を開始してから、ほぼ連続して原発が動いてきました。ところが、東日本大震災後の2011年12月に、4号機が定期点検に入って以降、4基すべてが2年以上にわたって停止したままです。
なぜ海はこれほど変化したのでしょう? (アマ註、映像は消去されてしまった)
その原因として考えられるのが、原発から出される暖められた海水、『温排水』です。
原子力発電所は、タービンを回す蒸気を、海からくみ上げた水で冷やします。暖められた海水は『温排水』として再び海に戻されます。
原発からは最大で7度まで、周囲より高い温度の水を出すことが認められています。その量は、岩につかまらないとダイバーが流されてしまうほどだったということです。
大量の温排水で海が温められたため、南方系の魚が冬も生き残っていたのです。
原発停止後の変化は、魚だけではありません。
●今林記者・水中リポート
「この四角のコンクリートブロックは原発が動いている時は、全く海藻が生えていませんでしたが、今は一面びっしりと海藻に覆われています」
同じく今から8年前の映像です。(映像は消去された)
原発稼働中は、ほとんど海藻は生えておらず、岩がむき出しの状態でした。
ところが、現在はいたるところにアラメやクロメなど、コンブの仲間が生えていました。
同じ場所で比べてみると違いは一目瞭然です。
原発周辺の海で変化が起きているのは、玄海だけではありません。
京都大学の益田准教授は2004年から若狭湾で潜水調査を続けています。
益田准教授は、原発停止直後の海の劇的な変化に、目を見張ったといいます。
●京都大学舞鶴怜治水産実験所・益田玲爾准教授
「予想よりはるかに急激でしたね。南方系の生き物がたちどころにいなくなって、それで本来の若狭湾の生き物が戻ってきたということですね」
若狭湾沿岸にはあわせて14基もの原発が集中しています。
益田准教授は、そのひとつ高浜原発からおよそ2キロの地点で調査を続けています。
益田准教授によりますと温排水によってこの地点では周辺海域と比べ水温がおよそ2度高くなっていました。この2度が冬場、生き物の生死を分けていたのです。
●京都大学・益田准教授
「水の中では、陸上よりもはるかに熱が伝わりやすいということがあるんですね。ですから、水中の2度の違いというのは、魚にとって非常に大きな違いになります。人間が陸上で2度というのはどうにでも調節できますが、魚にとっての2度というのは、調節がきかないエリアになってしまいがちなんです」
温排水は火力発電所からも出ますが、益田准教授の調査では近隣の火力発電所では大きな変化は起きていませんでした。
原発の運転が海の生態系に大きな影響を与えているのは明らかだと益田准教授は話します。
★福井県・若狭湾の原発停止で北方系の魚介類が戻ってきた
(日刊SPA 2013/12/20)
現在、日本で稼働している原発は1基もない。これまで、原発を冷やすために取り込んだ海水が温められ、海に放出され続けてきた。ところがこの「温排水」が止まったことで、原発周辺の海域の環境が回復してきているという! 原発停止によって(良い意味で)激変した各地の海の状況をリポートする。
<福井県・若狭湾の原発>
◆温排水停止で、減少していた北方系の魚介類が戻ってきた
原発の温排水が海の生態系に与える影響について、実際に海に潜って調査している研究者がいる。京都大学舞鶴水産実験所の益田玲爾所長は、’04年以降、毎年1月下旬~3月上旬に高浜原発の放水口から北東約2kmの「音海」という海域に生息する魚介を定点観測してきた。益田所長は「温排水による生態系への影響は明らか」と語る。
「’04~’11年にかけて、原発から2kmの地点の水温が、湾内外の他の海域より2℃高くなっていました。水中では熱が伝わりやすいため、2℃というのは魚介類にとって大きな違いなのです。熱帯・亜熱帯の南方系の魚介類が生活できるギリギリの温度は11℃なのですが、原発の温排水で、春や夏に来た南方系の魚介類が冬を越せるようになっていました。本来いるはずのない生物が繁殖することで大きな混乱が起きていました」
ところが、温排水が止まったことで、元の健全な生態系が音海の海に戻りつつあるという。
「例えば、ガンガゼという南方系の毒ウニが大量発生していたのですが、温排水が止まったことで死滅。地元特産のおいしいアカウニやムラサキウニはガンガゼとの競合で追いやられていましたが、再び姿を見せるようになりました。同様に、地元特産で食用のマナマコも、南方系のトラフナマコが水温低下で減少すると、また数を増やし始めています」
温排水の停止の好ましい影響の中でも、特に喜ばしいのは海藻の復活だろう。
「海の生態系で非常に重要なのは、浅瀬に生い茂る海藻。さまざまな魚介類の餌である生物が棲むエサ場であり、稚魚が育つ棲み処でもあります。アワビやサザエなどの貝類も海藻を餌としています。温排水が放出されていた頃は、『磯焼け』といって海藻が壊滅した状態でした。海水温の変化による直接的なダメージに加え、本来冬場の音海にはいないはずのアイゴという海藻を食べる魚が温排水の影響で一年中いるようになり、海藻が食い荒らされてしまったのです。
しかし、温排水の放出が止まった途端に海藻が復活し、アミなどの動物プランクトンも一緒に戻ってきました。以前は姿をまったく見なかった、ヒラメの稚魚が姿を見せるようになったことも良い傾向です。若狭湾の特産物で、煮付けにするとおいしいメバルも戻ってきました。基本的に、南方系の魚よりも、もともといた北方系の魚のほうが、商品として高く売れるので、地元の漁師さんにとっても、温排水がないほうがいいといえるのではないでしょうか」
― 原発止めたら[海の環境がもりもり改善!?] ―
◆原発停止で周辺の海洋環境が劇的に改善
(日刊SPA 2013.11.26 ニュース)
現在、日本で稼働している原発は1基もない。そのため、稼働中に海に放出され続けてきた原発から出る温排水が止まったことで、原発周辺の海域の環境が回復してきているという声が各地から挙がっている。
◆鹿児島川内原発の場合……
鹿児島県にある川内原発の近くで海岸の清掃ボランティアやウミガメ監視員を務める中野行男さんは、10年ほど前から月に20日以上、川内原発の南海岸を歩き続けてきた。
「これまで、季節によっては毎日のようにサメやエイ、ダツなどの大型魚類や、クジラ、イルカなどの海生哺乳類、ウミガメなどの死体が海岸に漂着していました。原発ができる前は、こんなことは全然ありませんでした」(中野さん)
サメの死体が1日で4体もうち上げられたこともあったそうだ。
「それが、川内原発が停止した’11年9月以降、これらの死体漂着は一切なくなったのです」
また、この近辺ではウミガメの異常行動がよく確認されていた。
「例えば、通常のウミガメは満潮の夜に産卵のため岸に上がりますが、昼間や干潮時に産卵に来るケースがしばしば報告されていました。ところが、現在では産卵は順調に行われています」
週刊SPA!11/26発売号「原発止めたら[海の環境がもりもり改善!?]リポート」では、他にも、原発が止まったことによって取水口に取り込まれる魚が減ったり、海水温が下がったために外来種が減り、漁業にも好影響が出ていることを報じている。また、福井県の若狭湾周辺の原発、北海道の泊原発周辺地域での(よい意味での)激変をリポートしている。 <取材・文/週刊SPA!編集部>
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◆上関原発建設計画:温排水の影響を懸念
(2010/05/20 風の便り)から抜粋
世界有数の漁場だった瀬戸内海が埋め立てや海洋汚染によって、生態系が破壊されてるなか、今も豊かな自然が残っている周防灘という海域(山口、福岡、大分の3県にまたがる海域)があり、絶滅危惧種や希少な生物がたくさん棲息しています。
そこに上関原発が建てられようとしており、その計画に28年前から反対し続けている人々(祝島や長島の自然を守る会など)がいます。
ここを破壊してしまったら、瀬戸内海の再生は不可能になるだろうと多くの学者が指摘している重要な地域を、生物多様性国際会議を開く主催国が破壊しようとしているわけです。
原発は、過熱した炉心を冷やすために大量の海水を吸いあげて、7~7.3℃熱くなった海水(温排水)を海に放出しますが、その量が恐ろしく多量です。
平均的な規模(100万キロワット)の原発1基で1秒間に70トンも温排水を海に放出します。上関原発は、137万キロワットを2基建設するために、1秒間に190トンもの温排水を海に放出します。
現在、日本にある54基の原発全体から1年間に放出される温排水の量は1000億トン。日本全土に降る雨の量が年間6500億トンで、そのうち河川に流れるのは4000億トン。
つまり原発は、日本の川を流れる水の4分の1に相当する量を7℃温めて海に戻しているのです。
それに加えて、上関原発や各地で増設される原発からの温排水が上乗せされようとしています。
また、海水を冷却水として吸い上げる際にプランクトンや魚卵、そして、稚魚なども大量に吸い込み、原発の高熱でその多くが死んでしまいます。
問題はこれだけでなく、吸排水パイプにフジツボなどが付かないよう殺生物剤(次亜塩素酸ソーダ)が使用され、海洋を汚染しています。
海の小さないのちを吸い上げて殺し、殺生物剤で殺し、膨大な温排水を海に捨てながら「地球温暖化防止のために」原発を増やす現代人に対し、海に暮らしている生きものたちは、どう感じているのでしょう。
まさに今、私たちは「生きものの声を聞く」必要があるでしょう。
上関原発建設計画:温排水の影響を懸念 広島で環境考えるシンポ /山口
中国電力の上関原発建設予定地(上関町)周辺の慎重な環境評価を国や中電に求めてきた日本生態学会、日本鳥学会、日本ベントス学会によるシンポジウムが10日、広島市中区の広島国際会議場であった。学者らは集まった約500人に対し、建設地の生物の多様性の貴重さと、原発建設による影響調査の必要性を強く訴えた。
学者らの一番の懸念は原発から出る温排水。原発周辺海域の温度が上がり、希少生物や魚類の生息環境が変わってしまう恐れが強いという。また、京都大大学院の加藤真教授(生態学)は、冷却水として海水を取り入れる際に投入される殺生物剤、次亜塩素酸ソーダの危険性を指摘した。
建設地周辺では天然記念物の鳥、カンムリウミスズメも生息している。上関地域周辺での生息を初めて発見した九州大大学院の飯田知彦研究員は、上関の海の豊かさを強調。魚の卵や稚魚、イカの子どもといった浮遊生物が冷却水として原発に取り込まれて加熱されることで多くが死ぬことが予想されることから、食物連鎖への影響を懸念した。【矢追健介】
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引用以上、これ以上の説明は不要だろう。