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精神科医師のブログ。
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発達障害は治りますか?神田橋條治ほか

2010年06月26日 | Weblog
臨床家には神田橋條治先生のファンは多い。
以前は他の精神科医と比べて知る人ぞ知るという感じだったが最近は知っている人も多くなって来ておりすでにカリスマだ。

自助が基本。代替医療でも考え方でも使える者は何でも使う。未来志向。身体論にも注目している。などが神田橋先生のスタンスだ。
初期臨床研修の時、精神科をローテーションした時に上の先生から神田橋先生の本を教えていただき手に入る本は読み自分の糧としてきた。
その後、同僚や後輩にも勧めている。

神田橋先生の本で手に入りやすいのはコツ三部作だが、その中でも神田橋入門として精神科養生のコツがおすすめ。
患者さんに貸したら読んだだけで良くなった人もいた。
それだけの力のある本だ。

精神科養生のコツ 改訂
神田橋 條治
岩崎学術出版社


神田橋先生の著作から連なって、整体や漢方、そしてなにより養生という考え方が自然に自分のなかに産まれるようになった。
(自分と養生の出会いは、菊池養生園の竹熊先生からの流れもあるが・・。そういえばどちらも熊本と鹿児島という九州だ!)

3人の野口師匠との著作との出会いも神田橋つながりである。
(野口生体の野口晴哉(はるちか)、野口体操の野口三千三(みちぞう)、座禅断食の野口法蔵。)

その神田橋先生が対談という形で「発達障害」に関しての本を出した。

発達障害は治りますか?
神田橋 條治
花風社


これまた発達障害を持つ人の問題解決に尽力するすばらしい作業療法士の岩永竜一郎先生や当事者との対談が実現した。

「発達障害者は発達します。」
「頑張るというのは緊急事態に発揮されるものであって、長く持続的にするものではないんだ。」
「精神療法の到達点はなんだろう?自己実現でしょう。じゃあ自己実現てなんだろうって何年か考えました。結論としては遺伝子ができるだけ開花することだろうと。」
「ぼくが診断をつける時は、「どういう診断のもとに治療すれば目の前の患者さんがよくなるか」が基準であって、DSMの基準じゃないんです。
「くだらないことをしないとだめなひとになる。」
「人間の五感のなかで視覚だけがあまりにつかわれすぎているから、視覚以外のものをもっとトレーニングしてくださいと言っているんだ。」
「救う気がなくて支配しようとしている医療者に、僕は腹が立つんです。誇らしげに診断名だけつけたって対処方法まで教えないと患者さんの利益にならないでしょ。」

などなど珠玉の言葉がたくさん。
身体論と精神医学が同じ地平に出会い、プラクティカルなアイディアにあふれる本となっている。
発達障害の本として初めて読むには難しいが、既にいろいろ読んでいる当事者や支援者にはお勧めできる内容だと思う。


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