リカバリー志向でいこう !  

精神科医師のブログ。
弱さを絆に地域を紡ぎ、コンヴィヴィアルな社会をつくりましょう。

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うつや依存症がよくなれないワケ その3

2009年10月24日 | Weblog
しかし今の世の中にはうつ病や依存症の人が容易に良くなれない社会の側の理由も存在する。

例えば市場の厳しさ、社会保障の貧しさである。
人が人として大事にされない社会の厳しさだ。
社会は若者の失敗にもかつてほど寛容ではなくなっている。

家庭福祉や企業福祉もかつてのように頼れなくなっている一方で我が国の公的福祉は貧しい。
よりどころになるはずの宗教も大きな役割は果たせていない。

社会全体が湯浅誠らのいう「溜め」を失ってきている。
社会保障が乏しく、労働市場が機能しないために、依存症やうつ病に逃げ込まざるを得ない事情があるのだ。
それでも何かに依存してでも自殺するよりは生きてもらったほうがよほどいい。

しかし、ここでも格差が存在する。
体力のある大企業や公務員や教員で長年つとめた人はうつになっても療養休暇や傷病手当金で何年もつなげる。
しかし、非正規が多い若者は最も厳しい環境にいるのにもかかわらず安心してうつにすらなれない。
本当に社会保障が必要な人に失業手当などの保証が薄いのだ。

最期のセーフティネットであるはずの生活保護は故意に使いづらくわかりにくい場所に隠されている。

一方で正規職員であっても余裕のなくなった職場から、「いくら休んでもいいから、完全によくなってから戻ってきてほしい。」と言われることがある。
うつの復職の当初に向いた、単純作業などはすでに派遣社員や海外に置き換えられてしまい戻る場所がない。

頼りにされている、安心できる居場所であるという感覚がうつや依存症にはもっとも治療的であるのに・・・。

これではよくなれない。

今の世の中に圧倒的に不足しているのは「あなたは大切な人で生きている価値がある」というメッセージであろう。

生きていくためにかかせない「気」の本質とはこのメッセージのことだ。
人からだけではなく、食べ物、日用品、建物、自然などあらゆるものから発せられているはずのこのメッセージがかつてと比べて弱まっている。

また人がこのメッセージを受け取る力も衰えているように感じる。

我々が早急になすべきことはこのメッセージ(気)を感じとり、また、それぞれの方法で発して世の中にあふれさすことだ。