リカバリー志向でいこう !  

精神科医師のブログ。
弱さを絆に地域を紡ぎ、コンヴィヴィアルな社会をつくりましょう。

★お知らせ★




思うところがあってFC2ブログに引っ越しました。 引越し先はこちらで新規の投稿はすべて引越し先のブログのみとなります。

故人を偲ぶ会

2009年10月11日 | Weblog


古巣の佐久総合病院地域ケア科主催の「故人を偲ぶ会」へ参加した。

佐久総合病院の在宅医療・福祉部門である地域ケア科が関わり、旅立たれた方のご遺族に声をかけてのささやかな集まりで今年で3回目となる。
もう恒例と行ってもいい。

今回はこれまでのように病院ではなく町の総合福祉施設のアイトピア臼田での開催。
より地域の行事に近づけた形になった。

看護や事務のスタッフが中心となってつくった手作りのあつまりで、準備は5月から行ってきたそうだ。

介護者、家族、地域ケアに関わってきたスタッフが一緒になって思い出を語り、故人を偲ぶ場である。
病院からは医師、訪問看護師、ケアマネージャー、施設のスタッフなどが参加した。

故人の家族の参加者には小さな子供もいた。
たまたま佐久総合病院に実習に来ていた医学生も参加した。

彼らは何を感じてかえったのだろうか。

私自身がかかわらせていただいたご遺族の方も来ており、ケアや「病」や「老い」や「死」のあり方について語りあう。

遺族にとっては他の遺族の話を聞いたり、スタッフと思い出を分かち合ったりするグリーフワークの側面があるだろう。(もちろんスタッフにとってもグリーフワークだ。)
一方、専門職にとっては、自分たちのやってきた在宅ケア、終末期ケアのあり方がよかったのかどうかという声を聞く場でもある。

地域ケア科では毎年登録されている方の約3分の1、約120人の方が旅立たれていく。
癌のように数ヶ月間と短期間のお付き合いで旅立たれていく方もいれば、脳梗塞、認知症の場合など10年を超えての在宅生活の末にそっとなくなられる方もいる。
最短、家に戻って3時間でなくなったケースもある。
今回は昨年なくなった方の家族が50人以上参加した。

何人かの家族の代表の話では、笑いを誘う話もあり、最期は皆で「野に咲く花のように」を歌って終わった。

病棟、訪問診療、訪問看護、老人保健施設などが連携して支えながらたとえ根治が望めない病態であっても患者とその家族が望む場所での望む生活をを支え抜くことは医療の大事な仕事だ。

定期的な訪問診療、訪問看護、ホームヘルプに加え、24時間対応する訪問看護と緊急往診、ディケア、ショートスティ、自宅改修、テクノエイドなど介護保険の仕組みをフルに使ってもまだまだ介護者の負担も大きく難しい。
在宅医療の草分けであるが、診療所と病院の役割を分担する方向での診療報酬上の誘導のため、今なお病院からここまで在宅医療をやっているのは例外的である。

病院の出口の回復期リハビリテーション病棟の充実に加え、終末期の在宅生活ををバックアップする病棟や通所療養介護の仕組みも充実させ、制度化が望まれる。

最期まで家で過ごせるのは、家族の覚悟も決まり、サポート体制が十分整うなど、いろいろな幸運が重なった場合だ。

ケースによってはその方の終末期のあり方がよかったのかどうか、なくなった後にスタッフが遺族に訪問を行い、デスカンファレンスをおこないデスサマリーとしてまとめる。

佐久総合病院の職員はは医師に限っては他の地域から来た者が多いが、看護師や介護職、事務職などは地元出身者が多い。
病院ができて60余年。病院と地域がともに歩み、地域の医療文化が作られてきた。

地域のニーズを探り、やれることをやる。そして、ともに医療や福祉のあり方を考える。
こういった活動の一つ一つが地域をつむぎ、地域の文化になっていくのだと感じた。