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精神科医師のブログ。
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11月14日を「いい医師の日」に。その1

2009年10月31日 | Weblog
全国的に医療崩壊、そして医師不足が問題となっている。
何かこのムードを変えるよい解決方法はないものか?

役割を自覚し使命感に燃え、命を削りながらがんばっている医師がいる。
自分の仕事を自ら限定し淡々とやっている医師もいる。
一方でその資格の希少性にフリーライド(ただ乗り)している医師も当然いる。

集団としての医師の中にも当然以下のようなパレートの法則、または働き蜂の法則が成り立つと考えられる。

「優秀な働き蜂100匹の集団を形成すると,25匹は良く働き,50匹はそれなりに働き,25匹はあまり働かなくなる。」
(または2:6:2)

医師は赤ひげやブラックジャックやゴッドハンドばかりではない。
医療センターや大学病院の隣に暮らしているからといって別に長生きできるわけでもない。
別に死亡診断書を書き、血圧だけを測る医師がいてもかまわない。

地域全体、国全体で必要十分な医療が充足されればいいのである。

医療においてコスト、クオリティ、アクセスを全て満たすことは出来ないそうだ。
つまり、クオリティ(よりベターな医療を)とアクセス(いつでもどこでも)を求めればコストがかかるということだ。
WHOも認めたように日本の医療はこの3つをどれもそこそこのバランスで保っていた。医療従事者の安い賃金で使命感に燃えて働く、お人よしで献身的な姿勢に頼っていたともいえる。

市民の医療に対する要求は増える一方だが、医療従事者もさすがにくたびれて、「自分の生活も大事だ、もっと人をいれてほしい(コストをかけてほしい)」と主張している。
それなのに今の流れはコストは減らそうとされ、クオリティを保てと医療現場に要求している。
救急車のたらいまわしや受診制限、リハビリ打ち切りなどアクセスが制限されるのも当然である。

これが今の医療崩壊の舞台裏だ。

日本の医師数は1000人あたり約2.1人。
OECD(経済協力開発機構)加盟国(ほぼ先進国)平均は1000人当たり3.1人。
キューバでは1000人当たり5.9人。

医師の数はもう少し増えたほうがよいのは確かだろう。
しかし今医学部の定員を増やしても彼らが現場で活躍できるようになるのは10年先の話である。

しばらくは、いまの医師にがんばってもらうしかない。
それなりに働く普通の医師に、いかにモチベーションをもってもらい、医師としての役割を果たしてもらうかということが医療全体のクオリティを決めると考えられる。

そのためには市民の一人一人かしこくなり、医療の限界と有用性を理解し、メディカルリテラシーを身につけ、自らの権利と責任を意識しパートナーシップ型の医療を実現する必要がある。

医療は本来はやりがいのある仕事であるから、医師をおだてて上手に使えば、安く気持ちよく働いてもらうことが出来るだろう。

医療崩壊(底付き体験)に直面して、兵庫県柏原市や千葉県東金市をはじめ各地で「地域医療を守る会」が出来ている。

そこで11月14日。
「いい医師の日」である。

ではあなたの考える「いい医師」とは、どんな医師だろうか?
(・・・続く)

参考エントリー
シッコ~Sickoみた。
佐久病院最期の救外当直