皆さん、炎天下にもかかわらず熱心に観察してくださいました。オカトラノオともう一つの花を見てもらい、公民館に移動することにしました。
そこで、今日の観察の説明をしました。そのために私は「教材」を準備していました。一つは昆虫の触覚です。それを子供につけてもらいました。
触覚をつけてもらう
あとでこの「触覚」をつける子もいました。
「いろんな花があって、いろんな虫が来るわけですが、大きく分けると花には2タイプがあります。一つは皿型のもので、もう一つは筒型のものです。今日見たもらったオカトラノオは皿型のほうです。」
それから「複眼」とハエの口を模したものをマスクに付けました。
ハエの口
それから息を吹くと紙の筒がビューンと伸びるおもちゃをチョウの口に見立てました。それをペットボトルで作った筒状の花に突っ込みました。
筒状の花を吸う蝶
「チョウはこういう口を持っているから蜜が吸えますが、ハエは舐める口なのでこういう花の蜜は吸えません」
「これはチョウやハチはどうぞ、でもハエやアブには意地悪をしているわけです。いろんな昆虫が来てくれた方が花粉を渡してもらうのにいいのに、なぜそんな意地悪をするのでしょうか」
「それには訳があって、いろいろな虫がくるのはいいけど、その虫は別の花に行く可能性が大きく、それでは花粉を確実に渡してもらえません。その点、チョウならチョウに限定すれば、そのチョウが同じ花に行ってくれる確率がずっと高くなる訳です。言ってみれば、皿型の方は安い一杯飲み屋、筒型の方は高級バーみたいなものです。一杯飲み屋は値段が安い分、お客さんにたくさん来てもらって売り上げにします。そういう商売もあるし、高級バーのように客の数は少ないけど、高いので商売が成り立つ商売もある訳です」
「酒は安いが客が多い」一杯飲み屋と「客は少ないが値段が高い」高級バー
この説明は子供にはわからなかったような気がしますが、大人は笑顔で納得したようでした。
「いろいろな花がいていろいろな虫が来る訳ですが、そこには花が虫に来てもらうための工夫があり、その結果、花の形に応じて来る虫が違うというルールがあるようなのです」
机の上に今日採集してきた昆虫をシャーレに入れて置きました。
シャーレに入れた昆虫
そしてルーペや小ったい顕微鏡でのぞいてもらいました。
「うわあ、でかい!」
「こうなってるんだ」
子供も大人も歓声を上げていました。
ルーペや顕微鏡でのぞく
子供たちに調査の意味がどれだけわかったかはわかりませんが、それでも花の前で昆虫が来るのを待った体験が子供たちの心に何かを残してくれたらいいなと思います。テレビなどで豊富な情報が流れますが、そういう受け身の情報ではなく、自分自身で生き物のことを調べて自然のことを理解することが楽しいことだということに気づいてくれることを期待したいと思います。
* 写真の公開は了解を得ています。