ひねもす日報

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牧師といのちの崖

2019年04月20日 | 本・映画
 田端にあるシネマチュプキへ「牧師といのちの崖」を観に行った。「何かさー、暗い映画なんやろー、観たあと
落ち込むかなぁ」と観るのを迷ったが、結果真逆。「こんな牧師さんおるんや!」と、気持ちHP増した。
こういうの初めてかも知れん。チュプキさんは初めて行ったんやけれど内装がばり可愛いと!大宮エリー
展のようなファンタジーな内装。席数は学校の1クラスも入らない小ぢんまりとした数。イヤホンがあったり
バリアフリーであったり、福祉関連の図書があったりしてわたし好み。

 和歌山県に崖があり、そこは観光地であり自殺の名所。飛び降りる辺りに看板があって、
「大事な決断をする前にここに電話をしてください」とある。それは教会の牧師につながる。
そこで保護された人たちは、牧師が運営する宅配弁当屋で一緒に働いたり2号店の食堂で働いたりしている。
 わたしはプロテスタントの学校に8年間通った。「聖書」はテスト科目でもあるので
聖書暗記したり学んだりした。朝は礼拝。色々な牧師を見たが、この映画の牧師は今までみた中でも
ごつかった。風貌もだが、中身から出ているものだろう。スエットにクロックスを履いた牧師の日々を
追ったのがこの映画だ。
 この事業というかボランティアというかを始めたそのこと(パンフレットを買って読んだら
崖から着信があるのは他の牧師がスタートしたものを引き継いだようだった)。何かを始めるって
それは大変で。フローレンスの駒崎さんが起業するまでの本を読んだ時にも感じたが、
何かを始めるってハードだ。駒崎氏は病児のシッターを保育士に限定せず、「育児年数●年以上」という
人も雇った。わたしはそこがすごく評価しているところだ(上からで失礼します(;'∀'))。
外野は悪くしか言ってこない中で、船をこぎ出す。それこそ最初は手漕ぎボートのような船で。
12星座のおひつじ座のエピソードを思い出すたびに
涙ぐむ自分は、「何かを始める」「既存のところから飛びだす」というパワーや勇気にまずは
感服し、心を動かされる性分なようだ。そしてこの映画の牧師さんにもそれを感じた。まずはと
書いたのは、今はその後「継続させる」にもフォーカスしており、そこも大変だよなぁとやっと
気づいた四十路道だから(遅)。

 今や誰ともうわべだけのお付き合いなんて当たり前で。誰かのために本気で怒ったり感情を振るわせたり、
どうですか、していますか。わたしは出産その後、そういうのから逃げ腰な暮らしなのかも知れない。
でも、振り返れば人生のある時にはそういうことをした経験もあったわけで。この牧師さんの
暮らしではそれが日常なんやなー。

 保護した人たちの労働へのお給料をお渡すとき。「里にお金送ってみたらどうか」「二号店出そうと
思うんやけれど、そっちで一緒に頑張ってくれんか」「お金、これ使いすぎやないか」と話す牧師。
「傾聴」とかさ、学びに行きました、わたし。「相手に伝わる会話術」「聞き上手がなんちゃらかんちゃら」
な書籍もたくさんある。しかしこの牧師はそれらの書籍を読んだり、そういう勉強会へ行っただろうか。
多分、そんな本読む時間なくて、
現場でぶつかり稽古のように学んで会得したものじゃないんだろうか。時に相手も自分も傷付きながら、
それでも継続して今の彼の伝え方話し方なんじゃないかなーと、勝手な推測をしつつ背筋を伸ばし、尊敬した。

 この映画館は今後「里にきたらええやん」「隣る人」の上映を決めているのも行くきっかけになった。
それら二本観ている。「隣る人」の施設では保育士が担当の子どもを育てている。しかし、保育士の事情で
その人が退社してしまうこともある。他の子の担当保育士がいなくなってしまったのを見た児童が、
自分担当の保育士のことを「大好き 大好き 大好き」と書く辺りでもう涙腺決壊の爆泣き。いつ思い出しても
泣けてしまう。けれど、現場ではそれが現実で日常である人にとってはそれは仕事でもある。お涙頂戴
したいわけでは当然にない。そこがまたこう、わたしを惹きつける。

 今朝、老犬をお散歩するおばあ様へ、ウォーキング中に集めたと思しき小さな野花を片手に持った
おばあ様が挨拶していた。そういうのを見てわたしはほっこりした。わたしが興味のある福祉系の仕事は
小さいのかな、こんな裾野みたいなことして、何かあるんやろかと最近自問することがある。
それでも銭湯で交わす知らない人との一言、二言がわたしを救うような性分だからなぁ。
ちょっとしたことを共感出来る喜びとか。わたしは小さくても結局そこが大事なんだから仕方ないのかなぁ。
「ありがとう」って言われて、相手の役に少しでも立つのが喜びなんやもんなぁ。
コメント
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