マクロ経済そして自然環境

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景気政策史―56 19世紀イギリス対外商業政策と不況 その13 後発国の自由と保護、諸国の関税政策

2013-02-02 14:49:20 | 景気政策史

この間の説明は粗イギリスから見た商工業の発展を描いてきた物であるが、当然にも他諸国の状態もあるわけであり、それらがどの様な物であったかを示す必要があるがまずは19世紀中盤までの各国の関税政策の概観を見てみてみる。

アメリカ 19世紀前半を通じて輸出は主として原料、食料、輸入は主として工業製品であり、輸出入の約4割がイギリス向けで、イギリスからの輸出の約6-7割は繊維製品であった。

1789年 初の関税法  内容的には財政目的

1816年 保護主義を明確に謳う関税法

1824年 産業保護の立場であるも南部(綿花輸出を英国に頼る)は報復を恐れ反対。

1828年 南部から[唾棄すべき関税法]と呼ばれ保護主義を一層強める。

1832年 1828年法を若干引下げるが南部の不満は解消できなかった。

1833年 [妥協関税法]と呼ばれ最高税率が20%に抑えられたが1837年に恐慌が起こり財政事情が悪化、歳入不足になり保護主義の隆盛。

1842年法 保護主義が強く有税品平均37.8%

その後政府の財政が好転すると再び自由貿易主義の財政関税時代が起き、1845年12月財務長官ウオーカー(自由貿易を主張)が経済政策から見た保護関税反対論を唱える。

1846年 上記報告を受け“ウオーカー関税法”が出来る(実態は緩和せられたる保護貿易ともされる)

1857年 上記1846年法を低率化したもの。46年から57年を“アメリカの自由貿易時代”とも言う。1857年に恐慌がおき国庫が再び悪化し、モリルの関税引上げ法案が1861年に通過、南部の自由貿易派と北部の保護主義者が対立、南部は1860年に独立宣言。 

モリル関税法はその後第二次大戦まで続く米国の高関税時代の出発点とされる。

フランス 19世紀前半は概ね工業原料を輸入し工業製品を輸出していたが、フランス関税は全体として緩慢な動きで大きな変化は見られない。19世紀前半を通じ基本的にフランスが“自由主義的政策”を唱えたのは1860-70年代のみであるもその関税政策は主として対英要因によるとされ、フランスの高関税は際立っているとされ、イギリス、ドイツと違い工業資本家、生産者、地主、農民もともに保護主義陣営に居たとされ、“自由貿易派”としては絹織物製造業者、ぶどう栽培業者、ぶどう酒製造者がいた。(毛利健三 自由貿易帝国主義 東京大学出版 1978年)

1826年法  全体的保護主義の完成。 プロシア、ロシア、スエーデン等々との闘争があった。

1830年代 48年まで自由化への動きが見えるも関税の重要な緩和はなかった。

1836年: ワイン製造地方からの影響で、租製鉄、石炭、綿の関税の引下げ、造船用木材等の輸出制限を撤廃する。製造業者、農業家の保護主義者の抵抗に遭う。

1846年 経済発展とイギリスの自由貿易運動に影響を受け、各地に自由貿易協会が設立。

ナポレオン三世が皇帝(1852年)になって初めて保護主義から離れる実際的動きが出てきた。

1853-1855 石炭、鉄鋼、羊毛、綿等々の関税引下げ自由化への、模索が始まる。

1856年 政府が全ての“輸入制限”を廃止しこれを30-60%の関税に置き換えようとしたがリール等の工業都市の反対に合い断念した。

ドイツ

19世紀始めのドイツは多数の領邦国家からなり、その内部にまた多くの関税領域があった。

1818年のプロシア関税法はそのプロシア内部の統一的関税を作ろうとした物である。その第一条は“外国産の農産物と製造品はすべて国内の全域にわたって輸入され、消費されまた通過する事が出来る。”

第5条冒頭に宣明した貿易の自由は諸外国との交渉にさいして常に原則とされるべきである。(中略)しかし之に反して諸外国に於いて我国民の取引を著しく損なう諸制限に対しては適切な処置によって報復する事もまた留保される。

となっており、“自由主義の原則”が鮮明になっているとされ、輸入関税の水準も従価平均10%で諸外国からしても低かったとされ北ドイツ関税同盟、南ドイツ関税同盟、中部ドイツ関税同盟を経て1834年にドイツ関税同盟が発足した。他諸国から較べて“自由主義的なものであった”がこれは自己の経済的基盤をイギリス等への小麦の輸出におくユンカー(地主層)と、保護貿易を要求したが力の弱かった産業資本との妥協の産物でもあった。

参考  P.Ashley:Modern Tariff History 1910年 、前掲世界関税史


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