tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

対象は女性、食をPR。情報発信をもっと!観光地奈良の勝ち残り戦略(65)

2012年12月12日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
12月4日(火)、奈良市観光協会・長岡光彦事務局長の30分の講話をお聞きした。演題は「観光活性化の決め手は、食事・女性・情報発信力」だった。興味深いお話だったので、以下に概要を紹介する。

昨年、観光活性化のために「民間活力を導入」するため、奈良市観光協会職員の公募がございました。およそ80人が応募され、その中には現在奈良市観光大使をされている方、JALでキャビンアテンダントをされていた女性など強敵ぞろいでしたが、運良くここに勤務できることになりましたのは、地元銀行で長年お世話になっていたこと、平城遷都1300年祭でボランティア活動をしていたこと、奈良検定の最上級資格「奈良まほろばソムリエ」に合格していたことなどがプラスになったものと思われます。家族は「奈良にご縁の深い、ご先祖さまのおかげだよ」と申しています。

この夏、飛騨高山で「観光大学」というセミナーがありました。高山市は江戸時代の商家が多く残る全国有数の観光地です。高山市の人口は約9万人ですが、その約2倍の年間十数万人の外国人観光客を迎えるのをはじめ、町の人口の約7割は何らかの形で観光に関わっているとされ、北海道の富良野などと同様に観光先進地として全国から注目されています。

有名な観光地を体感したい思いもあり、旅行を兼ねてセミナーに参加しました。分科会で講師をされたのは、岐阜県観光交流推進局長の吉田菜穂子さん。講師から「自分のおすすめする所が相手に喜んでいただけるものだと、自信を持っていえますか」「自分の地域の良いところを100の言葉でいえますか」と問いかけられました。景色が、食べ物が、親切なおもてなしが…と挙げていっても、100は大変です。地域を深く知り愛着を持つことで言えるようになるのでしょうか。いろんな切り口で地域を表現できるようになれば、お客様のニーズに合わせた適切な案内もできるようになると思います。

今年8月に、前宮崎県知事の東国原さんが奈良市役所に来られました。80年以上たって傾きかけた宮崎県庁舎を観光名所にしたとのことです。マスコミに注目され全国から人が来ると、見られることで職員はいきいきと働き、植木まで生き返ったそうです。情報発信力、アイデア、聴衆をつかんで離さない人間的魅力、やはりただ者ではないなと感じました。



600回のテレビ出演のご経験がある日本旅行のカリスマ添乗員・平田進也さんをご存知でしょうか。吉野大淀町のご出身、現在大和高田市にお住まいで、年間8億円の旅行契約をたった一人で獲得された伝説の人物です。漫談の綾小路きみまろさんによく似た方で、ファンクラブには2万人がおられるそうです。「ターゲットは熟女です、なぜなら若い人にはお金がありません。元気でパワフルな熟年女性に気に入られれば、男性は自然についてきます」さすがにいい所をついておられます。

先日、奈良商工会議所主催で「韓国人旅行者おもてなし講座」というセミナーがありました。講師の金美花(キム・ミーファー)先生は「日本人はすごい民族です。何百年も昔に大仏様が戦火で2回も焼かれ、そのたびに多くの民衆が力をあわせて、前に勝るとも劣らない素晴らしい大仏様を復興してきました。昨年、東北の大震災で日本はたいへんな被害を受けました。でも大仏様を復興された日本人なら、きっと今回も立派に復興されると信じています」。大仏様の再建をこんな観点からお聞きしたのは初めてです。感動しました。

奈良県は自殺者が10万人当たり17人と、全国一少ないと言う事実をご存知でしょうか。厳しい時代を反映し年間約3万人、全国平均で10万人当たり約24人が毎年亡くなります。奈良県には僧侶、神職など宗教者が多くおられ、人口約140万人の県なのに人口700万人規模の千葉県や埼玉県より多いと聞きます。悩みや心配事の解決には宗教者の役割も大きいようです。奈良市観光案内所の職員はさすがに楽しい「小ネタ」をたくさん知っています。

1.大仏殿の東側、鐘楼にいたる階段を通称「猫段」といいます。ここでころんだら猫になるといわれています。
2.もちいどの(餅飯殿)センター街は、ここに住んでいた箱屋勘兵衛さんが東大寺の高僧・理元大師が吉野で修行される時、いつもお餅やご飯をお供えしてお世話をしていたので「餅飯殿」と呼ばれていたのが起源です。
3.中国人観光客は奈良公園でカメラを空に向けて待ち構える人が多いです。「鹿 飛出注意」の看板は中国の方は文字通り「鹿が空を飛んでくる、これは珍しい」と思っておられます。
4.春日大社の参道には石灯篭が2千基以上並びます。その中に10数本だけ「春日大明神」と刻印されたものがありますが(ほとんどは春日社と表示されています)、「1日で3本見つければ幸せになれる」という言い伝えがあります。
5.中国の女性はお好み焼き、うどんなど「コナモン」が大好きです。奈良市内でもコナモンのお店をよく探されます。

こんな小ネタを数十件ほど奈良県東京事務所に提供しました。これを東京国立博物館で奈良のPRに利用する企画が進んでいます。

奥ゆかしくあまり自己主張しないのが奈良の県民性です。他地域と比べると、今まで広報や広告があまり上手ではありませんでした。数々の素晴らしい宝物に囲まれながら、情報発信力が弱く正当に評価されていなかった面は否定できません。メディア・マスコミの影響力は偉大です。1300年祭ではあの「せんとくん」が年間2千回以上もメディアに登場し、今や全国区のゆるキャラです。奈良市観光協会は新しいゆるキャラ「しかまろくん」を作成し、現在商標登録を申請中です。

08年のフジテレビドラマ「鹿男あをによし」ではならまちのロケ地が賑わいました。10年NHKの「大仏開眼」でも吉備真備や僧上玄が有名になりました。今や「ネットの時代」です。今後も各種の情報発信に注力し、弱いとされていた若い世代にも支持される奈良をめざしてまいります。

歴史の都・奈良、そうそう簡単に開発を進めるわけにも参りません。そこで「切り札は観光」となります。平成22年の観光白書によれば、国内旅行消費額は約23兆円、GDPの約5%になります。直接従事者だけで229万人、雇用誘発は441万人、飲食、運輸交通など関連事業を加えれば一大産業です。少子化・高齢化の進展で今後は定住人口の増加もなかなか見込めません。交流人口を増やす観光こそが地域発展につながるのです。奈良市長も「福祉」と「観光」に予算や人員を重点配分されています。私の考える、観光の課題を3つ挙げます。

1つは「インバウンド」の増強、つまり訪日外国人旅行者の増加です。08年に発足した観光庁では、昨年の訪日観光客861万人を20年には2500万人にしようと目標を立て、キャンペーンを展開しています。
2つめは「着地型観光」へのシフトです。大都市の出発地で企画する従来型の団体旅行から、個人や小グループの旅行がウエイトを増す中、到着地(目的地)で企画する、その土地ならではの名物・体験などを組み入れた旅行プランが人気を集めています。
3つめは「一元化(観光プラットホーム)」。行政はじめそれぞれの団体が独自に行っていた観光事業について、企画や情報を一元化させることで効率が上がり、お客さまにご満足いただける「ワン・ストップ・サービスの提供」を目標にしています。

秋には「ミシュラン」が話題になりました。県下では22か店の飲食店が星を獲得しました。国の内外を問わず「旅の満足度」にはまず「食事」。JNTO(日本政府観光局)が10年に実施した「外国人が期待すること」のアンケート調査でも、韓国、タイ、アメリカ、フランス人のトップは食事、スペイン、台湾人も第2位が食事となっています。

「奈良にうまいものあり」の認知がもっと進めば、お客様も必ず増えるはずです。大和野菜、大和肉鶏など地元の食材をいかした奈良の「食」がいっそう認知されることが観光振興の大切な条件と考えます。評判のいいお店もずいぶん増えてきました。朝日新聞に、ノーベル賞候補で話題になった村上春樹さんが、下市町の「つるべすし弥助」さんや二階堂にあるうなぎの「綿宗(わたそう)」さんの料理を誉めておられたと載っていました。

平田進也さんもおっしゃるように、ターゲットは女性です。歴女に仏女、最近では古事記や神社ブームで「宮ガール」もいわれます。パワースポットブームで、女性を中心に三輪山に登拝される方も急増しています(従来は年間1万人、今は年間3万人)。

飛鳥の南に位置する高取町では、元証券マンの野村さんが中心になり、民家に眠っていた雛人形を毎年3月の1か月間展示するイベントを数年前から始めました。それまでほとんど来なかった観光客が、毎年数万人も来るようになりました。ターゲットを女性、それも大阪近辺の中年女性に絞り、口コミで評判が伝わり集客につながったとされます。

まとめますと、奈良観光活性化の決め手は3つ、1つは「女性をターゲットに」、2つめは「食の充実」、最後は「情報発信力の強化」、これらができれば奈良観光の未来は明るいと考えます。

お約束のお時間も近づいて参りました。「仕事を頑張れば誰もが喜び、笑顔になれる、それが観光業である」といわれます。こんな仕事に携われることに感謝し、これからも精進努力してまいります。今後ともどうかご支援をよろしくお願いします。本日は、最後までご清聴いただき、本当にありがとうございました。


いろんなエピソードや小ネタを交えながら、長岡節が炸裂した。とても楽しい講話で、よく30分にまとめられたものだと感心した。ターゲットを熟年女性に据え、食の魅力をもっとアピールしよう、とは全くその通りだ。今は「ターゲットは修学旅行生で、ウリは神社仏閣」ということになっている。奈良は多くの文化遺産・観光資源に恵まれていることを前提に、プラスαとして食の魅力をアピールしよう、多くの熟年女性を引きつける施策を打とう、という方向に転換すべきである。そのためには、もっと情報発信力を高めなければならない。

長岡さん、良いお話を有難うございました。これからも奈良の観光振興にご尽力ください。
コメント (3)
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