昔々、あるところ・・・ではありません。 私立の中学校へ進学した自分は、帰り道の途中の、料亭の勝手口に書かれたアルバイト募集の紙に引き寄せられて、応募した。 それは「洗い方募集」と書かれてあったのだ。 案外すんなり雇ってもらった。 夕方四時から九時までのアルバイトで、バイトとしては良い給料だった。 おまけに夕飯付きだった。 洗い方とはどんなものか知らずに応募したが、それはそれは厳しい作業だった。 野菜の洗浄に始まり、流し台や食器、はたまた布巾・・・。 料亭には洗うものがたくさんある。 しかし、お客さんが食事をしないと、食器などの洗い物は少ない。 鍋釜は特に厳しく洗った記憶がある。 そのうち板前さんの魚の前処理をさせていただくようになった。 魚は良く自分で捌いたから、鱗取りなどはお手の物だった。 焼き物の、レンコ鯛や、クロダイなどの高級魚は、丁寧に鱗を取るので褒められた記憶がある。 しかし、その魚に包丁を入れる事はさせてもらえなかった。 そうすると、暇な時間が出来る。 盛り付けや、配膳を手伝うようになって、お膳の盛り付けを自然に覚えた。一汁三菜の時、三の膳迄ある時はこう、というほどにその手順は複雑で面白かったことは覚えている。普通の一汁三菜の配置は
となる。主食が手前左、汁物が右手前、左向こう上がお浸しなど、右上が野菜の煮物となり、魚の焼き物や、肉の照り焼きなどは別皿で一番向こうに置く。魚の頭は左向き・・・色々あった決まり事、面白かったアルバイトの事を、遊工房様のブログを読みながら思い出した。