道々の枝折

好奇心の趣くままに、見たこと・聞いたこと・思ったこと・為たこと、そして考えたこと・・・

山の幸

2013年11月14日 | 自然観察

山歩きをしていると、山国の自然の恵みに多少は通じるようになる。それでも、キノコだけは覚えられない。

秋の山歩きではキノコがよく目に付く。図鑑持参で山に入り、現物を前にためつすがめつ見較べても、図との類似点と相違点が等分に認められてまったく判断がつかない。山菜と違って、形態が似ていても幼菌と成菌とでは著しく外観の異なるものがあり、同定は極めて難しい。その点、有毒キノコは特徴が明らかなものが多く、そちらを覚える方が容易そうだ。だが、口にしないものだから、覚えても仕方ないし覚えたくもない。これが、キノコ判別能力がいっこうに磨かれない理由だろう。

これまでに秋の山で自ら採って食べたキノコは、ヌメリイグチ・ハナイグチ・ブナハリタケ・ヒラタケ・クリタケ・ムキタケ・スギヒラタケぐらいのもの。どれほど多くの食用キノコを、それと知らずに見逃してきたかと思うと、食いしん坊の端くれとしてはいささか口惜しい思いがする。

かつて当地に赴任して来た東北出身の隣人の指導で、ヌメリイグチを大量に採ったことがあった。ご当人がキノコ採りの達人と自称していたから、初めてのキノコでも何の不安もなく口にすることができた。今でも山の宿などで、前菜にヌメリイグチのおろしあえが出たりすると、懐かしくその時の情況が蘇る。

その人が郷里に戻って定年を迎えた後、各種のキノコを送ってくれたことがあった。どれもこれもそれまで図鑑でしか見たことのない、食味に定評のあるものばかりだった。さすがに本場のキノコ採り達人だと感服した。

後年達人は、東北地方で最も恐れられていた猛毒キノコを誤って食べ入院した。中毒すると手足の末端が腫れ、何日も激痛に苛まれるらしい。現地のキノコ採りたちの恐怖の的である。解毒薬はなく、点滴を受けて自然治癒を待つしかなかったそうだ。

自然は奥が深い。その奥深さからみれば、ビギナーもヴェテランもさほどの違いはないのだろう。ヴェテランでも見誤ることがあるキノコ採り、毎年各地でキノコに詳しい人達が誤食し、中には亡くなる例もある。それほどにキノコは危険な食物だが、見つけたときの素朴な喜びは、味覚を上まわるものがあり、キノコ狩りは一度覚えると止められないようだ。

素人の私でもどうにか同定できるキノコがクリタケとヒラタケだ。クリタケはパスタの具にしても、キノコ飯に炊いても、野趣ある風味を楽しめる。ヒラタケはキノコ汁とかキノコ蕎麦に向いている。この2種は、見つけたら迷わず採取し、食べることにしている。

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