道々の枝折

好奇心の趣くままに、見たこと・聞いたこと・思ったこと・為たこと、そして考えたこと・・・

パンガシウス

2021年07月16日 | 食物・料理


過日〈コストコ〉へ行った際、フィシュ&チプスを昼食用に買った。
味は好かったが、〈パンガシウス〉(別名バサ)なる原材料名を見て愕いた。メコン川流域をはじめ、南アジア一帯の河川に生息する、大ナマズの一種だという。大きなものは2mにもなるとか。パンガシウスは学名で、英名はシャーク・キャットフィッシュというらしい。鮫ナマズでは、人は買わない。流通させるにあたって、ラテン語名を使うしかなかったのだろう。

欧米での魚の料理は、フィレの形で調理するのが普通だから、淡白な白身で大柄なこの魚は、冷凍してフィレ加工され、EU・北米に盛んに輸出されているらしい。日本も欧米並みに輸入している。もちろん養殖である。

しかし数万年にわたる列島での生活実績をもつ魚食民族の私たち日本人、特に私のような魚好きは、海魚のタラならともかく、大型ナマズのフィシュフライと聞くと食欲が減退してしまう。

日ごろ川魚好きを吹聴しているが、それは山紫水明な日本の清流や湖水で獲れる川魚に限ってのこと、常に濁って水量の多い大陸河川の巨大魚など、食べたいとも思わない。近くの佐鳴湖に中国原産のソウギョが棲息しているが、食欲を唆られる人は先ずいない。

私は以前から、是非一度ナマズの蒲焼を賞味したいと願っているが、これは日本産のナマズを想定してのこと。国内のナマズ料理は中国の養殖モノが主流になっているようなので、未だに味わったことがない。

欧米人で魚の鮮度に拘るのは、フランス、イタリア、スペイン、ギリシャなどラテン系民族で、ゲルマン系は常食でないこともあって、あまり拘らないらしい。日本人の消費者は魚の鮮度を目で確かめる習慣があり、お頭付きは、新鮮な素材であることを示すものである。
ところが昨今の若い主婦は、頭が付いた状態の魚は買わないそうだ。目が怖いとか?かわい子ぷるのもいい加減にしろと云いたい。
今は調理に便利なフィレが主流である。魚の調理が欧米化している証左だろう。食の多様化は、とどまることがない。

調べてみたらこの〈パンガシウス〉、冷凍食品のフライ材料として業務用スーパーで売られているらしい。相当普及していると見てよいだろう。美味でクセがなく価格も安ければ、普及するのは当然だ。

もともと欧州ではナマズを食べるようだし、アメリカのミシシピー川のナマズ料理は有名だ。欧米風魚食文化の逆輸入ということになるのだろうか?

昨今ではスーパーで頭の付いた魚は若い主婦に全く人気がない。お頭付きの塩焼き、煮付けは料理に手間がかかり、共働きの家庭でのメニューに向かない。頭、皮、骨を除いたフィレなら、フライパンで焼くか揚げるだけだから、手間がかからない。子どもたちも、魚のフライは給食で慣れている。魚のフライというとアジフライがメインだった私たち世代の時代は、遠くなるばかり。

食事全般が欧風化して70年、魚も欧風調理に向く種類と下拵えが一般化した。その最たるものはサーモン(実際はレインボウ・トラウト)である。これも大きいからフィレ加工に向く。

私のように近海天然の焼魚・煮魚に固執する人間は、社会的にも家庭的にも、邪魔くさい存在になりつつある。欧米人や中国人から見れば、小魚を箸でチミチミ突ついて食べる日本人の魚の食べ方は、呆れているだろう。



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