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日米同盟 「3つの時限爆弾」

2014-04-11 06:23:45 | 時評



日米同盟 「3つの時限爆弾」

WEDGE 4月10日(木)12時16分配信
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140410-00010001-wedge-int&pos=3

 2月28日付Diplomat誌に、Patrick M. Cronin米CNASアジア太平洋安全保障プログラム上級部長は、「日米同盟に隠された3つの時限爆弾」と題し、日米両国は対中戦略、抑止戦略及び攻撃的軍事能力について共通政策を必要とする、との論説を書き、日米同盟の課題を指摘しています。

 すなわち、日本の新防衛計画大綱(NDPG)と、間もなく出てくる米国の4年毎の防衛見直し(QDR)は、中国の台頭への短期・長期の対応を取り扱っていて、一致点が多い。しかし、日米同盟は将来どう共通の対中戦略を策定するか、どう拡大抑止を維持するか、どう日本の攻撃力を含む能力を統合していくか、の3つの問題に直面する。

 今度の日本の防衛計画大綱(NDPG)は、中国の強圧的な外交など安全保障環境の悪化を強調している。特に中国の海洋での主張や中国の接近阻止・領域拒否(A2AD)能力の獲得に懸念を示している。中国は第1次列島線内の海洋を支配する狙いを持っている。

 2014年のQDRはまだ公表されていないが、NDPGと中国の自己主張への対応、海空での優位性確保などの点で共通性がある。NDPGと同じく、QDRは中国の台頭に伴う不確実な安保環境を強調している。ヘーゲル長官は優越した海空軍を維持すると言っている。QDRは空母11隻、F35配備などを予定している。

 日本は安全保障上の役割を正常化する過程にあり、早ければ4月にも集団的自衛権を認め、武器輸出3原則も緩和しようとしている。米国はQDR発表後、国家安全保障戦略を出すが、おそらくアジア重視政策が再確認されよう。

 しかしNDPGとQDRは3つの主要な問題を解決していない。

 第1は、同盟国間の安全保障目的の違いなどにより、同盟戦略を作るのが難しいことである。日本にとり中国の問題は緊急かつ近い問題であるが、米国にとっては少し遠い問題である。中国の圧力行使にどう対応するかでコンセンサスはなく、日米が対中共通戦略を作れるかが課題である。

 日本は「新しい大国関係」に疑念を持っている。日本は今や前線国家であり、中国の台頭の影響をじかに受けるので、米国よりも対中関係に敏感に反応する。

 第2の課題は、中国の軍事能力増大の中でどう拡大抑止を維持するかである。日韓ともに米国の核の傘を頼りにしているが、その信頼性は米国が軍事的優位を保持していることに依拠している。しかし、中国の通常戦力が強くなり、第2攻撃力も確実になれば、日本を守る保障が弱まったと考えられかねない。これを考え始めておく必要がある。

 第3の課題は、日本が攻撃能力を持つようになった際に、それを米軍の能力とどう統合するのかという点である。日米両国の軍隊は、掃海能力に見られるように補完性を原則としてきたが、日本がより独立した能力を持った時にどうするのか。今は、米国はこういう日本の能力を歓迎する状況にある。日本は自衛などでより多くの役割を果たすべきである。日本の行動が同盟の戦略に統合されることは重要である。

 これら3つの問題はNDPGやQDRで取り扱うには複雑であるが、これらの問題が同盟を分裂させないように良く話し合われる必要がある。今進行中の1997年の日米防衛ガイドラインの改定に際し、これらの問題も取り扱うべきである、と論じています。

* * *

 この論説は、日米同盟にとり将来問題となりそうなことを的確に指摘しています。

 日本の独立した攻撃能力の問題は敵地攻撃能力などのことですが、できるだけ米軍との統合運用にしたらよいと思います。近隣諸国もそれで安心できます。西ドイツ軍がNATOに組み込まれていることが欧州では安心感につながっています。日米安全保障条約を、日本軍国主義復活阻止の「ビンの蓋」とする考え方には賛成できませんが、そういう考え方の背景にあるものに一定の配慮はして良いと考えています。

 拡大抑止については、ソ連がSS20を配備した際、当時のシュミット独首相が欧米の安全保障の分裂が起こると大騒ぎしたことがありました。中距離ミサイルを持つ中国との関係で、日本は当時の西独がソ連との関係で持っていた位置づけと同じです。西独の場合、米国の巡航ミサイル、パーシングの配備で分裂問題がなくなりました。現在、中国はINF(中距離核ミサイル)をもっており、ロシアはINFゼロに益々異論を示す中、この問題を今後どうするか、日米間で話し合っておく必要があります。日本の場合、非核3原則がありますが、「持たず、作らず、持ち込ませず」のうち、「持ち込ませず」は「撃ち込ませず」にすることを真剣に考える必要があります。

 対中戦略における日米間の差異は、例えば中国のADIZ(防空識別圏)設定への対応などに見られるし、「新しい大国関係」というスローガンで米中共同対処的な考えが出ているなど、問題があります。これは良く意思疎通をしておく課題です。

 上記クローニンの論説は、良い問題提起をしたものとして評価できます。

岡崎研究所

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