韓国軍のベトナム戦争での蛮行が米世論に糾弾される可能性も
2014.05.05 07:00
「慰安婦像」が設置された米国で韓国ロビーによる「日本叩き」が過熱している。一方、ソウルでは元慰安婦らがベトナム戦争時における韓国軍の蛮行を告発。「慰安婦」を人権問題に格上げして日本を貶めるはずが、自らの首を絞める事態に発展している。
「カリフォルニア韓国系米国人フォーラム」(KAFC)がグレンデールで反日大連合の構築、在米邦人社会の分断を進められた背景には、これまで運動の主軸にしてきた日本政府に対する謝罪・補償要求をひとまず棚上げし、「女性の人権を守るための聖戦」(在米韓国系反日団体関係者)というスローガンを掲げたことがある。
慰安婦像は「日本人を貶めるシンボル」ではなく、「女性の人権を守るためのシンボル」との位置づけだ。普遍的なテーマを掲げることで、より幅広い団体の支持を呼びかけて運動を拡大しようとする狙いがある。
だが、韓国ロビーによるテーマの格上げが、ここにきて自らの首を絞めることにつながっている。
「撤去提訴」から約2週間後の3月7日、一部の韓国人元慰安婦とその支援団体「韓国挺身隊問題対策協議会」(挺対協)代表が記者会見を行ない、ベトナム戦争に参戦した韓国軍による「ベトナム人女性に対する性暴力や民間人虐殺」について朴槿恵政権が謝罪し、法的責任をとるよう訴えた件である。ソウルに慰安婦像を建てる活動をした挺対協はKAFCと密接な関係にある。挺対協も「女性の人権」を掲げてベトナムへと“戦線拡大”したわけだ。
だが朴政権が、ベトナムで韓国軍が行なった虐殺や性暴力を簡単に認めることはできない。
1998年ベトナムを訪問した金大中大統領(当時)が「不本意ながら、ベトナム国民には苦痛を与えたことを申し訳なく思う」と謝罪した際、当時野党ハンナラ党副総裁だった朴槿恵氏は「金大中大統領の歴史認識を憂慮せざるをえない。参戦勇士の名誉を著しく傷つける」と非難した。
そうした経緯から、挺対協の告発が朴政権の了承を得た上での新戦略とは考えにくい。元慰安婦支援団体の間に何らかの亀裂が生じているのだろうか。筆者はこの点についてKAFCにコメントを求めたが、本稿締め切り時点で反応はない。
KAFCがほかのアジア系アメリカ人との連帯と共闘を進めるために「人権」をテーマにすること自体はわからなくもないが、それは同時に韓国の一番痛いところを突くことにもなる。そもそも、「慰安婦」と「韓国軍の蛮行」とは全く次元が異なる問題だ。慰安婦や慰安所は、倫理的問題はともかく、戦時下では定められたルールに従って制度化されていた。慰安婦たちは貧困などの事情でその職に就いた職業売春婦である。
そして他国の軍隊にも同様の制度はあった。元慰安婦たちの訴えも、元々は終戦による賃金未払いなどの金銭闘争だった。それに対し、韓国軍がベトナムで犯したレイプや虐殺は時代を問わず重大な戦争犯罪である。
3月7日の挺対協の会見はもとより、韓国軍の蛮行について報道した米メディアは本稿締め切り時点までない。米世論の矛先はまだ日本だけに向いているが、韓国軍の蛮行が糾弾される日はそう遠くないだろう。
※SAPIO2014年5月号
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