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中島京子「夢見る帝国図書館」

2019-07-12 22:19:31 | 読む
中島京子「夢見る帝国図書館」文藝春秋
すっごくおもしろかった!
中島京子というと「小さいおうち」の人ですね。私が読んだのは。
いまは「長いお別れ」が映画化されてるのかな。

女性ライターが、東京上野でたまたま出会った老女に、
「図書館を主人公にした小説を書いたら?」と勧められる。
なんとなく親しくなって、老女・喜和子さんの語る
「子供のころ、図書館に入っていって泊まったりした」という、
よくわからない思い出話を聞いたり、喜和子さんの元愛人と出会ったりしている前半は、
ほのぼの楽しい空気で、この調子で続いていくと思っていると、
途中で喜和子さんは亡くなってしまった。
まだ半分以上厚みがあるけど、このあとどうなるんだろうと思っていると、
喜和子さんが語った生い立ちや不思議なエピソード、
出会っていた人々を主人公が探り、たどっていく作業が後半の物語になっていた。
明らかになる、終戦後の上野の状態、喜和子さんの人生の転変。
喜和子さんがなぜあんなにも図書館と上野にこだわりがあったのか。
少しずつわかってくる、喜和子さんの生きた道筋の哀しみや、
自分の手で得た幸せ。
かかわった人々がみんなそれぞれ魅力的に立ち上がっていて、
それでいて、どことなく地面から少し浮いてる感じがする。

喜和子さんの人生を探っていく流れの中に、パッパッと挟まっているのが、
帝国図書館をめぐる掌編。
実際の記録を使ったフィクションだと思うが、これも一つ一つ読み物になっている。
平行して進む両方から、戦争、日本の社会の中の女、戦後の日本国憲法までも、
かなりのテーマが浮かび上がってくる。
上野動物園の猛獣が「処分」の厳命を受けるあたりなども出てくる。
それでも、全体の空気がほのぼのしていて、なにしろとってもおもしろかった。
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