北大路公子「いやよいやよも旅のうち」集英社文庫
北大路公子さん(通称ケメコ先生)の旅行エッセイです。
爆笑の連続です。
ケメコ先生は旅行が好きではありません。なるべく動きたくない。
北海道札幌のお家の中で、お風呂に入るのも「風呂が遠い」と毎夜のごとくツイッターでつぶやいているぐらいなのだ。
そのケメコ先生が担当の編集者さんに誘われて(そそのかされて?)(脅されて?)自分では絶対しないであろうことをするために旅行に行く羽目になった。
一回目の行き先は、なぜか札幌市内の定山渓。(なぜ札幌?地元?)
東京から参加する編集者の乗った飛行機が飛ばない可能性がある、その場合でもケメコ先生が一人で行けるから、だそうだ。(時期が一月なのである。わざわざ真冬の札幌で移動しなくてもと思うが)
当日、雪が降っている。(まあ、一月の札幌ってそうなんだろうねと思う)
真駒内駅に到着すると、雪はますます激しくなっている。
目的地はノースサファリサッポロ、体験型動物園。(体験型?)
駅からさらにタクシーで20分、車を降りると、雪で何も見えない。
入口まで並んでいる犬小屋も雪に埋もれている。しかし、犬たちは外で雪に埋もれている。
「当園は普通の動物園ではありません!危険です!ケガや物損はすべて自己責任です」と注意書きが掲げられていて、いやだなあと思いながら進むケメコ先生、園内はあたり一面真っ白な雪、その中に埋もれながらさまざまな動物たちがいる。
「リスザルが肩から降りない場合はスタッフを呼んでください」などという貼り紙におびえながら進むご一行、冷え切った体を温泉で温めたいと思うケメコ先生に編集者さんは言う、
「犬ぞりに乗りましょう!」
犬ぞりといっても、走行中は2枚の板の上に立ち、止まるときはその板の間のバーを踏む。立っているだけでも大変なケメコ先生は、担当犬のマユちゃんに声をかけることにした。
「マユちゃん、よろしくね。なるべくゆっくり走ってくれると嬉しうああああ速えええええ」
ハンドルにしがみついて数十秒、ゴールで踏むべきブレーキも踏めず、スタッフが身体で止めてくれて、「し、死ぬかと思った」ケメコ先生に編集者さんは言う、
「スノーモービルも乗ります?」
これが第一回目の旅の第一日目の午前中なのだ。
この調子で、富士急ハイランドと青木ヶ原、花巻・遠野・盛岡、伊勢神宮、高松のこんぴらさん、那覇と、爆笑旅は続くのです。
これを読み終わった私は勢いづいて、同じく北大路公子エッセイ、
「私のことはほっといてください」PHP文芸文庫も読んでしまいました。
エッセイと膨らむ妄想が混じりあうケメコ世界、悲劇も喜劇にしか見えない筆力。
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