硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

「巨神兵東京に現る」 終末を超えて。

2020-04-24 19:33:15 | 日記
「ほう。私の語ることに耳を傾けるか。いい心がけだ。さて、君は、旧人類は滅んでしまった真実を知っているか。」

「もちろんです。」

「それは恐らく、君がさっき倒した巨神兵と、君たちの祖先が使用した高エネルギー兵器によるものだと聞いているのではないか? 」

「その通りです。」

「それが間違いなのだよ。」

「・・・どういうことですか?」

「眼下に広がる街を見るがいい。高エネルギーなど使えば、地球には緑さえ残らないのはわかるだろう。」

澪は戸惑った。その者の言う通り、高エネルギーで地上を焼き尽くしてしまえば、地球は荒野と化し、緑豊かな自然を再生することは出来ないはずである。

「気づいたようだね。君の父は口伝されたものを引き継いだのみで、真実を知らない。勝者が語る歴史は、勝者にとって都合のいいように改ざんされるものだ。そうやって、真実は歪められ、歴史的な屈辱は、憎しみを心深く食い込ませ、真の和解を生じにくくさせるのだ。」

澪はまた迷っていた。父を信じるべきか、目の前で語る人物を信じるべきかと。その揺らぎを、その者は捉えていた。

「迷っているな。それでいい。迷いなく信じられるものなど、真実からは、程遠いものだからな。その上で、聴け、迷える若者よ。旧人類が地上で滅びた理由は、君たちの祖先が作ったナノマシンの暴走によるものなのだよ。」

「ナノマシン・・・。」

澪は絶句した。現在でも科学の最先端技術としてナノマシンの存在を知ることが出来るが、それが、どのようにして人類の滅亡に結びつくのかが理解できなかった。


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